ひねくれ凡夫ワンサマー   作:ユータボウ

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 どうもどうも、更新します。新しくお気に入り登録してくださった方、評価してくださった方、感想をくださった方、ありがとうございます
 ……で、申し訳ありません。今回も全然進みません。何故だぁ


4話 ワンサマー、備える

 

 夜、寮の消灯時間が刻々と近付く中、俺は一人屋上にやって来ていた。既にシャワーは浴び終わって着替えも済ませており、今身に付けているのは寝巻きである黒のジャージだ。春になったといってもまだまだ四月の頭、夜風からは少し肌寒さを感じる

 俺はポケットからケータイを取り出し、ある一つの番号に電話を掛ける。無機質な呼び出し音が静かな夜に溶けていく

 

 『……はい、もしもし?』

 

 よし、繋がった

 

 「もしもし。よぉ弾、俺だ」

 

 『なっ、一夏!?一夏かお前!久しぶりだな!元気にしてたか?』

 

 繋がった電話から流れる聞き馴れた親友の声。ゴタゴタのせいで長らく電話することすら出来なかったが今日になって漸くすることが出来た。思わず笑みが溢れる

 

 「元気かって言われると微妙だ。見渡す限り女子ばっかで心休まる暇がねえって感じだな。ついでに言っとくと弾の好きそうな女の子は皆無だった」

 

 『えぇ~マジかよ~!』

 

 「残念ながら大マジだ。全く、俺がなんかする度にぎゃあぎゃあ騒いでよぉ……ここは動物園かっての」

 

 『はははっ!相変わらずお前は辛辣だな』

 

 それから俺達は他愛ない会話に花を咲かせた。買いそびれた漫画の最新刊の話や同級生の進路の話。6年ぶりに再会した友人が美人になってたって言ったときはえらい突っ込まれた。それに近いうちにまた会おうなんて約束もした。そんな時、弾がしみじみとこんなことを呟く

 

 『……それにしても良かったぜ。なんだかんだ言いつつもお前が元気で本当に良かった』

 

 その言葉は心の底からの安堵だった。過去の俺を知っているからこその言葉、俺は思わず息が詰まった。そして弾は続けてこう言う

 

 『俺、不安だったんだよ。中学の頃は酷いもんだったからさ、一夏がIS学園に行けばどうなるかって……』

 

 俺達の中学時代、特に三年生の時は最悪だった。まだ15年しか生きてねえ身だがそんな中でもあの頃は文字通りドン底だった。鈴が中国に戻っちまって頼れる奴が弾しかいなかったのも大きい

 

 「……すまねえ、弾。気ぃ使わせたな」

 

 『いいってことよ、お前が大丈夫ならな。で、いたんだろ?女尊男卑の子ってのは』

 

 「あぁ。しかも結構な奴がな」

 

 流石にそいつがイギリスの代表候補生なんだ、とは言わねえ。万が一、それが拡散でもしたら大惨事になるだろうし

 

 「でもま、あの頃に比べりゃ問題ねえよ。今はまだ多少ちょっかい掛けてくる程度だからな。個人的にはパンダ扱いの方がよっぽど堪えるぜ」

 

 『そうか……って、もうこんな時間か。すまねえ一夏、明日課題テストがあるから勉強に集中するわ』

 

 「マジか、悪ぃな。それじゃあな。厳さんや蓮さん、蘭ちゃんに宜しく頼む。また今度遊ぼうぜ」

 

 『おう、頑張れよ!』

 

 俺は通話を切った。ツー、ツー、という音がやけに寂しい。時間を確認すればいつの間にか9時前になっており、予想以上に長く喋り込んでしまっていたようだ。まぁ久々に弾と話せたし、やはり男同士気軽に話せるのは気が楽でいい。鈴にも掛けたかったがこりゃまた今度だな

 俺は部屋に戻ろうと踵を返した時、ふと階段のところに誰かいることに気が付いた。向こうは俺に気付かれたことが分かったのか、ゆっくりのその姿を現す

 

 「一夏」

 

 「ほーきちゃん」

 

 「もう消灯時間寸前だぞ。規則を守らなければ連帯責任で同室の私達も罰を受けることになるんだ、早く戻れ」

 

 「そうなのか、知らなかった……」

 

 俺は慌ててほーきちゃんの後を追った。故意ではなかったとはいえ俺は彼女の肌を見てしまったのだ、謝って許してもらえはしたが少し素っ気なく扱われるのは仕方のないことだろう

 

 「ボーデヴィッヒは?」

 

 「もう寝てしまった。あれだけ周りに気を立てていたんだ、きっと疲れていたんだろう」

 

 その気持ちは十分理解出来る。周りに気を許さないでいるというのは思いの外キツいのだ。俺にはほーきちゃんや弾といった話し相手がいるが、いないボーデヴィッヒはさぞかし大変だったに違いない

 

 

 

 彼女はなんとなく昔の俺を思わせる。近寄るな、放っておいてくれ、そんな雰囲気を出していたあの頃の俺を

 

 

 

 「……似てるんだよなぁ」

 

 「……一夏?」

 

 「何でもない。独り言さ」

 

 にっと笑って見せると彼女はそれ以上何も言わなかった

 

 

 

     △▽△▽

 

 

 翌日、三時間目まで授業を終えた俺はクラスメイトから質問攻めにあっていた。一日経って漸く話し掛けてくる気になったらしい。怒濤の勢いでやって来る彼女達を捌くのはなかなかに大変だが、こそこそと小声で噂されるよりは遥かにましだ

 

 「ねえねえ、織斑君ってどんなものが好きなの?」

 

 「ん~……趣味としてならゲームしたり漫画読んだり。食べ物なら中華料理だな。特に酢豚」

 

 ただし酢豚は鈴の手料理に限るが

 

 「じゃあ嫌いなものは?」

 

 「女尊男卑。ついでにそれを当たり前だと思って振りかざすような奴も嫌いだ」

 

 即答した。教室中が一層騒がしくなったような気がするが、聞いてきたのは向こうで俺はただ答えただけなんだから気にしねえ。第一、男で女尊男卑を好ましく思ってる奴なんている訳ねえだろうに

 

 「お、織斑君って篠ノ之さんと仲が良いよね?も、もしかして付き合ってたり!?」

 

 「「「キャー!!」」」

 

 ……女ってのは好きだねぇ、こういう話が。答える前から盛り上がってんじゃん。俺には未来永劫理解出来なさそうだ

 

 「あ~……別に付き合ってねえよ。ただほーきちゃんとは小学一年から四年まで同じクラスだったし、同じ剣道場にも通ってたから今も仲良くしてもらってるんだ」

 

 「えぇ~、篠ノ之さんホント~?」

 

 突然話を振られ困惑するほーきちゃん。あたふたしながらもしっかり頷く姿は昔と大して変わっておらず、なんとなく懐かしい気持ちになった

 

 「ねぇねぇ!じゃあ小学校の時の織斑君ってどんな感じだったの!?」

 

 「……そうだな、腕っぷしはなかったが勇気のある奴だった。とある女の子がいじめっ子に絡まれていた時など、乱入したはいいが返り討ちにあっていたな」

 

 お~い、ほーきちゃ~ん、その女の子って君だよ?何勝手に他人事にしてんのさ。ていうかその事はあんまり言わないで欲しいんだけど。武勇伝ですらねえからそれ。だから女の子達も「キャー!」とか言わないで。恥ずかしいんだよ

 

 「あの!千冬お姉様って家ではどんな感じなの!?」

 

 「……あんまり変わらないね。昔っから人にも自分にも厳しい人だから」

 

 案の定、千冬姉に関する質問も飛んでくるがそれは対策済みだ。俺は中学時代から用意していた偽りの答えを、さながら本当のことのように話した。真実は時に残酷だ、世の中には知らない方がいいことも多い

 

 「わぁ~……流石千冬お姉様」

 

 「憧れちゃうよね~」

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 

 

 「席につけ、授業を始めるぞ」

 

 おお、噂をすればなんとやら。チャイムと共にやって来たのは件のお姉様、千冬姉だ。こう見えて実はずぼらなんだ、なんて言っても誰も信じねえんだろうな……って、ごめんなさいだから叩くのは止めてくださいお願いします

 

 「そう言えば織斑、お前には学園で専用機が用意されるそうだ」

 

 ……は?

 

 「お前は世界で唯一ISを動かせる男だ、故にデータ収集用を目的に専用機が用意されることとなった。理解したか?」

 

 「俺に……専用機が……」

 

 ……一応喜ぶべきなんだよな?たった467個しかないコアの一つを、データ収集が目的とはいえ俺に与えてくれるのだから。ただなんというか……突然のことでどう反応するのが正解なのか分からん。本来ならば然るべき訓練を積んで更に成果を上げ、幸運の女神に微笑まれたごく一部の人間にしか与えられないものを、こんなあっさりもらってはありがたみも何もあったものではない。ただ戸惑うだけだ

 

 「……さて、では授業を始める。教科書とノートを準備しろ」

 

 そんな半分放心状態の俺を放置して、千冬姉は授業を開始した

 

 

 

 

 

 

 「安心しましたわ。まさか訓練機で試合しようとは思ってなかったでしょうけど」

 

 授業が終了しお昼休みが始まった直後、セシリア・オルコットはわざわざ俺のとこまでやって来てこんなことを言った。こいつは俺が訓練機で試合しないなら一体何で試合すると思ってたんだ?てか訓練機って初心者でも扱えるようにされてるんだろ、むしろ訓練機の方が俺にぴったりじゃねえか

 

 「まあ?一応勝負は見えてますけど?流石にフェアではありませんものね」

 

 当たり前だ。代表候補生とトーシローだぞ?ほーきちゃんも言っていたが俺とこいつでは何もかもが違いすぎる。そもそも勝負になるかどうかってレベルだ。何を今さら自信満々に言う必要があるんだよ。まぁ俺にも『織斑千冬の弟』って看板がある以上、瞬殺なんて結果にだけはならねえように足掻くつもりだが……

 

 「何しろ、この私も専用機を持っているのですから!あなたのような野蛮な男など専用機があったとしても、完膚なきまでに叩きのめして差し上げますわ」

 

 ……そろそろこいつの無駄口に付き合うのも飽きたな。腹も減ったし食堂に行くか。因みにほーきちゃんは既にクラスメイト達と行ってしまっている。付け足すなら誘われてた時、すっげえ嬉しそうな顔をしていた。いつの間に友達なんて作ってたんだあの子

 

 「ちょっと!聞いていますの!」

 

 「聞いてねえ。じゃあな」

 

 ぎゃあぎゃあ喚くセシリア・オルコットは無視して食堂へ向かう。付き合う人間を選ぶ権利くらい極東の猿にもあるんだよ

 付き合う人間と言えば俺は友達が少ない。元々そんな関係と呼べる奴なんて弾や鈴くらいしかおらず、この学園に来てからはほーきちゃんただ一人だけだ。他のクラスメイトともやってけりゃ問題ねえんだが……まだ信用するには早い

 これも『織斑千冬の弟』って肩書きに寄ってきている者が多く感じるせいだ。少なくともクラス代表決定戦、これの結果で彼女達がどんな反応を示すのかが見極めどころだろう

 

 ったく、いつから俺は素直に友達を作ることも出来なくなったのかねえ……

 

 溜め息と共に内心でぼやきながら俺は昼飯にラーメンを求めて券売機へと向かった

 

 

 

      △▽△▽

 

 

 

 『お行きなさい!ティアーズ!』

 

 その台詞と共にセシリア・オルコットの駆る蒼の機体『ブルー・ティアーズ』から、四基のBT兵器……ビットが射出される。それぞれが意思を持つかのように複雑な機動をするそれは、あっという間に相手である『ラファール・リヴァイヴ』を取り囲み、雨のようにビームを降らせた。混乱した相手はそのままビットの包囲網を破ることが出来ずシールドエネルギーを削られ敗北する

 今のは昨日頼んでおいたセシリア・オルコットに関する過去の記録映像だ。イギリスの第三世代機『ブルー・ティアーズ』は操縦者のイメージを反映、具現化することであのビットのようなユニットを独立させて動かせる最新技術の結晶だ。兵装はでかいライフルが一つとショートソードが一本、そしてビットが六基、内四基がさっき動かしていたビーム型、残りの二基はミサイルの出るタイプだった

 

 

 

 ……我ながら随分とヤバイ奴に喧嘩売られたもんだ。初見じゃまず反応すら出来なかっただろう

 

 

 

 リモコンで映像をもう一度再生する。はっきり言ってもう何回再生したかも覚えてないが、ここまでして漸く分かったことが幾つかある

 まず、セシリア・オルコットは近接戦闘が不得意だ。映像の中でも一度接近された時は引き剥がすのに随分と苦労しているように見えた。ショートソードを展開した時もわざわざ名前を呼ぶ出し方をしていた。千冬姉曰く、「あれは代表候補生のする出し方ではない」らしい

 もう一つがビットを操っている最中はライフルによる射撃が出来ない、ということだ。BT兵器は操縦者のイメージに依存する、故に扱うにはそちらに意識を集中しなければならないようで、別の映像でも確認してみたがどれも例外なく、ビットを操っている最中は動いていなかった

 

 以上のことから導き出されるあいつとの戦い方は、ビットを操っている最中に近付いて接近戦に持ち込む、だ。その時にいくらシールドエネルギーを削られようがいい。どのみち長引けば長引くほど不利になるのだ。セシリア・オルコットを、そして見ている生徒を驚かせるにはこれがベストだと思う

 

 「先生、俺の専用機ってどんな機体なんですか?」

 

 「いや……そこまでの情報はこちらも把握していない。政府からお前の専用機は用意すると通達が来ただけだ。いつ届くかも分からん」

 

 なんじゃそりゃ。これで近接武器が一つもありませんなんてピーキーな機体が来たらどうなるんだよ。いやまぁそんな機体ある筈がないとは思うが……

 

 

 

 

 

 

 「ありがとうございました」

 

 「あぁ」

 

 一通り満足し終わる頃には夕食に近い時間になっていた。片付けをして視聴覚室の外に出れば、窓から差し込む夕陽に思わず目を細める。さっさと寮に戻って飯を食おう。ほーきちゃんやボーデヴィッヒと合流出来ればいいな

 

 「それじゃ俺はこれで」

 

 「あぁ。気を付けて戻れよ」

 

 ペコリと一礼、そのままくるっと反転して……そこで動きを止めた。真っ直ぐと此方にやって来る奴がいたからだ。長さがバラバラな銀髪にオッドアイ、あれはボーデヴィッヒだ。彼女は俯いていて此方に気付いていないのか、覚束ない足取りで進んできて……

 

 

 

 ()()()()()()()()()

 

 

 

 ……いや、ぶつかったってより千冬姉がわざとボーデヴィッヒの前に立ちはだかったって感じだ。当然ボーデヴィッヒはバランスを崩し、ぼてっと尻から倒れ込んでしまう

 

 「あうっ……」

 

 「歩く時は前を見ろ。お前は問題なくとも誰かを怪我させるぞ」

 

 「っ!?も、申し訳ありません!教官!」

 

 ぶつかった相手が千冬姉だと理解した瞬間、ボーデヴィッヒは顔を真っ青にしながら慌てて立ち上がった。しかも何故か敬礼もプラスして

 それにボーデヴィッヒは今、教官と言った。先生ではなく、だ。俺は訳が分からずに首を傾げた

 

 「ここでは織斑先生だ、もう私は教官ではない」

 

 「も、申し訳ありませんっ!」

 

 「……まぁいい。私もお前に一つ聞きたいことがあったからな」

 

 ふっと千冬姉は肩の力を抜いた。しかしその厳しげな表情は一切変えず、狼のような鋭い眼光がボーデヴィッヒのオッドアイを射抜く

 

 

 

 「何故お前がここにいる?ラウラ」

 

 

 

 今思えば、俺はここでさっさと消えておけば良かったのかもしれない

 

 入学して僅か二日目、俺は彼女の抱える闇を思わぬ形で知ることとなった

 




 ……という訳で次の話はラウラです。その次くらいにはクラス代表決定戦までいけたらいいんですが……

 感想があればお待ちしてます。ここが良かった、ここがつまらん、等々言ってくださると助かります

 追記 ほーきちゃんが束さん関連で詰め寄られるシーンが原作ならこの辺で起きてましたが、少しずらして起こします。具体的には次の日くらいに。タイミング的に入れられませんでした
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