今回の話ですが感想に「台詞のときにスペースが多くて読みにくい」とありましたので、台詞と台詞の境にあるスペースをなくしてみました。もし皆様が感想を書いてくださる時には、スペースをなくして良かったか、悪かったか、どっちでもいいかを言っていただけると助かります
追記 次話投稿に伴い、修正致します
「……ん」
目覚めれば知らない天井が目の前にあった。どうやら自分は横になっているらしい。むくりと体を起こしてキョロキョロと辺りを見回し、少しして漸くここが保健室らしき場所であると分かった
何故に保健室?という疑問はすぐに解決した。俺がセシリア・オルコットに惨敗したからだ。頭に弾丸を受けたせいで脳震盪らしき症状に襲われ、満足に動くことも出来ずに蜂の巣にされた。で、試合が終わると同時に意識を失った俺はここに運び込まれたと、多分そういう流れなんだろう
成り行きを思い出せば途端に憂鬱な気持ちになってくる。試合に負けたことはまだいい、元々勝てる見込みも薄い試合だったから。だがその負け方があまりにも酷い。この一週間俺のために時間を使ってくれた人の期待を悉く裏切るような試合をしてしまった、それがどうしようもなく嫌になった
「……どうしよ」
頭を抱えたってどうにもならねえことは分かってる。俺は千冬姉の顔に泥を塗ったのだ。弟の俺のせいであの人の評価を貶めた。そんな自分が情けなくて、不甲斐なくて、バタッとベッドに勢いよく背を預けた
その時、コンコンとノックの音が聞こえた。そこから一拍置いて扉が開き、千冬姉がゆっくりと入って来る。彼女は目覚めた俺を見ると少し驚いたような顔をして、そしてすぐに柔らかな表情を作った。どうやら教師モードではないらしい
「目を覚ましたのか。どこか体に違和感のある箇所はないか?」
「いや、全然問題ねえ。今すぐにでも動けそうだ」
「そうか、だがまだ安静にしていろ。脳震盪と全身を強く打っているんだ、今日と明日はここから出ることは許さんぞ」
ライフルで脳天をぶち抜かれ、ついでに高所から落下してもその程度で済む辺り、ISってのはつくづく優れた性能をしている。絶対防御やバリアーがなければ先の試合で軽く二桁は致命傷を受けていただろうことは想像するに難くない。それをたった二日大人しくしてるだけで治るのなら喜んで従うことにしよう
「千冬姉……」
「試合のことか?酷いものだったな。今まで数多の試合を見てきたがあれほど一方的かつ早く終わった試合は稀だぞ?もっと精進しろ」
グサッと心に突き刺さる。手厳しいな、おい。まぁその通りだから弁明の一つも出来ねえんだが……
「ごめん千冬姉。色々教えてもらったのにあんな負け方して」
「そう思うなら次に生かせ。後悔するだけなら誰にでも出来る。失敗から学ばなければ
ニヤリと千冬姉は不敵な笑みを浮かべる。でももし、また自分がこの人を裏切ってしまったら……と、そこまで考えて俺は思考を振り払った。やめよう、俺だって好きで失敗してる訳じゃねえんだ。千冬姉の言う通り今回の惨敗は次に生かす
「ありがとう、千冬姉」
「あぁ……っと、そうだ。何か夕食の注文はあるか?代わりに食堂から貰ってきてやろう」
……いやいや、流石にそれは駄目だろ。姉とはいえ世界最強のブリュンヒルデを顎で使うとか恐れ多いわ
「千冬姉、それはちょっと……」
「何、遠慮はいらん。そうだな……確か一夏は酢豚が好きだったか?」
「やめてくれよ。酢豚は鈴の以外は食わねえって決めてんだ」
即答した。ってか言わせてもらうと俺はただの酢豚が好きなんじゃなくて、鈴の料理した酢豚が好きなんだよ。他の中華はまだいいが酢豚だけは絶対に譲れん
結局折れた俺はペペロンチーノを注文し、それを受けた千冬姉は得意顔で去っていった。誰もいなくなった保健室で欠伸を一つ、マイナス思考がむくむくと膨れ上がるのを強引に押し留める。気晴らしにと窓から外の景色を眺めながら、俺は晩飯がやって来るのをただぼんやりと待っていた
△▽△▽
次の日、安静を言い渡された俺はベッドの上でひたすら持ってきてもらった参考書と教科書を読んでいた。勿論、イメージトレーニングをすることも忘れない。昨日飛んだ感覚を思い出しながら右へ左へ、自由自在に頭の中を駆け回った
つーか俺の専用機……白式って一体どこいったんだ?専用機ってのは基本的に待機形態として持ち主の傍から離れないって聞いてたんだが……一次移行も終わってなかったことだしどこかに保管されてんのかね?次に千冬姉と会ったら聞いておこう
にしても
別に白式だから負けたんだって言い訳するつもりはねえ。訓練機で汎用性の高い打鉄やラファールに乗っていたとしても負けてただろう。それでも白式は俺が使うにはちとピーキーな機体だ。一次移行が終わったら武装の全体的な見直しをしなければ、俺は心に固く誓った
キーンコーンカーンコーン
そんな馬鹿みたいなことを考えている内にチャイムが鳴った。とはいえ怪我人の俺には関係ないこと、参考書を読む作業を再開してペラペラとページを捲る
コンコン
突然のノックに俺は顔を上げた。千冬姉でも来たのだろうか、とりあえず「どうぞ」と入室を促しておく。そして入って来たのは……千冬姉じゃなくてクラスメイト達だった
「失礼する」
「やっほ~、おりむー!」
「ほーきちゃん、布仏さん……と、ボーデヴィッヒもか」
これには少し驚いた。今日は千冬姉や養護の先生以外の人には会えねえだろうと思っていたのだが……お見舞いに来てくれるダチがいるっては良いもんだなぁとしみじみする
「体は大丈夫なのか?昨日は……その……随分酷くやられていたようだが」
「そうだよ~……なんか見てて可哀想なくらいだったよ~……」
心配そうに、それでいて申し訳なさそうな口調でほーきちゃんと布仏さんが言う。やっぱ端から見ててもボコボコにされてたんだな、俺
「大丈夫、明日からは動いてもいいって先生にも言われてるから」
それより、と俺は話を変える
「なんかクラスで変わったこととかなかった?勝ったけどクラス代表が面倒になったセシリア・オルコットが俺に押し付けたとか、あと──」
──俺への中傷とか
そう言った瞬間、ほーきちゃんと布仏さんの動きが止まった。よく見ると視線があっちこっちへうろうろとし始めている。俺はそんな二人の挙動不審な態度から自分の予想が間違っていなかったことを理解した
全く、そうなるだろうとは思っていたがこうも予想通りとはな。最初っから期待なんぞしてなかったが女ってのはどこに行っても変わらんらしい。掌返しはもう見飽きた
「はぁ……ボーデヴィッヒ、そいつ等がなんて言ってたか覚えてたりするか?」
「『千冬お姉様の弟なのに惨敗した』、『とんだ期待外れだった』、『あんな試合をして恥ずかしくないのか』、『お姉様の面汚しだ』、『やはり男は使えない』……他にもまだまだあるが大方がこういった類いだ。共通して言えることは、奴等は教官の弟である貴様がセシリア・オルコットに手も足も出なかったことが余程気に食わんらしい」
淡々とボーデヴィッヒは知りたいことを教えてくれた。にしても好き勝手言ってくれるな、おい。人が大人しくベッドで横になってるのを良いことに。中学の頃に耳が腐るくらい聞いた台詞ばかりだが、どいつもこいつも考えることは同じってことかよ、胸糞悪ぃ
「で、でもねおりむー!ゆこっちとかナギナギとか、おりむーの頑張りを知ってる人はそんなこと言ってないよ!だから、その、皆が皆おりむーのことを悪く言ってる訳じゃ……」
「布仏さん、ありがとよ。別にもう慣れっこだからあんま気にしないでくれ」
慣れっこ、その意味を察することが出来たのはこの中でボーデヴィッヒだけだ。理解出来なかった二人は首を傾げている
試合に惨敗したことである程度の人数が掌を返すのは分かっていた。俺としてはむしろ、布仏さんのように気を遣ってくれる人がいることの方がありがたく思える。こういう人はただいてくれるだけでも気持ち的にかなり楽になれるのだ
……正直、明日からの学園生活に不安がないかと問われると答えのはノーだ。好奇の視線は侮蔑のそれへと変わり、絡んでくるような面倒くさい輩も増えるだろう。注意する立場にいる先生がまともであるのがまだ救いか。何かあれば遠慮なく頼ろう
代表候補生に負けるという、ある意味当然とも言える結果にも関わらず生徒達はこんな調子だ
もしこれ以上のことをしでかしたなら、俺という存在は一体どうなってしまうのか
入学してからまだたったの一週間、始まったばかりの学園生活に俺は早くも嫌気が差してしまった
△▽△▽
怪我が完治し、学園生活に復帰してから更に一週間が過ぎた。一週間経った今でも学園は『織斑千冬の弟であり唯一の男性操縦者である織斑一夏がイギリスの代表候補生に惨敗した』という噂で持ちきりであり、ちょっかいを掛けられた回数も軽く両手両足の指の数を越えるようになった。まぁ昔に比べると可愛いもんなのであまり大した問題じゃねえと俺は思っている。空気を読まん新聞部は追い返したが
セシリア・オルコットとの試合で使った俺の専用機、白式は第三アリーナの倉庫に眠っていたらしく、この一週間で無事に一次移行を終えることが出来た。鈍い銀色の装甲は名前の通り真っ白に染まり、無骨なフォルムもシャープな感じに変化。操作性も以前と比べて格段に良くなっていて漸く専用機らしくなった
ただ、こいつに一番驚かされたのはその武装と力だ
雪片弐型。かつて千冬姉が現役だった頃、愛機『暮桜』が振るった剣。その後継型が白式
更にもう一つ、白式が一次移行をしたことで解禁された力がある。それが零落白夜──シールドエネルギーを含む全てのエネルギーを消滅させる
はっきり言おう、迷惑以外のなんでもねえ
零落白夜は確かに強い。シールドエネルギーを消滅させるということは、相手に絶対防御を必ず発動させるということである。一撃必殺をそのまま形にしたかのようなこの力は、千冬姉のように相応しい使い手が振るえばISバトルにおいて無敵と言っても過言ではない
しかしそれは逆に考えれば、剣一本であらゆるISと戦えるような
それじゃ零落白夜は使わずに別の武装を使おうという発想に至るのだが、何をとち狂ったのか白式の
つまり白式の特徴をまとめると……
・武装は
・零落白夜が使える(使いこなせるとは言っていない)
・
……これ俺の専用機じゃなくて千冬姉の専用機だろ。間違っても初心者に渡すような機体じゃねえよ
つーか何がまずいって、これが周りにバレたら『織斑一夏は生意気にも織斑千冬と同じ力を使っている』みたいな風になることだよ。しかも使いこなせねえからゴミクズ扱いされるのは間違いねえし……
俺は織斑一夏だ。千冬姉じゃねえんだよ
「はぁ……」
思わず溜め息が溢れた。今俺がやってるのは移動の練習、ISを使うことにおける初歩の初歩だ。専用機ってことで動きやすいっちゃ動きやすいんだが……動き自体はとてつもなく拙い。動きは一々止まるしバランスもよく崩す。今の俺はある程度のイメージをまとめてからでなければろくに移動することも出来なかった
『ねぇ、あれが噂の男子?』
『イギリスの子に手も足も出なかったんだって』
『千冬お姉様の弟の筈でしょ?下手くそな操縦ね』
『あんなのが弟なんて死んでもごめんだわ……千冬お姉様が可哀想よ』
アリーナ内、または客席のあちこちから生徒達の声が聞こえる。ISには視覚を補佐するハイパーセンサー以外に、聴覚を補佐する機能も搭載されている。故にどんなに小声での会話でも拾うことが出来る、出来てしまうのだ。ISは本来、宇宙での活動を想定しているから
ならばお前らなら勝てたのか、あの人の弟に相応しい戦いが出来たのか、俺は大声で言ってやりたかった。けど、そんなことをしたって何も変わらないのも分かっている。やるせない気持ちのまま悪態を一つつき大人しく訓練に戻ろうとした、ちょうどその時……
──警告。ロックされています
「……は?」
そう呟くのとほぼ同時に左肩を強い衝撃が襲った。耳障りな金属音が鳴り響き、俺はバランスを崩して吹っ飛ばされる
攻撃を受けた。その事実を食らってから俺は理解する
「やったぁ!当ったり~!」
アリーナに響く間抜けな声、俺は反射的にそちらを向いた。視線の先には訓練機であるラファール・リヴァイヴに乗った顔も知らない生徒が三人、その一人がアサルトライフルの銃口を俺へと向けている。あいつが俺を撃ったことは疑うまでもない
「やるじゃん!それじゃ次は……」
そう言ってもう一人の奴もアサルトライフルを展開する。途端に白式が警告音を鳴らした。訳が分からんがとにかくヤバイ!スラスターを噴かして急いでその場を離れる。不格好だが今度は奇跡的に回避が成功したようだ
「……ちっ!なんで動くのよ!」
外した奴が突然キレ始め、いよいよ俺の混乱もピークに達する。訳が分からねえ、一体俺が何をしたってんだよ。いきなり銃で撃たれるようなこと……は……まさか……
「大人しく私達の的になりなさいよ!男のくせに専用機まで持って!」
「アンタみたいな無能がいると迷惑なのよ!千冬様の弟だからって雑魚は雑魚らしく撃たれなさい!そうすれば千冬様だって……」
……言葉も出なかった。ISを使って、何故そんな馬鹿げたことをさも当然のように言えるのだ?これは人を殺す兵器にもなりうるとこいつらは理解していないのか?よくある嫌がらせだということは分かっている。だがそこにISという要素が加わった瞬間、俺はただ絶句することしか出来なかった
「……いいわ、私達は優しいからアンタの特訓を手伝ってあげる。三対一の模擬戦よ、感謝しなさい!」
「なっ……!」
滅茶苦茶な、という言葉は飛来した弾丸によって消え去った。こっちのことなどまるで無視し、三体のラファールはそれぞれの武装を手に俺へと襲い掛かった
アサルトライフルによって上空から降り注ぐ雨。狙いの精確さなどセシリア・オルコットとは比べ物にならないレベルだが、それを補うように凄まじい量の弾幕が張られている。これでは
「ちっ、くそぉ……!」
俺には離れた相手を狙う術はない。白式にあるのは近接ブレードの雪片弐型と零落白夜のみ、接近しなければ話にもならん状態だ。しかし絶え間なく襲い来る銃撃を前に突進でもしようものなら、瞬く間に蜂の巣にされることは想像するに難くねえ。しかしそれ以外の策を考えられるような余裕も、実行出来る技術も俺には皆無だ
結果、罵詈雑言を聞き無様にも被弾しながら逃げることしか出来ない
──シールドエネルギー、残量143。機体損傷度60%。回避を優先してください
「むしろ回避しかしてねえっつぅの……!」
一方的な攻撃が始まりまだ数分、苛立ちのあまり白式の通知にも毒を吐く。俺はこの時避けるのに精一杯で相手を見ていなかった。だから……接近してくる敵への対応が遅れた
「隙有り!」
「しまっ!?」
下から迫ってくる一機のラファール、そのブレードが白式のウイングを捉えた。バチバチと火花を散らすそれは使い物にならず、目に見えて白式の機動が鈍くなる。負けじと此方も雪片で応戦するがここで経験の差が明らかとなり、難なく受け止められた挙げ句に蹴りまで叩き込まれた。その衝撃は凄まじく、俺はアリーナと客席を隔てるバリアーにぶつかってずるずると地面へ落下する
──シールドエネルギー、残量59。機体損傷度80%。戦闘継続は困難です、退避してください
無機質なメッセージが目前に表示される。このエネルギー残量では零落白夜も使えまい。顔を上げればニヤニヤと俺を嗤いながらアサルトライフルを構えるラファールの姿が。避けなければ、そう頭では理解しているのだが体の方は言うことを聞かない。ハイパーセンサーで補佐された目が引き金に力を込められるのを見た
やられる、そう確信した俺が次の瞬間に見たものは……
横から突如、目視することすら困難な速度で突っ込んできた打鉄に顔面を蹴り飛ばされるラファールの姿だった
「がっ……!?」
「「え……?」」
蹴り飛ばされた操縦者が悲鳴を上げる間もなく墜ちていく。時速何百という凄まじい速度でやって来た特殊合金の塊に顔面を蹴られたのだ、恐らくその威力は操縦者の意識を奪うには十分なものだったに違いない。あまりに突然の出来事に、俺と二機のラファールはその様子を見ていることしか出来ない
しかし打鉄は止まらない。手にしていた日本刀『葵』で一機のラファール目掛けて驚異的な速度で斬り掛かった。俺を狙うためにアサルトライフルを装備していたラファールは突然の近接戦闘に対応出来ず、ばっさりとそのライフルは切断された。残っていた一機も慌てて発砲するが打鉄はそれを悉くシールドで弾き、アサルトライフル『焔備』を連射して応戦した
「……どうして」
『勘違いするな』
ポツリと溢した疑問にプライベート・チャネルからまさかの返事が来る。まだ使い方の分からない俺は彼女の言葉にただ耳を傾ける
『私は私が邪魔だと感じたから戦っているに過ぎん。人が静かにISを使ってるのにこいつらが煩くては気が散る。貴様が倒れようがなかろうが私には関係のない話だが、こいつらは片付けてやる』
二機のラファールを翻弄しながら
そいつは……ラウラ・ボーデヴィッヒはいつものようにそう言った
書いててなんか雑になってないかな~……と思う今日この頃。SSを書くって難しい
多分あの子が来るのは次くらい。セカン党の皆様の期待に沿えるよう頑張ります
前書きにもありますが感想をくださる時には、台詞と台詞の境にあるスペースをなくしてどうだったか、と言うことを教えていただけたら幸いです
追記 次話投稿に伴い、修正致しました