聖櫻番長のガールフレンド(仮)だらけな日常   作:クビキリサイクル

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更新遅くなりました。
しばらくは亀更新になるかと思われるので、先にお詫び申し上げます。


真尋と芽以の視線と壁ドン

「あれ?」

 

「あ、芽以(めい)ちゃん」

 

 

 私―――森園(もりぞの)芽以は、図書室に来ていました。

 今日は友達の真琴(まこと)ちゃんと宿題を進めるために図書室で待ち合わせていたのだけど、掃除当番だから先に行って待っててもらって。

 細かい所が気になってお掃除に時間が掛かっちゃったから、終わってすぐにこっちに来たんだけど。

 当の真琴ちゃんは、漫画を熱心に読んでいるようでした。

 傍らには積まれた漫画。

 ……宿題は?

 

 

「お掃除お疲れ様ー」

 

「うん。それはありがとうだけど……。なにかな? それ」

 

「え? 芽以ちゃんこれ知らない?」

 

「知ってるよ。漫画だよね?」

 

「いやそうじゃなくて」

 

 

 うーん、とちょっと唸って。

 

 

「このタイトルの漫画のこと、知らないの? ってことだよ」

 

「タイトル? えっと……」

 

 

 言われて、漫画の表紙に書かれている文字を読んでみる。

 『おおかみさんと後輩ちゃん』。

 ちっとも目にしたことのないタイトルだった。絵柄も見たことがない。

 ちょっと悪そうな男の人と、比べると小柄な女の子のツーショットが表紙だけれど。

 

 

「ごめんね、見たことないかも。どういうお話なの?」

 

「そっかー。これね。意地悪でSっ気の強いけど、カッコよくて優しい先輩と、ちっちゃくて可愛い後輩の女の子が恋に落ちちゃうお話なの」

 

「S?」

 

「…………」

 

 

 頭を抱える真琴ちゃん。

 Sってなんだろう。

 服のサイズのことかな?

 でもそれだと「け」っていうのと繋がらないし。

 

 

「と、とにかく! すごくどきどきする少女漫画なんだー」

 

「へぇー……」

 

 

 そう言われると気になってきます。

 宿題もそんなに多くないし、ちょっとくらいならいいかな……。

 真琴ちゃんが積んでいる漫画の一つを手に取る。

 

 

「……あ! でも芽以ちゃんには」

 

 

 とりあえず中間くらいのページを開きます。

 

 

 

 

『こういうことしてほしいの?』

 

 

 上半身裸の男の人が、上着が肌蹴て下着姿の女の子に迫っていました。

 

 

 

 

 

 

「ひぁああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 図書室っていう大声禁止の場所でも憚らず、自分でも驚くほどの声が出てきた。

 火傷しそうな熱い物に触れたみたいに手が引っ込んで、その場から飛び立つみたいに離脱。近くの本棚に身を隠します。

 宙に放った漫画が、遅れてテーブルに落ちました。

 

 

「な、なにゃな、なににゃんなななな、なんてものを読んでるの真琴ちゃん!!?」

 

「ああもう! そういう反応するからまだ早いって言おうとしたのに!!」

 

「と、図書館なんだよ!? 学校なんだよ!!? たくさんの人がいる中でそんなえっちな本読んでるなんて!! 見損なったよ真琴ちゃん!!」

 

「そのえっちな本、この図書室にあったものだからね!? っていうかえっちじゃないから!! えっちに見えるところそんなにないから!!」

 

「嘘だよそんなの! たまたま開いたページでそんなシーンが出てくるわけないもん!!」

 

「芽以ちゃんのたまたまが不運過ぎただけだよ!」

 

「お、お祓い……! お祓いしなくちゃ……!」

 

「待って待って! ていうかそのお祓いの棒いつも持ち歩いてるの!?」

 

 

 真琴ちゃんは、あくまでそれがえっちな本ではないと言い張ります。

 取り出した大幣(おおぬさ)を構えつつも、こわくなーいこわくなーいと訴える真琴ちゃんに、少しずつ少しずつ近寄る。

 ちらりと、さっきの漫画がテーブルに置いてあるのが見える。

 うう……、怖いよ秋穂(あきほ)お姉ちゃん……。でも秋穂お姉ちゃんもこういうの駄目そうだし……。

 

 

「……そんなぷるぷる震える程こういうの駄目なの?」

 

「だ、だって、お母さんが、こういうのはもっと大人になってからって……」

 

「お母さんが、かぁ。でも、高校生にもなったらこれぐらい普通だよ」

 

「こ、これが、普通なの……?」

 

「……まぁ、ほんとのほんとにえっちなのは、私もちょっと勇気でないけど」

 

 

 ほんのり赤くなる真琴ちゃんの頬。

 

 

「と、とにかく。これがえっちだと思うのは芽以ちゃんに耐性が無いからだよ。序盤の方から慣らしていこ?」

 

「だ、大丈夫だよね?」

 

「大丈夫大丈夫。さっき見たところだって、大分関係が進んでからのことだし」

 

 

 逆に言えば関係が大分進むとああいうことになるっていうことなんだけど……。

 とはいえ、真琴ちゃんが熱心に薦めてくれるのを拒絶するのも悪いと思い、とりあえず最初の方から一緒に読むことにしました。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「視線を感じるの」

 

 

 俺―――新城一也の目の前で、夏目真尋(なつめまひろ)は言う。

 

 

「そりゃあ、俺が目の前にいるからな」

 

「今現在じゃなくて最近の話」

 

 

 それぐらいわかってよ、と言わんばかりに溜息をつく夏目。

 まぁ分かってて言ったんだが。

 俺達は図書室のテーブル席にて、テーブルを挟んで座っていた。

 別に昨日以前からの約束ではないが、授業が終わって暇になった俺。さて、今日はどこに遊びに行こうかと考えていたところで、夏目からの相談事との連絡を受け、こうして図書室へとやってきたのだ。夏目の相談事となると、まぁ小説云々だろうと思っていたが、当てが外れたようだ。

 さっき森園と柊の声が聞こえた気がしたが、気にしないことにした。

 夏目の手元にはノートパソコン。

 こっちはウルトラ気になる。

 

 

「ずっとってわけじゃないんだけど、授業が終わった後とか、お昼を食べてる時とか、放課後とか。不定期にどこからか、誰かが見てるような感覚があるの。放課後が一番かな」

 

「ふむ。授業中でないという事は、少なくともクラスメイトではないのか」

 

「だと……思う」

 

「振り返ったり、追いかけたりして姿を見たとか、そういうのはないか?」

 

「まぁ、振り返りはしたかな。すぐ身を隠したみたいだから見てはいないし、……追いかけるのも、ちょっと」

 

「なるなる」

 

 

 確かに、下手に追いかけて力技に出られたら、インドアの夏目に勝ち目があるかは疑問だ。

 相手が悪質なストーカーだった場合、ではあるが。

 正体不明な以上、用心するに越したことは無い。

 

 

「それで、視線はいつから?」

 

「んー……。3日くらい前になると思う」

 

「3日ね。視線以外でその日や、その日から変わったこととかはある?」

 

「……特に無い、かな。視線は感じるけど、それだけ」

 

「ちなみにシャッター音は?」

 

「してないから、多分望月先輩じゃないと思う」

 

 

 ふむ。そうなると不審者やらでもなさそうか。

 ここでの経験上、ああいう奴等は隙を窺ってすぐ行動するタイプばっかりだし、目立ちたがりが多いから夏目より先に周りの人間が発見するだろう。隠密するタイプだとしても、異変に気付いてるのが校内に情報の網を張っている新聞部を置いて、夏目だけというのはおかしな話だ。3日もあって校舎内に侵入している校外の人間を察知できない新聞部ではないだろう。

 そうなると、うちの生徒内に夏目をストーカーしてる人間がいるわけだが。

 

 

「心当たりがまるで浮かばねぇ……」

 

「やっぱりそう?」

 

 

 男子は除外していい。

 何故かって、俺と夏目が友達だから。

 どうやら俺と親しい女子は男子達の中でカップリング扱いされ、事ある度に掲示板やらなんやらで燃料となっているらしく、俺のカップリング相手の女子は聖櫻学園男子共の間で不可侵の存在になっているとのこと。無論例外としてその枠からはみ出る男子もいるかもしれんが、うちの男子共の検挙率を考えれば不審者以上に無いだろう。

 俺の知り合い以外でもレベル高い女子はいるし、割合女子の方が生徒数が多いわけだから、俺と親しい女子じゃなくても彼女は作れる(実際音楽室に出没するキューピッドの働きのお陰で、カップル成立している奴等は結構いると聞く)からというのが理屈らしいが……、それでいいのか男子達。

 噂を聞いて掲示板を見てみたこともあったが、熱意がやばかったのでそれっきりにしている。

 ちなみにR18妄想スレなるものもまとめページにあったけど、開く勇気が出なかった。

 

 

「わたしとしても何かした覚えはないから、心当たりを探ろうにも」

 

「落とした小説を届けようと思うけど、内容がかなりプライベートだから人目につくところで返すのは忍ばれる……って線は?」

 

「っ!!」

 

 

 はっとした夏目は、自分の鞄を取り出し、物凄い勢いで漁りだした。

 何秒かで探り終わったのか、若干息切れしながらこちらに向き直る。

 

 

「だ、大丈夫……。そっちの……線もない、みたい……」

 

「……りょーかい」

 

 

 そんな大事なモンなのに3日も前に失くしたかどうかを確認しないと分からないのか……。

 こういうとこ無防備だよなぁ。

 

 

「で、お前は俺にどうしてほしいわけ?」

 

 

 聞けることは聞いたので、本題に入ることにする。

 

 

「うん。わたしとしては、協力してその人を捕まえて、問い詰めたいかなって」

 

「問い詰めるねぇ。先生方には報告しない方向で?」

 

「場合によってはそうする必要もあるかもしれないとは思うけど……、正体が掴めない以上は大事にしない方がいいと思って」

 

 

 それもそうだろう。

 ストーキングが確かだとして、それが声が掛けられないだけの善意ある行為なら、下手に事を大きくすれば申し訳なさまで大きくなるだけだ。

 まずはそれを見極めなければならない。

 最悪夏目の勘違いだという線もあるわけだし。

 

 

「今までは視線を感じても野放しにしてたけど、今回は新城君がいるから。ちゃんと捕まえて話を聞こうと思うんだけど……」

 

「おっけ。じゃあ俺は捕まえる係な」

 

「……うん、ありがと。それじゃ作戦だけど……」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

『俺の物になれよ』

 

 

 

 

 

「なんていうか……」

 

 

 真琴ちゃんと漫画を読み進めて数分。

 主人公の男の人とはまた別な人に女の子が迫られてるシーンを見ながら、私は正直な感想を述べます。

 

 

「女の子を物扱いしてる人が多いね」

 

「…………」

 

 

 無言で読み続ける真琴ちゃん。

 

 

「いきなり迫ってきてるところもなんだか怖くて、女の子が萎縮しちゃいそうだよ」

 

「…………」

 

 

 なおも無言で読み耽る真琴ちゃん。

 

 

「こういう人が実際にいるかは分からないけど、こういうのでドキドキする人って」

 

「いないことは……ないんじゃないかな?」

 

「え」

 

 

 沈黙を保っていた真琴ちゃんからの言葉。

 漫画で顔を少し隠しながら。

 

 

「わ、私は、そのー……」

 

「その……なに?」

 

「こう、物扱いっていうか……所有されたいって気持ち?」

 

「気持ち、が?」

 

 

 

 

 

「……なくはないかなって」

 

 

 

 

 

「うぇえええ!?」

 

 

 本日2度目。

 

 

「ま、真琴ちゃん!? 真琴ちゃんだよね!? 偽物だったりしないよね!?」

 

「え!? 他の誰かに見える!?」

 

「本人なら目を覚まして! こんな無理矢理迫ってくる人に物扱いされるなんて、怖いに決まってるもん!」

 

「いや、そのー……流石に無理矢理っていうのは怖いと思うけど」

 

「うんうん!」

 

「……でも、ちょっと強引に食べられちゃうっていうのはいいかなって」

 

「…………」

 

 

 顔が林檎みたいに赤くなっちゃって、可愛いなとは思うけど。

 え?

 所有されたい?

 強引が良い?

 食べられたい?

 あ、あわわわわわわわ……。

 

 

「……芽以ちゃんにはない? そういうの」

 

「な、ないよそんなの……私、真琴ちゃんが全然わからない……」

 

「うーん……」

 

 

 パラパラとページを捲る真琴ちゃん。

 やがて目的のページに辿り着いたのか、こっちに紙面を向けてくる。

 

 

「こういうのとか! ドキドキするよね!?」

 

「……」

 

 

 急にウキウキして主人公に女の人が壁を背に迫られてるシーンを見せられましたけど。

 ドキドキはしません。

 ハラハラはします。

 

 

「……よくわかんない」

 

「えーっ。巷で噂の壁ドンなんだけどなー……」

 

「カベドン?」

 

 

 なんだろうそれは。

 カビゴンさんの進化形かな?

 

 

「確かになんとも思ってない人からやられたら怖いかもしれないけど、相手にもよると思うんだよね。女の子はこういうの、憧れる人多いんじゃないかなーって」

 

「そういうものなの……? 私がおかしいのかな……?」

 

「いいなー……」

 

 

 うっとりした表情で、真琴ちゃんはそのシーンを食い入るように見つめます。

 

 

「私も、新城先輩にこういうのされたら……」

 

「…………」

 

 

 真琴ちゃんは、新城先輩のことが大好きです。

 恋しています。

 一年生の生徒に先輩のことが広く知れ渡った事件のとき、遠くからその姿を見ただけで恋に落ちた。所謂一目惚れだったと真琴ちゃんは言っています。

 あれ以来先輩を慕う人がすごく増えたのは知っていますけど、真琴ちゃんほど好印象を植え付けられた人はいないでしょう。

 

 

(確かに先輩は、すごい人だと思うけど……)

 

 

 私もあの時とは違うけど、それ以前から先輩を知っていました。

 その時も、あの時と遜色ないくらい衝撃的な出来事だったと思います。

 頼り甲斐があって、優しくて、強い人だと思います。

 でも、真琴ちゃんのそれは一線を画していると言いますか。

 先輩として慕っている私と比べるまでもないと言わんばかりです。

 

 

「私の残りの人生、先輩に捧げますって宣言しちゃいそう……」

 

「…………」

 

 

 これが恋する女の子というものなんでしょうか。

 私にはわかりません。

 

 

「わ、私……宿題に役立ちそうな本、持ってくるね……」

 

 

 どこか遠くに見える真琴ちゃんから更に遠ざかるように、私は本棚へと向かいました。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「視線を感じたら、わたしが大声で新城君を呼ぶから。それまではわたしと離れて行動してて」

 

 

 というのが夏目の作戦らしい。

 

 

「ここの生徒で新城君のことを知らない人はいないし。一緒にいるのを見られたら、早々に退却しちゃうだろうから」

 

「まぁいいけどさ。視線を感じたらすぐに対応できるだろうし、一緒にいてもいいんじゃねーの?」

 

「すぐに視線が外れたら例の人かどうかわからなくなるでしょ? しばらくしても視線が外れないようだったら当たり。そうでなかったら外れってくらいしか情報がないんだから」

 

「……まぁそうだな」

 

「というわけだから、本棚ででも待機してて。なるべくわたしと一緒に視界に入らないような位置がいいな」

 

 

 この密会している場面を見られていない前提の作戦ではあったが、幸い一緒にいるときにそれらしき視線を感じることはなかった。

 今日都合よく現れてくるかという不安もあるが、三日間連続なんだ。四日目に援軍要請とフェイントがブッキングするとは考えづらいだろう。例え現れなくとも、日を改めて再挑戦すればいい。

 そんなわけで、俺は夏目と共に視界に入らないよう、近くの本棚で時間を潰すことにした。

 何かあれば夏目が俺を呼ぶため、声自体は良く聞こえる位置にいることにする。まぁ、このワンフロアにいれば、大声はどこでも届くだろう。

 しかし、不審者ではない。うちの生徒ではあるが、男子でもなければ望月先輩でもないとなると、夏目をストーカーする人間は女子生徒に限られてくるわけだが、そんな人間いるんだろうか。

 夏目の親友である春宮なら、女子にも人気あるし、納得できる余地はある。……いや、もしや将を射んと欲すればまず馬を射よの精神で、春宮に声を掛ける前に夏目に声を掛けて、その繋がりで春宮と仲良くなろうって魂胆か?

 うーむ。

 もしくは、夏目の小説を読んで感動した子が、夏目とお近づきになりたいと機を窺っていると見るべきか。

 そっちも有り得るか。

 そもそも男子を除いて考えるのは早計過ぎたか?

 夏目に恋心を寄せるのも十分有り得るが、うちの男子共が掲示板の燃料として俺の知り合いが普段どう過ごしているのかを観察しているってのは、それ以上に有り得る話だ(一度見た時そんな話をしていたような気もする)。

 それならそれで鉄拳制裁だろうが……うむむ。

 

 

「お」

 

 

 などと考えていると。

 本棚の前で見知った顔を見つけた。

 

 

「森園。なんか探し物か?」

 

「ぴゃっ!?」

 

 

 ビクッと肩を跳ね上げる森園。

 

 

「せ、先輩。こ……こんにちは」

 

「…………」

 

 

 なんかビクビクしてて怯える小動物みたいなんですが。

 俺、なんかしたっけかなぁ……。

 

 

「……邪魔したようなら離れるけども」

 

「い、いえ。邪魔だなんて、そんなことないです。先輩は何も悪くないです」

 

「あ、そう」

 

 

 先輩はって、じゃあ誰が悪いのかって話だが、まぁ俺がなんかやらかしたわけじゃないなら良しとしよう。

 しかし、なんか様子が変だな。さっき柊と大声で会話してたことが原因か?

 見損なったとかえっちじゃないとか、何やら言い合ってたようだけども。

 呼吸を整えて、身体の震えを抑える森園。

 

 

「先輩は、どうして図書館に?」

 

「まぁ色々あってな。そういう森園は探し物か?」

 

「あ、はい。でも、探そうと思ったら本棚の本の並びがぐちゃぐちゃになってるのが気になっちゃって」

 

「で、お掃除か。わざわざ片付けなくても委員の人がやってくれるだろうに」

 

「いえ、私が好きでやっていることですから。委員の方達も、これで少しでも楽になってくれるなら、良いかなって思うんです」

 

「まぁお前ならそう言うよな」

 

 

 ……整理し始めたのはついさっきのようで、まだまだ並びが乱雑な本が随分とある。

 森園の身長だといちいち台に乗らないといけないところもあるし、そうなるとバランスを崩して怪我をするかもしれないな。

 柊じゃあるまいし確実にずっこけるとは思わんが、危なっかしいのもまた事実だし。

 どーせ待機中は暇だし。

 

 

「んじゃ、低いとこはよろしく。俺は高いとこやるから」

 

「え?」

 

「まーでも、俺も俺で用事があるから、そっちのお声が掛かるまでになるけどな」

 

「そ、そんな! 先輩の手を借りるわけには……」

 

「いーんだよ。お前と同じお節介。つか、ほっといて怪我された方が迷惑だし」

 

「け、怪我って。真琴ちゃんじゃないんですから」

 

 

 友達に対する認識がひどいもんだが、それだけひどいのだ。あいつのドジっぷりは。

 

 

「そんじゃーぼちぼち始めますか」

 

「あ……。もう、先輩ってば」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 うーん。悪いことしちゃったかなぁ。

 せっかく芽以ちゃんが宿題を一緒にやってくれるのに、肝心の私が漫画に熱中してちゃ駄目だよね、やっぱり。

 苦手なジャンルを押し付けちゃったみたいだし、そろそろいい加減にしないとかな。

 

 

「とにかく漫画は元の場所に戻しに行かないと」

 

 

 積んだ漫画を両手に抱えて持つ。と、ちょっと上側が安定しなくてバランスを崩しそうになった。

 うむむ……これだとどこかで転んじゃうかも。

 もう少し高かったら顎を乗せて安定させられるかもしれないんだけど……。

 …………。

 のしっと胸を乗せてみる。

 

 

(あ、安定した)

 

 

 胸も支えられて、これ結構楽かも。

 んふふ。これなら足を引っかけない限りは落とさなくて済むね。

 周りのみんなに迷惑をかけちゃうドジだけど、私だって学習するんだからね。

 誰にもともなく胸を張って、漫画を入れてた本棚へと向かう。

 

 

「えっと、確かこっちだったよね……?」

 

 

 さっき芽以ちゃんが姿を消していった本棚の一つ前の本棚。そこが目的の場所だった。

 ここで問題発生。

 元に合ったところが、私の身長じゃ届かないところでした。

 

 

「わー……」

 

 

 そういえば、取るときに本をばら撒いちゃったんだったよねー……。

 周りの人の手伝いもあってなんとか片付けられたけど、流石に二の舞は……。

 

 

「……よし」

 

 

 とにかく、慎重にやらないと。

 申し訳ないけど床に漫画を置かせてもらって、台を持ってくる。

 頑張ろう。

 頑張って、一つずつ、ばら撒いちゃわないように。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 これは……あそこで、これはそっちか。

 うし。まぁ大体こんなもんだろう。

 

 

「こっちは終わったけど、そっちはどうだ?」

 

「はい。こちらもあと中段が少しあるだけです。ありがとうございます」

 

「どういたしまして。しっかし……」

 

 

 恙なく終わりそうな本棚の整理。

 残りワンスペースのみとなると邪魔になるだけなので、少し下がって森園を見守る。

 

 

「まだお呼び出しが掛かんないとは。中々現れないのか、夏目が感じ取れてないだけか……」

 

「夏目先輩? 何かあったんで」

 

 

 すか、と言おうとしたのか、森園が振り向いたところで。

 

 

 

 

 

「わわわぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 という慌てた声が聞こえて。

 柊の声だと認識した瞬間に。

 前の本棚が倒れ始めた。

 

 

「っ!! 森園!」

 

「え?」

 

 

 森園は自分の危険に気付いていない。

 俺の方を見て、本棚が視界の背後に回ったからだ。

 避けろ、というには遅すぎる。

 森園を抱えて投げるにも、本棚は大きいし、何よりそれで怪我をする。

 落ちてくる本を捌こうにも、それじゃあ倒れる本棚を支えられない。

 決断は早かった。

 

 

 森園の頭上を掠めるように、本棚に腕頭打ちを叩き込む。

 

 

「ふぇ!?」

 

 

 勿論、それで落ちてくる本が全部止まるわけではない。

 しかし森園の頭上に落ちてくる分だけは止められるだろう。

 右腕で押さえた分。そこから上は俺が覆い被さるように防ぐ。

 いくつかの本が頭と背中にぶつかる。

 だがまぁ、俺が身長高いのと、痛みに慣れてるのもあって、大した痛みは無かった。

 見下ろす森園には見る限り被害が及んでいないので、とりあえずは胸を撫で下ろした。

 

 

「…………お」

 

 

 降り注ぐ本の雨が止んだ。

 折角並べ直した本はバラバラになってしまったが、人的被害は無くて良かった。

 

 

「ったく」

 

 

 本棚の向こうに呼びかける。

 呆れかえった声だったろう。

 

 

「お前のドジも直んねぇな柊」

 

「うぇぇぇ!? せ、先輩ですか!!? ごめんなさい~!! 私ったらまた~!」

 

「わかったわかった。とりあえず、そっちの安全確保したらこっちに回ってこい」

 

「は、はい!! ただいま!」

 

 

 本棚の向こう側で、バタバタと大急ぎで動く様子。

 まぁ、どーせ気を付けたところでどーにもならんのだろうけど。

 本棚を立て直す。

 

 

「森園? もう終わったけど、怪我ないか?」

 

「…………………………」

 

「…………森園?」

 

「…………お」

 

「お?」

 

 

 

 

 

「お祓いです!!!」

 

 

 

 

 

「何故!?」

 

「せ、先輩も私も今すぐお祓いするべきです! 邪念が渦巻いています!!」

 

「え、なに!? 人助けしてて何で渦巻くような事例が発生するの!? ていうかお前もかよ!」

 

「滝に打たれましょう!! それか、瞑想で邪念を追い払ってしまいましょう!! さぁ! うちの神社で!!」

 

「いやいやいやいやいや!! 神様に顔向けできないようなことしてないから! さっきの今なら尚更!!」

 

 

 なんてやっていると。

 

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

 

 加賀美が現れ。

 

 

「新城君! そっちに行ったよ!!」

 

 

 その後ろから夏目が現れた。

 …………ん?

 

 

「「…………え」」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 森園と柊はどうやら宿題を片付けるために図書室に集まっていたようだ。

 あの後、唐突に現れた加賀美と夏目にも手伝ってもらい、五人+周りの生徒達に手伝ってもらい、散らかした本を本棚に戻していた。

 終わった後は、一年二人は宿題に。俺と夏目と加賀美とで、後回しにしていた話をするという運びに。

 テーブル席で夏目と加賀美が向き合い、俺は対角線の横に座る形である。

 

 

「……それで」

 

 

 重苦しくなった空気の中、夏目が声を上げる。

 

 

「加賀美さんはあそこで何をしてたの?」

 

「……その」

 

「三日前から、わたしに対する視線を感じてて。今日は新城君と一緒にその視線の主を捕まえようと思ったんだけれど」

 

「……う」

 

「どうして加賀美さんは、わたしが感じた視線の先にいたの?」

 

「……」

 

 

 問い詰める夏目の視線に、何も答えられない加賀美。

 夏目の奴は、たまに口調が厳しい、というか毒を吐くことがある。大概は照れ隠しのそれなのだが、ある程度でも相手に敵意がある場合にもこうなる。つまりストーカー犯だと思われる加賀美に、敵意とまでは言わずとも警戒心を抱いているわけだ。

 まぁそれはそうだろうと思うが。

 しかし、加賀美が現れた事で、事ここに至り、俺はようやく心当たりを思い出していた。

 問題はそれをどこまで隠して伝えられるかだが……。

 

 

「どうするかは事情次第。でも、黙ってたら何も分からないんです」

 

「…………」

 

 

 なおも加賀美は押し黙る。

 アドリブが弱いこいつだ。今自分の中で回答を必死に整理してて、それでも答えが出てこない、といったところだろう。そもそもこの場で加賀美が何を言ったところで夏目の信頼を勝ち取れるかも疑問だ。

 ……はぁ、仕方ないか。

 

 

「……ねぇ、加賀美さ」

 

「加賀美、もう隠しても仕方ねぇだろ?」

 

 

 突如横から割り込んできた俺に視線が集中する。

 どちらも驚きといった様子。

 

 

「……新城君。心当たり、あったの?」

 

「まぁーついさっき、つーか加賀美を見て思い出した感じだけどよ。そういえば加賀美が夏目と話したいとか言ってたんだよ」

 

「わたしと? 加賀美さんが?」

 

「…………」

 

 

 加賀美はあわあわと声にならない慌て方をしているが、口出しはしない、出来ないようだ。

 俺の口からあの秘密を漏らしてしまわないかと気が気でないのだろう。というか、もう完全に告白すると思われる流れだと思ってるに違いない。

 構わず続ける。

 

 

「ああ。何時実行に移すかも知らなかったし、俺を通すなりするかと思ったが、まさかこうなるとは思わなくてな」

 

「……なんで今まで話しかけてこなかったの? それに、テニス部の加賀美さんと文芸部のわたしに、話したいことなんてあるとは思えないけど」

 

「えっと、その……」

 

 

 何か言おうとするが、結局何も言えない加賀美。

 構わず続ける。

 

 

「部活的にはそうだろうが、加賀美の場合は個人的趣味の方で話があるんだよ」

 

「趣味?」

 

「…………」

 

 

 俯いて、手をぎゅっと握る加賀美。

 構わず続ける。

 

 

「お話作りに興味があるんだとさ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「っ!!」

 

 

 

 ばっと顔を上げて俺を見る加賀美。

 こっち見んな。

 

 

「そっちは今後決めていく方針で。まずは描きたい話を作るコツとかなんとかで、夏目の話を聞きたいなーって、何時だったかに漏らしてた」

 

「……そうなの?」

 

「は、はい! そうなんです!」

 

 

 つい、と夏目の視線が加賀美に移ると、加賀美は焦ったように肯定する。

 

 

「夏目さんは文芸部だから詳しくお話を聞きたいと思ってたんですけど、あまり人には言いたくないことでしたから……。話しかけるタイミングが、掴めなくて」

 

「それは、どうして?」

 

「そ、それは……」

 

「創作してるなんて知れたら周りの奴が見せてーってなるじゃん。お前も作者ならわかるだろ?」

 

「ああ、そっか……。そういう事情だったんだ。……あれ? でも新城君は知ってたよね?」

 

「まぁちょっと偶発的なアレでな……。そこはお前と同じだよ」

 

「……苦労したんだね」

 

「は、はぁ……?」

 

 

 本人の迂闊で秘密が俺に知られてしまったという点では、共通項のある二人だった。

 納得した様子の夏目に、加賀美は頭を下げる。

 

 

「追い掛け回してしまって、ごめんなさい。でも、悪気があったわけじゃないんです」

 

「そういう事情なら、まぁ……」

 

 

 ちょっとバツが悪そうな夏目。

 キツく言い過ぎたことの反省だろうか。あの段階じゃ、当然の対応だろうとは思うけども。

 ……まぁこんなものか。仲介人としては上々の出来だろう。

 

 

「……正直、言えることなんてないと思うけど。それでもいい?」

 

「もちろんです! よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 

 その後、夏目は自分が創作をしている時の心情、癖などについて話し、加賀美もそれを熱心に聞いていた。

 ちなみに俺は横で聞いてるだけ。

 加賀美がボロを出しそうになったらフォロー入れたりしたが、まぁそれだけである。

 

 

「新城君」

 

「ん?」

 

「……ありがと。秘密にしてくれて、助かっちゃった」

 

「どいたま」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 その夜。

 

 

「そぉ~っと。そぉ~っと……」

 

「芽以」

 

「はぅあっ!」

 

「……? お風呂先に入るか聞きに来たんだが、どうしたんだ? そんなに大声を上げて……『おおかみさんと後輩ちゃん』?」

 

「あ、こ、これは、その……」

 

「珍しいな。芽以が漫画を買うなんて」

 

「あ、ううん。その……図書室から借りた本で」

 

「ふむ……。見覚えのないタイトルだね。一体どういう話なんだ?」

 

「だ、だめだよ! 秋穂お姉ちゃんには、その、早いと思うから!!」

 

「……私で早かったら、芽以にはもっと早いと思うんだけど」

 

「と、とにかくだめなの!」

 

「……まぁ、そういうなら」

 

「あ、お風呂なら私、後にするから! それじゃあお休みなさい!」

 

「あ、芽以! ……行ってしまったか。何だったのだろう」

 

 

 こうして。

 森園芽以は『ちょっと強引が良い』を覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 




清純巫女を汚していくスタイル。

二人だけのストーリーで桃子パパとご対面しましたが、やべぇよ全然キャラ違うよ……。しかもあっちはザ・酒屋の店主って感じだよ……。
そこで物は相談なのですが、桃子宅について色々手直ししたいので、合わせて桃子パパのキャラも改善するべきでしょうか。意見を頂きたいです。口調変えるだけで大して変わんないと思うので。
アンケートを出しておくので、よろしくお願いしますorz
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