聖櫻番長のガールフレンド(仮)だらけな日常 作:クビキリサイクル
「ふむむむむむ……」
「オヤ? ユーリヤサンではないデスカ」
「あ、クロエさん」
「どうかしたのデスカ? もろこし焼いた顔をしていましたヨ」
「思い悩んだ顔ならしていたと思いますが……少々困ったことが」
「ホホゥ、困ったことデスカ?」
「はい……。先日行った横須賀旅行、覚えていますか?」
「モチノロン・ウィーズリーデス! あの時はトテモ楽しかったデスネ!」
「その時に衝動買いしてしまって、実は私、今お金がないのです」
「ナント! そ、それではユーリヤさんはこれから、貧しく苦しい思いをすることニ……アウゥ~」
「あ、いえ、生活に困るという程ではないんですよ? ただ、お小遣いとして使えるお金がないというだけですので」
「そうだったのデスカ。とんだハヤブサデシタヨ……」
「ハヤブサ? ……それで、欲しいものがあるわけではないのですけれど、普段使いのお金は持っておきたいと思ったのです。なので、短期間のバイトをしてみようかと」
「ナァルホドォー! 働かざる者、食う寝る遊ぶということデスネ。どのようなアルバイトをなさるのデスカ?」
「今それに困っていたのです……」
「フム……、スコーシ見せてもらってもよろしいでしょうカ?」
「はい、どうぞ」
「フムフム……フムムムムムムムムムゥ」
「悩みますよね? アルバイトに対する知識がないので、どれがいいものなのか判断できなくて……」
「ワタシにはムツカシイ問題デス……ハッ! ソウデス! こういう時は、鉄人の知恵を借りマショ!」
「……それはもしかして、先人の知恵でしょうか?」
「ソウデス先人の知恵デス!」
「ハラショー! そのような方がいるんですね! それで、どなたでしょうか?」
「こういう時、お決まりの台詞があると聞きマシタ」
「?」
「『助けてトムえもん』デス!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
『今日は帰れそうにないんで、飯は適当によろ。すまんね(^_-)-☆』
というムカつくLINEがアホ親父から届いたので、今日の夕飯は自分で調達することに。
「さてさて、どうしたもんか」
思案に暮れながら俺―――新城一也は、放課後で生徒の数がまばらになった学園の廊下を歩く。
どしよっかなー。弁当買って家で一人きりで食うのもあれだしなー。
上条家にお世話になりに行こっかなー。
あー、でも今日は向こうも外食なんだっけ。
「お、新城」
「ん?」
「よっす」
声を掛けられた方を向くと、
いつも通りその腰まで伸びる水色の長髪を靡かせて、廊下の壁に背を預けている。
……丸っこい字で『はくちょう』と書かれたTシャツを着て。
「…………今日はなんすかそれ」
「ああ、これ?」
だぼだぼしているTシャツを摘まみ、先輩は言う。
「今日はクロエの体験入部に付き合うことになってさ……。これから着替えたクロエとバレエ部見学に行くとこなんだよ」
「それで『はくちょう』……」
「自信作」
フフン、とドヤ顔された。
相変わらずダッセェなそのシャツ……。
見た目は切れ長美人なお人なのに、こういうとこあるから残念さが拭えない。
「にしても、よくもまぁバレエなんてアグレッシブな部活の見学に付いて行こうと思いましたね。先輩の事だから、部室でゆったりするもんだと」
「ああ、うん。別に運動はしないしね。クロエが慣れない回転してる所を隅で観察するさ」
「あ、この人ホントに見学だけするつもりだ」
「新城の言う通り部室でゆったりしたかったけど……やる気満点のクロエを振り解くよりはこの方が疲れないかなって」
わかるわ。
すげなく断ろうとすると子犬みたいにしゅん、ってなるからなあの人。
向こうはポジティブに切り替えするんだけれども、その顔が目に焼き付いてこっちが切り替えるのにすげーエネルギーいるの。
それにしても、着替えねぇ…………。
……あの人、過去の体験入部でまともな格好してた記憶がないんだけれども。
なんてことを考えていると。
「
廊下の先からクロエ先輩が現れた。
―――アヒルパンツとセットのバレエ服を着て。
「よし、着替えましょうかクロエ先輩」
「? ノンノン。これからバレエ部の体験入部に向かうノデ、着替えるわけにはいきませんヨ?」
「いいえ、着替えましょう先輩」
「これはバレエをする上での正装なのデス。これぐらいしないと失礼にあたるというものデスヨ!」
「着替えてください」
「イエ、デスからこれはバレエ部の正装で、美知留サンも折角用意してくださったノデ」
「着替えろォォォッ!!」
「ホワッ!!??」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
着替えさした。
せめて制服以外を、と訳の分からない懇願をされたので、とりあえず栢島先輩のダサ―――文字Tシャツを着て、二人はお揃いの格好で並ぶこととなる。
で、暇だったので俺はその背を追って、バレエ部の部室に辿り着いた。
のだが。
「え、ユーリヤさん? 今日はいないけど?」
バレエ部唯一の知り合い、ユーリヤが不在だった。
「いないって……どうしたの? 風邪?」
「いいえ? なんでも、今日は所用があるとかで休むって言ってた」
「所用ねぇ……」
バレエ部の部長さんと栢嶋先輩が話している中、俺とクロエ先輩はバレエの練習服に身を包んだバレエ部の面々を見渡すが、やはりそこに見知った顔はいない。精々が「あ、あの子ユーリヤとよく話してる子だ」くらいだ。
バレエ部に入る面子に熱心でない子はそうそういないのだが、ユーリヤはその中でも特に熱心に練習に励んでいる部員だ。
適当な理由で休むとは思えんが、果たして何が―――
「ハッ! しまったのデスヨ!」
「なんですか意味ありげに」
「ユーリヤさんは、今日はアルバイトの日だと言っていマシタ!」
「アルバイト?」
あれ? あいつん家、小遣い制って言ってなかったけ?
いや海外で銀行越しだから、小遣いっつーか仕送りか。どうでもいいか。
「なんでまたアルバイトですか? なんか欲しい物でも?」
「イエ、この前の旅行でチョッキンと絆創膏を切ったノデ、普段使いの分を持っておきたいと言っていマシタ」
「傷口に貼るにはちょっと長かったのかな?」
この前の旅行で貯金が底をついたので、普段使いの分を持っておきたいと言っていたらしい。
「短期のアルバイトをしようと話して、アルバイトと言えば美知留サン! という事で、相談したのが一昨日の夜デシタ。それで、今日がアルバイト初日だそうデス」
「成程……。確かにいくつも掛け持ちしてるトムトムですし、その内の一つにヘルプ入ってくれるなら歓迎でしょうね」
クロエ先輩とユーリヤは学園の寮で暮らしているので、ルームメイトとはいかないが、集合リビングみたいなところで一緒に夕飯食べたり寛いだりすることはあるそうだ。
留学生仲間ということもあって仲良くやっているので、多分寛いでいる時にそういう話題が出たとかその辺だろう。
ふむ。アルバイトか。
それも、戸村の推薦…………。
なんで後者の単語でこんなにも不安になるんだろう。
「どういうところで働くって言ってました?」
「ウーム……た、し、か…………ラーメン屋と言ってマシタ」
「ラーメン屋」
「ラーメン屋『キリマンジャロ』デス!」
「どっち出してんの!?」
「あー横から失礼」
部長さんと話してた栢嶋先輩がこちらに戻ってきた。
「どうするクロエ? ユーリヤちゃん、いないみたいだけど。出直す?」
「……イイエ。体験と言えど今日のワタシはバレエ部。友達がいないくらいで、この気持ちは曲げまセン」
「そっか。じゃあ私は予定通り見てることにするよ」
「ハイ! 是非ワタシのガチョウの舞を見ていってくだサイ!」
「ダサそっ!」
ツッコミを入れた所で、俺も一つ考える。
ラーメン屋か。
夕飯はそこにすっかな。様子見るついでに。
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「で、ついてくるんですね」
「モチノロン・ウィーズリーデスヨ!」
「ナメクジの次はモチを喰らったのか」
「ま、私ももう食ってくるって連絡しちゃったし」
クロエ先輩がバレエ部でガチョウの舞らしきものを披露する様子を大爆笑(本人基準)していた栢嶋先輩と鑑賞した後、俺達はラーメン屋『キリマンジャロ』に向かっていた。
一応Googleマップには載っている店なので、スマホに表示された地図を見ながら三人並んで歩く。Google先生流石っす。
「ところで、その『キリマンジャロ』って、どういうお店なの?」
「さぁ? ネットに載ってるのは場所だけで、メニューもなにもないですからね」
「ワタシも、ユーリヤサンからはラーメン屋だとしか聞いてないデスヨ」
「となると開けてみるまで分からないお弁当箱みたいなものなわけね。さーて、なにが出てくるやら……」
「店名からしてイロモノ感溢れてますがねぇ……、と。ここらへんみたいですね」
入り組んだ路地を抜け、それらしき暖簾が掛けられた店の前に到着した。
『麒璃萬蛇露』。
不良の巣窟かな?
「あれか」
「あれかな?」
「あれデスカネー?」
「いやまだあれとは」
「あれかも」
麒璃萬……めんどくせぇ。キリマンジャロは、寂れたところに小さくポツンとある、汚くもなければ小綺麗でもない程度の様相だ。商店街から外れたすぐのところで、小ぢんまりとした店である。
漫画でよくある一軒のラーメン屋さんのイメージそのままと考えていい(暖簾にある店名以外は)。
しかし、それに似合わないと言うか、あるいはこれも漫画のようと言えばいいのか。
その小ぢんまりとした店には、長蛇の列が出来ていた。
どれだけ長いかって、店の入り口から最後尾が見えないくらいである。
「さて、ここで問題です」
「? ハイ」
「なんですか」
「本日私達はユーリヤちゃんのアルバイト姿を見に来ました」
「そうっすね」
「楽しみデスネ~♪」
「ユーリヤちゃんは今日、バイト初日です」
「ユーリヤサンの初た」
「言わせねぇよ?」
「場所は、商店街外れの普通のラーメン店です」
「隠れた名店、でしょうカ?」
「隠れる程外れたわけじゃないですけど……」
「そんな場所にあるお店が、ロシア系銀髪美少女がバイトを始めたとはいえ、果たして初日からこうも長蛇の列が出来るでしょうか? それも、放課後になってから3時間も立っていないのに」
「ユーリヤサンの、焼却能力! スッゴイのデスネ?」
「焼き払ってどうする」
なんだか限りなく嫌な予感がした。
かと言って列を抜かして店に入るわけにはいかんし……仕方ない。長丁場になるが、この長蛇の列に並ぶとするか。
「俺は並ぼうかと思いますが、二人はどうします?」
「正直たるいけど……ここまで来ちゃったしねぇ………」
「決まりデスネ! 突撃! となりのトトロデス!!」
「あーるーこー♪ あーるーこー♪ じゃねーよ」
とりあえず列を辿って、最後尾を目指すとするか―――
「ん? もしかして番長くんじゃないか?」
「なに? あ、本当だ! この前はどうもな番長さんよ!」
「番長さんもここに食べに来たの?」
「そういや、噂のあの子も番長ちゃんのガールフレンドだったっけな?」
「それなら私は、番長さんに先をお譲りしよう。先日娘を車から助けていただいた礼だ」
「俺はクロエちゃんが可愛いから譲る!」
「キ、キサマ! なら儂も乙女ちゃん萌えだから譲ったるわい!」
「「…………」」
「Oh! メルシー! ニッポンのミナサンは、トテモ優しいのデスネ!」
瞬く間に顔パスで通ってしまった。
うちの学校の連中といい、なんなのこの連携。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ヘイラッシャイ!」
「生首ウェルカム!!」
店に入ると、高めのカウンターの上を首から上が見えるように、トムトムミッチーがスライドしてきた。
「そして帽子高っ! どんだけ偉ぶってんだお前!」
「ふふん! 最早あたしのこの店での発言力は神に等しいのさ!!」
「バイトなのに店長超えてんの!?」
「漫才はいいから早く座りたいんだけど」
「美知留サン、コンニチワー!」
カウンター奥にいる、キッチン担当であろう戸村と挨拶? を交わす。
戸村のコック帽は天井に届かんばかりの高さを無駄に誇っていた。あれ絶対邪魔。
「あ、皆さんいらっしゃいませ。三名様ですね?」
「お、ユーリヤ―――」
話していると、件のユーリヤが案内に来た。
―――下のヒラヒラがめっちゃミニいチャイナ服を着て。
「ユーリヤサン! トテモ可愛いデスヨ!」
「スパシーバ。ちょっと、恥ずかしいですけどね」
「……噂の原因はこれか」
「……こりゃあ人も集まる筈だわ」
「あ」
「「??」」
「三名様アルネ?」
「李を参考にしてわざわざ胡散臭い中国感を出すな」
あいつはあいつで中国人はこうあるべきだという先入観に囚われてるようだが。
ロシア人であるユーリヤとチャイナ服の組み合わせは、要素をごちゃ混ぜにしてカオスな感じだ。しかし美少女ぶりは如何なく発揮されているため、むしろそれがいいと言わんばかりにユーリヤの魅力を前面に押し出している。……まぁ一番客の目を引き付けて止まないのは、際どいチャイナ服から伸びている白い生足なんだろうけれど。
多分ユーリヤのこの姿がSNSやらでアップされるなりして話題を呼び、店前の長蛇の列を生み出したのだろう。
問題はこれを着せ、更にSNSでアップした犯人だが……。
「戸村、お前だろ」
「え? なにが? ユーリヤちゃんに特別制服だって言って着せて、ツイッターに拡散したのはあたしだけど?」
「往生際良いな!?」
詳しく聞かれてもいないのに大暴露しやがった。
罪悪感0の証左だ。
「それでは、ご案内しますね」
「おう……って、先輩ちゃっかり座ってるし」
そしてメニューを見ながらだらけてるし。
壁際から並んで三つのカウンター席が空いてるので、壁から栢嶋先輩・クロエ先輩・俺の順で並んで座る。
さて、何を頼むかなと考えたところで、ストンと。
何故かユーリヤが椅子を持ってきて、俺とクロエ先輩の後ろに座った。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………あの」
「! はい!」
「待ち方が健気すぎるわ!!」
ちょっと呼びかけたら満面の笑みを返された。
「後ろに座んな気になるだろーが!」
「お客さん、そいつぁ恋だぜ」
「プレッシャーだよ!!」
つーかボケかますとか余裕あるな、キッチンもホールも。
栢嶋先輩はだらけてツッコミ放棄してるし。クロエ先輩は熱心にメニュー読んでるし。
ここは俺が相手するしかないのか。
「……ユーリヤ、なんかオススメとかあるか?」
「えーっと、なんでしたっけ? 豚の汁?」
「オススメの豚骨くらい覚えとけよ。んじゃそれで」
「かしこまりました」
「サイズは選べるか?」
「並盛り、中盛り、普通盛り。三つのサイズからお選びいただけますよ」
「どれもパッとしない量だろ!!」
「麺の硬さは如何なさいますか?」
「……かためで」
「え!? 茹でなくていいって!?」
「今日のお前めんどくせーな!!」
好き勝手やり過ぎだろこの店!
店名からしてもうやっちゃった感あるけれども!
「……栢嶋先輩はどうします?」
「あー、じゃあ私はしょうゆラーメン。やわめの」
「かしこまりました。クロエさんはどうしますか?」
「ソレデワー」
何故かキリっとした顔つきで、クロエ先輩は言う。
「メンカタカラメヤサイダブルニンニクアブラマシマシ」
「アンタさっきまで何見てたんだよ」
「申し訳ありません。本日は裏メニューの曜日ではないので……」
「いややってんのかい!!」
普通に味噌ラーメンになった。
チャーシュー二枚増しで。
注文を聞き終えたユーリヤは、空いたテーブルの片付けに向かう。
(やだなぁ……このままの調子でいくとラーメンの方もロクなモンじゃなかったりしそうなんだけど)
壁際の先輩は既に自分の仕事は終わったとばかりにだらだらして口を噤んでるし。
「せっかく暗記で覚えたラーメン店での呪文デシタノニ…………」
こっちの先輩はボケの宝庫だし。
なんて考えていると、遂にそのラーメンがカウンターから差し出される。
「ヘイお待ち」
「おお」
普通のラーメンだった。
ていうか……かなり美味そう。
豚骨の濃厚な匂いに加え、ラーメンの具の並びと配色のバランスの良さ。白いスープからちらりと覗く、てかてかと光る麺。
ネギや海苔、メンマの量は多過ぎず、少な過ぎずの絶妙な配分。なるともゆで卵も一番美味そうに見える位置に置かれ、汁が滴るチャーシューを見れば、思わず生唾を飲み込む。
「やるじゃんか、めっちゃ美味そうだぞ」
「スパシーバ! お褒めの言葉、嬉しいです」
「ふふ~ん。なんてたって、あたしの渾身の力作だかんね!」
「スゴイデスネー、見てるだけで鼻水が止まらないデスヨ」
「花粉症ならマスクしましょうか」
「うー。……美味そうなのはいいけど、食べ切れるかな……」
先輩二人にもラーメンが行き渡る。
いやー。不安だったけど、この店結構な穴場スポットじゃないか。
まだ食べてないけど、これは結構期待できそう。
戻ってきていたユーリヤは、メニューを回収すると、何かを持ってきて俺達の前にそれぞれ置いた。
「?」
「それでは」
置かれたそれを確認する。
――――――華が添えられた、豚の顔写真だった。
「ごゆっくりどうぞ」
「遺影添えんな!!!」
今日一の声が出た。
「食い辛いわこんなん!! 何で食品の加工前の姿を見ながら食事させようとしてんだよ!?」
「当店では、いただきますの重みを大切にするために、具材の生前の姿を写真にしてお客様の前に添える、という決まりがございます」
「さっきから店内の麺を啜る音に勢いがないのはそういうことか!!」
「いいから食ってみなよ! 美味しいから!!」
「うわ!! マジで美味ぇ!!」
「1200円だ!!」
「結構するな!?」
「それと、こちらもどうぞ」
ユーリヤは俺達の前にコップと、黒い液体が入ったピッチャーを差し出す。
「当店ではお水の代わりに、コーヒーの『キリマンジャロ』を無料提供しております」
「究極のミスマッチ!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「お疲れー、ユーリヤちゃん」
私―――ユーリヤ・ヴャルコワに、戸村さんが話しかけてきます。
本日のバイトは終了いたしました。
戸村さんと同じ時間で上がり? となりますので、一緒に帰る約束をしております。
「どうだった? 初バイトは」
「とても大変でした……。店員の方は、いつもこんな思いをしていらしたんですね」
実際に、今日の私はダメダメでした。
注文を間違えることもあれば、お皿を落としてしまったり、テーブルの拭き忘れなどもありました。
お店の人もお客さんも優しくて、私を労ってくれましたが、失敗は失敗です。
でも……。
「でも、美味しいと、そう言われた時はとても嬉しかったです」
私が作ったわけじゃないのに。
お店の味が褒められて。
お客さんが笑顔になってくれて。
「今ならわかります。これが、奉仕の心、なんですね」
「うむうむ! ユーリヤちゃんは良い子だね。…………これはメイドの素質あるかも…………」
「?」
小声だったので何を言っていたのか聞こえませんでしたが、褒められるのは嬉しいです。
「あ、でも……今日の制服はちょっと、恥ずかしいので……」
「そっかー。んじゃあ、それについちゃあたしも考えとくんで」
「スパシーバ!」
何故だか問題解決になってない気がしましたが、気のせいでしょう。
戸村さんはそういえば、と言って、私に茶封筒を渡してきます。
「これ、店長から。今日の分のお給料ね」
「お、お給料ですか。ハラショー……」
これが、お給料……。
私が、生まれて初めて、お仕事で稼いだお金……。
茶封筒の中身はそれほど大きなお金ではありませんでしたが。
「それじゃ、またよろしくね!」
「……はい!」
何故だかその茶封筒は、特別重たい気がしました。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「…………食い過ぎた」
「乙女サン、クロッキーデスカ? お水飲みマスカ?」
「非情に惜しい感じだけど、それは短いスケッチです」
帰り際、栢嶋先輩をおぶって帰ることになった。
めっちゃ軽いこの人。
陰鬱な話が続いてたので、ギャグ一辺倒にしてみた(極遅)
ボケまくるクロエちゃんに一々ツッコミ入れる番長は書いてて楽しかったです。
3/31追記。
三人衆のアナグラムの答えです。
佐和江干支→ローマ字変換→SaWaE ETo→SWEET
宇宙炎赫→読みが同じの漢字に変換→右中円角→視力検査の右、真ん中、円、角の図形をそれぞれ表すアルファベット→COOL
燃熱繁→それぞれの文字の画数→16・15・16→アルファベット順の16・15・16番目→POP
以上です。
かなりこじつけに近いあれですが、わかりましたでしょうか?