聖櫻番長のガールフレンド(仮)だらけな日常   作:クビキリサイクル

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聖櫻番長の紹介したりされたりな朝

『私達、高校ではあんまり近づかないようにしない?』

 

 

もう一年前になるだろうか。

高校に入学する前に、突然るいがそう言いだした。

小さい頃から大概一緒にいた幼馴染で、男女の垣根無く、変わらず友達としてやっていた。

周りからは夫婦だとか嫁さんだとか噂されたこともあるが、特別気にしたりはしていなかった。

気にしてはいなかった、が。

向こうもそうではなかったらしい。

幼馴染と言えど、男と女。気にする如何は違うところもあるのだと考え、その提案を受けた。

るいは少しだけ寂しそうな顔を見せたけれど、だからと言ってやっぱ無しということにはならなかった。

友達と距離を置くのは辛いものがあるのは、俺も同じだったけれど。

それでも、いつまでも勝手に噂されると、ずっと気にしたままだろうからと。

 

 

「それが今度はこんな噂が出来るとはなぁ……」

 

「? どうかした?」

 

「いや、なんでも」

 

 

 朝の騒ぎの後、その場に居合わせた保健委員の佐伯(さえき)によって、俺は保健室へと連行(問題ないって言ったのに)されていた。

 2m超え、重さも7・80キロはありそうな大男をぶっ飛ばしたのだから、拳が怪我してないかと心配だったそうで。

 ちなみに向こうの部長さんは部員達によって運ばれたので、佐伯が声を掛ける暇もなかった。

 

 

「……やっぱり、あれだけやって右手、それに他も怪我は全然だね」

 

「だから言ったろ? 大体殴ったのは特別骨が硬いとかでもない顔だぞ。向こうの攻めだってきっちりノーダメージにしたし」

 

「それでも心配なの。本当なら、ボクサーみたいにグローブを着けたりしてても、殴ったりなんかしたら手は痛むものなんだから」

 

 

 とりあえずテーピングはしておくね、と言って、佐伯は保健室の棚からテープを取りに行く。

 全く。心配性な奴め。

 

 

「そういや、神崎(かんざき)先生は? 空いてたってことは、学校には来てるんだろ?」

 

「ああ、先生なら―――」

 

「呼んだぁ~~~……?」

 

 

 シャー、と開いていくベッドのカーテン。

 

 

「……何故保健の先生がベッドに横たわっているのか」

 

「あはは……」

 

「ごめんなさいねぇ~。昨日ちょっと飲み過ぎたのかしら……」

 

「二日酔いかよ!」

 

 

 それで学校のベッドで寝てんのかよ!

 ほんっと美人なくせに酒には弱いな!

 あれ? 関係ない?

 

 

「ごめん。頭に響くから、音量は下げて……」

 

「はぁ。でも、酒飲むのも程々にしてくださいよ? うちの親父とかは肝臓が怪物ですから、どんだけ飲んでも明日には平気な面して仕事に行ってますけど」

 

「流石にあの人は参考にならないでしょ……。えっと、テープはどこにあったっけ?」

 

「あ……。一番左下の棚の奥の方にあると思いますよ」

 

「左下ですか? えっと……。あ、あったあった」

 

「おぉ。保健委員より保健室の設備に詳しいとは」

 

「ここにいる時間は長いので。自然と、ですね」

 

「そうねぇ……。置き場所に関しては、私より詳しかったりするわ」

 

「保健の先生よかって、正岡(まさおか)先輩通い詰め過ぎでは……って正岡先輩ぃ!?」

 

「わ」

 

「ちょ、音量……」

 

「あ、すいません」

 

 

 神崎先生の隣のベッドカーテンを開ける。

 正岡先輩が寝そべっておられた。

 

 

「ちょっと! 何でこんな朝っぱらからもういるんですか! まだ部活も朝練始めたばっかですよ!?」

 

「い、いえ……。今日の朝は気分よく目覚められたので、そのまま登校したのですけれど、学校に着いてから気分が優れなくなってしまって……」

 

「先輩の家って歩いて三十分かそこらでしたよねぇ!? 三十分で急降下するんですかあなたの体調は!?」

 

 

 リアクションはそう見えないだろうが、今はヒソヒソ音量である。

 

 

「ご、ごめんなさい。心配しなくても、今は体調は良い方ですから……」

 

「その台詞もう何回目ですか……。とりあえず何か元気が出るようなものを口にした方がいいですよ。うちの購買限定の元気炭酸なりがんばるんバーなり」

 

「わかりました。……ふふ。新城くんの元気を分けてもらえたら、私ももう少しちゃんと学校に通えたかもしれませんね」

 

「分けるっつーか、もう足して二で割ったらちょうどいい感じになるんじゃないですかね?」

 

「それはどうだろう。二人共鈴河(すずかわ)さんぐらい元気有り余ってそう……」

 

 

 佐伯がこちらに戻ってきた。

 果たしてあれは有り余ってると言えるのだろうか。

 思いっきり遊んで思いっきり昼寝するイメージだが。

 

 

「さ。テーピングするから右手出して」

 

「はーいはいっと」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「成程。やはり一撃だったんですね」

 

「ウィ。お相手のブチョーサンはそれはそれは大きな方でシタガ、一也サンはドカンと一発。勝負は一周でシタ」

 

「一瞬で終わったんですか。まぁ、前馬評は覆らなかったってことですかね」

 

「そうデス一瞬デス! 間違えてしまいマシタ」

 

(ん?)

 

 

 保健室でテーピングを巻かれ終え、教室に向かっていると、階段の昇降口の方から声が聞こえてきた。

 この声は……南條(なんじょう)とクロエ先輩か。

 内容から察するに、さっきの騒ぎを見てなかった南條が、見てたクロエ先輩に話を聞いてるってところか。

 うーむ。

 南條に捕まるのは面倒だが、かといって階段を遠回りするのも面倒だしなぁ。上の窓が開いてなかったら飛び移れもしないだろうし。

 クロエ先輩の証言も無駄に増長しそうだし、ここは引き上げさせる方向で行くか。

 廊下から顔を出す。

 

 

「おーい、お二人さん―――」

 

 

 

 

 海軍司令官みたいな恰好をしたクロエ先輩と、その前でメモを取る南條がいた。

 

 

 

 

 

「――――――――――――」

 

「Oh! 一也サン! オハヨウゴザイマス!」

 

「お。噂をすればなんとやら。新城くん、ちょっと話聞かせてもらっていいかい?」

 

「クロエ先輩」

 

 

 無視してクロエ先輩を問い質す。

 

 

「なんですかその恰好は?」

 

「艦長! デスヨー!」

 

「へー」

 

 

 何の恰好かって聞いたんじゃないんだよなぁ。

 何でそんな格好してるのかって聞いたんだよなぁ。

 

 

「ああ。これのこと? いや私も気になってたんだけど、それより先にする話があったからさー」

 

「なんで目の前のこれよか俺の騒ぎの方が優先度上なんだよ。それでどうしたんですか? それは」

 

「よくぞ聞いてくださいマシタ!」

 

 

 ズビシッと、その細長い指をドアップまで突きつけるクロエ先輩。

 

 

「アレハ、とあるアニメを見ていたことデシタ」

 

「ほほぅ。アニメ」

 

「ハイ。その中で、ある女の子が着ぐるみを着ながら語っていたのデス。

 

 

『ウサギの気持ちになるでごぜーますよ!』と。

 

 

ワタシは教えられまシタ! コスプレをすれば、そのコスプレの人に近付けるのダト!」

 

「あなた小学生アイドルに教わる立場なんですか?」

 

 

 確かにあの子のいい子っぷりは見習うところがあるけど、とんだ的外れでごぜーますよ。

 

 

「ワタシは一也サンの気持ちを知り、その強さや火の起こしなどを学びたいと常々思っていマシタ」

 

「ライター使えよ」

 

「そこで! 一也サンの代名詞である『艦長』のコスプレをすることで、一也サンの気持ちを知る! それが狙いだったのデス!」

 

「うん。俺『番長』だからその恰好じゃ知れないですね」

 

「Oh! また間違えてしまいマシタ!」

 

「ついでに言うとそれ『艦長』っていうより『提督』って感じですね」

 

「ムムム……。ワタシの『未元物質(ダークマター)』に、常識は通用しないのデスヨー!」

 

「それは垣根帝督」

 

 

 冷蔵庫に備え付けられた第二位の話はしていない。

 

 

「またも間違えてしまいマシタ……。ワタシ、こってりさんデス」

 

「豚骨スープじゃないんですから。しかも何でよりマニアックな方にズレる……」

 

 

 ほんっと、この人はほんとにもう……。

 天然なのはわかってるんだけど、ツッコミ疲れるわ。こんなん。

 

 

「しかし、美知留(みちる)サンとも相談したので、間違ってないと思っていたのデスガ……」

 

「あんのトムトムミッチー……」

 

 

 間違いに気付いていながら、クロエ先輩に提督コスプレをさせたいがために黙ってやがったな。

 しかもまたレベル高く作り込んできやがってるし。

 戦闘艦が擬人化したアレの提督がイメージの元なのだろうが、やたらと装飾が派手だった。

 あの提督はほとんど白一色が一般的だが、目の前の提督は勲章バッジや肩に掛けた防寒着、襷や腕章を付けていらっしゃる。

 しかし腰から下は完全に女性用で、白いミニスカと黒いハイソックスの境目にある絶対領域から、乳白色の太腿が覗き――――――

 じゃなくて。

 

 

「とにかくその恰好じゃ無駄に叱られるだけですから、着替えてください。ちゃっちゃと」

 

「そうデスネ……。一也サンの気持ちになるには、勉強が足りませんデシタ。出直しマス……」

 

 

 そもそも俺の気持ちになったところで強さを学べるわけでもないんだが……。

 

 

「んじゃ、俺もそろそろ行くわ……って。南條、電話か?」

 

「あ、うん。ちょっとね。……はい、新城くんなら目の前にいますよ」

 

「……ん?」

 

 

 何やら嫌な予感。

 

 

「はい、わかりました。代わりますね。……はい、新城くん」

 

 

 差し出される携帯電話。

 画面に浮かぶ通話中の文字。

 その下には、『部長』という名前爛。

 

 

「………………」

 

 

 正直物凄く受け取りたくないが、ここで無視すれば後でお怒りを買うのが目に見えていた。

 南條から携帯を受け取り、耳に当てる。

 

 

「もしもし。新城一也です」

 

『新城くんね。今すぐ新聞部の部室にいらっしゃい』

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「来たわね」

 

 

 所変わって新聞部。

 入り口と対面にあるやたらクッション性の高そうな椅子に、にっこり笑った神楽坂(かぐらざか)先輩が鎮座していた。

 腕を組んでは……いないか。笑顔にも気迫は感じないし、本当にただ笑顔で迎えてくれただけらしい。

 

 

「聞いたわよ。他校の空手部部長が挑戦に来たんですってね」

 

 

 やはりその件か。

 

 

「俺視点の話を聞きたいって言うなら、あんまり効果無いでしょうね。周りが見てたことで全部でしょうし」

 

「『聖櫻学園番長、高校空手個人戦全国大会出場者を一撃で撃退』。まぁ、あなたを知らない人からしてみれば、耳を疑う内容でしょうね」

 

 

 私の新聞読者に、あなたを知らない人はいないでしょうけど。と付け加えられる。

 

 

「あぁ、それと。私への情報提供は『まどか』くんがしてくれたわ。自分から進んでね」

 

「まーたあいつか……」

 

「いいことじゃない。あなたに有名になってほしいって思いの表れよ?」

 

「本人の意思が介在してないのが問題なんですよ」

 

「私達としても、あなたは有名でないと困るもの。聖櫻学園の()()()()()さん?」

 

「……別に活動時間に制限があったりはしないんですけれど」

 

「オールマイトみたいにしおれてもらっても困るわ」

 

「ネタ伝わるんだ……」

 

 

 てっきり読んでもマガジン辺りだと思っていたが、素直に驚きだ。

 平和の象徴、ねぇ。

 何時からそんな仰々しい呼び名がついたんだっけか。

 事の始まりは覚えてるんだが。

 

 

「もう一年も前になるかしら」

 

 

 手元に広げてあった資料に目を通しながら、神楽坂先輩は物思いに耽る。

 

 

「聖櫻学園の生徒は色々と優秀な子が多くて、メディア露出も多かった。けど、模範的な生徒が多かった分、他校の不良生徒や不審者に目をつけられて、学園側も問題に対して手が付けられない状況にあった。おかげで、暴行を受ける生徒。無理矢理学園に侵入してくる闖入者が後を絶たなかったわ」

 

「……」

 

「でも、そんなときあなたが入学してきた」

 

「……」

 

 

 何故急にそんな過去話を引っ張ってくるのだろう。

 俺の黒歴史を穿り返して楽し――んでそうだな、この人なら。

 

 

「入学初日から、だったそうね? まどかくん、円岡燕くんが最初にあなたに助けられた被害者だった、と」

 

 

 そうそう。

 るいとの高校における接点が無くなり、それとは別に中学ではとある事情で直帰だった俺が、高校入学した日に学園近くの商店街の方へ寄り道したんだよな。

 そこで燕がチンピラにカツアゲされそうになっている場面に出くわした。

 殴られ蹴られ、怪我した燕を放ってはおけなかったが、別に一悶着起こそうという気も無かったから、燕だけ早々に病院に連れて行こうとしたんだが、向こうのチンピラ(三人)の沸点があまりにも低かった。

 出くわしただけでメンチを切ってきたし、穏便に燕を連れて行こうとしたら、殴りかかってきた。

 結局救急車を三台呼ぶハメになり、燕はそれから俺を「兄貴」と呼び慕ってくるようになった。

 

 

「その加害者はその商店街の不良グループの一員で、恨みを買ったあなたに対して、後になって仲間を多く引き連れてきた。後日、近くの廃ビルで五十人余りの不良が倒れていたのが発見され、あなたは素知らぬ顔で登校してきてた」

 

「以来あそこはなんか名所認定されてましたね」

 

「その話が知れ渡って、この辺り一帯の不良グループが時には競争、時には結託しながら、あなたの首を取らんという噂が立った。けれど、その噂は各校の問題児達がある日、川を埋め尽くさんばかりの人数で流されているのが発見されて、急速に収縮されていったわ」

 

「そういや新聞沙汰にもなりましたっけ」

 

「生徒を攫おうとする不審者が何人も出てきて、警備員も手を焼いてたこともあった。気付いたら校門の前で全員ボロ雑巾のように打ち捨てられていたけど」

 

「あれは気持ち悪かったなぁ……。なんか金ぴかの奴等がいましたもん」

 

「他にも、ある生徒の家庭が不法な借金取りに追われていれば、逆に借金取りから大金を、それも法には一切触れない方法で毟り取り」

 

「毟り取るとは失礼な。ちゃんと借りただけですよ。返す相手がいなくなっただけで」

 

「ある生徒の営業する店がヤクザに目をつけられていれば、そのヤクザ団体はお店に後日謝礼金を払って街から出払い」

 

「あいつら、人の食事中に営業妨害しやがるし、周りの奴等もビビらすしで最悪でしたね」

 

「銃器を所持したテロリストグループと喫茶店でドンパチ起こして、被害者0、本人も無傷で勝利」

 

「それは俺単独ではないんですが……」

 

「エトセトラエトセトラ……。そうして一年も経つ頃には、我が校とその近隣で知らぬ者はいないと言われる程の有名人。この辺りじゃ、『聖櫻学園の生徒に手を出せば、必ず番長が現れ、裏表関係なく暴虐の嵐に包まれる』なんて噂まで立ってるくらいだわ。それだけやっていて、本人の素行自体は至って良好な生徒なんだから、嘘みたいな話よね」

 

「嘘であって欲しかったのは俺の方ですけどね……」

 

 

 というか、思い返してみてもトラブル起こり過ぎだろ、この学校。

 ほとんどが放っておけないから自分で首突っ込んだ案件とはいえ。

 

 

「まぁそんなわけで、あなたが有名である内は抑止力として働いて、悪人達は沈静化して、うちは至って平和。新聞部もネタが尽きない。万々歳でしょう?」

 

「俺の得が無いんですがそれは」

 

「有名税よ。恨むなら自分のお人好しを恨むことね」

 

 

 さてと。と言って、神楽坂先輩はボイスレコーダーとメモ帳を取り出す。

 ……うん?

 

 

「あの、俺朝の騒ぎに関してはギャラリー達ので全部だって言った筈ですけど……?」

 

「そうね。朝の騒ぎに関しては」

 

 

 先輩はにっこり笑う。

 今度は気迫込みで。

 

 

「あなたに対する質問のリクエストが多くて、次の記事ではそれを組もうかと思ってるの。もちろん、協力してくれるわね?」

 

「……」

 

 

 この後滅茶苦茶取材された。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「はぁ……」

 

 

 結局解放されたのはHR前。俺は自分のクラスへと続く廊下を歩いていた。

 割とプライベートなことまで言わされるし、口を噤もうとしたら重圧が襲い掛かるし、だから来たくなかったんだ。

 しかも、最後に憎めない発言残していくしさ。

 

 

 

『ああそれと、別に気張ることはないわよ。あなたから何かしようとしなくてもどうせ何かは起こるだろうし、あなたがいるだけで私達は何も心配することがないもの』

 

 

 

(ほんっと、ずるいよなー。ああいう人は)

 

 

 あれだけでそれなりのことは笑って許してしまうようになる俺も大概だが。

 まぁ、感謝することが無い訳ではないのだ。

 元々の噂を広めたのも神楽坂先輩の働きが大きいのだが、それが悪しように誤解を生まず、拳を振るおうとそれが正当なものだったと正しく伝わっていたのも、神楽坂先輩の働きが大きいのだから。

 お陰で俺はヒーロー扱いでどこにいっても自称舎弟だらけだが、居場所が無くなってしまうよりは断然マシだった。

 

 

(不審者も激減して、不良グループも活動してるという話は無し。実に平和なもんだ)

 

 

 朝みたいな挑戦者が週を挟まずに来たりするけど、昔に比べたらな。

 クラスの教室の扉を開けた。

 

 

 

「番長! お勤めご苦労様です!」

 

「聞きましたよ! 熊みたいな男を相手に完封勝利したんですってね!」

 

「この前はバスジャックを制圧したって本当ですか!?」

 

「いや、俺は銀行強盗をその場で武力制圧したって聞いたぞ!」

 

「他校の空手部部長さんと激しく突き合ったそうですね!!? 詳しくお聞かせください!!」

 

 

 

「色々言いたいけど、とりあえずお前の眼鏡破壊して良い?」

 

「ノー! ノォー! ノォォー!!」

 

 

 フレームを引っ掴んでやると、掛井(かけい)はバタバタと抵抗しだす。

 全く、この腐女子め。

 妄想は結構だが、俺を題材にするのは不愉快だからやめろと何度言えばわかる。

 

 

「はいはい、じゃれつくのもそこまで。みんなー、席に座ってー! HR始まるわよー!」

 

 

 間に委員長の八束(やつか)が割って入り、破壊活動は中断された。

 そのままパンパン、と手を叩いて、盛り上がってる男子連中に着席を促した。

 いそいそと席に戻っていく男子達。

 委員長の言う事はちゃんと聞くよなお前等……。

 

 

「ほら、新城くんも」

 

「おう。毎度毎度騒がしくて大変だな」

 

「誰が原因だと思ってるの……。聞いたわよ? 今日の朝もなんですってね」

 

「またその話か」

 

「……まぁ、君の事だから悪いことはしてないんでしょうけど、フォローするこっちも大変なんだから」

 

「頭が上がりませぬー」

 

「もういいから、座って座って」

 

「ほいほいっと」

 

 

 かくいう俺も素直に席へと座る。

 と、前の席がこちらを向いてきた。

 

 

「やーやーカズ君。今日も大活躍だったそうだねー?」

 

「よぅトムトムミッチー。お前クロエ先輩のあれはなんだよ」

 

「あー。もう着てきたんだ。いやね? クロエ先輩に合うサイズのコスプレを制作してまして、完成していざ行かん! って時に、クロエ先輩が相談ーってしてきたのだよ」

 

「つまり?」

 

「タイムリーだったってこと」

 

「……はぁ」

 

「で? どうだった?」

 

「どうだったも何も、いつも通りレベルの高いコスプレでしたよ。本人はまるで意図を理解してなかったけどね」

 

「あははー、そっかそっか」

 

「あはは。クロエ先輩なら私も見かけたけど、なんかしょんぼりしてたね」

 

 

 横の席の櫻井(さくらい)が話しかけてくる。

 

 

「そりゃ、勘違いに気付いていそいそと着替えに行ってたからだろ」

 

「クリスマスプレゼントを待つ子供に、サンタはいないと残酷な真実を突きつけるかのような所業……! 鬼! 悪魔! ちひろ!」

 

「元々はテメェの仕業だろうが」

 

 

 いけしゃあしゃあとボケる戸村(とむら)

 

 

「そうそう。今回空手部の部長さんがやってきたんだってね? あーぁ。ポニーテールがピッタリ合ってたら、そっちの実況に来られたかもしれないのにぃ」

 

「来られたところで始まる前と終わった後しか実況出来なかったろうぜ。なんせものの数秒で終わっちまったし」

 

「そ、そこはほら! 新城君が場を盛り上げるために、相手の攻撃を躱し続けるとか!」

 

「はーいそこー。HR始めますよー」

 

 

 担任の久保田(くぼた)先生が号令して、その話は終わった。

 俺、新城一也の一日は、こうして始まる。

 




最初は円岡昴って名前だったんですが、考えてみたら牧瀬昴で名前被るじゃん! ってなって、訂正いたしました。
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