聖櫻番長のガールフレンド(仮)だらけな日常 作:クビキリサイクル
わたし――――――
「ふぁぁぁぁ~~~~…………」
お布団で体を半分だけ起こして、大あくびです。
――――――いけないです。
今日は予定が無いからって、こんなにお寝坊さんしてたらお母さんに怒られちゃいます。
早起きは三分の得と言いますからね。
……あれ? 三金の得だっけ?
あやや。
「うにゅぅ~~…………」
パジャマの袖で目をこしこし。
瞼が閉まっちゃいそうな目と一緒に頭も冴えてきました。
ベッドから降りてカーテンを開けると、とっても明るいお日様が飛び込んできました。
ぽかぽかお天気です。ベランダに小鳥さんもいました。
「小鳥さん、おはようございます」
ぺこりとお辞儀すると、小鳥さんも鳴いてくれます。
えへへ。なんだか今日は、良い日になりそう――――――
「モモー? 起きたー?」
お母さんの声だ。
いけない。この時間だと、お父さんもお母さんももう朝ごはん食べちゃったかも。
ごはんが冷めちゃってたらどうしよう~。
「お店の方に先輩が来てるわよー」
「あや?」
先輩?
……今日は、特に何もない日です。
にゅーろんで練習があるっていうお話は聞いてないけど……。
(……あ! わかりました! きっと先輩達が、サプライズでわたしを驚かせに来たんですね!)
お店の中でかくれんぼして、びっくりするわたしを面白がるつもりなんですね!
ふっふっふ。そうと分かれば怖がることはありません。
この名探偵・桃子。先輩達にいつまでも驚かされる女の子じゃないのです。
わたしは確信を持ったまま、あえてお母さんに聞きます。
「先輩って、誰の事ー?」
「新城先輩だってさー」
「あやっ!?」
すっごくびっくりしました。
――――――思ってた通り、今日は良い日になりそうです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「はぁ……はぁ…………。せ、先輩! おはようございます!」
「お、おう。おはよう」
急いでパジャマからお洋服に着替えて、急いで顔を洗って、急いでお店に来ると、新城先輩はまだそこにいてくれました。
いっぱい走ってきたので疲れちゃったわたしを見て、先輩は戸惑っています。
「先……輩。今日はお酒、買いに来た、のですか……? はぁ……はぁ…………」
「息落ち着かせてから喋れって……。まぁそんなとこ。今日は
わたしの実家は酒屋を経営しています。お家の1階で経営している商店街のお店の一つで、結構老舗のお店なんです。
新城先輩のお父さんはうちのお得意様の一人で、よくお酒をたくさん買ってきてくれます。先輩のお父さんっていうのも納得できる、とっても良いおじさんでした。先輩のおじいさんにはまだ会った事はありませんが、きっと優しいおじいさんだと思います。
それで、うちでは先輩のお父さんが来ることが多いそうなのですが(お店にいることが少ないから、お父さんから聞いた話です。お手伝いするって言ってるのに)、先輩がおつかいで来てくれることもあります。
「すぅー……はぁー……」
深呼吸で息を落ち着かせて、改めて新城先輩に話し掛けました。
「新城先輩。今日はどのお酒をお探しですか? 私、お手伝いしちゃいますよー!」
「いや、もう袋に詰めてる所」
「あややっ!?」
「八海山とか梵とかの諸々で日本酒12本頼まれてたけど、店長さんのお陰で思ったよか早く詰められそーだ」
「あぅぅ……。遅かったですか…………」
せっかく新城先輩が来てくれたのに、もうおつかいは終わってしまうそうでした。
お父さんはカウンターで先輩の言う通り、酒瓶を袋に詰めています。
しょんぼりです……。わたしがもっと早く起きてられたら……。
「あー…………ところで、だけど」
「? どうしました? 先輩」
「朝比奈。お前寝起きで来たか?」
「あやっ!? な、なんで分かっちゃったんですか!?」
「いや、髪」
「髪? ……あややややややや!」
言われて初めて、髪の毛が起きた時のままだったのに気が付きました。
いつものサイドアップテールじゃなくて下ろしたまま。梳かしてもいないのでぼさぼさでした。
……そういえば、お母さんにお店に降りる前に、途中で梳かしていきなさいってブラシを渡されてたような。
「ご、ごめんなさい~! 朝急いでたら、こうなってしまって~!」
「謝られることじゃないけどさ……。急ぐ用事でもあったのか?」
「あや?」
「なんか店長さんが俺がいるーって呼んでたけど、まさかそれでってわけじゃねぇだろうし」
「はい。そうですよ?」
「…………」
「?」
口元を抑えて俯いてしまいました。
…………は! わ、笑ってしまう程にぼさぼさになってしまってますか!?
「は、早くブラシ! ブラシをしないと~!」
「つっても桃子。いつも母さんにしてもらってるから、自分でやったことねぇだろ?」
「……そうなんですか?」
「お、お父さん~!」
……ちょこっと涙声でお父さんに怒りますけど、実際そうでした。
自分だと上手く梳かすことが出来なくて、ぼさぼさが直らないままだったり、直すのにすごく時間がかかっちゃったりします。いつもならお母さんに直してもらうのですが、今日は急いでいたのでそんな暇もありませんでした。
渡されたブラシで梳かそうと頑張りますけど、中々髪はブラシの歯を通してくれません。
「あややぁ~……。か、絡まっちゃいます~……」
「焦んなくても、兄ちゃんは逃げねぇぞ」
「そ、そういう問題じゃなくてぇ~……」
「…………はぁ。朝比奈」
「は、はい!」
「ブラシ貸せ。俺がやってやる」
「…………あやっ!?」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
新城先輩は、ブラッシングがとってもお上手です。
この前にゅーろんのみんなでその腕前を確かめるって言ってやってもらったことがあるのですが、あんまりにも上手くて優しかったので、驚いちゃいました。
なんでも、幼馴染の上条先輩の髪の毛を昔よく弄ってたことがあって、今でもたまに先輩のお母さんのブラッシングをすることがあるそうです(いつもは先輩のお父さんのお仕事だそうです)。みんなでしてもらった時は久しぶりだったって言ってましたけど、全然そう思えないくらいの腕前でした。
…………そういえば、ブラッシングしてもらった後、
「♪」
そして、今は新城先輩のお膝に乗って、ブラッシングをしてもらっていました。
お店のベンチに座って、優しく丁寧にわたしの髪の毛を梳かしてくれます。
お膝に乗るとき「俺が座るよう言ったのは隣なんだけど……」って言ってましたけど、顔を合わせたら「……なんでもない」って梳かし始めてくれました。
ご迷惑だったでしょうか? でも、先輩のお膝はなんだか安心しちゃうので、好きなんです。
「先輩。枝毛とかないですか?」
「ないことはないけど、まぁ寝起きならこんなもんだろ。跳ねてるのも少ない方だし。日頃からよく手入れされてる証拠だ」
「えへへ♪ 先輩に褒められちゃいました」
お手入れしてくれてるお母さんには感謝いっぱいです。
先輩はいきなりブラシじゃなくて、手櫛や頭皮マッサージから最初にしてくれます。ちょっとくすぐったいですけど、終わった後はすっきりした気分になるのです。
「やっぱり、先輩はお上手ですね」
「そうか?」
「はい。わたしがやろうとするといつもぷちぷちって髪の毛が抜けちゃって痛かったりするんですけど、先輩がしてくれるとそういうの全然ないんですよ」
「こういうの、力任せにやるとよくないからなぁ。上手く察知できるようになるまで結構かかったもんだよ」
「そうなんですか~。先輩は、こうしてブラッシングするの、疲れちゃったりしませんか?」
「いんや。こうやって髪弄ってんのも好きな方だし、お前の髪も手触りいいしな。俺としても楽しませてもらってるよ」
「あやや……。なんだか照れちゃいますね」
引っ掛かりそうになったら一度ブラシを外して髪先の方に移す。それがコツだとは聞きましたけど、わたしにはよく分からないです。
先輩は一房一房、一本一本大事そうに梳かしてくれます。
ゆっくりと時間をかけて、傷つけないように優しくしてくれるんです。
それがぽかぽかとあったかくて、気持ちいいのです。
まるでお日様の中、お花畑で眠ってるみたいで……。
なんだか……。
だん、だんと……。
眠た、く……。
……………………。
…………。
……。
「……おーい朝比奈ー?」
「くぅ……」
「朝比奈ー? 朝比奈さーん? 終わりましたよー?」
ぺちぺち。
「すぅ……すぅ……」
「…………寝てるし」
「むにゃむにゃ……」
「はぁ……。
「うにゅぅ~……。しんじょうせんぱぁい……」
「寝言で俺が出てくるのも一緒だし……。ま、わざわざ寝てんのを起こすのもあれだしな。店長さーん。朝比奈ここに寝かしときますよー?」
「ああ、悪ぃな。酒瓶は詰めたから、もう持っていけるぜ」
「よっと……。すみませんね。娘さん、ああいう子だからついつい甘やかしちゃって。こういうのは親のやることでしょうに」
「気にすんなよ。俺としてもお前達を見てると、なんつーんだ? 和やかな気分になるんだよ。まるで本物の兄妹みたいでな」
「あいつが妹だったらもっと甘やかすでしょうね。じゃ、お代はこれで」
「おう。じゃあ釣りはこれだな」
「はーいっと。じゃ、朝比奈。またなー」
「は!!」
「うおぅ!!」
飛び起きました。
い、今寝ちゃってましたか!?
「あやや! ご、ごめんなさい~! せっかく先輩がブラッシングしてくれてたのに、わたしったらつい~!」
「いや、眠たくなるほど気持ち良かったんなら、こっちとしても嬉しいけどさ……」
「あ! せ、先輩! もうお帰りですか!?」
「あ? ああ。そこまで急ぎでもないけど」
「良かったら、わたしにも持たせてください! ブラッシングのお礼です!」
「女の子に荷物持ちなんざさせられません」
「そんなぁ~。わたし、こう見えても力持」
くぅ~~~~
「ちなんで、す、よ……」
「……………………」
わたしのお腹からの音でした。
「……………………」
「…………あややぁ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
あたし――――――
「暇だなぁー……」
あたしの実家は蕎麦屋を経営している。
そんなに大きくはなくて従業員も多くはないお店だけど、商店街のみんなが足繁く通ってくれるのもあってそれなりに繁盛している。
モモとの予定がなかったりラクロス部の部活動がなかったりで暇な時、お店が大変で人手が足りない時にあたしもお手伝いとして働いている。
今日は前者なので、お店の制服を着てテーブルを拭いてる所なんだけど……。
「モモも今日は部活ないって言ってたし、どーせだったらどこかに遊びに行けばよかったかも」
いや、今からでも誘いに行けばいいかな?
でもどこかってどこに?
ファンシーショップでシール探し?
ゲームセンターで太鼓の達人?
それともどっちかの家で遊ぶかな?
うーん。
そう言えば、新城先輩の家ってどうなってるんだろ?
この前モモとその話になったけど、先輩の家庭環境ってなんだかものすごいことになってるって聞いてるんだよね~。
「先輩自身もものすごい人だから、正直納得しちゃうんだけど」
ね、と言ったところで。
お店の入り口が開いた。
ガラガラ、と引き戸特有の音を立てて、お客さんが入ってくる。
「あ、いらっしゃいませ~! ……って」
「ユズちゃん! 来たよ~!」
「おーっす葉月」
「モモ! それに先輩!」
にこにこ笑顔のモモと、重そうな袋を提げた新城先輩だった。
――――――噂をすればなんとやら、ってことかな?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
「――――――まぁというわけで、そろそろ良い時間だったし葉月ん家の蕎麦でも食いに行くかって話になったんだよ」
「あっはっは! なんだかモモらしいですねー」
「あやや。は、恥ずかしいですよぉ~……」
早速二人を席へと案内した。
メニューを開きながら何を頼もうかと悩むモモと、モモのお店で起こったさっきまでのことを話してくれる新城先輩と、それをテーブル脇で立って聞いているあたし。
あたしがお暇している時にそんなことになっていたとは。
我が幼馴染ながら、なんて可愛らしい生き物なのか。
「でも、良かったんですか?」
「ん? 何が?」
「いえ、来てくれるのはあたしとしても嬉しいんですけど。先輩のおじいさんが来るっていうなら、早めに帰らなきゃいけないんじゃないんですか?」
「ああそのことか。心配すんな。祖父様が来るのは夜だし、多少遅刻したって怒る人でもねぇよ」
「へぇ~。なんていうか、良いおじいさんなんですね」
「あれはただの爺馬鹿ってやつだと思うけどな……」
「先輩のおじいさんなら、良い人に決まってますよ~」
「その判断基準はどうなんだ?」
モモはお気楽っぽくそう言うけれど、あたしもそうに違いないと思う。
先輩がおじいさんの事を話す言葉に悪感情は感じられないし。何より、あの新城先輩のおじいさんだから。
「それで、モモはメニュー決まった?」
「あ! そ、そうだったよ~。えーっとえーっと……あやや。き、決められないですぅ~」
「あはは。これもまたモモらしいや。じゃ、あたしが良さそうなのを」
「え? ユズちゃんが決めてくれるの?」
「うーんそうだな~……。モモなら、きつね蕎麦とか?」
「きつね蕎麦……それ、いいかも~! それにするね?」
「はい。きつね蕎麦おひとつー」
「うし。じゃあ俺は」
「先輩は、イモ天蕎麦に、トッピングで海老天ととり天、ですよね?」
「わわっ!」
「……葉月」
「はい?」
「わかってんじゃん」
「ふふーん」
親指を立てて口角を上げる先輩に、あたしも親指を立てて応える。
ちょっとした以心伝心。
なんだか誇らしい。
「すごいすごい! ユズちゃんって、エスパーさん?」
「まぁ、新城先輩はいつもので通じるくらい頼むメニューだからね。あたしも自然と覚えちゃったっていうか」
「他のメニューも良いとは思うんだが、やっぱ天ぷらに還るんだよなー。汁に浸して食うのがいいんだよ」
「それじゃあ、そのお二つで! お父さーん! 注文いいー?」
「出来てるから持ってきなー」
「「はやっ!!」」
先輩と同時ツッコミ。
調理室からオーダーを取る従業員に品物を受け渡しする場所(受け渡し口という)を見ると、確かにそこには二人が頼んだ蕎麦が二つ。
あたしまだ注文取ってきてなかったんだけど! メモしたのが終わった瞬間だったんだけど!
「いやいや! なんでもう出来てるの!?」
「ふっふっふ。柚子。二人の注文する蕎麦を読めるのが、お前だけだと思うなよ?」
「あやや~。エスパーさんは、ユズちゃんだけじゃなかったのですね~」
「しかも作りたてだし! 二人がいつ注文するかまで読んでたの!?」
「ああ。お前の分も作ったから、二人と一緒に食べておいで。肉蕎麦で良かっただろう?」
「娘の分も既に読心済みだとぉ!?」
「あ、それなら生卵乗せて月見にしていい?」
「ちょっと外してた!」
そうして三人分のそばを持って、二人の席へと戻って行った。
「お待たせしましたーってあたしも食べることになりましたけどね」
「ううん。全然待ってないよ~」
「ほんとにだよ……」
それぞれ配っていく。
モモにはきつね蕎麦。
新城先輩にはイモ天(×2)蕎麦(+海老天(×2)+とり天(×2))
そしてあたしは肉蕎麦(月見)。
「……なんか、俺だけ盛り盛りなんだけど」
「そこまではいりませんでしたか?」
「いや、嬉しいけどさ……。客に無断で金額増やすようなことしていいのか?」
「あ、お代は結構だそうです」
「あやっ!?」
「マジで!?」
「いつもあたしがお世話になってるからって、お父さんが」
「うわぁ……至れり尽くせりじゃん……」
「あやや。お得しちゃいました」
「それじゃあ、食べましょうか」
「お、おう」
「は~い。それじゃ」
「「「いただきます」」」
手を合わせて食事の挨拶。
示し合わせたわけでもないけど、三人で割り箸を一緒に割って(モモだけ上手く割れなかった)、一緒に蕎麦を啜った。
うん。美味しい。
「……そういえば」
「ん?」
「新城先輩って、上条先輩と幼馴染だって聞いたんですけど」
「それあいつには言ってやるなよ。自分のミスでバレたこと結構気にしてるから」
「あ、はいわかりました。それで、聞いてみたいことがあったんですよ」
「聞いてみたいこと?」
「お二人って、小さい頃はどんな風だったんですか?」
「あ、それわたしも聞いてみたいです~」
「んー……。まぁいいけど、またどうしてだ?」
どうして、かぁ。
まぁ興味本位というか、なんで上条先輩がそれを一年間隠してたのかっていうのもあるんだけど……。
「強いて言うなら、あたしとモモも幼馴染だから、でしょうか?」
「ふーん」
汁に浸した海老天を食べながら言う先輩。
あたしとモモは、家が隣同士なのもあって、幼稚園の頃から一緒だ。
モモはあたしの後ろについて回っていて、あたしもなんだか危なっかしいモモを放っておけなくて、それがずっと続いてたって感じで。
だから、先輩達はどんな風なのかなって。
「そーだなー……。ガキの頃っていうと、いっつもあいつにゃ叱られてばかりだったな」
「叱られて……。先輩、何をしてたんですか?」
「いんや。俺からは特に何も。ただ……俺ってやつは昔からこうで、当時から同年代の中じゃ喧嘩も強かったから、近所の悪ガキが悪さしてんのをのしてたんだよ」
「あやや……。先輩は、昔からそういう人だったんですね~」
「つっても、負けはせずとも無傷ってわけにはいかなくてな。怪我だらけで帰ってきたのを親はよくやったって褒めてくるんだが、上条のやつはいっつも怒ってきてたんだよ。怪我してるところに絆創膏したり、かと思いきやべしべし叩いたり」
「あはは……。治したいのか悪化させたいのかわかりませんね、それ……」
「でも、それだけ新城先輩のことが心配だったんだと思います。わたしも、先輩が怪我しちゃったら、泣いちゃうかもしれないです……」
「もう心配無用だって。まぁ無茶すんなってことは言われたんだが、何言われたって懲りようがなかったしなー」
けどまぁ、と。海老天の尻尾までぼりぼり食べて、先輩は言う。
「ガキの頃はいちいち怒られるのも嫌だったから。お蔭様で俺自身も怪我しないように立ち回るようにもなったんだよ」
「そうなんですね……」
じゃあ、先輩がどれだけ喧嘩しても怪我をしないようになったのも、元を辿れば上条先輩のお蔭ってことなんだ。
みんなが安心して喧嘩番長である新城先輩を見てられるのも、先輩が無傷で勝つから。
あたし達が安心してられるのも、上条先輩のお蔭ってことになるのかな?
「まぁちょうどノーダメで闘う技術を学んでた頃なんだけどな」
「台無しですよ!」
「あっはー。それとあれだな。クラスで俺等みたいに男女の組み合わせは無かったから、男女間の橋渡しをしてるところはあったと思う」
「あ、そうなんですか? あたし達のクラスは、ほんとに男女の垣根なしって時が多かったんですけどね」
「うんうん。ユズちゃんはクラスの人気者だったもんね」
「へぇ。ま、確かにそんな感じあるよな」
「や、そんなに大層な物でもないですよ」
「わたしとユズちゃんは共通のお友達が多くて、男の子も女の子も一緒のグループだったんですよ~」
ああ、でも。
「わたしのお家に男の子のお友達を連れてきた時はお父さん、すっごく怖い顔をしてたんですけど。新城先輩だと全然そんなことないんですよね~」
「「……………………」」
押し黙るあたしと先輩。
「これはきっと、先輩がとっても優しくて、とっても頼りになる先輩だってことが伝わってるからですね!」
「…………ウン。ソウダナー」
「…………ウン。ソウダネー」
モモは知らない。
新城先輩が、この商店街のこことは全く別のお店で営業妨害をしていた、ヤのつく人達をこの町から追い払ったことから、商店街では英雄扱いされていることを。
多分きっと、商店街ではモモだけが知らない。
その後モモの眩しい笑顔から若干目を逸らしながら食事を終えると同時に、お客さんのラッシュがやってきて、あまりの多さに二人にも手伝ってもらうことになり。
結局二人が帰ったのは、夕日が沈む頃となった。
ただの天使じゃなくてちゃんとキャラを再現したものにしようと細心の注意を払ったのにただの天使になったぞ! どういうこったよ!?