シャドーの日記   作:汐入 那月

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#4 惑星フォエディレス

目を覚まし港へと降りるといきなり学者の様な身なりの奴らに大勢で囲まれた。

 

「どけ、お前らに興味はない」

創刀を引き抜いて、切るぞと言わんばかりに目の前に切先をやり、ロゼッタに案内させる。

彼女は慣れた様子で街を進み、シャドーは自分を奇異と好奇心に塗れた視線を浴びせられて徐々に苛立ちを覚えるが、抑えて仮面の位置を直す。

シャドーがまだかと言おうとするがその問いはロゼッタの声で掻き消される。

 

「着いたぞ、ここが私の父の家だ」

一般的な一軒家の屋上に大層な天体望遠鏡が設置してあった。

それを尻目に案内されるまま家の中に入ると男が目の前で頭を下げてくる。

 

「父のアカーティスだ。娘が迷惑かけてないと良いんだが」

アカーティスは困ったような笑みを浮かべ、被っている帽子を少し上にあげる。

 

「もう知られているようだが、シャドーエッジ......クライシスだ」

 

「おや、改名でもしたのかい?」

名乗る途中でラストネームを改変したのがすぐにバレてしまった。

 

「変装とかではなく、戒めの為にな」

 

「クライシスとは英語で危機と言う意味らしいが、それは何故?」

ロゼッタが聞きたそうにしていたことを父親が先に質問する。

 

「なに、簡易的なメッセージさ。俺は危険だと言う旨の言葉を名前に入れておけば少しくらいは警戒してくれるだろう?お前達だって無駄には死にたくないだろうしな」

 

「そりゃそうさ」

 

「さぁ、そろそろここに来た目的を進めよう。今日中に彼を紹介しておきたかったんだ。これから色々行動を共にする上で少々危険だったり厄介な奴を敵に回すやもしれないから、その時のフォローを頼みたくてね」

ロゼッタが奥で勝手に紅茶を作って飲んでいた。

 

「あ~、それくらいならいいよ。でも金銭面での支援は要らないの?大丈夫?」

 

「そんなの要らんさ。それこそ奪ったりすればいい」

 

「それならいいけど...その前に一つ聞いていいかな、なぜ宇宙の各地で旅を?」

奥に通して椅子に座らせる。

 

「少し長くなるが?」

シャドーは片眉を上げてすぐに出されたコーヒーを啜る。

 

「構わないさ」

シャドーはアカーティスに促されて喋り始める。

 

「...答えを先に言うと、開拓者になる為だ。今現在俺は強くなり過ぎて消滅体と呼ばれる全ての収束点であり、起源点である場所へと連れて行かれる時期が徐々に近くなっている。俺はそれを阻止するために虚無から有を産み出す開拓者へとなれるのか、その根拠の探索と証明。そしておまけで強さとは何なのかと言う問いの答えを探したい。俺は今や第6宇宙では最強となった。しかしそれは本当の強さなのか、ただ物理的な力の枠を少し超えただけに過ぎないかもしれない。だから俺はあらゆる地を巡り自分の納得できる強さの意味を探したい。これが旅の理由だ」

喋りつかれたように溜め息を吐いてからコーヒーに口をつける。

 

「これは個人的な質問なんだけどさ。君はなぜ宇宙で一番優秀な神の学園及び宇宙防衛機関を潰したのかな?君だってあそこの卒業者であり、仕えていたじゃないか」

彼は先ほどの柔らかい目線ではなく学者として好奇心、そして何よりも強い敵意が籠った鋭い目線になっていた。

それがシャドーの精神面に深く突き刺さり、表情を曇らせる。

 

「父さんっ、なにもそんなことを聞かなくても...」

珍しくロゼッタが悲しい顔をして制止に入る。

 

「そうだな...ある種の絶望、とでも言おうか?あれは38億年前の出来事だ。俺は理事長の命令で別の惑星へ自分の持つ小隊を率いて向かったんだ。しかし報告にはなかった無の乱入により作戦は中止、すぐに無の撃退及び討伐へと切り替わった。相当長い時間戦っていたが戦況は停滞していて埒が明かなかった。そこで俺が20分の18の力を解放し戦っていたら、突然周りの動きが鈍くなったんだ。理由もわからないままとりあえず戦っていたら...小隊は俺を残して皆文字通りに爆散した。俺は仲間に絶望したのではなく、力ある者を嘲笑うかのように強過ぎる者にはリスクがあると言う事実を考えた意識体に絶望した。それと共に強い怒りと喪失感、虚無虚無しい謎の感情が一斉に俺の体に纏わりつき、気づいた時には敵対していた無は消滅していた。それから俺はこう思った、全てを虚無に戻せば元通りになるのではないかと...な。これが悲劇の始まりなんだ、ただ今は先ほど言った理由に目的が切り替わっている。もう虚無に戻すなんて愚行はしない」

 

「そうか、よし君を信じよう!これからは存分に羽振りを利かせてくれて構わないよ」

 

「じゃあ早速一つ頼みが。まず今現在分かっているこの宇宙の海図を手配してくれ」

 

「少し待ってて。あれ、今年に改訂版が出されたんだけど...どぉこやったっけなぁ~」

10分程探してやっと見つける。

 

「いやぁごめんごめん。自室の机の上に広げられてたよ」

頭を掻きながら愉快そうに笑っている。

 

「ありがとう。ロゼッタ、フォエディレスは何処だ」

 

「えっと、この無駄にデカい島があるだろう?ここだよ、この島の敷地全て図書館なんだカビ臭いったらありゃしないよ」

ロゼッタはほんとに行くのかと言った嫌悪の視線を向けるがそれは嘲笑で消されてズルズルと引きずられながらも抵抗するがとうとう船の中まで入ってしまった。

 

「さあ行くぞ」

 

「ぼ、ボクは本が嫌いだ!!そう言うのは君の役目でいいじゃないかぁ!」

 

「俺は俺のやりたいことをやるんだ、お前の意見など基本的には適応されないのさ」

喚くロゼッタを内心珍しいなと思いつつも船を出して目的地へと海図を見ながら泳がせる。

比較的近場に位置していたおかげですぐに着いた。

 

「さて...本当なら今日中にこの図書館全ての本に目を通したい所なんだが、期間は十日間だ。その間に全ての本に目を通し完璧に記憶する」

自分の分身を錬創術を使って産み出してそれぞれが別々の本棚に手を付け始める。

ロゼッタは本体のシャドーの後をついて背中をずっと睨んでいるが、それには目もくれず一秒に26冊の感覚で読み進める。

二時間後にとうとうロゼッタがぐずり始める。

 

「おいシャドー、もう限界だ。本を読むだけなんて耐えきれない!ボクが読む本はエッチな本くらいだ!!」

 

「...あまり大きな声でそう言う事を言わないでくれないか。それにエッチな本ならたくさんあるだろ、官能小説が」

 

「ボクには文字で致す趣味はない!」

 

「はぁ...わかったわかった。なら一息つくか」

困ったように笑って読みかけの本を読み切ってから本棚にしまい外に出て喫茶店に入る。

中は一般的な喫茶店だが一つ違うのは仲のいい中年女性達が噂話をする場に使われているのではなく、学者たちの中で熱い議論を交わすために使われていた。

 

「学者ってのはこういう感じで物事に一直線すぎるから嫌いだ。少しくらい遊べばいいのにな」

シャドーはいつものJPSではなく更にキツ目のpeaceと言うタバコを吸う。

 

「君は少し遊びすぎな印象があるけど...今日でその印象も変わったよ。意外と勤勉だった」

 

「知識がないとそれに対する応用と言う物は浮かび上がらん」

一時間ほど休んでからまた3時間ほどロゼッタに構ってやりながら本を読み進める。

そんな生活を期限の十日間を過ごし終わるときにはすべて見終わっていた。

 

「よし、やることやったが...もうすることがない。いい機会だ、シャル。やるぞ二階に行こう」

タバコを咥えてシャルドニュクスと共に上に上がる。

 

「なんていうか何もないわね。真ん中に大きな機械がある以外」

 

「こいつがミソなんだよ」

機械についているコンピューターを弄り、何かを設定すると部屋が広い大草原へと変わった。

 

「こいつは時空間魔法を応用して仮想空間を作り出す機械なんだ。ここでなら俺たちが本気で戦っても問題はない」

仮面を腰のベルトに繋いでコートの襟を直してから創刀を抜く。

シャルドニュクスも続いて創刀を手に取る。

 

「お前からでいいぞ、シャル」

 

「なら行かせてもらうわ」

二つの刀が力強く打ち付けられ火花を散らし、シャドーは相手の刀を回すように外側へ流して腹に蹴りを入れる。

 

「あら、随分と威力が落ちてるわね。鈍ってるんじゃないかしら」

蹴りは左手で受け止められていた。

 

「それもあるがこの世界では力の使い方が少し変わってくるみたいだな。これからは鍛練を怠ったらいけないな」

リズムに乗せた軽い連撃を繰り出すが、それらは真反対の攻撃を繰り出すシャルドニュクスによって防がれる。

 

「気持ちのいいリズムね。センスは鈍ってないのかしら」

 

「さぁ?それはどうなんだろうな。それはともかく、俺もまた戦闘方法を確立しないとな」

 

「昔とは体の使い方が違うものね。めんどくさいわ」

 

「あ、そうそう。一旦第六宇宙の地球に戻ろうと思う」

肩慣らし程度の攻防を続ける。

 

「なんか忘れ物?」

 

「いや、墓参りだ」

 

「そう。じゃあ、決着付けないとね」

シャルドニュクスは神力を、シャドーは神力と妖力、そして無の力を高めて突進して脇腹に膝蹴りを繰り出す。

しかしそれは瞬間移動によってかわされ、背中に鈍痛を感じる。その激痛は吐血まで引き起こし体に負荷がかかる。

 

「もう少し力を出してもよさそうだな」

吸い口が緑のタバコを吸いゆっくりシャルドニュクスに近づく。

彼女は素早くシャドーの後ろに移動して鋭い回し蹴りが右腕の付け根にあたり、棘下筋が千切れる感触が響く。

 

「やっと調子出てきたな」

素早い再生で筋繊維を繋ぎ、創刀を鞘に納めて腰をかがめ、左腕を腰にやり右手を地につけてシャルドニュクスの胸部をまっすぐ見つめる。

 

「いきなり胸を凝視するのはどういうことなのかしら」

シャルドニュクスは頬を薄いピンクに染めて少し胸を隠す。

40億年ほど付き合ってきたが、こいつの胸の成長は微妙に進行していたようで、徐々に大きくなる胸をイラスト付きで俺の秘密の日記に細かく記してある。

 

「いや、お前も成長したよなって思ってさ」

いつのまにかシャルドニュクスの真後ろに回り込んで胸を揉んでいた。

そして彼女が肘打ちを繰り出すよりも早く羽交い絞めにするような形で肩を掴んでドラゴンスープレックスを決め、それでシャルドニュクスの意識は落ちる。

 

「よーし、俺の勝ちだな」

灰皿に吸殻を入れて普通のタバコに火をつけて部屋から出る。

シャワーを浴びて着替えて部屋に戻るとシャルがソファでうなだれていた。

 

「私って、あんなに弱かったかしら...」

 

「俺が強いだけだろ、気にしないほうがいい」

タバコの吸い口が仮面をすり抜ける。

 

「それ、吸えてるの?」

 

「あぁ。一々外すのもめんどくさいから、口元だけ見た目を残して存在を消した」

煙も仮面に遮られることなく出ている。

 

「そう言うくだらないことに能力を使うとこも変わってないのね」

 

「まぁ...そうだな」

前より少し伸びた髪を弄りながら操縦室へ向かう。

 

「ん、君か。トレーニングの成果はどうだい?」

 

「ダメだな、力の使い方が第六宇宙の理論と重なり合わないみたいだ」

 

「詳しく聞いてもいいかな」

ロゼッタの好みに触れたようだ。

めんどくさいが自分の考えをまとめるためにも話した方がいいかもしれない。

 

「そうだな、まず固有の力は全てに対応はしないらしい。鍵穴のように一つ一つ形が異なり、一々その型に合わせるように力を変えなければならないようだ。これまでの民を見た所、一つの事に没頭しているようだしそれがこの世界の理論を形作っているのだろう。故にこれまでより繊細な力の操作が必要になってくる。俺は今まで敵なしだったせいで色々乱暴になってるからいい鍛え直しの場だと思ってやってくつもりだ」

冷蔵庫からコーラを取って飲んでいると意外そうにロゼッタがシャドーを見る。

 

「ジュースとか飲むんだな」

 

「失礼な奴だ。俺だって嗜好品くらい嗜むぞクソが」

コーラを勢いよく飲みながら中指を立てる。

俺がジュースの類を飲むのがそんなに珍しい事なのだろうか。

 

「いや、君は水やお茶とかコーヒーくらいしか飲まないと思ってたよ。あ、ボクにもモンスター取ってよ」

頼まれた物を机に置いてからソファに腰かける。

 

「これから第六宇宙の地球へと向かう。目的は墓参りだ、今まで殺した奴ら全ての墓がある墓地があってだな」

 

「ふむ、わかったよ」

 

「俺が船の上で来る時と同じことをすればいいのか?」

 

「いや、帰るときは港星(みなとぼし)からゲートを潜るんだ。近くにあるから行こう」

 

「分かった」

港星ポルツァスから第六宇宙のゲートを潜ると惑星ブローケルツの近場に出された。

 

「さて、墓星エクスピアに行こう」

操縦はレミーに任せ、喪服へと着替え、長くて荒く尖っていた髪を梳かして綺麗なストレートロングになっていて、さらに眼鏡もかけていた。

 

「はぁ...罪悪感に押しつぶされそうだ。長い時を生きてるがこの瞬間が一番死にたいと切に願う」

片手で顔を覆って深い溜め息を吐く。

 

「なら行かなきゃいいのに」

 

「人間と言う物は故人への尊敬と供養を怠らないんだ」

 

「罪悪感に浸るのもいいですが、着きましたよ」

レミーがモニターから人間の型へ意識を移動させる。

 

「分かった。行こうか」

シャルドニュクスも実体化して喪服を着ていた。

ついてから幻想郷の者を始め1人ずつ花と線香を添え、手を合わせ目を瞑っていた。

関わりの深い物には時間もかかっていた。

 

 

「...よし、この世界も残している者は理事長だけだな。この前は慈悲をかけてしまったせいで生きているが、次は必ず殺す。さぁ、地球へ行こう」

船の上に立ち、数時間寝ているといつの間にか地球についていてロゼッタの蹴りで目が覚める。

 

「いった!!いったぁぁ...」

ロゼッタが足を抑えてうずくまる。

 

「...蹴る以外に起こす方法を思いつかなかったのかよ。全く鍛えられてないお前と88億年間常に戦闘ばかりだった俺、体の発達具合は歴然だろ?」

ロゼッタを肩に乗せて立ち上がる。

 

「うわっ。...とはいってもこの船の中に武器らしい武器はないじゃないか...」

うわってなんだ、うわって。

 

「あー、それもそうだな。お前、解剖学でも覚えておけ。体のいじくり方が分かるから、もしかしたら俺にそれを使って起こせるかもしれない」

 

「あー、解剖学か...ボク医学嫌いなんだよね。学校では歴史専攻だったし」

 

「なに、どこにどう手を付けて、どう力を入れるかを学ぶだけだ。例えば性交渉の際、乳首を思いきり抓られたら痛いが、加減をしながら抓られたら気持ちいいとかそういう感じだ」

 

「あー、なるほど!分かった、任せてくれ」

タバコを咥えて地球の地面を久しぶりに踏みしめる。

 

「最後に寄ったときよりも自然は増えたな。太古の地球に戻ったような感じだ」

 

「うわぁ...これ、本当に君一人でやったのかい?」

ロゼッタは完全に引いている、それほどひどい荒れ様だった。

生き残っている生物は少しの哺乳類と猛禽類、昆虫、魚類辺りだろう。

 

「まぁ...そうだな」

 

「今、ボクは君に対して心の底からの恐怖を感じているよ」

そう言ってこちらへ中指を立ててくる。

 

「そう褒めないでくれ。この頃の俺はまだまださ、今なら一撃で全て壊せる」

 

「この化け物が」

その罵倒を気にせず適当に歩いていると相も変わらずどこからどう来たのかわからないがまた無が一匹やってくる。

 

「あー...任せたよ」

ロゼッタは少し怯えてシャドーの後ろに隠れる。

 

「ずっとそうしてろ、今のお前は可愛いぞ」

二本目に火をつけてから左腕を無の頭部に振り下ろし、左足に無をまとわせて顎辺りを蹴り上げる。

それにより無は体を大きくのけ反らせるが、すぐに体勢を整え素早いラッシュを繰り出す。

 

「しゃ、シャドー?大丈夫か?」

 

「両腕無にしたいくらいだ」

冗談を言いながらも左腕だけでそれらを捌いていく。

 

「どうするんです?このまま守り続ける訳にもいかないですよ」

レミーもがっつりシャドーの影に隠れている。

 

「なんだよ、お前だってめっちゃビビってるじゃないか。大丈夫、秘策もあるさ。ちょっと俺の肩に乗っててくれ」

左手に溜めた無を自分の心臓へと打ち込み、その次の鼓動の瞬間、強い無の衝撃波が地面を伝って無を消滅させる。

 

「ほら、おわったぞ」

 

「あんな強い技持ってるなら最初から出し惜しみなんかしないでさっさと倒してくれないかな...」

ロゼッタは不機嫌にシャドーを睨む。

そんなこと言ったって、俺だってたまには数少ない戦闘を楽しみたいのだ。

わざわざ遊びをつまらなくするやつがこの世に居る訳がない。

 

「お断りだ、俺の数少ない楽しみを奪う気か」

 

「逆にボクたちの命を奪う気か、といってやろう」

私だってまだ死にたくないんだ、エッチな本だってまだまだコレクションが増え続けているというのに。

それに...こいつと一緒にいる時間が減ったらボクは退屈で死んでしまうよ...。

 

「お前達を殺させる気はないさ。流石にお前たちに危害が及びそうになったら俺は俺の持てる力の半分くらいを出して守り抜いてみせるつもりだ」

多少優し目な笑顔でロゼッタとレミーの頭をくしゃくしゃと撫でてやる。

ロゼッタは少し嫌そうなも全く逃げようとせず、レミーに関してはもはや甘えた猫のように撫でる手に頭を押し付けてくる。

いつもは感情が希薄なくせに甘えたいときは物凄く甘えてくるものだから多少扱いに困ってしまう。

 

「でも全力は出さないんだな」

 

「だって、全力出すと俺、無かったことにされちゃうからな」

苦笑いを浮かべ、バツが悪そうに頬を掻く。

俺もこいつらを全力で守ってやりたいのは山々だがなぁ...。

 

「あー、前に言ってた消滅体の事かい?」

シャドーに肩車をさせていつ持ってきたのか、オレンジジュースを飲んでいる。

絶対俺にこぼすなよ。

 

「そうだ。いくら俺でも消滅体には喧嘩を売れんのだ、命あっての妖生、命あっての神生なんだから」

 

「でも、ある意味喧嘩売ろうとしてるじゃん」

こいつ、せっかく整えた俺の髪で遊んでくしゃくしゃにしてやがる。

ロゼッタを降ろして、櫛で髪を整える。

 

「ほら、さっさと行くぞ」

大型のバイクを魔法陣から取り出して乗り込む。

 

「お前らはタンデムに掴まってろ」

 

「こんなの持ってたのか」

タンデムを握りしめて声を張り上げる。

 

「あぁ、俺が中学生の頃から使ってるんだ。パーツの交換がめんどくさいけどな」

更にアクセルを捻る。

しばらくバイクの疾走感に浸っているとすぐに墓地までついた。

 

「一年ぶりだな。さて、お前達も掃除を手伝ってくれよ」

近くに作った井戸から水を汲んで、三人と数百のシャドーの分身で万を超える墓石を洗い、花と線香を供える。

それからシャドーが一つずつの墓石に手を合わせる。

 

「...後は学園の仲間達か」

自分がかつて仕切っていた小隊の墓前で手を合わせる。

 

「よし、これでお終いだ。明日は外の魔術都市がある星を目当てに幾つか惑星を渡るつもりだ、さっさと寝ろ」

ささっと船に戻って元の服に着替える。

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