シャドーの日記   作:汐入 那月

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#5 待ち受ける番人

再び外の宇宙に戻り、フォエディレスで見た古代都市カーディナルがある惑星マリニュースクェを次の目的地とする。

地図と本の情報によると三ツ又の槍を越え、深淵をくぐり、現れる塔の頂きよりいずる。と記されている。

現在は港星ポルツァスにある情報が集まりやすい酒場に来ている。

 

「さーて、ここからは情報収集だな」

シャドーはまっさきにカウンターのバーテンダーの女性に話しかける。

 

「惑星マリニュースクェと言う所へ行くための情報を探している。三ツ又の槍に関して知ってそうな奴はいるか?」

ウイスキーをロックで一つとスクリュードライバーを一つ頼みカウンター席に腰かける。

 

「ん~、いるにはいるけど...これ、高いわよ?」

金髪を一結びにしている長身のバーテンダーはクスリと笑う。

 

「言い値で買おうじゃないか」

こんなことを言うなんて生まれてきて初めてだ、少しだけテンションが上がってしまう。

しかし一人目で知ってる奴が居るのはすごくタイミングがいい、このままとんとん拍子で進んでくれればいいんだが。

 

「じゃあ...1千万ロスト払ってもらおうかな!」

以外と控えめに出たな、これくらいなら金庫にあるだろう。

自分の財産全てをぶちこんでいる金庫に繋がる魔方陣を開いて指定額取り出して空になったグラスと一緒に少し前に移動させる。

 

「じゃあ、教えてもらおうか」

バーテンダーは札束の山から一つ取り出して手をプルプルさせて目尻に涙を浮かべる。

数分経ってやっと泣き止んだと思ったらシャドーの手を両手で握りしめる。

 

「教える!教えるけど、その前にここのオーナーにならない!?」

なんだよこいつ...いきなりなんて馬鹿な事言うんだ。

 

「済まない、俺は常にあらゆるところを転々としているからこの店の経営なんてとてもできない」

 

「関係ないわ!!こんな大金持ってるってことは相当の手練れなのよね!?それならここのオーナーやってけるから!!」

随分としつこいな。

 

「...いったん店を閉めてもらえないか、とりあえず訳だけ聞いてやるから」

バーテンダーは強くうなずき大きな声で今日は閉店すると伝えた。

思い切りのいい奴だな...。

バーテンダーから奥の部屋に通されコーヒーを出される。

 

「さて...じゃあまず、なぜ俺なら経営できるのか聞こうか」

魔法陣の中から冷えた脂肪率の高い牛乳を取り出してたっぷりとコーヒーに入れる。

 

「その、うちはオーナーが戦闘関係の依頼のみ受けられるシステムなのね。それで、すごい馬鹿みたいな難易度の依頼が来ちゃって...」

そこでバーテンダーは顔を曇らせる。

恐らく死んだのだろう。

 

「戦闘関係の依頼というのはどんな簡単な奴でも受けるのか?」

 

「他のお店はそうしてる所もあるけど、ここはここに来てる人達でも太刀打ちできそうにない依頼だけをオーナーが受けるようになってるのよ」

 

「じゃあオーナーは意外と変わることが多いのか?」

 

「うーん、オーナーが変わるにはそのオーナーとの決闘によって決まるのよ。でも見た所相当強そうだし...」

 

「...なぜ?」

コーヒーを一旦おいてロゼッタの方を見ると自分でこっそり酒を飲んでいた。

あとで代金を置いておくか...。

 

「大きくて引き締まった体に死地に行くとは思えないほど馬鹿みたいな軽装...極めつけはその腰に下げてある不思議な刀よ!!もう絶対に強い!!」

所々褒められていないきがするが...まぁいいだろう。

 

「なら、わかった。まず俺の求めた情報を教えてくれ。それが無事終わったらオーナーになってやる」

そう言うとバーテンダーは表情を明るくしてガッツポーズをする。

 

「じゃあ三ツ又の槍の場所教えてあげるわね」

 

「おいまて、三ツ又の槍の場所を知ってる奴の場所を教えるんじゃなかったのか?」

コーヒーを飲み干してタバコに火をつける。

 

「だれも私が知らないなんて言ってないわよ。この星で一番の情報屋を舐めちゃいけないわ。ほら、地図出して」

黙って地図を机の上に広げると迷いなく一転に指を置く。

 

「この海域の一番奥深くに行ってみて。絶対にあるはずよ」

 

「ありがとう。あー、名前は?」

 

「私はタレア・ウェールス。あなたは?」

 

「俺はシャドーエッジ・クライシスだ。聞き覚えがあるんじゃないか?」

タレアは名前を聞いた瞬間に体をピクリと動かし震え始める。

 

「も、もしかして!!第六宇宙1の大罪人のシャドーさん!?」

 

「おぉ、俺って有名人だな」

笑って頭を掻く。

 

「この宇宙じゃ辺鄙な星ですらあなたの名前は通用するわよ...あなたが活躍をするごとにこっちでは号外が出て大きく騒がれたんだから!学園を潰した時なんてもうほんと大変だったんだから...でも私、すごい人オーナーにしちゃった!!」

 

「これならご期待に応えられたかな?」

タバコを灰皿に押し付けてタレアに笑いかける。

 

「もう...もう...抱いて!!」

服を脱ぎながら立ち上がるタレアを無理やり押さえつけて服を着せ直す。

 

「やめろ、女性はもっとお淑やかにいかなきゃ。それに、俺なんかよりいい奴はたくさんいるからな。そうだ、言いふらすのはいいんだが、顔は見せちゃいけないぞ。どんな顔だったとかはいってもいいけどな」

 

「うん、わかった!!あ、今日は泊まっていってよ!ご馳走用意するわ、でもその前にこっち来て!!」

 

「全くもうお披露目か、まいったな。ロゼッタ、お前も来るか?」

 

「んーん、ボクはちょっと動けそうにない、楽しんできなよ、オーナー」

酔っていても茶化すか。

苦笑いを浮かべてから面をつけて外に出ると、タレアが色んな奴をもう集めていた。

 

「おぉ...この人がシャドーか...」

 

「よろしくな、と言ってもあまりここに来ることも少ないと思うんだがね」

30分くらい見世物にされていたら一人の少年が人込みをかき分けて目の前にやってきた。

 

「おいお前!その店のオーナーは俺がやるんだ、降りろ」

 

「タレア、こいつは?」

 

「えーっと...この星で一番強い子です。大体の高難易度な依頼はこの子がこなしています」

シャドーは腕組みをして少し考える。

 

「よし分かった。うちの店はな、オーナーとなりたい奴が決闘をしてオーナーの移り変わりを決めるらしい」

それを言っただけで言いたいことが分かったのか少年は背中から大きな剣を抜く。

 

「ちなみに俺が腰から提げているこの刀。普通の物は当たることなく消えてしまう。だから普通の武器でやらしてもらう。第六宇宙最強と言う事でハンデとしてやろう。ちなみに俺は片腕が無いように見えて実はある。無の腕だがな」

一部の人間がざわめく。

この宇宙でも知っている奴は知っているんだろう。

シャドーは魔法陣の中から幅の広いクレイモアを取り出す。

薄ら笑いを浮かべシャドーが少年に詰め寄っていくにつれ少年は静かに息を整えていく。

観客の一人がペンを落とした瞬間に二人が剣を重ねる。

シャドーは後ろに下がりベルトに挟んでいたナイフを投げつける。

少年はその中の2つを掴み残りの3つを隙間を縫うように避けて大剣を地面に刺し腰からブロードソードを抜いて突きをしてくる。

それを膝で受け止めて顔を掴み地面に叩きつけてから高く跳びかかと落としを繰り出す。

 

「今まで馬鹿みたいに強い奴と何度も戦ってきたんだ、ぽっと出のお前なんかにオーナーをまかせて堪るか!」

少年は腰をねじり、足を動かすことでかかと落としを受け流してシャドーの腹にブロードソードを突き刺そうとするが表面に少し刺さり剣は半分に折れる。

 

「今のを受け流して腹に一撃決めたのは褒めるが傷は浅いようだな。ざんねん」

刺さったままの剣の先を抜き、少年の眼球の前に刃先を向ける。

 

「右目を失うか、降参するか選べ」

少年は悔しそうに剣を鞘に納めて両手を上にあげる。

 

「僕の負けだ。オーナーは諦める」

少年が負けを認めた瞬間に大きい歓声が上がる。

 

「じゃあ、俺が不在の間自分が余裕をもってできると思った仕事はお前に任せよう。消して無理はするなよ、死なれても寝ざめが悪いからな」

 

「...わかった。でも絶対オーナーになってやるからな!!」

 

「おうおう、それまでオーナーは守ってやるから安心しやがれ。タレア、戻るぞ」

その日は酒場の2階にある部屋で一泊し、次の日になり出発の準備をする。

酒場で休憩しているとタレアが仕事着に着替えて降りてくるとガラケーみたいなものを渡してくる。

 

「この宇宙のどこにいてもつながるわ。依頼の連絡用に使うから常に持っておいてね?」

 

「わかった。じゃあ行ってくる」

軽く手を振り船に乗り込み地図に付けられた印の所まで最高速で向かう。

 

「なぁ、シャドー。ゲームだとイベントがある場所にたどり着く前に結構強い番人みたいなのが居るんだがこれってそういう感じなのだろうか」

ロゼッタはキラキラさせた無邪気な瞳をシャドーにぶつける。

 

「どうだろうな、そういうのがいるかもしれないし、いないかもしれない。神のみぞ知るってとこかな」

曖昧にしてはぐらかしてみるがロゼッタは全く納得してくれてないようだ。すごい睨んでくる。

 

「シャドーだって一応神様じゃないか」

 

「滅多なことを言うもんじゃない。俺は吸血鬼で半無の謎生物だから神じゃないぞ」

タバコを灰皿に押し付けてロゼッタを撫でる。

吸殻を捨てようと立ち上がると船体が大きく揺れ、みしみしと金属がきしむ音が響く。

 

「よかったなロゼッタ、番人はいたみたいだ。レミー、船全体をモニターにして外の状況を360°すべてみえるようにしろ」

仮面をつけてやれやれと大剣を担ぐ。

 

「できましたよ。どうします?」

どうやらクソでっかい蛸の怪物が船を触手で締め付けているようだ。

まだ慣れてないこの宇宙での戦闘の練習辺りにはなるかも知れないと思い、ハッチから外に出て素早く触手の一本を斬る。

蛸の怪物はシャドーの存在に気づき、水の中と言う事を忘れるほど素早い触手の突きを腹にねじ込む。

触手の筋肉が締まり細く鋭くなった突きはシャドーの鍛え上げられた腹筋を突き破り見事貫通する。

 

「おぉ...最初の宇宙と言う事もあってか結構生物も強い個体が多いみたいだな」

再生を素早く終わらせて大剣を握り直すと船から通信が入る。

 

「どうした?」

蛸から突きの連撃が来るが、シャドーは硬化させた翼で防御する。

 

『そいつとの戦闘を夜まで持ち込むな!レミーに頼んで身体情報を少し解析した結果そいつは夜行性だと言う事が分かった。つまりそいつは今本調子じゃない、気をつけろよ!!』

ロゼッタが弱点を見つけるつもりで解析してくれたのだろう。

 

「分かった」

つまり相手は海中でサーマル機能が使える蛸、という訳だ。

シャドーは暗い場所に移動して全身を黒い霧で覆い隠す。

蛸はシャドーを見失ったらしく周りを見ながら少しずつ前進する。

そしてシャドーを通り過ぎた所で勢いよく飛び出し触手を全て切り落とし、眉間を全力の拳で貫く。

蛸は一瞬体が大きく跳ねてそのまま息絶える。

シャドー船に戻って大きなため息をつきながらソファに腰かける。

 

「はぁ...あー、疲れたぁ」

仮面を外してタバコに火をつける。

 

「あ、そういえばタバコあと5箱しかなかったわよ?」

シャルがポテチ片手にご機嫌で部屋から出てくる。

 

「え、まじで。じゃあ今回の目的さっさと終わらせないと...休んでる場合じゃなかった」

仮面を付け直して操縦席にすわり深淵と呼ばれるものを探す。

数百キロ先にとても底が見えないほど深い海溝を見つける。

 

「これが深淵ってやつか。その名の通り結構深そうだな...レミー、ライト付けてレーダーを作動させろ」

数分海溝を進むとレーダーに生体反応が現れ、それが急激に接近している。

 

「こんなとこでスピードを出したくはないんだがなぁ...」

ありったけの妖力を船のエンジンに送り、加速させると真後ろで岩が削れる轟音が海溝に響く。

 

「なるほど。この海溝の壁にたまにある大きな洞窟はすべてさっきの奴が作ったってわけね」

操縦席の背もたれに乗り、こんどはじゃがりこを食べている。

 

「あぁ、そう言う事か。じゃあこの穴に気をつけて進めばいいんだな」

妖力と一緒に神力を流すとさらに加速が強まる。

しかし、そろそろ抜けると言う所で謎の巨大生物に行く手を阻まれる。

 

「...まずったな」

露骨に嫌そうな顔をして立ち上がる。

 

「私も行く?」

シャルが背もたれから降りようとするが、それを制して棚から真っ白な小刀を取って外に出る。

船からシャドーが出てきた瞬間巨大生物は明るい所に移動して姿を露わにする。

 

「巨大なウツボみたいな感じだな...あれか、もしかして生物に関しては第六宇宙の巨大版みたいな感じのが多いのか」

翼で水をかき分けて素早く進み真正面から小刀で切れ込みを入れるとそこは透明になる。

 

「お、ちゃんとできてたな。これなら楽に仕留めることが出来そうだ」

左手で持ち、刃先を尻尾に向け力を籠めると刀身が伸び尾に尻尾に刺さり、力を抜くとどんどん縮んでいき刺さった場所に足が着く。

フックショットのような扱い方ができるみたいだ。

尻尾へ縦に一閃入れるとバターを斬るより楽に刃が通る。

しかし体の大部分がなくなったのに関わらず重い突進がシャドーの体に当たり岩に埋まる。

 

「おぉ...こりゃいてぇな。しかもこいつ再生能力も結構なもんだ」

斬られた肉は分解され直ぐにウツボの体に戻り、傷らしい傷は無くなってしまう。

 

「やっぱこざかしいことやるのは性に合わないな」

小刀を鞘に戻して魔水に含まれる万力の中から神力、妖力のみを吸い取り肉体強化に回す。

ウツボはけたたましい咆哮を放ってからさっきより強い突進を繰り出してくるが、それをただの拳撃で跳ね返してえらを削る。

そして腹部を殴り続け心臓を露呈させて静脈に無を流し込むことでとどめを刺す。

船の操縦席に座り一息つく。

 

「お疲れ様、一旦休んだら?」

シャルが珍しく労いの言葉をかけてくるが、生憎今はそんな悠長なことはいっていられない。

なぜならタバコの残弾が残り少ないからだ。

 

「悪いな、そんな場合じゃない。さっさと片付けて終わらせなければタバコがなくなる」

 

「そ、そっか。頑張って」

今更嘘だとは言いずらい雰囲気になってしまったと、心の中で反省する。

しかし珍しく物事に集中して打ち込んでいるのだ、素直に喜びたいと思う。

 

「シャドーさん。50海里先に本の内容にあった塔と思わしき陸地が見えます」

 

「分かった。じゃああと80万キロあるのか...レミー、自動操縦頼んだ」

シャドーは仮面をソファに投げて自室のベッドに倒れ込む。

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