シャドーの日記   作:汐入 那月

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#6 古の塔と守り人

目が覚めて髪をかき上げながら操縦席に座るとレミーがあくびをして眠そうにしていた。

こっそりエナジードリンクをとり眠そうな顔をしているであろうレミーの頬に缶をつける。

 

「わっ、びっくりした。起きたんですねシャドーさん」

 

「あぁ、疲れてるみたいだしちょっと寝て来い。ゆっくり行くから」

タバコを咥えて箱を握りつぶしてゴミ箱に投げる。

残り4箱...ぎりぎり持つかもしれない。

 

「じゃあ...おやすみなさい」

ヤニを補給しながらゆったり運転し、皆が起きる頃には塔も目の前だった。

塔の内部に侵入し徐々に浮上していくと陸地が見える。

船を止め船体から塔の中へ跳び下りて大剣を担いで塔の中心にある螺旋階段を上る。

 

「これが罠の可能性もあるからなぁ、気は抜けないみたいだな」

結局一々上るのがめんどくさくなってレミーとロゼッタを担ぎ螺旋階段を高速飛行で抜ける。

塔の頂上には龍の腐敗した死体と骨があちらこちらで見られる。

鞍はないから移動の際に龍を用いていたわけではないだろうし...一体なぜこんなに龍の死体が...

一旦落ち着くためにタバコを吸おうとするとタバコの先が一瞬にして切り落とされる。

 

「ここはアンティークィトス・トゥリス。宇宙海と宇宙大陸を分かつ為の場所として古代よりここに在り続けています。さて、第六宇宙の吸血鬼兼半無さんと惑星フォエディレス出身の第六宇宙調査員さんはここへどんな内容でいらしたのでしょうか」

金属で作られたワイヤーを腰に収め、微笑を浮かべた執事服の青年。

話によると俺たちが今までいた場所は宇宙海と呼ばれているらしい。

 

「古代都市カーディナルへ行きたいんだ。とある書物でここにあると書いてあったんだが...」

 

「あぁ、その街なら1万年ほど前に宇宙大陸に無断侵入したので、消滅させました」

もう滅んでしまっていたらしい。

こまった、これではほかに行くことがない。

 

「じゃあ...宇宙大陸ってとこに行きたい」

知らない所があるのなら、やはりそこに行きたいと思うのが性と言う物だろう。

 

「ふむ...私的にはこのまま帰って頂けると大変楽で助かるのですが、それは無理でしょう?」

 

「愚問だな。」

 

「分かりました。宇宙大陸へと行く許可を得るにはこの塔の管理人である私を倒すことが条件となります。お仲間の方は自動的に結界の張られた空間へと転移し、こちらの様子を見ることが可能です。そしてパートナーを一人選べるのですが、どういたしますか?」

 

「いや結構。それよりも、もしかしてだがここは消滅体の影響を受けなかったりするのか?」

ここに来てからずっと疑問を持っていた。

第六宇宙の理論である意識体や消滅体などが、この宇宙でも適応されるのかに疑問を持っていた。

 

「いえ、この宇宙は消滅体の影響を一切受けませんので、好きなだけ実力を出して頂いて構いません。しかし力に耐えきれず仲間が死ぬことは変わりないのでお気をつけくださいね?」

口を手で隠し少し笑う。

 

「なら人生で初めての解放、いくか...」

妖帝の封...解!!

体中が焼けるように熱く、死ぬのではないかと錯覚するほどの激痛が全身を駆け巡る。

しかし、異常なまでに体が軽く感じ、世界が全てスローモーションに感じられる。

今までの戦いでここでの一番楽で決定打となる攻撃はただ一つと確信した。

一つ一つの攻撃にもこの世界の理論は適応される。

ならば一撃に全力をかけた何の変哲もない拳から繰り出される打撃のみを繰り出すのが一番の正攻法だと、俺は思う。

 

「それが貴方の全力なのですか?」

執事服の男はふーむ、と顎を撫でて少し不満そうにワイヤーを取り出す。

 

「ならば、まずは小手調べと言う所でしょうか」

ワイヤー無限に伸びこの塔一帯に緩く張り巡らされる、というよりは舞っている。

しかし緩やかな光の反射に見えるおかげで楽に安全なルートを導き出せた。

器用に体を動かしてワイヤーの巣をすり抜け、執事服の男の頬に拳を叩き込む。

 

「ここまでは想定通りですね...では」

吹き飛ばされながらも指を動かして辺りのワイヤーを操り、シャドーの体をバラバラにしようとする。

しかしワイヤーが服に当たる瞬間黒い霧へと変化しそれをかわす。

 

「シャル。お前が味わったことのない相当な力を捻じ込むから気張れよ」

鞘から抜いて地面に突き刺して語りかける。

 

「ふん、あの頃みたいに辛くなったりしないから安心して本気になんなさい。全力で応えてあげるわ」

恐らく今の状態の本気を捻じ込んだりしたら相当ダメージを負うだろうが、それで手加減などしたら昔のように喧嘩になってしまう。

こいつがやってくれると言っているのだ。それに応じてやるのが俺の役目だと、そう思う。

 

「喰らいやがれ!」

低く構えて地面を刃で削りながら創刀を振り上げる。

それによって起きた石材混じりの衝撃波はまっすぐ飛んでいき、執事服の男はワイヤーを幾重にも重ね防御に徹する。

 

「なるほど...貴方の規格外の攻撃と、それをモロに伝える練度の高い創神器。それらが強い信頼で結びつき、驚異的なコンビネーションで威力を底上げしているのですね。確かにあなた方なら第六宇宙最強を誇るゲレトレイドレス学園を壊滅させるのも訳ないでしょう。ですがそれは第六宇宙での力です、ずっとこの宇宙で宇宙海と宇宙大陸の均衡を保ってきた我々を倒せるはずがありません」

どうやら彼は相当自分の力に自信を持っているらしい。

そして俺は現在脱皮直後の昆虫その物だ、慣れない力を全力で扱うのは効率も悪い。

しかしそれも時間の問題だ、後数分もすれば慣れが出てくる。

その証拠にさっきから攻撃の精度が上がってきている。

これならさっきよりも強く殴れそうだが、あちらも徐々に力が上がっているのを感じているのだろう。

ワイヤーに合わせ、自身の回避も加えてきている。

 

「おや、汗をかいているようですね?私はまだ特殊な技すらも使っておりませんよ?」

彼はまだ余裕であるらしく、微笑を浮かべワイヤーでの攻撃を続けている。

しかし俺だってまだスタミナが多少減っただけだ、問題ってほどじゃない。

 

「勘違いしてもらっちゃ困る。俺だってまだ技なんか使ってないし無さえも使っちゃいないんだぜ?」

片眉を吊り上げ鼻で笑ってやる。

彼にはそれが気に障ったのか目つきが刺々しくなる。

 

「そう、ですか。ならば身の程と言う物を教えて差し上げた方がよろしいですね。矮小なる紛い物の分際で私を馬鹿にした罪、大きいですよ」

遂に彼自身が動き、突進の威力を乗せた蹴り上げが顎にまっすぐに入れられる。

妖帝の封解除の痛みと相まって馬鹿にならないくらい痛い。

まるで体の全ての部位を同時に引き剥がされ、ぐちゃぐちゃにされたような痛みだ。

 

「自分が動くってことは俺にそれをするだけの価値が生まれたってことだな。それにさっきより冷静さを欠いている。俺は矮小な紛い物なんだろ?そんなことしていいのか?」

素早くしゃがみながら執事服の男に足払いをして体が宙に浮いた状態で腹にボディブローを叩き込み、体を大きくねじり足を大きく振り上げ執事服の男の左頰を強く蹴る。

彼の整えられた髪型はぼさぼさに荒れ、綺麗だった執事服も所々破れたりしてみすぼらしさすら伺える。

 

「そんなに...そんなに死にたいなら!!私が殺してやる!」

重たそうに体を持ち上げ素早くシャドーの背後に回り拳を前に突き出し親指を出して下に向ける。

それをされたことによりシャドーの体は地面に叩きつけられてピクリとも動かなくなる。

その瞬間ワイヤーで体は細切れにされ、さらに脳をナイフでかき混ぜられる。

 

「は、はは...ははは!!!大口叩いて私を馬鹿にした結果がそれだ、さいっこうに無様じゃないか!!たかが第六宇宙で一番強いってだけでそこまで有頂天になれるのも才能だなァ!!」

もう最初に見せた冷静さはひとかけらもなく手で顔を覆って高笑いしている。

 

「やれやれ、流石にそこまでされたら俺も体は治らなかった。訂正してやろう、お前は確かに強い。だが...あくまでも第六宇宙の最強、しかも俺が乗っ取りだの再生だのに長けていることくらい知っているだろう?そんな奴が体のスペアを持っていることくらいは想定してほしかったなぁ」

執事服の男の目の前にシャドーの亡骸は無く、彼の後ろで眉間を指で押して呆れているシャドーがいつの間にかそこに存在していた。

 

「何故だ!?なぜ生きている!シャドーエッジ・クライシス!!」

完全に理性という物が感じられなくなった彼は目を見開き人差し指をシャドーに向ける。

 

「まぁ、教えてやろう。俺は常に錬創術で一度死んだら、それが無かったことになるように仕組んでいるんだ。ただ己が力に慢心し自分が死ぬリスクを考えないバカとでも思ったかい?なら残念、そこまで考えが回らないようじゃ第六宇宙は生き抜けないさ」

一歩で距離を詰め創刀で彼の首を浅く切り血が滴る。

 

「お前の負けだ。さぁ、宇宙大陸とやらに案内してもらおうか?」

追い打ちに近距離からありったけの殺気を浴びせる。

さすがの彼も恐怖が勝ったのか首を縦に振りとりあえず船をここに呼び出せと指示する。

錬創術で船を移動させると詳しい道のりを説明し、姿が消える。

忘れないうちにと急いで操縦席に腰かけて目的地へと向かう。

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