艦上OVERDOSE   作:生カス

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BATTLEの描写が…思った以上に難しいっていう……
正直伝わるか不安じゃんか

今回から視点変更が多くなるのでside:○○と変更する際に付けさせて頂きます。
「冗談じゃねえ…余計見にくくなってるのさ…」という人がいらっしゃいましたらすぐに戻しますので、その際は申し上げて下さいますようお願い致します。


10 Dreamscape

- AM1:00 大洗艦艦上高速 第2ブロック線・北口付近 side:雨水 -

 

呑まれる

 

襲われた感覚を言葉にするなら、そうとしか表せなかった

 

艦上高速、そこの第2ブロック線と言われる場所で、俺は学園長のスープラと共に走っている。艦上高速は移動の効率化を図るために、いくつかの道路に分かれており、だいぶ入り組んで複雑になっている。

 

南、西方面間のブロック移動を目的とした第1ブロック線

北、東方面間のブロック移動を目的とした第2ブロック線

そして、俺たちが住む街から、中央ブロックと第1、第2ブロック線へ移動するための接続道路

 

この3つにそれぞれ分けられる。

 

その中でも俺たちが走っている第2ブロック線は、他2つに比べて交通量は少なく、コースとしてもそれほど難しいものじゃない。あまり自分のリズムを崩さずに走れる…そんな場所だ

 

でも、この場所においてそれは、魔物となり得る

 

狂わないリズムは思い通りに走ることができ、しかしそれはスロットルを開けさせ、そしてスピードに狂わされる

そしてそれは毒のように脳に回り、恐怖を麻痺させる

この毒に呑まれたら、どれだけ心地良いのだろう…そう思えてしまほど

けれど、それはできない

 

 

してはいけない

 

 

目に映る赤い閃光

それが俺の麻痺しかけた脳を再び呼び覚ました

スープラのブレーキランプだ

とっさにブレーキに踏みかえる

 

260km/h

クラッチ

シフトチェンジ

4速

制動力が体に伝わる

3速

140km/h

目の前にコーナー

更にブレーキを強く踏む

ステアリングを回す

減速、100km/h

図らずもリヤタイヤが滑りだす

タイミングを外したか

急いでカウンターをする

何とか持ち直し、コーナーを出る

 

 

危なかった…学園長が知らせてくれなかったら、曲がり切れなかったかもしれない。

でも、スープラの、彼の後ろを走るのがここまで大変だとは思わなかった

F40に乗っていた時とまるで違う、俺の力量を見極めて、ギリギリでついていけるように、針を通すようなコントロールで走らせている

これが学園長の本気か……

 

-

--

----

 

『学園長も一緒に走るんですか?』

 

『ああ、走り方を教えることはできないが、ブレーキ役くらいにならなれる。限界速度の恐怖を、君に知らせるための役だ。いいか、スピードの恐怖を忘れるな、そして拒絶するな…しっかり受け止めてやるんだ……でなければ、sxはきっと応えてくれない………』

 

『恐怖を、受け止める?』

 

『そうだ、受け止め、なおアクセルを踏み続ける…そうしなければ、何もできないまま死ぬぞ…努々忘れるなよ……』

 

----

--

-

 

死ぬ

 

分かっていたはずだ…こんなことをしている以上、何時そうなってもおかしくないことは…

だけど、ここで走り出した瞬間、その言葉が酷く重いものに感じる

一歩間違えれば死んでしまう…誰かを死なせてしまう…そう考えると、怖くて仕方ない

怯える心を押し潰してまで、こんなことをする意義なんてないだろう

そんな思考と相反して、足はアクセルから離れようとしない

隙さえあれば、少しでもスロットルバルブを開こうとしている

全く逆のはずなのに

 

減速したら、全てが終わってしまう気がしたから

 

 

 

 

 

 

 

 

- 同時刻 200m後ろ side:??? -

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…見つけた

 

ナンバーも、色も、外装も違う

でもな、sx

どうしたってお前の声は

すぐにわかるんだよ

 

 

 

 

 

 

 

- in 180sx side:雨水 -

 

 

 

 

 

…なんだ?

後ろから1台、すごい勢いで追い上げてくる

あれは…?

 

 

 

 

 

また

音が聞こえた

今までとは違う、

包み込まれてしまうような

浸ってしまうほどに、不思議な感覚

その音は

声は

 

 

 

 

 

まるで、無邪気に笑っているように聞こえた

 

 

 

 

 

この音は…sx……なのか?

 

 

 

 

 

- in 80supra side:学園長 -

 

ミラー越しに後ろを見ると、1台のクルマが引き寄せられるようにsxに近づいていた

あれは…あの走りの雰囲気は…

 

 

そうか…アイツか……

もう気づいたとは、随分と嗅ぎ取るのが早いな

 

気を付けろよ、雨水くん

そいつに乗せられるな

そいつはそのsxを憎んでいる

そしてそれ以上に、焦がれている

いつだって…そうさ…sxに心を奪われた奴は

その熱に中てられ、戻れなくなっちまうのさ

 

 

 

お前もそうだろ…?

 

 

九十九

 

 

 

 

- in 180sx side:雨水 -

 

息を整え、なるべく落ち着きながら、後ろのクルマに少しだけ意識を向ける

アンバーカラーの…

991…カレラ…

ポルシェってやつか

 

完全にsxを見据えてやがる

コイツ…やる気だ…

 

 

いいぜ…断る理由もない…

 

 

来いよ

 

 

フルスロットル

足を潰すぐらい、アクセルを踏んだ

4速

6000rpm

まだだ

7000

まだ…

8000

シフトチェンジ

5速

270km/h

車体がぶれる

少しのずれでどこに吹っ飛ぶかわからない

290km/h

 

300…

310…

 

よし…このまま…最高速まで…

 

 

 

 

でもそれは、叶わなかった

 

 

すぐ前にトラック、別の車線には一般車…

パスできる隙間はある、それはわかっていた…それができる程度のマージンもあった

けれど、俺は目の前の恐怖に耐えきれず、

 

ブレーキを踏んだ

踏んでしまった

 

 

タイヤの削れる甲高い音が聞こえる

リヤタイヤが滑り、車体がスピンする

カウンターを当てる

でも、間に合う訳がない

そしてスピンする最中、見えたのは、此方に向かってくるカレラ

 

ああ、だめだ

ぶつかる

 

 

ぶつからない

カレラは一切減速せずにラインを変え、俺をパスした

信じられない…あの距離で、あの速度で、避けれるだなんて

いや、それよりも

 

あのカレラ、少しもスピードを緩めなかった…

 

sxは止まった、幸いどこにもぶつけることはなかった

すぐにクルマの体制を直し、再発進させる

あのカレラは、いつの間にか闇に溶けて、いなくなっていた

 

 

--

 

 

あれから十数分後

俺は事前に集合場所として知らされた西口PAに向かっていた。PAに着くと、学園長のスープラが見えた。先に建物の中にいるんだろうか?

だけど、スープラの隣にあるクルマを見た瞬間、俺は一瞬頭が真っ白になった

さっきの、アンバーカラーのカレラが停まっていた

sxを駐車場に止め、すぐ前にある喫茶店に入ると、学園長を見つけた。そしてそこに1人の男が対面して座っている。多分、あのカレラの持ち主だろう。

なるべく動揺を悟られないように、その席に足を運ぶ

 

「おお、来たか」

 

「…織戸さん、彼が?」

 

織戸さん…?ああ、学園長のことか。そういえば、最初にもらった名刺に書かれてた名前、そんなだったっけか…

 

「ああ、君が会いたがってた新しいオーナーだ」

 

「…どうも、雨水と言います」

 

「九十九です。どうも…」

 

九十九さんか…何だか、不思議な雰囲気をまとった人だ…感情が見えない、というよりは、感情の底がないような、そんな感じがした

 

「さっきは危なかったね」

 

さっき…というのは、sxがスピンした時のことを言っているのだろう

 

「ええ、すいません。俺のミスで…」

 

「…ミス…本当にそれだけなの?」

 

「……どういうことですか?」

 

心がざわつく…どういうこと、とは聞いたが、彼が言いたいことは何となくわかっていた。でも、それを聞いたら、それを事実と認めてしまう気がしたから、しらばっくれてしまいたかった

でも、そうはいかなかった。九十九さんが口を開く

 

「ブレーキ…踏んだんだろ?」

 

「…ええ、まあ……」

 

「後ろから見てたけど、正常だったらあんなスリップはまずしない…左タイヤだけブレーキが利かなかったんだろうさ。そういうクルマだ…少しでも守りに入ろうものなら…すぐにいうことを聞かなくなる…」

 

「……」

 

「…単刀直入に言おう、あのクルマに乗るのはもうやめたほうが良い…あれは必ず、君を破滅に連れて行く…

 

 

 

俺やアイツのように………」

 

 

 

なるほど、この人、sxの元オーナーか……それに口ぶりからすると多分、学園長が言っていた事故の当事者なのだろう。後悔しているんだろうな…見ず知らずの俺に、わざわざ会って警告までしてくれるぐらいなのだから

 

 

でも、だったら、俺の答は何か、わかっているだろう?

 

 

 

「できませんよ…ここまで来たら、もう戻れない………」

 

「…そうか…やっぱりな……」

 

そして、少しの沈黙が続く…でもその沈黙は、他のどんな言葉よりも、重く、お互いの意思を鮮明に伝えた…そして、九十九さんがその沈黙を破った

 

「じゃあ織戸さん…俺はこれで…」

 

「もういいのか?」

 

「ええ、聞きたいことは聞きましたから」

 

そういって、彼はテーブルに金を置いて席を立つ。俺に「じゃあ、また」と言った後、そのまま喫茶店を出て、夜の奥へと消えていった

 

 

「少し早い気もするが、まあいいだろう…雨水くん、彼についてはまた今度話す。だが、これだけは先に言っておく…彼の走りをよく見ておくといい、きっと君の糧になる…まあ、今日はもう時間もないし、別の機会にね……」

 

学園長は俺をいい加減席につくように促し、テーブルに置いてあるコーヒーを差し出してきた

 

「奢りだよ、飲んで帰ろうぜ…まあ、すっかり冷めちゃったけどね……」

 

そうして、俺はコーヒーを口に運んだ

冷めていたけれど、そのわずかな温度は確かに俺の震えを止めてくれた

 

また…か…

そうさ………

 

 

 

また、走ろう、ここで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦上高速(ここ)で、終わらないためにも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




織戸 真一(おりど しんいち)
大洗学園学園長。多分50、60代。sxの事情を知っており、雨水が死なないように力を貸す。
ようやく名前を出せた

ここに来れば……なんとかなる
冷めちまったコーヒーだって自分以外の誰かの温度は伝わるから
西口PAの喫茶店…そんな店さ…

次回からは自動車部メンバーの出番が増える予定です。
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