前の君と今の君   作:おもちゃん

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いつもよりは長くなっちゃいました!
申し訳ございません!


第十四話 さようなら

「夢幻?入っていいかしら?」

「どうぞー」

 

 朝食を食べ終えみんなで少し談笑をした後、永琳の寝室に戻りゆっくりしていたところに永琳が入ってきた。

 

「自分の寝室だから聞く必要は無かったかしらね」

「まぁそれもそうだな。んで?どうした?」

「お迎えが来たわよ」

「あれ?もうそんな時間か?」

 

 時計の方を見るとまだ長針は11時を指していた。

 

「ちょっと早くねぇか?」

「まぁ何時とは言っていなかったし昼頃だから間違ってはないわよ」

「そうか」

 

 昼食もここでお世話になるつもりだったのだが。というかこのまま出て行って昼食どこで食うんだろう。俺は金を持ってないのでどこかで食べるなんてことも出来ないし。

 

「昼食はどうする?」

 

 永琳も俺と同じようなことを考えていたようだ。

 

「んー。ここでお世話になるつもりだったんだが妹紅を追い返すわけにもいかないしな」

「そうねぇ。輝夜がいるから一緒に食べるってこともできないし」

「でも俺ここ出ても金とか持ってねぇし飢え死にして終わりだぞ」

「まぁ確かにそうねぇ。妹紅はほぼほぼサバイバル生活みたいなものだし霊夢に集ろうものなら飢え死にの前に死んじゃうしねぇ……」

「…妹紅のほうはわかるんだが霊夢のはどういうことだ?」

「霊夢ねぇ、あんまりっていうかほとんどお金無いのよ。妖怪退治とかの依頼よく受けてるのにこれは義務ですから。とか言っちゃって報酬受け取らないのよ。なんでかしらねぇ」

「へぇ、霊夢そんなことしてたのか。じゃあどうやって生活してるんだ?」

「お賽銭を使ってるわ」

「えぇ……」

 

 お賽銭箱の金使うってのは巫女としてどうなのだろうか。それなら普通に報酬受け取ったほうが良いと思うのだが。

 

「んーそうねぇ。少し待っててくれるならお弁当作ってあげられるけど」

「マジで!?」

 

 最高の提案だ。永琳の美味い飯は食べられるし妹紅を追い返す必要もない。唯一残念なところを上げるとするならな永琳たちと一緒に食べられないということだが、しょうがない。

 

「えぇ。あんまり凝ったものは出来ないけど」

「妹紅に話つけてくる!」

 

 俺はそう言って勢いよく部屋を飛び出して玄関のほうへ向かった。

 

 

 

 玄関が開いていたため俺はその勢いのまま外へ飛び出した。

 

「うわっ!」

 

 妹紅は飛び出てきた俺をすれっすれで避けた。

 

「よう妹紅!おはよう!」

「おはようじゃないよ。なんでそんな勢いで飛び出してくんのさ……」

「妹紅に早く会いたかったからさ」

「はいはい。んで?どうしたのさ」

「なにが?」

「その様子だとまだ戻らないんでしょ?」

「なんでわかるんだよ」

 

 まるで熟年夫婦のようだ。

 

「いやなんとなくだけど」

 

 熟年夫婦だったようだ。

 

「まぁその通りだ。何故だかわかるか?」

「わかんないから聞いてるんだけど」

「正論を言うなよ。んで答えを教える前に、お前昼食どうするかとか考えてるか?」

「ん?そういや考えてなかったな。…あぁなるほどね」

「うん、察しが良くて助かるよ。そういうことだ」

「んーわたしはどうしたらいいんだろう」

「昼食のことか?それとも待ち時間のことか?」

「どっちもかな。」

 

 確かにどっちもそれなりに大事な問題だな。よし、

 

「永琳に聞いてくるわ!ちょっと待ってろ!」

「なんでそんなに行動が素早いのさ……なんかあったの?」

「テンションが上がってるだけだよ!」

 

 そんな困惑している妹紅を置いて俺は永遠亭の中へともう一度飛び込んでいった。

 

 

「ちょっと夢幻!うるさいわよ!」

「夢幻!うるさい!」

「夢幻さん!もう少し静かにしてください!」

 

 永琳の元へ向かうまでの間に三名程から罵声を浴びせられたが、心折れることなく俺は走って行った。

 

「あら、夢幻。早かったのね。まだ出来てないわよ」

「そりゃそうだろ」

 

 そこでは永琳がエプロンをつけて弁当を作ってくれていた。

 エプロン姿……いい!

 

「エプロン似合ってるぞ、永琳」

「ありがとう。それでどうしたの?」

「弁当を妹紅の分も作ってくれないか?」

「なんだ、そんなこと?元から作ってるわよ」

「え、なんで?」

 

 もしかして妹紅が迎えに来たことを永琳に伝えた時に妹紅から既に言っていたのだろうか。それだったら俺のこの行動は…

 

「夢幻がお弁当食べてる横で妹紅は眺めてるだけとか可哀想じゃない」

「まぁ確かにそうだが…」

 

 永琳ならやり兼ねない……

 

「ふぅん?その顔は私ならやり兼ねないと思ってる顔ね?」

「ギックゥ!」

 

 永琳も勘が鋭いことを忘れていた。

 

「口でギックゥとか、そんなこと普通言わないでしょ……」

「はははは……」

 

 それはノリで言っただけなので見逃してほしい。

 

「で、用事はそれだけ?」

「ああ、あと弁当が出来上がるまで妹紅はどうしてたらいいんだ?」

「見つからないなら私の部屋に入ってもらっててもいいけど?」

 

 さっき廊下走ってきたとき永琳の部屋よりも手前のところで輝夜達に怒られたし厳しそうだな。

 

「無理そうならまぁ、外で待っててもらうしかないかしらね」

「一旦帰ってもらうってのは?」

「別にそれでも構わないけれどそんなに時間は掛からないわよ?」

 

 永琳の後ろにある弁当箱を見るとおかずも半分くらいは埋まっていた。早すぎる。

 というより一旦帰ってもらうなら追い返すのと同じじゃないか。

 

「じゃあ大人しく外で待ってるわ」

「そう、じゃあ後で私が外まで持ってくわね。そのまま帰るなら輝夜たちに挨拶しといたら?」

「そうだな。サンキュー」

 

 そう言うと俺はその部屋を後にし、輝夜たちのところへ向かった。

  挨拶するのとは別の目的も兼ねて。

 

「あら、夢幻も一緒に遊ぶ?」

「そうしたいところだがあんまり時間が無いんでな」

「そう、残念ね。あんまり時間が無いというのは?」

「まぁ単純にもうすぐ帰るってだけだ」

「あら、帰っちゃうのね。寂しくなるわ」

「えー!夢幻帰っちゃうのー!?」

「夢幻さん帰っちゃうんですか……また来てくださいね!」

 

 みんな少なからず別れを惜しんでくれているようだ。こんな少しの間だけでもこんな友情が生まれるんだな。

 それを知れて良かった。まぁ記憶喪失になる前の俺は知っていたのかもしれないがな。

 

「それで一つ聞きたいんだが、輝夜。お前これ知ってるんだったよな?」

 

 そう言って俺はポケットの中に大事にしまっていた永琳から貰ったパスポートを輝夜に見せた。

 

「ええ、知ってるわよ?それがどうかした?」

「永琳にこれをスキャンする機会が玄関にあるって聞いたんだが見当たらなくてな。場所を教えてくれないか?」

 

 先ほど妹紅のところに行くときに少し探していたのだが見つからなかったのだ。本当は永琳に聞こうと思っていたのだが、俺らのために頑張ってくれているので今は永琳に聞くのは悪いし輝夜に聞くことにしたのだった。

 

「あら、そんなこと?いいわよ」

 

 そう言うと輝夜は立ち上がった。それに続くように鈴仙とてゐも立ち上がった。

 

「別にお前らはいいぞ?」

「姫様いないとゲームの続き出来なくて暇だからさー」

「私は一応従者でもあるので」

「ほーん。まぁ別にいいけどさ」

 

 四人で部屋を出て俺はあることに気が付いた。

 玄関を閉めた覚えが無いのだ。開けっ放しだとしたらかなりまずい。輝夜が妹紅のことを見ることになってしまう。

 

「すまん少しだけ待っててくれ」

 

 そう言うと三人を追い越して玄関のほうへと走った。

 そしてその玄関は案の定空きっぱなしだった。

 

「あ、夢幻。やっぱり早かったね」

「妹紅、すまんが今から玄関のところまで輝夜が来るから一応隠れておいてくれ」

「え?う、うんわかった」

 

 妹紅も輝夜と遭遇するのが嫌なのかすぐさま竹林の草むらへと走って行った。

 それを確認した俺は輝夜たちのところへ戻ろうと後ろを向くと、輝夜たちがちょうど曲がり角を曲がってこちらへ向かってくるのが見えた。

 鉢合わせ無かったからよかったものの待ってろと言っていたのに。

 

「夢幻、どうしたのよ」

「いや、自分でもう一回確認しておこうと思ったんだよ」

「ふーん?」

 

 自分でもだいぶ苦しい言い訳だと思ったが妹紅が居たなんて言える訳もないししょうがない。

 

「で、その機械はどこにあるんだ?」

 

 と言った瞬間に輝夜の後ろに機械があるのが目に入った。

 

「あ……」

「ん?」

「すまん今見つけた」

「なんだったのよ……」

 

中じゃなく外にある可能性を考えてなかった……

 

「これだよな?」

「ええそうよ」

「すまんすまん。外にあるとは思わなかった」

「えー。夢幻、私たちが来た意味あった?」

「正直なかった。すまんなてゐ」

「別にいいけどさー」

「えと、じゃあ戻りましょうか」

 

 ここで永琳に言われた言葉を思い出した。

 俺はここで永琳をずっと待つことになるので中に入って行くこいつらとはもう会えないだろうし挨拶を済ませなければ。

 

「俺ここで迎えがもう少しで来てくれることになっててもう中には戻らないから今挨拶済ましちゃっていいか?」

「ええ」

「まぁ改まって言うことでもないが。半日の間世話になったな。ありがとう。楽しかったぞ」

「むーげーん。折角だし一人ずつ挨拶してこうよ」

 

 てゐがそんな提案をしてくるとは思わなかった。まぁただ、狙いが見えてるからなぁ……

 

「そうだな」

 

 てゐの口角が上がったのを俺は見逃さなかった。

 そして鈴仙の手になにかが握られているのも俺は発見した。

 

「ただし鈴仙はその手に持ってるものを置こうか」

「あ、バレちゃいましたか」

「なに企んでたんだ?」

「レモン汁を目に……」

 

 思ったより凶悪なことを考えていたようだ。

 

「んで、てゐは?」

 

 そう俺が問いかけるとてゐが手のひらを見せてきた。

 その手のひらには大量の画鋲が張り付けられていた。

 

「お前ら全く反省してねぇな…あとで永琳に報告しとくからな。」

「「ごめんなさい夢幻様~!」」

「ったく」

このやりとりもしばらく出来なくなるのか、そう考えると少し寂しいな。と思いながらレモンと画鋲を回収した。

 

 

「んで一人ずつへの挨拶だったか?」

「ええ」

「んじゃあ輝夜から行くか。まぁ今回の滞在ではあんまり話す機会とかなかったけど、また来た時はよろしくな」

「ええ。次はもっと遊びましょうね」

 

 そういえば結局こいつらが遊んでるゲームには参加できなかった。また次来た時には必ず一緒に遊びたい。

 

「んで、鈴仙。まぁ出会い方はだいぶ酷かったけど、一緒にいるときは楽しかったぜ。輝夜と同じで今回あんまり話せなかったけどまた次来たらよろしくな」

「いつでも寄ってってくださいね!あとわたしたまに人間の里に営業に行ってるので見かけたら声掛けてください!」

 

 そんなことをしているのか。ならばこの先鈴仙に会うのが一番多くなりそうだ。

 

「おう。んで最後にてゐか。まぁお前には色々やられたけどその辺も含めて良い思い出になったぜ。また遊ぼうぜ」

「うん!竹林に来るときには落とし穴に気を付けてね~」

「次仕掛けやがったら永琳にチクってストップも掛けねぇからな」

 

 前回情けを掛けたのが間違いだったか?まぁ多分いたずらを仕掛けるのもてゐなりの表現なんだろうな。

 さてと、こんなもんか。なんかすごいしんみりしちゃったけどまた来れるしな。

 

「じゃあね。夢幻」

 

 そう言って三人は部屋へ戻って行った。

 そしてその三人と入れ替わりで永琳が弁当を二つ持ってこちらへ歩いて来た。

 

「おまたせ、夢幻」

「全然待ってねぇよ。よくそんなに早く作れるな」

「月の技術の応用。」

「そうなのか」

 

 未だに月の技術ってものがわかっていない。また今度来たときに教えてもらおう。

 

「ところで夢幻、さっき輝夜たちにお別れの挨拶をしてたみたいだけど私にはないのかしら?」

「もちろん永琳にも言うよ」

「あら嬉しい。じゃあどうぞ」

「そう改まって言うことでもないんだがなぁ……恥ずかしくなってきちまう」

「ふふ、意外と初心なのね」

「からかうなよ。んで、そうだな……まぁ永琳には今回ほんと世話になったな。礼を言っても言い切れないくらいだ」

「別にお礼なんて良いのに。わたしも沢山楽しませてもらったんだし」

「そういうわけにもいかないだろ。まぁなにか上げるってこともできねぇんだけどな。まぁそんなところだ。本当にありがとう。また寄らせてもらうから、その時はよろしくな」

「ええ、いつでも待ってるわ。ところであなた家あるの?」

 

 全く考えていなかった。記憶を無くす前に家があったのかどうかわからない。

 無くはないと思うのだが人間の里でも俺のことを知っている人物はいなかったし人間の里に住んでいなかったのかもしれない。

 

「わからん」

「じゃあ霊夢に謝り終わったらうちに来たらいいわよ」

「いいのか?」

「ええ。夢幻なら大歓迎よ」

 

 俺にとっては最高の提案だった。仮に家があったとしても捨てよう。

 

「んじゃあまた帰ってくるわ」

「ええ、それじゃあね」

 

 そう言うと永琳は俺に弁当を渡した。その顔がどこかで寂しそうで後髪を引かれる思いだったが霊夢に謝らないわけにもいかないしな。

 どうせすぐ帰ってくるんだ。

 

「じゃあな」

 

 そう言うと俺は永琳と永遠亭に別れを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この永遠亭に戻ってくることはもう二度とないことを知らずに…




シリアスかなと思わせてなんだーシリアスじゃないじゃん。ってさせてから思いっきりシリアス!って感じになりましたね。

最後の意味深なセリフはなんでしょうね(すっとぼけ
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