「いってぇー……」
うぅ、頭がズキズキする……
横でも妹紅が涙目になりながら頭を押さえている。
そして俺の目の前には慧音先生が仁王立ちで立っている。
なぜこんな状況になっているのかと言うと妹紅と騒ぎすぎて怒られたのだ。
「はぁ……お前ら会って早々仲良くなるのは全然構わんがいくらなんでも騒ぎすぎだ。」
「夢幻のせいで怒られたー。」
…妹紅は馬鹿なのだろうか。お説教されている時に軽口叩くなんてご法度だろ。
「妹紅?」
殺気がすごい。先ほどの藍さんよりもよっぽど怖い。
まぁ怖さのベクトルが違う気がするが。
「ひっ…」
妹紅がかわいらしい悲鳴を上げた後小動物のようになってしまった。
「そもそもだな。ここは寺子屋であり、公共の場所だ。そんなところで騒いだら他の人に迷惑かかることくらいわかるだろ?」
これは俺の経験上、絶対に長くなるパターンだ。
そう思うと欠伸が出てきてしまった。
いかんいかん。気が緩んでいるようだ。
そう思った瞬間俺は慧音先生の殺気が一層増したのを察知した。
「あ、やべ……」
冷や汗をダラダラ掻きながら慧音先生のほうを見るとバッチリ目があった。
「夢幻はちっとも反省していないみたいだな。そういえばお前記憶喪失なんだったよな? 頭を強く打てば治るかもしれないな。試してみよう」
「え、いやさっき既に頭突きいただいてるので結構で……」
「問答無用!」
俺の悲鳴が真昼間の幻想郷にこだました。
さっきより痛い……一回目はあれでも手加減してくれていたのか。
「さてと、お前ら永遠亭に行くんだったな。あんまり遅いとあちらにも迷惑だろうし今回はこのくらいで許してやる」
「え?」
「ん?どうした夢幻」
しまった…
慧音先生が俺の予想を綺麗に裏切ってくれたおかげでつい声が出てしまった。
こんな早く終わるなんて思っていなかったのだ。
「夢幻、思ってたより早く終わったな。という顔をしているな?」
慧音先生に図星を指されてしまった。
正直に答えると俺の頭が割れてしまうことになりかねない。
嘘をつくのは苦手なのだがそんなことも言っていられない。
「え、いやーそんなことないですよハハハ……」
「そうかそうか、そんなに頭突きが気に入ったのか。霊夢、悪いが永遠亭で診てもらったらもう一回ここに連れてきてくれ」
嘘をつくのは失敗したようだ。やっぱり俺は嘘が下手くそなんだな……
いや、今はそんなことを考えている場合ではない。
どうにかして再度ここに来ることを防がなければ。
だが慧音先生に再審を要求しても恐らく通らない。ならば、霊夢を説得するしかない……!
「ちょっと待ってくれ霊夢、話し合わないか?」
「自業自得よ。さ、無駄話なんかしてずにさっさと永遠亭に行きましょ。妹紅、道案内よろしく」
取り付く島もないとはこのことを言うのだろうか。
俺の最後の希望はそうしてあっけなく潰えた。
「んじゃそろそろ行こうか。付いてきてねー」
妹紅がそう言いながら立ち上がっった。
それにしても妹紅はもうすでにケロリとしてるな……まだ頭突きされてから5分も経ってないのに……
と思ったが別にケロリとはしていないようだ。まだ涙目のままだった。
「夢幻、妹紅も霊夢もいるから大丈夫だとは思うが、夜の竹林は危険だから気をつけろよ」
そう慧音先生が声を掛けてくれた。
慧音先生がここに来てデレるとは思っていなかったので少し嬉しくなった。が、俺は俺自身に向けられている3つの視線に気が付き、周りを見た。
「夢幻、なにを考えているのかしらないが顔が気持ち悪くなっているぞ?」
「夢幻、なんとなく考えてることは察せれたけど、いつか痛い目見るよ?」
「あんたねぇ……そろそろいい加減にしなさいよ?」
俺に向けられていた複数の視線は各々の言葉と共に、それぞれ違う感情を醸し出していた。
特に霊夢の視線がとてもトゲトゲしく俺の心に突き刺さった。
そして俺が傷ついた次の瞬間に霊夢の口から出た言葉は俺を絶望に突き落とした。
「慧音、もう一発夢幻に頭突きお願いしていい?」
「え?ああ、なんだかよくわからないが了解だ」
「ちょ、ストップ!ストーップ!話せばまだわかる!」
まずい。これは本当にまずい。
既に2発も食らっている上に霊夢に心を引き裂かれている今、もう一発食らえば失神は免れない。
だが霊夢には前言撤回する気もないようだし、絶体絶命のピンチだ。
いつもなら無駄に妙案を思いつく癖にこの大事な時になにも案を出さない自分の脳を罵りながら慌てていると、思いもよらぬところから救いの手が差し伸べられた。
「まぁまぁまぁ、慧音ちょっと一旦落ち着いて。霊夢も」
妹紅……!
「霊夢、男なんてこんなもんだよ。一々気にしてたらキリがないよ?」
「まぁ……確かにそうかもしれないけどね?あいつは今日一日で既に・・・―――」
妹紅が霊夢を必死に説得しようとしてくれている。
男への偏見がちょっと酷いが今はそんなことを言っている場合ではない。
てか霊夢いちいち数えてたのか……?
そしてその隣では慧音先生が頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。かわいい。
「夢幻?」
妹紅が俺の名前を呼んだ。
「……やべ」
「ねぇ、妹紅。あなたが頑張ってる間、あいつは性懲りもなくあんなことしてるわけだけど。まだ庇おうとする?」
「ううん。最初から霊夢の言った通りにしておけばよかったね。ごめんね」
自分の失態により、俺は自分を助けてくれた妹紅に見捨てられてしまった。
妹紅に見捨てられたということは俺に味方がいなくなったということだ。
つまり
「慧音、夢幻に頭突きして」
「わかった」
俺の死を意味していた。
いや~実は慧音は三話で登場させる予定だったのですが妹紅だけで話が進んでしまい、このままいくと慧音登場せずに永遠亭行ってしまいそうだったので無理やり突っ込みました。
なのでこの後のストーリーにも特に関係ないですし、実質3.5話みたいな感じです。