ナナと別れて俺たちはまた元のように静かな竹林を歩いていた。
正確に言うとナナの歌声は聞こえてきているが。
少し日が暮れ、竹林は少しずつ暗くなってきている。
「あーこりゃ帰る時には真っ暗だね。」
妹紅のその言葉を聞き、俺は少し心配になってきた。
なぜかと言えば夜は妖怪たちが活発になって危険だからと聞いたからだ。
妹紅がいれば安心とも聞いているわけだが。
「わたしが言えば永遠亭で泊めてくれると思うけど?」
「お、マジで?」
てゐからの思わぬ提案に俺は心を躍らせた。
妹紅がいるから安全とは言われてるけど安全に帰れるならそっちのほうが良いに決まってる。
「ちなみに私は?」
「姫様が良いって言ったらいいんじゃない?」
「それダメって言ってるのと変わんないじゃん」
妹紅と仲の悪い輝夜ってやつが永遠亭の主らしいのでしょうがないと言えばしょうがないのだろうか。
「なんとかできないのか?」
「無理だろうねー」
「まぁ、私はいつも通り自分の家で寝るから大丈夫だよ」
妹紅がサラッと言った今の言葉を聞き俺は少し驚いた。
「え?妹紅ってマイホームあんの?」
「いや、いくら死なないって言っても寒いもんは寒いし、そんくらいはあるよ」
なんとなくだが妹紅は不老不死なことも相まって衣食住にはあまり興味を持っていないと思っていた。
だが妹紅が言ったように不老不死でも痛覚などはあるのだ。それならば家は必要だろう。
「まぁてゐ、一応聞いてみてくれ」
「はいはーい」
そうこうして話しながら歩いているともうだいぶ暗くなってきた竹林の奥に明かりが見えてきた
「あれが永遠亭か?」
「そうだよー」
見えている明かりの規模から察するに小さくはないようだ。
永遠亭に少しの期待を持ちながらそのまま歩いて行くと、鬱蒼と生えていた竹藪が少しずつ開けてきた。
そしてその先には俺が想像していたよりずっと大きな屋敷が見えてきた。
「うお、でかっ」
「まぁねー。月の都の技術を駆使して建てられた屋敷だし、その辺の民家とは訳が違うよ」
月の都やてゐのドヤ顔などツッコみたいところはいくつかあるがまぁ、ツッコまないでおいてやろう。
「さ、早く入ろうぜ?」
「「あ……」」
俺が歩き出すと、二人がなにかを察したような声を出して目を背けた。
そしてその次の瞬間、
俺の足が宙に浮いた。
なんだろうこのデジャブは。
そしてやはり俺は落ちていった。
「はぁ……てゐか……」
あいつまだ懲りてないようだな…
穴から出たらしっかり懲らしめてやる…ってあれ?
「俺まだ落ちてるぞ?」
てゐへの憎しみを募らせている時にそのことに気が付いた。
落下し始めてから経過した時間などを考えても既にかなりの距離を落下してるはずだ。
その疑問を解決しようと恐る恐る下を見てみる。
「えっ………」
すると下は底が見えず真っ暗闇が続いていた。
これは本当にシャレにならない。
「夢幻ー大丈夫ー?」
上から妹紅の声が聞こえてきた。
妹紅はこっちの状況がわかっていないはずだ。俺が死んでから犯人を捕まえてもらうためにも情報は提供しておかなければな。
「あー妹紅。よく聞きたまえ。俺はまだ落下している最中だ」
「あ、そうなの? ……ってえ?ちょ!? もう夢幻が落下し始めてからもうだいぶ経ってるよ!?」
「うん。俺死ぬみたいだわ。霊夢と慧音と藍さんによろしく頼むわ。どうか真相を暴いてください。それだけが私の望みです。とかまぁどこぞのミステリー小説みたいに言ってみたけど犯人はそこにいる兎だろうし焼いといて」
恐怖のあまり逆に余裕が出てきている。
しかし上から例のウサギの叫び声が聞こえてきた。
「ちょっと!?その落とし穴はわたしが仕掛けた落とし穴じゃないよ!」
慌てて弁解しようとしてるみたいだが、無理がありすぎる。
こんな凶悪な罠お前以外に誰が仕掛けるというのか。
「しっかしこれいつまで落ちるんだよ。もういっそ一思いにやってほしいんだが」
そう呟いた直後、なにか網のようなものにキャッチされた。
「あれ?助かったのか?」
俺がいまいち現在の状況を把握できていないところに聞いたことのない声が飛んできた。
「遂に引っかかったわね!てゐ!いつもの仕返しよ!」
顔は見えないが恐らく相当なドヤ顔をしているのだろう。しかし引っかかったのはてゐではなく俺だ。
「ねぇねぇ、鈴仙?わたしここにいるけど?」
「怖かったでしょ?フフフ、これに懲りたらもういたずらはやめることね!……って、え?」
「あーあー。鈴仙が無関係な一般人に罠を仕掛けて落としたー」
「え?一般の人?え?嘘?」
鈴仙とかいう最悪な野郎の声から自慢気な雰囲気は消え、代わりに焦りの感情がにじみ出てきた。
「ほんとだよー。ねー夢幻ー」
「おう、ほんとだぞ。とりあえずここから出してくれないか?」
「わ、わわ、わわわわわ。す、すみません!今すぐ引き上げますから!」
そう言ってすぐに縄を投げてよこしてきた。
掴まるとすごい力で引きあげられた。摩擦で手が燃えそうになった。
「ふー、久しぶりの外の空気だなー」
「一分も経っていないよ」
てゐが無駄にツッコみを入れて来た。
「実際にはそうでも体感的には1時間くらいに感じたからいいんだよ!」
「あはは、でも無事でよかったよ」
妹紅はそう苦笑いしながらそう言った。
「ほんとだよ…」
さて、お説教タイムと行こうか。このブレザー着てるうさ耳野郎が鈴仙で間違いないだろう。
「鈴仙と言ったか?」
「はい……」
「夢幻、ちょっとストップ」
俺がお説教を始めようとしたタイミングでてゐが止めてきた。
「なんだよ、てゐ?」
「夢幻がお説教するよりもっと鈴仙に効果的な人にお説教してもらうよ」
「誰だ?」
「ちょっと呼んでくるね」
そう言いながらすごいスピードで永遠亭の中にてゐが入っていった。
「ま、まさか…」
鈴仙がボソッとつぶやいた。
そちらを見てみると顔は真っ青で凄まじい速さでガタガタと震えている。
俺にはその効果的な人とやらが思いつかないというか知識の中に無いので頭の上にクエスチョンマークを浮かべて首を傾げることくらいしか出来ないのだが、鈴仙はもうその人物が誰か察しがついているようだ。
数分後てゐは一人の女性を連れて帰って来た。
「ただいま」
「お帰り、ところで横の方は?」
「私は八意永琳よ。ここで医者をやっているわ」
「ああ、あなたが」
赤と青のツートンカラーの服に十字マークの入った帽子とこれまた印象的な容姿を……
そしてまたしてもすごい美人。
「それで、貴方が夢幻さんでいいのかしら?」
「え?あぁはい」
すでに永琳さんには話は伝わっているようだ。
てゐのお陰だろうか。話がスムーズに進むのでありがたい。
「この度はうちのウドンゲが申し訳ございません。たっぷり絞っておきますから」
「ひっ」
「ねぇウドンゲ?一切関りを持ったことのない?それも一般人を?罠に仕掛けるとは一体どういう了見かしら?」
永琳さんの後ろに阿修羅が見える。なんかもう迫力がヤバい。見ているだけで泣きそうになってくる。
「まぁ、その件に関しては後でしっかり話を聞くとして、夢幻さんは私に用事があったのよね?」
「えぇ、ちょっと記憶喪失になっちゃったみたいで。診察してもらいたいのですが」
「わかったわ。こっちに来て頂戴」
「じゃあ夢幻、私はここで」
妹紅がそう言って踵を返した。
俺がついてきて欲しいと言ったのは忘れているのかそれとも聞く気がなかったのかどちらだろう。
しかし永琳さんに肩を掴まれ、妹紅が不思議そうな顔をしながらこちらを向いた。
「何言ってるの?妹紅。夢幻さんは記憶喪失なんでしょ?だったら補足とかする人が必要でしょう。」
「え、でも輝夜が……」
「私が止めたら姫様はすぐにやめるでしょう」
「ま、まぁ確かにそうだけど……」
そこまで輝夜とやらに会いたくないのだろうか。必死に逃げだす口実を考えているようだが永琳さん相手には敵わないと諦めたのだろう。溜息を小さく吐いた。
「いいから黙ってついてきなさい」
「はーい……」
永琳が最後にそう言って永遠亭に入っていくと、妹紅も渋々ついていった。
俺も妹紅に続いて永遠亭の中に入っていった。
「お師匠様ー。わたしはどうしたら?」
「ああ、そうね。てゐは鈴仙が逃げ出さないようにきつく縛って見張っておいて」
「はーい、わかりました」
そうてゐが返事をした。
なんとなくてゐのほうをちらりと見るとすでに鈴仙が縛られていた。
いくら手馴れているからといって早すぎると思うのだが。まぁ縛るのが手馴れているというのもおかしな話だが。
そう思いつつも口には出さず永琳と妹紅の二人に続いて、永遠亭の中に入っていった。
永遠亭に来るまでに時間かかりすぎちゃいましたテヘペロ
これからは出来るだけ更新ペース上げていく予定ですのでよろしくお願いします!