だが後悔はしていない!
「な、何だ、この爆発音は!?」
「キュキュ、フォーウ!」
大きな爆発音と振動が収まると、照明が消える。その後、すぐに非常用のサイレンが鳴り響く。
「モニター!急いで管制室を映してくれ!」
ロマンさんが身に付けていた通信機に怒鳴ると、目の前にあった大型モニターに管制室の映像が映る。
息をするのを一瞬忘れた、そう思わせる程に、管制室の様子は酷かった。
「―――――」
「―――これは」
「ロマンさん、これは!?」
「…君はすぐに避難するんだ」
「避難しろって、ロマンさんは!?」
「僕は管制室に行く。もうじき隔壁が閉鎖されるだろうからね、その間に外へ出るんだ!」
そう言ってロマンさんは走っていく。ここには、俺と俺が抱えているフォウだけが残った。
(……どうする。ロマンさんの言う通り、外に出るか?…………いや、追いかけよう)
例え初対面の人だとしても、そんな簡単に見捨てるわけにはいかない。直ぐにロマンさんを追いかける。…見つけた。隔壁の前でロマンさんが四苦八苦している。
「―――――くそ、もう閉まってる!」
「フォウ、フォーウ!」
「ロマンさん!」
「な!?どうして追いかけてきたんだ!?」
「ロマンさんを見殺しに出来なかっただけですよ」
「見殺しって、君は…まあいい、此処をこじ開ける。手伝ってくれ」
「わかりました、それで、どうするんですか?」
こじ開けるといっても、一体どうするのだろうか。まさか、持ち上げる訳ではないだろう。
「何処かに隔壁を開けるためのレバーが有るはずだ。其れを探してくれ!」
「分かりました!」
…………………………
「ありました!」
「よし!上げてくれ!」
ロマンさんの指示通りにレバーを上げると、隔壁がゆっくりと開いていく。
「僕は予備電源を入れてくる!君は生存者を捜してくれ!」
「わかりました!」
……………………………
隔壁を潜り、管制室まで駆け抜ける。管制室に辿り着き、生存者を捜す。
しかし、其処に有るのは死体と瓦礫の山だけ。何度見回しても、生存者が居るとはとても思えなかった。
だが、万に一つの可能性を求め、生存者を捜し続ける。きっと、居るはずだと。そう思わなければ、俺は立って居られなかった。
「………ぁ」
声が聞こえた。耳を澄まさなければ聞こえぬ程に小さい声。だが、今の俺にはその声が驚くほどによく響いた。
場所など分からぬ筈なのに、無意識に体が声の方へと向かう。
瓦礫に挟まれている少女が居た。一目散にその娘の元へ駆ける。
「大丈夫ですか!今瓦礫を―――」
瓦礫を退かそうとして気づく。―――彼女の下半身が潰れていることに。
「―――――ッ」
「……わたしの事は…いいですから…早く他の方の所へ……」
「駄目だ」
「……え?」
この少女は、まるで自分は助かりたくないかの様に言う。善人なのか。それとも、ただの阿呆なのか。はたまた、何も知らない無垢な人間なのか。それは俺には分からない。
だけど、だからと言って見捨てていいわけがない。例え、この少女があと一日の命だったとしても、恐らく同じ行動をしただろう。だって―――――
「直ぐに助ける、じっとしていてくれ」
――――――だって今俺の目の前に居るのは、この少女だけだったから。
だから助ける。恨んだっていい、殺意を向けてもいい。だけど俺には、君を助ける事しか出来ないから。
―――――
―――――
瓦礫を退かしていく。―――――ここで助け出しても、無意味だと分かっていた。
―――――
―――――
瓦礫の数が減ってきた。―――――このまま助け出しても、きちんとした治療が出来ないと分かっていた。
―――――
―――――
瓦礫はもう数える程になった。―――――苦しみながら死ぬならば、此処で潰されるほうがいいと、 身勝手ながらも分かっていた。
―――――
―――――
少女に向かって手を伸ばす。―――――だけど、例えそうだったとしても。
―――――
―――――
伸ばされた少女の手を握る。―――――こんな顔をしている娘を見捨てるなんてこと、俺には出来ないから。
―――――レイシフト、開始
ふと、少女の声が聞こえた気がした。―――――良かった、と。
その瞬間、突然意識が途切れた。
終盤、線が二本ずつ入っているのは仕様です。
次から特異点Fに入ります。