目が覚めて初めて目に入った物は、木材で出来た天井だった。
「どこだ此処…というよりも、どうしてこんな所に?」
先程までカルデアの中に居たのに、いきなり見知らぬ家の中とは。一体どういう事なのだろうか。
「此処は二千四年の冬木市です、先輩」
「ああ、なるほど。ありがとう………え?誰?」
声の聞こえてきた方に振り向くと、其処には身の丈程の大盾を抱えた少女がいた。
「……覚えていないんですか?」
「いや、そもそも初対面……って、ああ!」
「?」
いや、そうだとしてもおかしい。目の前の彼女は確かに……いや、こんな所に居る時点で、そんなことを言ってられないか。
すると突然、ポケットから音が鳴る。なんだと思い取り出すと、なにやら通信機が出てきた。よく見ると、側面の突起が赤色に点滅している。
「なんだこれ…とりあえず押してみよ」
ポチっとな。…すると、突然目の前にロマンさんが映る。
『ああ!やっと繋がった!…コホン、こちら管制室。二人とも、聞こえるかい?』
「え?えっと……」
「こちらAチーム、マシュ・キリエライト、レイシフトに成功。先輩も無事です、ドクターロマン」
『良かった。無事にレイシフトに成功できたようだね』
「……あの、ロマンさん?」
『ん?どうしたんだい?』
「この子は一体…」
その問いを聞いたロマンさんは一瞬固まった後、声を出して笑った。その態度に顔をしかめ、もう一度問いただす。
『ごめんごめん、もう自己紹介した後だと思ったよ。何せ、レイシフト開始から数十分も経っているんだ。』
数十分?数分の間違いでは無いのか。少なくとも自分が起きたのはつい先程なのだが。その事を伝えると、ロマンさんは首を傾げた。
『あれ?こちらの観測ではレイシフトからもう三十分は経っているんだけど』
「その事については私が。先輩、通信機をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「別に構わないけど…」
『マシュ?』
彼女によると、レイシフトは無事に完了したものの、俺がいつまで経っても目覚めずにいたため、近くの小屋に移動。その後、目覚めるまで護衛をしていたという。
「ーーー以上が、レイシフト後に有った全てです」
『ありがとうマシュ。それにしても成る程。そういう事情が有ったのか』
「はい、それでは次に、此処近辺の状況ですがーーー」
二人は何やら話をしている様だが、全く話についていけない。外を見ると、辺り一面が炎の海であるという事に気付いた。
「……え?」
「どうしましたか先輩、窓の外を眺めて……外がどうかしましたか?」
どうやら通信が終わった様で、彼女は通信機を渡してくる。其れを受け取ると、俺は立ち上がる。
「いや、なんでも無いよ」
「そうですか……そういえば、自己紹介がまだでしたね。私の名前はマシュ・キリエライト、マシュで結構です。先輩は?」
「俺の名前はーー。これから宜しく、マシュ」
「……先輩、名前をもう一度お願いします」
「……?」
取り敢えず、もう一度名前を伝えるが、マシュは首を捻ったままだ。
「むう……」
「マシュ?どうしたんだ?」
「…先輩の名前が聞き取れないんです」
「え?」
聞き取れない?一体どういう事だ?
「こう、靄がかかった様に、先輩の名前だけが聞き取れないんです」
「靄って言っても、普通に喋っているだけなんだけど……」
その後色々試したが聞き取れず、結局この問題は後にした。
「……いつまでもこんな所に居るのは危険ですから、何処かへ移動しましょう」
「……そうだな」
こんな所で隠れていてもいずれ見つかるだろう。何にとは知らないが。そう結論付けた俺達は足早に此処を出た。
数分後、先程の小屋から炎が立ち昇ったのを、俺たちは見逃さなかった。
次が初戦闘の予定。