ロマンさんとの通信から約三十分が経った頃、俺達の目の前には巨大な空洞が
離れた場所から見た限りではただの空洞であったし、かなり近付いた今でもそれは変わらない。しかし、空洞に足を踏み入れようとすると、どうしても弾かれてしまうのだ。ギャラハッドに破壊出来るか聞いて見たが、聖杯を使えば破壊は可能だが、代わりに首魁に気付かれてしまうだろうという事でその案は却下された。
そうなると、この結界を破る方法を考えなければならない。この結界は外見では判断し難い事もあって、成る程確かに有用だ。この結界を張った者が分かれば解除方法の一つは浮かんでくるかも知れないが、一番可能性のありそうなキャスターは既に退去してしまったし、他のクラスのサーヴァントにこれ程の結界を張ることの出来る者がいるとは考え難い。
「……ギャラハッドさん」
「呼び捨てで構いません、マスター」
「ありがとう。それじゃあギャラハッド。聴きたいことが有るんだけれど、良い?」
「ええ、構いませんよ。何でしょうか」
「……今残っているサーヴァントで、君とあと一人、首魁のクラスをキャスターから聞かなかったか?」
「……ええ。確かに聞きました。敵の首魁のクラス、それはーーー」
「それは……?」
「―――セイバーのサーヴァント。キャスターが言うには、世界最高峰の聖剣を持った剣士だとか」
セイバー、つまりは剣士のサーヴァント。聞いた話によれば、セイバーの通称は“最優”のサーヴァントだとか。それに加え、世界最高峰の聖剣を持ったサーヴァント。最高峰とは、性能面もそうだが、英霊の世界では知名度も関係している。そうなると、かなり絞られてくる。
……待てよ?確かキャスターはギャラハッドを見て“アイツの言った通りの奴だ”と言っていた。つまり、円卓関係者、それもかなり親密な者と言うことだ。
ランスロット?いや、ランスロットに結界を張れる様なスキル、または宝具が有るとは思えない。
……まさか、アーサー王か?アーサー王は世界最高峰の聖剣である『エクスカリバー』を所持者だ。それに、もしアーサー王ならば、結界宝具の一つや二つ持っていてもおかしくは無い。
その事をギャラハッドに伝えると、直ぐに頷いた。どうやら、彼は薄々感づいていたらしい。
しかし、正体がわかったからなんだというのだ。此方には結界を破壊する力は持っていても、通り抜ける力はない。
「……マスター。少し宜しいでしょうか」
「…?どうしたの、ギャラハッド。何か作戦が?」
「ええ。尤も、私単体ならば簡単ですが、マスターと一緒となると、危険だと考えて今まで伝えなかったのですが」
「……教えてくれ、ギャラハッド。この結界を通り抜ける方法を」
「……命を失うかもしれません。それでも、良いのですか?」
「…………うん。覚悟は、出来てる」
「…では、私の手を取って、決して私から離れない様に。それと、意識をしっかりと保ち続けて下さい」
ギャラハッドの手を取り、結界の方へと足を進める。そして、自分の身体が結界に触れた瞬間、
「ァ―――――」
俺の魂が粉々に千切れ飛ぶ感覚に襲われた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『―――――』
此処は―――?
『―――ほう。穢れ落ちた理想郷から拒まれた魂の欠片が、まさか此処にたどり着くとはな』
貴方は―――?
『ふん。貴様に我が名を識る資格等無い。そして、
―――?
『―――そうだな。私の事は、“ の王”とでも呼ぶがいい。……尤も、貴様がその名を我が前で呼ぶ事は無いだろうがな』
――― の、王―――
『そうだ。―――ク、ハハ――』
―――何が、可笑しい―――?
『何、困っていた所に
―――此処で、果てる―――?
『そうだ。もし、良しとするならば、特別に天国とやらに連れて行ってやろう。しかし、良しとしないのならば―――』
―――………もんか
『―――ほう?』
―――良しとなんて、する、もんか―――!
――そうだ、まだ、俺は―――!
―俺は、まだ―――!
俺はまだ、まだ何も、成し遂げちゃいない―――!
『―――――。―――ク、クハハ、クハハハハハハハ―――!』
『いいだろう! 名を喪った者よ!今一度貴様の魂を繋ぎ合わせ、世界を救う為のチャンスをやろう!』
チャンス?
『そうだ!何、貴様は人間なのだろう?ならば、臆せず、恐れず、立ち上がり続けて見せるがいい。そうすれば、何れは成し遂げられるだろう』
―――――
『なんだ。臆したか?』
……王様
『?』
ありがとう
『―――ふん。感謝など求めていない。…………これで、貴様の魂は形を取り戻した。さっさと行くがいい。そして、二度とこの場所に足を踏み入れるなよ』
……約束は出来ない。だけど―――いや、何でもない。
それじゃあ王様、さようなら
『…………』
そして俺は、光の向こうへ向かって足を進めた。
そして 玉座に残った王は、其の顔を醜悪に歪めた。
次回、騎士王決闘