幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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風魔視点に移る前に今更名付けられた青年(?)視点の回想です。まあつまり幸夜ストーリーですね。


ゆっくりご覧下さい。


第百十三話 操作人形➀

幻想郷、太陽の畑付近、

 

 

「・・・うん、これで完成。」

 

 

幻夜は一人ぶつぶつと呟くと、目の前の氷人形に手を触れた。

 

 

「よろしく。僕。」

 

 

そうして俺・・・幸夜は産まれた。

 

 

 

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「・・・と、いうわけで今日から新しい先生になりました。幻夜です。よろしく。」

 

 

俺は生まれた直後、何故かすぐに寺子屋の教師にさせられた。後々聞くと幻夜(本体)のせいだったらしい。

 

 

俺の出生の記憶は当時、一切なかった。ただ単に俺は幻夜であり、こう生きてきた。といった事しかなかった。全部幻夜にロックをかけられてたらしい。

 

 

まあ別に俺は子供が嫌ではなかったし、はじめこそ子供達は俺のガラの悪そうな顔で逃げていたが、数か月で慣れてくれた。

 

 

「先生ー、この書類ここですかー?」

 

 

「ああ、ありがとう幻夜君。今日は休んでもらっていいぞ。」

 

 

「へーい。お疲れ様です。上里、後頼んだ。」

 

 

寺子屋には俺と慧音先生以外にもう一人、上里という同期がいた。上里は当時15歳、とある事故のせいで親を亡くし、慧音先生に育てて貰いながら教師の手伝いをしていた。上里の担当は書道。俺は理系と呼ばれるものの担当だった。

 

 

「分かりました。お疲れ様です。」

 

 

「おう。じゃあな。」

 

 

俺は当時・・・もう八年ぐらい前だが・・・この生活に別段違和感もなく、人里でも優しいお兄さんとしてそこそこ慕われるようになっていた。

 

 

その頃からアリスとは面識があったが・・・今更隠す必要もないか・・・別に好きだとかはなかった。向こうも時々人里で人形劇をする程度でしか来なかったので、俺は客として行く事が多かった。ま、普通の身体能力が高い人間だったしな。

 

 

「おーし、お前ら、今日は終わり。人里の外に出てみろ、俺が襲うからなー」

 

 

「はーい!!」

 

 

そんな日常がずっと続いていた。

 

 

だがある日、俺は人里の外の監視に出た時、ある物を拾った。

 

 

「・・・人形?」

 

 

俺は人形を拾った。古くなって捨てられたわけでもなく、誤って落としたような状態の人形だった。

俺は見覚えがあったので、人形を揺らした。

 

 

「おーい、起きろー」

 

 

人形を揺らして声をかけるなんぞ今考えると中々の変態だったが、人形は目を覚ました。

 

 

人形は主人が違うことに驚き飛び上がったが、俺が初対面ではないと分かったのか、大人しく俺の手の上に収まった。

 

 

「よーしよし。・・・すぐに持ち主に渡すからなー」

 

 

俺はアリスの人形、上海をアリスに返すため、魔法の森まで歩いた。後日聞くとこの日に侵二が妖怪を指一本で刺殺した日らしい。

 

 

俺は飛行能力はなかったので森まで歩いた。道案内は上海がしてくれた。何故か懐かれた。寺子屋に飾った余りの赤い菊を慰めとして渡しただけなのだが。

 

 

アリスの家は魔法の森の奥にあった。

 

 

俺はドアをノックした。すぐに真っ青な顔をしたアリスが出た。

 

 

「上海!?・・・あぁ、幻夜さんか・・・」

 

 

アリスはそのままへたり込んでしまった。

 

 

「おいおいおいおい、しっかりしろ。それに連れて来たから・・・」

 

 

俺のポケットに何故か隠れている上海をつまみ出すと、アリスに見せた・・・ら押し倒された。

 

 

「上海!!」

 

 

嬉しくて上海に飛びついたのだろうが、不意打ちを喰らった俺は上に乗られた。

 

 

「・・・おーい、降りてくれ~」

 

 

「ひゃいっ!?・・・ご、ごめんなさい!?」

 

 

アリスは事の重大さに気づいたのか俺から飛び離れた。上海は何が嬉しいのかふよふよと俺達の間を飛び回っている。

 

 

「・・・まあいいか。じゃあな。次は落とすなよ。また人形劇楽しみにしてるからな。・・・あん?」

 

 

俺が帰ろうとすると、上海が俺の髪の毛を引っ張った。中々の力で。

 

 

「ちょっと、上海?」

 

 

上海は俺が帰るのが嫌なのか首を横に降っている。なぜこう俺はちっこいのに懐かれたのか未だに分からない。どうでもいいが髪が痛かった。

 

 

「やめろ小娘。俺は帰らねえと・・・やめろ髪の毛わしゃわしゃするな。」

 

 

それでも上海は離そうとしない。アリスがため息をついた。

 

「・・・いつもなら言う事を聞くのに・・・ごめんなさい幻夜さん。少し・・・家に上がってくれるかしら?」

 

 

「分かった、分かったから抜こうとするな上海!!」

 

 

上海が俺の眉毛を引っ張り始めたので大人しく上げてもらうことにした。眉毛は痛い。

 

 

「・・・異性の家とか先生の家しか知らねえぞ。」

 

 

俺は困惑しながらもアリスの言うように家に上がり、椅子に座らされた。上海は俺の膝の上に座った。もう懐かれたとかじゃねえな。

 

 

「幻夜さん、紅茶嫌いかしら?」

 

 

「嫌いじゃねえよ。お構いなく。」

 

 

上海が俺の髪の毛を引っ張った。何だよ、遠慮すんなってか。

 

 

「・・・はい、どうぞ。」

 

 

「どうも。」

 

 

俺は紅茶を啜りながら、アリスの部屋を見渡す。人形だらけで、それでも全員が綺麗に並べられていた。俺の膝にいる上海以外。お前も大人しくしろ。

 

「・・・人形ばかりでごめんなさいね。」

 

 

「いや、いいよ。・・・全部綺麗で生きてるみたいだしな。よっぽど作者が心を込めたんだろうな。・・・いいなぁ、こういうの。」

 

 

上海が俺をつついたのでアリスを見ると、アリスは真っ赤だった。

 

 

「あ、ゴメン、変なこと言った?」

 

 

「・・・う、ううん、・・・人形のことで褒められたのなんて凄い前だから・・・」

 

 

そうか?と俺は上海の頭をわしわしと撫でる。

 

 

「これ見て綺麗じゃないと思う奴はいないと思うがなぁ・・・」

 

 

上海は嬉しそうに目を細めている。

 

 

「・・・ありがとう。」

 

 

その後はアリスに人形の作り方、人形についてを教えてくれた。

 

 

結局帰り道に上海に後ろ髪を文字通り引かれたが、アリスが引き剥がした。

 

 

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その日をきっかけにしたのかどうだったか忘れたが、俺は幻夜に無理を言って氷の術の扱い方をインプットして貰った。

 

 

ただ、糸に応用すると言った時に、幻夜に言われたことが今でも残っている。

 

 

「そんなこと考えたの?相当な馬鹿だねー・・・まあちょっと予想外。」

 

 

それ以来、暇があれば俺は糸操作の練習を始めた。・・・実際に使いこなせるようになったのは幽夜の事件の後だ。それまでは辛うじて五本までしか扱えなかった。

 

 

ともかく、何故か俺は力をつけ始めた。今は思っていないが、アリスのように人形を作りたいと思ったのか人里のためにもっと働きたいと思ったのか、この時から幽夜に対して自動的に防衛本能が機能していたのか。今では別の理由があるものの、永久に分からない。

 

 

だが、そんな俺に強烈な衝撃を与えた事件が起きた。

 

 

龍神の兄が現れた。

 

 

俺が龍一を見た時、ゾッとした。自分のやりたいことだけに人生一つを使うような、どうでもいいことに全てを賭けそうな・・・正直全部その通りだったのは驚いた。愛する人のために七年以上封印されていたとかふざけてるだろ。

 

 

何というか龍一は・・・自分を人形に見立てているようだった。体が欠けても作り直す。死んでも作り直すだけ。

 

 

俺がより一層人形に惹かれたのは、龍一のせいでもあるのかもしれない。俺はマスターの事が面白かった。今でも面白いが・・・

 

 

俺は人里では比較的龍一と関わる事が多かった。幻夜は当時幽夜の件を悟られたくないせいか俺を取り込むことが多かった。あん時は何されたか知らなかったが。

 

 

だがまあ・・・そこまで深く関わるわけでもなく、向こうは俺を人格としてしか見てなかったし、普通に俺は幻夜で通った。他の奴らも俺と幻夜を間違えることが多かった。先生と上里とアリスは間違えることはなかったな。後髪の毛引っ張る人形。そこは間違えろ。

 

 

「・・・会うたびに髪の毛引っ張るな上海!抜けるだろうが!」

 

 

まあ、今アリスと付き合えてるのは半分以上上海のおかげなんだが。それは感謝。だが髪の毛はダメだ。

 

 

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アリスと会ってから大体八年、ずっと家に行ったり人里で買い物に付き合い、魔法の森電機製作所材料集め云々を手伝ったりなどをしていたが、アリスは俺を見ると顔を赤くし、俺も熱くなる症状が出た。

 

 

「・・・なー、上里ぉ、俺アリス見ると熱くなるんだが、お前原因分かるかー?」

 

 

俺は身近な人間の男の上里に相談した。上里は筆を取り落とした。

 

 

「・・・先生に熱くなるとかじゃないんですか?」

 

 

「あ?慧音先生?何でだよ。」

 

 

上里は頭を抱えると、俺に向き直った。

 

 

「幻夜さん、それ、多分幻夜さんがアリスさんの事好きなんですよ。」

 

 

「・・・マジで言ってんの?」

 

 

上里は微笑みながら勝手に何か頷いていた。

 

 

「いや、説明してくれよ。」

 

 

「ああ、ごめんなさい。・・・アリスさんとはずっと一緒に居ても嫌じゃないと思いますか?」

 

 

「・・・アリスがいいなら俺は別にいい。悪い気もしないし落ち着く。」

 

 

「うーん、間違いないですね。私にも分かりますが、きっと恋ですよ。」

 

 

「・・・恋か。幻夜と幽香の記憶みたいな事が俺にもか・・・ん?上里、お前私もって・・・」

 

 

上里はしまったという表情をして、慌てて

 

 

「私は別にいいでしょう!?とりあえず幻夜さんのそれは恋ですよ。どうするかは幻夜さん次第ですよ。」

 

 

俺はどうすればいいのかほとんど分からなかったが、ほぼ強制的に進められた。

 

 

幽夜復活のせいで。

 

 

次回に続く




ありがとうございました。幸夜は最初クローンだったわけです。


一応もう一話幸夜ストーリーですね。
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