銀河英雄伝説異伝   作:はむはむ

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第14話

[コード・ヴァルキュリア2]

 

強硬偵察の結果、同盟軍残存勢力は恒星アムリッッアを背後に、左翼にヤン艦隊、

右翼にビュコック艦隊残存、中央布陣に同盟軍総司令部ロボス提督が勤め、その

後方に旧ボロディン艦隊、ウランフ艦隊、アルサレム艦隊、ルフェーブル艦隊、ホーウッド

艦隊の司令部司令官を失った艦隊残存勢力の混成部隊となっていた。

 

これに対し、帝国軍は大きく右翼と左翼に分け、それぞれ左翼にキルヒアイス提督5個艦隊、

右翼にメルカッツ提督に2個枢軸艦隊が辺り、中央にラインハルト元帥隷下に3個艦隊が布陣

する形になった。

 

損傷箇所を修理し、または損害が薄い所から、厚い部分でへと兵力の委譲が行われ、再編成

しつつ、アムリッツアで再編成を行った同盟艦隊との会敵が開始される。

 

後に、アムリッツア会戦と呼ばれる戦いの始まりであった。

 

同盟軍の布陣は理に適っており、今なお大勢力、大凡8万隻を有する艦隊をであり、恒星アム

リッアからの太陽風もありまた、多くの機雷が敷設、その背後へと回り込むことが極めて困難

な中、まるで亀のように首を竦め、帝国艦隊が少しでも突出した部分があると、そこにクロ

スファイアーポイントを定め、一斉砲撃を行ってくる。大きく白熱した後、視界が白濁され

、そして、闇が戻るころには、多くのかって艦船であったものが、漂う。

何れ、太陽風に乗り、恒星アムリッツアを構成する原子の一つになり、また新たな命の源泉

になるのかもしれない…ふと、マークスはそんな事を思った。

 

突然、同盟軍は恒星アムリッツアに核融合弾を複数投下し、その爆発的な反応により、一気に

太陽フレアが放出される。

 

それに乗り、同盟第13艦隊ヤン提督の率いる艦船が高速戦艦と巡洋艦を中心とした、高速度が

出せる艦船のみで構成された艦隊を持って、帝国軍の後方に回り込みつつある。

その中で、艦首を回頭させ、ヤン艦隊を迎え撃とうとした艦船には、同盟軍、中央部、右翼より

一気にクロスファイアーポイントが設定され、原子の霧へと還元されていく。

 

「何と無様な!無理に回答せず、こちらも一気に同盟後方へと回り込め、全軍前進!」

ラインハルトよりの叱咤激励が降り、帝国軍はキルヒアイス提督の左翼と、メルカッツ提督の

右翼が競うかのように、恒星レグニッツアに敷設された地雷原を、志向性ゼッフル粒子で

処理しながら進んでいく。

だが、僅かに帝国軍右翼のメルカッツ提督の艦隊の運動が鈍く、いや、キルヒアイス提督の

神技とも呼べる動きについていけず、有機的連携を欠いた。

そこを同盟軍が後方に温存させていた、各残存艦隊の連合艦隊でもって迎え撃つ。

 

瞬間、ヤン提督の第十三艦隊が帝国軍の後方に位置し、そこから中央部本陣、ラインハルトの

陣営に猛烈な砲火を集中させて行く。

 

「無理に回頭はせず一気にキルヒアイスと連携し同盟軍を上下から挟撃する! 敵よりも多勢

であるこちらの数で押すのだ!」

ラインハルトは烈火のごとく、頬を染め、指揮を執る。

それは人間離れした美しさであった。

 

差は一瞬であった。

挟撃するのがラインハルトとキルヒアイスでなければ、ヤンの後ろに回った艦隊が、帝国軍中央部

を壊滅させた余勢をもってして、帝国軍こそが敗退していたのかもしれない。

 

キルヒアイス提督の艦隊が同盟軍の後方に完全に位置し、そこから同盟軍残存勢力艦隊の中央部を

食い破り、ついにはロボス提督の率いる、同盟軍総司令部を打った。

枢軸軍も変わらぬ獰猛さで、キルヒアイス艦隊が打ち減らした艦隊群を着実に仕留めていく。

 

大勢は成り、同盟軍の敗走が始まった。

 

ヤン艦隊は高速艦のみで構成されている艦隊特性を生かし、敗退する同盟軍の殿に付、追いすがる

帝国軍に出血を強いていく。

 

中でも、獰猛に追いすがる、枢軸軍ライザ艦隊とキルヒアイス隷下のビユッテンフェルト艦隊は大き

な打撃を受け、後に食い下がったが、ついには食い破れきれなかったと称される程の、大きな打撃を受ける。

この乱れた帝国軍の陣形を横目に、第13艦隊は遂に、殿の役目を務め終え、自らも離脱に成功していた。

 

手のひらの汗が急速に冷えていく。

何という激しい戦いであったことか。

しかし、当初は帝国軍の圧倒的勝利で終わるであろう事が約束されていたこの会戦で、ここまで帝国

軍が追い詰められるとは誰が予測出来ただろう。

ローエングラム公はお怒りだろうな…誰もがそう思っていた。

 

「…卿らに尋ねる。貴官らは良く戦ったがこの程度なのか? あまり私を失望させてくれるなよ!」

皆、表情を失い、虚ろな顔をしていた。

それでも、キルヒアイス提督だけは、口を開く。

「ラインハルト様…ラインハルト様…。勝者は私達なのです、勝利にこそ意味があり、勝者で

ある諸卿を罰するのは間違っています」

ラインハルトは何か言いたそうに、首を二三振ると、嘆息した。

「そうだな。諸卿らもご苦労だった。次こそは期待している」

 

終わったのか…生きてある事の方が不思議なほどであった。

 

こうして、対同盟防衛作戦、コード・ヴァルキュリアは終わりを迎える。

同盟は多くの有力な将帥や兵を失い、絶句するほかないほどの戦力の消耗でこの軍事的冒険の

つけを払った。

同盟の進行が心配されなくなった、現状、次は政治の季節である。

 

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