戦車道は衰退しました   作:アスパラ

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矛盾、その他おかしなところがあるかもしれませんが、よろしくお願い致します。
更新は結構気まぐれです。


妖精さんと、せんしゃどう
第1話


 vip局長がクスノキの里調停官事務所を訪れたのは、わたしが所長の業務にもいくらか慣れてきた頃のことでした。

 

「前所長の件、本当に残念だった。国連にとって実に惜しい人を亡くした」

 

 お祖父さんの弔問(2回目)です。今回はどうやら、わたしの新所長就任のお祝いも兼ねているようでしたが。

 

「彼が国連に尽くしてくれた功績はとても大きなものだった。いや、実に残念だ」

 

 身内が褒められれば、悪い気はしません。実際お祖父さんの件についてはわたしも心の整理がついていますし、そもそも死んでいないので冷静に対処できます。

 

「そこでだ、国連は彼のための追悼行事を行うことを決定したのだ」

 

「へ?」

 

 おっといけない。思わず声が漏れました。冷静に冷静に。

 

「局長、そういったことは一切」

結構です。葬儀は身内だけでひっそりしますから。

と言いたかったのに、局長はそれを遮ります。

 

「国連を上げて葬儀を行うことも考えた! しかし彼はそのようなことは望まないだろう。なら、彼が好きだったことで盛大に彼を送りだそうと!」

 

 なるほど、そういったことは一切結構です。こちらも立て込んでおりまして、お帰りはそちらのドアから

 

「実は国連所有の施設から、古い戦車が大量に発掘されたのだ! 君のお祖父さんも興味があって、いつか復活させようと二人で夢見ていた」

 

「……チャリオットですか?」

 

「いや、キャタピラで動くほうだよ。あの武骨なデザインもロマンの内だ」

 

「……それで?」

 

「なんと今回、MI6と国連の力を総動員してリストアへとこぎつけたのだ! まあ私の力があればたやすいことだよ。そこで! 君のお祖父さんを追悼する戦車同士の模擬戦大会を、国連主催で開催することにしたのだ!」

 

 なるほど、そういったことは一切結構です。こちらも立て込んでおりまして、お帰りはそちらのドアから

 

「君もお祖父さんの孫として出場してくれたまえ! 戦車はすでに事務所の前に用意してある! 君たちクスノキの里の活躍、期待してるよ」

 

 vip局長は言いたいことだけ言うと上機嫌で帰っていきました。入れ代わりでYが入ってきます。

 

「ねえ、局長は何だって? っていうか事務所の前に戦車があったんだけどあれは……、ってなんちゅー顔してんのあんた!?」

 

 なんちゅー顔? 横暴な上司にクソ忙しいのにもかかわらず社内レクリエーションの企画を押し付けられた部下の顔ですよ。まあ、それが実際どんな顔なのか、私もよく知りませんけど。

 

―――――――――――

 

「こっちがアクセル、これがブレーキ、曲がるときはこっちの棒で」

 

「なるほど。だいたいわかりました、姐さん!」

 

 操縦席に座るのは助手さんです。

 

「装填、頑張ってくださいね」

 

「はいはい! やりますよ、がんばりますよっ!」

 

 装填手はY。

 

「狙いは落ち着いて。正確にお願いします」

 

「お任せください‼」

 

 砲手はKさん。

 

 そしてわたしが車長です。教本を片手にあれこれと指示するだけのお仕事。楽ですね。

 

「あー、マム! いろいろ調べたんですが」

 

「ありがとうございます、プチモニ。それで?」

 

 プチモニの画面に今私たちが乗っている戦車が映し出されました。だいぶ古い写真です。

 

「どうも、Ⅳ号戦車というものですね。大昔の大戦争のときにつくられた戦車です」

 

「性能は?」

 

「主砲が75mm、装甲が10mmから35mmです。ほかに、機関銃が取り付けられています」

 

「それって強いんですか?」

 

「……局長が使用してる戦車は、主砲120mmの第4世代と呼ばれる戦車。これは、えっと……、第-2世代ぐらい」

 

「…………。ほかに何か分かりましたか?」

 

「あ、いえ。いろいろあさりましたが、これ以上のことはわかりませんでした」

 

「わかりました。では早速練習をはじめましょう」

 

 すると、Yが不思議そうに尋ねてきました。

 

「なんか急に乗り気になったけど、どうしたのさ。賞金でもでるの?」

 

「仮にもお祖父さんの追悼試合ですよ? そんなわけないじゃないですか。ただvip局長も出場すると聞いて……」

 

「あー、なるほど」

 

 あの局長を公にボコボコにする絶好の機会ですもの。逃すつもりはありません。

 

 私がおなかの底から湧き上がるほの暗い感情にそっと蓋をします。

 

「えっと、それでは……」

 

 教本の一番最初に書いてある、戦車を動かすときに車長が必ず言うべき一言を叫びました。

 

「パンツァ―・フォー!!」

 

 そう。

 

 この時私はすっかり失念していたのです。

 

 ここは、妖精さんであふれた面白おかしい世界だという事に。

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