戦車道は衰退しました   作:アスパラ

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第11話

 妖精さん、流出。

 

 大変な事態です。えらいことです。想定外です。

 

 一人焦っているわたしの心中を察したのか、会長が首を傾げます。

 

「なんかまずいの?」

 

「いえ、直ちに影響はありません」

 

 嘘は言ってません。ええ、今のうちは大丈夫でしょう。

 

「助手さん、ひとまず、家に作り置きしてあったお菓子で妖精さん捕獲用の罠を複数個所に作成してください」

 

「は、はい!」

 

「あと、この子はどこで?」

 

「はい、あの後丸山さんとお話していたんですが、その時に草むらから飛び出して来て」

 

「丸山さん?」

 

「ウサギさんチームのおしゃべりな人です」

 

 ウサギさんチームは基本皆さんおしゃべりなんで個人の特定に至らないんですが……。

 

「ではその方以外には見つかっていないんですね?」

 

「あ、いえ。あの場にいた戦車道メンバーのほとんどの方が目撃しています」

 

「では妖精さんの存在を絶対に口外しないように伝えて下さい。これはYに任せても構いません。事態は一刻を争います」

 

 妖精さんの存在しないこの世界で、妖精さんの増殖を許す。

 

 そんなことになれば、この過去の世界のバランスを、大きく崩すことになりかねなません。

 

「ええと、みなさん」

 

 ひとまず聖グロと生徒会の方々に口止めをしよう顔を上げると、

 

「あら、かわいいわね」

 

「ダ、ダージリン! あまり不用意に触れないでください! 毒があったらどうするんですか!」

 

「こ、これ、本当に生きてるんですか?」

 

「おーおー、なるほどねー、こりゃ妖精だわ」

 

「こしょばーい」

 

 絶賛異種族交流の真っ最中でした。

 

「あー……、えっと……」

 

 言葉を失います。気が動転して彼らを紹介してしまったわたしにも責任がありませが、慣れ過ぎじゃないですか? 特にダージリンさんと会長。

 

「ひ、ひとまず回収します!」

 

 そういって妖精さんを強奪します。

 

「先ほどご紹介したとおり、こちらが新人類である妖精さんです!」

 

 まず、情報の開示。

 

「実はアッサムさんの言うとおり、毒、というか人間に対して極めて危険な場合があります」

 

 印象の操作。

 

「混乱を防ぐためけっして他人に妖精さんのことはなさないでください。我々調停官には守秘義務違反者に罰則を与える権限があります。妖精関連事象に関しては国連調停理事会に全権限があり、それは異なる世界においても有効であると職務規定に記載があるので」

 

 小難しいことを言いつつ、ほんの少しのウソ。

 

「えっと、黙っていればよろしいの?」

 

「はい、ダージリンさん。でないと、とんでもないことになりかねません」

 

「具体的には?」

 

 ぐ、手ごわいですね、ダージリンさん。里の娘さんならこれで騙せ、じゃなくて説得できたのに。

 

「……我々が、妖精さんによって数千年の時を超えさせられた、といえば納得いただけますか?」

 

「な、なるほど」

 

 ダージリンさんの顔が青ざめました。

 

 少々事実と異なりますが、こういった場合はインパクトの方が大事。

 

「みなさん、ご理解いただけましたか? 万が一妖精さんを見かけたら、遠くからそっと見守って、すぐにわたしに連絡してください。会長さん、戦車道のメンバーにもそう言っておいてくれますか? 我々からも伝えますが、やはりこの世界の方から言ってもらった方が説得力もあるでしょうし」

 

「ん、りょーかい。……ねー、お菓子ちゃん」

 

「どうかしましたか?」

 

「今はあたしたち、クラスメイトなんだからさ、そんな気ぃ使わなくていいよ」

 

「…………ありがとうございます」

 

 やはり、ただものではないようですね。

 

-----------

 

「しかしまぁ、よく外に出られましたね」

 

「でんぱさんとはなしつけましたゆえ」

 

 われわれの尽力により、脱走した妖精さんはおそらく全員回収することができました。

 

 というか、妖精さんの存在自体とても不安定なんで、元々一緒に流れてきた5人の妖精さんを発見した段階で捜索を打ち切っただけなんですけどね。全員連れ戻すなんて、とても無理。

 

「それにしても、なんでバニーコスなんですか?」

 

「あみあみ、ちょーどよかったです」

 

 バニーコスのあみあみ部分は金網で、ウサギの耳は電波の状況を調べるためのものだそうです。増殖にはだいぶ制限がかかるようですが、これで電波はこびる娑婆にも大手振るって歩けるとか何とか。

 

「ここは我々がも元いた世界とは違うんです。あまり騒ぎにならないようにして下さいね」

 

「りょーかーいー」

 

 まあ、この人数ならば、わたしの心持ち次第で暴走は防げます。色んな意味で、もともと一心同体だったのですし。

 

 そうすっかり油断しきって、わたしは眠りにつくのでした。

 

 そして学ぶのです。この世界にある、フラグと呼ばれる概念を。

 

 

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