さよならのゆくえ   作:ニケヒデ

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 前編はいろはすが八幡を好きになるまでの話です。


さよならのゆくえ前編:1

[運命の一言]

 

 今日の会合は中止です。そう先輩に伝えるために奉仕部の部室のドアをノックしようとすると、部室内から先輩の声が聞こえてきた。

(…せんぱい…?)

 その声は酷くかすれていて、小さな辛そうな声。今まで冷めてる人だ思ってた。時折見せるあの優しさもあくまで奉仕部の仕事の一貫だと思っていた。何かをするためには犠牲はつきものだ。感情なんていい。結果さえ良ければいい。そんな人だと思っていた。それはどこかわたしみたいで、どこかで共感していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 でも違った。あの人はわたしなんかとは全然違った。たったそれだけの一言でそれを悟った…

 

『…本物が欲しい…』

 

 今までのわたしをすべて壊してしまうような、お前は間違っているんだとそう告げられたような気がして、わたしはそれ以来自問自答するようになった。

 

(わたしにとっての本物って何なのかな…)

 

 

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[変化]

 

 

 それからのわたしはどこか心ここにあらずと言った感じだった。クリスマスイベントは雪ノ下先輩と結衣先輩も参加してくれて人手も増えたから嬉しいはずなのに、先輩が二人を連れて来た時は何故か動揺してしまった。その後講習室に入ってからもいつもの席を雪ノ下先輩に譲る事になり、副会長の横で3人の様子ばかりいつの間にか見ていて、気づけば会議は終わっていた。

 

 

 

 家に帰りご飯を食べ、お風呂に入りまたいつもの自問自答をする。

(いったい本物って何なのかな…友情…もういまさらそんなものに興味はないし、偽物も本物もない。じゃあ後は1つだ。恋愛。わたしの葉山先輩を好きな気持ちは本物なのかな?好きってなんだろ?そもそもわたしは告白してOKされたら嬉しいのかな?嬉しくて涙流したりするんだろうか。逆にフラレたらどうなるんだろう?やっぱり悲しくて泣くのかな。どうなんだろ…………フラレたら先輩慰めてくれるかな♪

 

 

知りたい……な)

 

 

 

 

 

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[決断]

 

「君たちはクリスマスの何たるかをわかっていないようだな」

 平塚先生のこの一言と出してきたチケットでわたしと奉仕部の先輩方はディスティニーランドに行く事になった。雪ノ下先輩は年間パスポートを持っていてチケットは余っていたし、なんか3人が仲良く行くとか行かないとか揉めているのを見るとちょっと自分だけ仲間外れな気がして、むっとなったがその時いいことを思いついた。

 

「誰呼ぶ気だ……?」

「ヒ・ミ・ツです」

 

 

 家に帰宅し、明日の事を考える。わたしはこの話を平塚先生からされ、ある人物を呼ぶ事にした。その時のわたしは心の中で確かめたいと思っていたのだろう。最高のムードで告白すればおのずと気持ちはわかるはずだと。

 

 

 

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[告白]

 翌日の土曜日、奉仕部の3人、わたし、葉山先輩、何故か三浦先輩、戸部先輩、海老名先輩とディスティニーランドに来ていた。様々なアトラクションを楽しんでいるとあっという間に時間は過ぎて行き、夜が近づいていた。

 

 

 辺りもすっかり暗くなり、もうじき花火が上がる時間。そこで戸部先輩にお願いして二人っきりにしてもらい、その人と向かい合っていた。

「いろは話って」

「…葉山先輩…好きです。付き合ってください。」

 うん。言えた。後は返事だ。

 

「…すまない。いろはとは付き合えない。」

 

「…理由聞いてもいいですか?」

 フラレたのに意外と冷静に質問している自分がそこにはいた。

「…俺はいろはの事を後輩としか思えない。それに……」

(そうだよね。わかってました。好きな人いるんですよね…)

「……それがいろはの本当の気持ちかい?」

(えっ?)

 わたしの心がドクンとはねた。そして何故か涙が溢れてきた。葉山先輩の前にいるわけにも行かず夢中で走って離れていた。

 その後、帰り道いろんな人に慰められたが心は落ち着かない。

『…それがいろはの本当の気持ちかい?』

 その言葉がわたしの心を貫いた。心が刺されたような感覚。葉山先輩にフラレた事よりそれが、その言葉が不思議と一番辛かった。

(本当の…気持ち…?)

 何故かその時ある人の顔が一瞬浮かんだ。

 

 

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[本当の恋]

 

 

 

 帰り電車にはわたしと先輩だけだった。正確にはもっともな理由をつけ、先輩に話を聞いて貰いたくて引き留めた。

(先輩に甘えたかったのかな…)

こうゆうとき先輩は親身に話を聞いてくれる。

「はー……。駄目でしたねー……」

「……いや、お前、今言っても駄目なことくらいわかってたろ」

 そりゃそうだ。わたしも十中八九フラレるとわかっていた。

「……だって、しょうがないじゃないですか。盛り上がっちゃたんですから」

「意外だな、お前はそういう場の雰囲気とかに振り回されない奴だと思ってたぞ」

(…意外に先輩わたしのこと見てるんだな…) 

「わたしも意外です。もっと冷めてるんだと思ってました」

「……ああ、お前、恋愛脳に見せかけて、結構クレバーっていうか」

「わたしじゃなくて……先輩の話です」

「は?」

 その時わたしはいつも先輩に話しかける時のあざとさはなく、素の自分で話している事に後で気づいた。

「あんなの見せられたら心動いちゃいますよ」

「何が」

「……わたしも本物が欲しくなったんです」

「聞いてたのかよ」

「声普通に漏れてましたよ」

「……忘れてくれ」

「忘れませんよ……忘れられません」

 わたしは真っ直ぐに先輩を見て言った。

「だから、今日踏み出そうって思ったんです」

 本物を知りたくて、わたしの好きな人は葉山先輩なのかなって。でもなんか違和感があった。最近はサッカー部に行きたいとか葉山先輩に会いたいなんて感情は全然無かったし、奉仕部に行く方が多かった。告白するときもドキドキも緊張もそんなにしなかった。フラレた時もあまりショックじゃなかった。1つだけショックなのはまだわたしの答えが出ていないということ。そして一瞬浮かんだあの…

 

 

『…それがいろはの本当の気持ちかい?』

 葉山先輩、それってわたしの本当の気持ちは違うってことなんですか…?じゃあわたしは…

「その、なに。あれだな、気にすんなよ。お前が悪い訳じゃないし」

(ドキっ)

 それは不器用にわたしを気づかう言葉。普段はわたしの事なんて気にも止めないくせに、ふとした時に優しさを見せる。その優しさに少し鼓動がはやくなっていた。動揺したわたしは早口で捲し立てる。

「なんですか傷心につけこんで口説いてるんですかごめんなさいまだちょっと無理です」

「ちげぇよ……」

「ていうか、まだ終わってませんし。むしろ、これこそ葉山先輩への有効な攻め方です。みんなわたしに同情するし、周囲も遠慮するんじゃないですかー?」

(あぁそうか…)

「……お、おう。そういうもんか。」

「そういうもんです。それに振られるとわかってても行かなきゃいけないこともあるんです。(そうか…そうだったんだ…)あとあれです。振った相手のことって気にしますよね?可哀想だって思うじゃないですか申し訳なく思うのが普通です。……だから、この敗北は布石です。次を有利に進めるための……だから、その、……がんばんないと」

 気づけば先輩の前で泣いていた。葉山先輩にも誰にも知られたくないわたし。みっともないわたしもこの人の前では見せてしまう。

「すごいな、おまえ」

 それはこの人が優しいから。葉山先輩も優しいけどあれは違う。どこか冷たい優しさ。でもこの人は違う。あざとくても、わがままでもわたしを受け入れてくれる。温かい優しさ。

「先輩のせいですからね、わたしがこうなったの」

 わたしが本物を欲しがったのも、この人のせいだ。わたしが気づいてしまって辛くなったのもこの人のせいだ。この人には大切な人がいる。その辛さは不思議と悲しくもなく心がとてもあたたかくドキドキしていた。

「……いや、会長の件はそうだけど他のは」

 だってわたしはその時本当の恋をしている事に気づけたから。

 

いつかこの人の大切な人になりたいから。

 

いつかこの人の本物になりたいから。

 

やっと答えを見つけた。

 

ずっと欲しかった『本物』の答えを

 

「責任、とってくださいね」

 

 

 

 

 この先輩に『本物の恋』をしているということを…

 

ー終ー

 

 

 




 いかがでしたでしょうか?二次小説を書いたのは初めてのため、文章がおかしかったり、言い回しが変だと思うこともあると思いますがそこはご容赦ください。笑
 前編は基本いろは視点の原作準拠ですがここからはオリジナルストーリーも入れながら二人のこれからを書いて行きたいと思います。
 あと、原作の大幅コピーって規約大丈夫ですかね…前編はセリフを少し使ってしましましたが…大丈夫と信じよう!
 なるべく早く書きたいと思いますので読んでくれれば嬉しいです。どうぞよろしくおねがいします。

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