さよならのゆくえ   作:ニケヒデ

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 昨日に続きアップです!物語の進行度が急に早まりますが、ご了承ください。
 今回書いてて気づいたんですが、それぞれの一人称が原作と一部違うことに気づきました(汗)
 原作では
 雪ノ下⇒私
 由比ヶ浜⇒あたし
 となっているところを
 雪ノ下⇒わたし
 由比ヶ浜⇒わたし
 になっておりました…
 訂正します!
 それでは続編です!  


さよならのゆくえ後編:5

[あれから]

 あれからわたしはずっと先輩に会っていない。三年生は受験のため新年度以降はほとんど登校して来ないというのもあるが、その前からわたしは先輩と会わなかった。会わないようにしていた。

 それは…なんでなんだろう…?自分でも分からない。もちろんあの件が大きく影響しているんだろうけど…

 

 

「はぁ…何だかなぁ…」

 

 ため息を吐くと同時にわたしは生徒会室の机に突っ伏す。するとそんなわたしを戒める様にドアがノックされた。

 

「はーい」

 

「邪魔するぞ」

 

 心にもない社交辞令を述べて入ってきたのはこの学校の国語教師で、長い髪にスラッとした背の高い美人系。見た目はモテそうだが、中身が少し残念なせいで30歳前後で今だどくし…ゲフンゲフン…もとい、平塚 静先生だった。

 

「平塚先生どうしたんですか?」

 

「一色。送辞の文はできているかね?」

 

 送辞。卒業式で在校生代表として卒業生に感謝とはなむけの言葉、これからの決意などを述べるもので、通常今までの文章を元に少し変えるだけで良かったが、先輩達にはいっぱいお世話になったから自分の言葉で作りたいとわがままを言ったのだ。

 

「い、いえ、ちょっとまだ考えられなくて…」

 

 しかし、その先輩達のことばかりを考えて手につかず、まだできていなかった

 そう言うと平塚先生は渋い顔をする。

 

「ふむ…それは困ったな…」

 

 

「え?何故ですか?」

 

「実はそろそろ一度提出して欲しかったんだ。おかしな所があれば訂正しなければならないからな」

 

「…そうなんですか…すいません…ちょっと別の考え事してて…」

 

「…比企谷達のことだろう?」

 

「……」

 

「まぁいい。顧問には私からもう少し待って欲しいと伝えておく」

 

「すいません…」

 

「いや、気にするな。君の意志を汲むよう進言したのは私なんだからな」

 

 

 そう。実は送辞の文をまるっきり変えたいと顧問に相談した時、

 

 

 

『ダメだ。卒業式あたりは忙しいし、訂正してる余裕はそんなにはない』

 こんな風に一度は断られたのだった。しかし

 

『すいません。一色はお世話になった先輩にちゃんと自分の言葉で感謝を伝えたいそうなんです。私からもお願いできませんか?もし良ければ私が細かなところは見ますので』

 

 とたまたまそれを聞いていた平塚先生が進言してくれたのだ。

 

『……平塚先生がそこまで言うなら仕方がありませんね。一色の気持ちも本物みたいですし。その代わり一色いい送辞を頼むぞ!』

 

『はい!』

 

 

 

「あの時はありがとうございました」

 

「元々君に依頼したのは私だからな。それを君なりに考えていてくれて嬉しかったよ」

 

 去年の春、わたしは平塚先生に送辞で先輩達を安心して卒業できるようにと頼まれていた。そのために二年連続で生徒会長に立候補したのだから。まぁ例えこの依頼が無くても立候補しようと思っていたが。それくらいわたしは生徒会という仕事に魅力を感じていた。

 

「それでは私は戻るとするよ。それでは送辞の件なるべく早く頼むぞ」

 

「はい。ありがとうございました!」

 

 平塚先生はそう言って生徒会室のドアに手をかけ、そこで止まった。

 

「…一色、君は比企谷達を慕っていたのは知っている。そしてもう甘えるなとも言った。そのせいで君を追い詰めてしまっているのなら「先生!」」

 

 平塚先生の言葉を遮りわたしは言った。

 

「…先生は何も悪くありません。わたしもやりたかった事ですし、先輩達に最後に成長したところを見てほしいんです。それにわたし結構これでも経験値ついたんですよ?」

 

 平塚先生はこちらを一度振り返り

 

「…ふむ。やはり君は変わったな。いい女になった」

 

 優しい顔でそう言った。

 

「えへへ///よく言われます///」

 

「ふふふ。それじゃあ頼むぞ一色いろは生徒会長!」

 

 今度こそ平塚先生は生徒会室から出ていったのだった。

 

 その後、わたしは残っていた仕事を終わらせ、少しの間送辞の文を作っていた。窓の外もだいぶオレンジ色に染まりだしていた。

 

「ふー…わたしも今日はこれくらいにして帰ろう。なんかわたしも立派に社畜みたいだなー……ふふふなんかこのセリフ、先輩みたい」

 

 背筋を一度伸ばし、後片付けを済ませ生徒会室を後にする。鍵を職員室に戻し、帰ろうと思ったがわたしの足は自然とそこへ向いていた。

 特別棟の今はシールの跡だけが微かに残る何も書かれていない白いプレートが刺さっている教室。

 

「先輩…」

 

 ドアにそっと手で触れているとここであった事が昨日のように思い出されてくる。

 『奉仕部』。その名前がかつてはこの教室の名前だった。プレートには変わらず何も書かれていなかったが、誰が貼ったか可愛いシールが少しずつ貼られている量が増えていたのを覚えている。

 あの件とは去年の10月のことだった

 

 

 

 

―去年の10月―

 

 

 わたしは栞ちゃんの気持ちを考え、先輩との距離を取っていた。でもどうしてもまた会いたくて、甘えたくなって奉仕部へと足を運んだのだ。

 しかしまたあの時のように中からいつもとは違う感じの声が聞こえドアの前で足が止まった。

 

 

「今月をもって奉仕部は廃部とする。来年は受験だからな。理解してくれ」

 

「でも、そんな急に!」

 

「由比ヶ浜さん急ではないのよ。これはしばらく前から決まっていたことなの。私達は今年受験生。つまり必然的に部活動は引退なの。それはどこの部活だって一緒。元々この部活は私達のための更生機関だったのだから私達が引退した瞬間この部活は廃部と決まっていたのよ」

 

「でも!あの依頼は!ヒッキーの依頼はまだ終わってないじゃん!まだ…何も…」

 

「…由比ヶ浜。いいんだ。時間があったからといって解決することじゃない。それにどんな形であれ依頼は終わったんだ。たとえそれが廃部になったからだったとしてもな…」

 

「でも…そんなのって…」

 

「…ふむ。この教室も片付けなどがあろう。それも含めてあと一週間時間をくれるよう学校側には私から伝えておく。それでは頼むぞ雪ノ下」

 

「…はい。分かりました」

 

 平塚先生が中から出てきてわたしに気づいたが、こちらを一度見て職員室へと戻っていった。

 中からはしばらく誰もいないかのように声がしない。少しすると

 

「…今日はもういい時間ね…明日から片付けをしましょう。お世話になった教室だもの」

 

「うん…」

 

「……」

 

「それじゃあ…また…」

 

「…おう」

 

「…あたしも帰る…ね…」

 

「…おう」

 先輩達が中から出てきそうだったのでわたしはなぜか慌てて逃げてしまった。

 前々から平塚先生から聞いていたとは言え、本当に廃部になるんだと思うと心が痛かった。わたしでこれだけ辛いんだ。先輩達はもっと…

 その一週間後。奉仕部は完全に廃部となったのだ。

 

―終―

 




 いかがでしたでしょうか!物語のクライマックスまであと一話くらいですので読んでくれている方最後まで読んでくれたら嬉しいです!
 あとご感想もお待ちしておりますのでぜひ!
 それではまたすぐにアップします!

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