しばらくカタパルトで待ってると、艤装を外したアーガスが走ってやってきた。
装甲板の付いたコートを普通のコートに変え、鉄の傘は置いてきている。
よく持てるよなぁ、あの傘。
アーガスと響ちゃんを連れ、食堂で一緒にご飯を食べた。
お昼時から過ぎていた為、あまり食堂にいる人は多くなかったが、それでも1500人が使う食堂である。
広いし、それなりな人数がご飯を食べていた。
僕や響ちゃんたちを見ると皆が敬礼してくるけど、とりあえず、それを諌める。
食べてるときくらい、ゆっくり食べよう?軍じゃ当たり前の行動なんだろうけど。
それでも何人かに話しかけられ応答してたけど、わりとみんなフレンドリーな感じで喋ってくれる。
まあ、初日にあんまりかたくしないで?って『お願い』したから初日はけっこうあれだったけど、数日顔を合わせればこんな感じなのかな?
朝昼晩と同じように食堂でご飯食べるし皆慣れたのだろう。
響ちゃんたちの方にも人が集まっている。
女性ばっかだけどね。
こっちは男ばっかりである、ちょっと悲しい。
周りに囲まれながら3人でご飯を食べ、アーガスは午前中に引き続き訓練に、響ちゃんは司令執務室に、僕はカウンセラーのいる医務室へ各々移動していった。
メンタル的な話は早めに処置しておこうと思ったからだ。
この数日、紙ばっかり見てて飽きたんじゃないよ?ほんとだよ?
「ありがたい。司令官自ら乗務員のメンタルチェックの相談に来てくれるとは・・・」
「戦闘が始まれば余裕はなくなってきますし、それが続けば次々と倒れていきます・・・平時に早めに対応しておく方がいいと判断しましたので。」
命を懸けなければならない戦闘をする『戦闘艦』に乗っているのだ。
『今』は問題なくても、それが続けばストレスは溜まるし、何もなくても緊張した期間が長ければそれでも体調を崩す。
メンタルってスゲー大事な事だと、僕は思うんだ。
「確かにな・・・と言っても、ここは軍だ。精神力については鍛練している。柔な奴らはいないから、そこは安心してほしい。」
ん?じゃあ、何で要望書なんて出したんだろ?
「私がお願いしたいのは『艦娘たち』の方だ。少佐たちはその辺の教練を受けているだろうが、新任の士官に改めて話をしておくのは私達、医務官がやる仕事なんだ。」
そういうことか。
艦娘たちと意思疏通できる事が軍の規定とはいえ、一番、艦娘たちと接触する機会があるのは『司令官である僕』だ。
それに、艦娘たち『戦闘員』が戦えなくなれば、この艦の人間は絶望的状態になるんだ。
突然この世界にやって来たこと、艦娘たちと会えたこと、いろいろあって考えないようにしてたけど『僕』は『少佐』で『司令艦』という『戦闘艦に乗り』、『戦いを指揮する立場』に『いる』のだ。
この艦に乗る1500人の命を預かっている立場なんだ。
改めて自身が置かれている立場を認識した。
・・・重い・・・
一般社会人だった僕程度が浮かれてていい状況じゃない・・・
顔に出ていたのだろうか、医務官の男性は優しく声をかけてくれた。
「大丈夫だ。君が指揮する『艦娘たち』はそんな柔な子達じゃないだろう?私達は浮かれているだろう士官たちにしっかり現実を見据えてもらいたい、という上からの命令で話をしているだけだ。私が見ている限り、君は執務も一生懸命やっているし、響君やアーガス君とも仲良くしているのを見ている。艦の乗務員も君なら大丈夫と思っているよ。これからもこのままやっていってほしい。それを言いたいだけなんだ。」
よくわからない状況に置かれ、ただできることをやっているだけなんです。
でも、それをちゃんと見てくれて評価してくれるなら、僕は頑張ろうと思う。
響ちゃんやアーガスの為だけではない、この艦に乗っている人々のためにも頑張ってやっていこう。
そのために、言葉を紡ごうと口を開く。
「ありがとうございます。まだまだひよっこな僕ですが、何かあれば言ってください。僕は全力でやっていきます。」
「こちらこそありがとう。この艦に乗ってくれた司令官が君のような若者でよかった。今後ともよろしく頼むよ。」
「頑張ります。」
その言葉を出そうと思ったら、全艦に非常事態を報せる大きな音とアナウンスが流れてきた。
『第一種戦闘警報ッ!繰り返します。第一種戦闘警報ッ!!各員は戦闘配備に移行してくださいッ!!繰り返します・・・』
戦闘ッ!?
アナウンスを聞くや否や、僕は医務室を出て、戦闘指令室へ全力で向かうのだった。
Tips:医務官は機⭕新世紀ガ⭕ダムXのあのお医者さんをイメージ