僕の知らない『艦隊少女』のいる世界   作:酔いどれリンクズ

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第1章・6話

今回の3人目『夕立』は、ゲームで言う所謂『ドロップ艦』だった。

戦闘後にたまに仲間になる、その海域のランクによってもドロップ艦が変わる『ゲームの仕様』。

この世界でも、その仕様に変わりはなく、航海中に仲間になったり、その司令官が所属する基地にひょっこりいるらしい。

深海棲艦は海に沈んだ『かつての艦たち』が怨念を持って人類に戦いを挑んでいる。

 

その怨念が浄化されればどうなるか?

 

『かつては人と共に戦った艦』である。

となれば話は簡単だ。

戦って倒した深海棲艦の一部が大きな光に包まれ、艦娘の姿に移り変わっていく。

これは、実際に『観測され』『確認されている』事象なのだ。

なれば、『艦娘=深海棲艦』という図式ができるのか。

それは否定されている。

『全ての深海棲艦が艦娘になることはなく』『艦娘が深海棲艦に成った事実』はないからだ。

あくまでも『近い』存在だが『別物』である、と結論付けられている。

深海棲艦から艦娘に『なった』少女たちは、自身が深海棲艦『だった』ことを『ほぼ』覚えていない。

深い海の底『視界も意識も暗闇な場所にいた』という記憶と『1つの思いを持っていた』ということは覚えているらしい。

それは艦娘それぞれ違うのだが『港に帰りたい』『誰かを守りたかった』『救いたかった』と思いはそれぞれあるのだ。

 

いずれにしても、艦娘がいなければ、深海棲艦と戦うことも出来ない。

共通の敵であり、手を取り合って戦わなければならないのだ。

それは変わらない事実だ。

 

まあ、深海棲艦の目的とか艦娘たちが何なのか、なんて専門の研究機関が研究すればいい。

僕は『頭に覆い被さっている』少女の行動をどうすればいいか悩んでいた。

少女の名は『夕立』、僕の3人目の艦娘である。

 

昨日、初の実践のあと、夕立と挨拶するとそのまま「また来るね~!」と出ていってしまいアーガスが慌てて後を追いかけていた。

僕も疲れていたこともあって執務室から動くことができず、戦闘処理と通常業務を行い、その日は寝てしまった。

次の日、お昼に赴任地の護衛艦が来ることもあり朝食を早めにとって、その準備を響ちゃんと執務室でやっていると、昨日と同じく勢いよくドアを開け放ち夕立はやって来たのだ。

響ちゃんは「ノック・・・ドア・・・」と哀しみを帯びた目をしながら呟いていた。

・・・蝶番、壊れないかな?

 

 

「昨日の宣言通り来たっぽい?」

「ああ、うん・・・いらっしゃい?どうしたの?今日は訓練ないから、自由時間だけど、ここに来ても何もないよ?」

 

 

今日は昼から護衛艦との合流もあるから、訓練は夕方までお休みである。

響ちゃんは横で書類仕事を一緒にやっている。

アーガスは多分、自分の艤装のチェックとかしてるんじゃないかな?

特に指示してる訳じゃないし、好きに動いている、と思う。

 

 

「用事がないと来ちゃダメっぽい?」

「ん~?全然構わないよ?ここには娯楽設備がないし、面白くないんじゃないかなぁ、って思って。」

 

 

人懐っこい笑みを浮かべながら、首をかしげて、頭からハテナマークが出ている感じだ。

子犬っぽい感じだよね、この子。

 

 

「提督さん、っていう娯楽設備があるんだよ~♪」

 

 

そう言いながらトテトテと僕の後ろにやって来て、僕の頭に抱きついてきた。

乗ってきた、と言ってもいい。

首折れますがな。

僕は人形とかぬいぐるみ的なものですか?

 

 

「夕立さん、司令官の邪魔をするのは止めてください。ただでさえ書類捌くの遅いんですから、判子も押し間違えますし、計算間違えてる箇所が増えたら他の部署に迷惑がかかります。」

 

 

無表情でこの威圧である。

おい、止めてください。

僕のメンタルは杏仁豆腐くらい柔らかいぞ?

 

できる妹とダメな兄な、わかりやすい構図なのである。

 

 

「提督さん、癒してあげないとダメっぽい?これなら私も癒されて提督さんも癒されお仕事捗る、一石二鳥だよ?だって・・・」

 

 

『昨日も今も辛そうな顔してるよ?』

 

 

空間にヒビが入る、空気が凍る、とはこういうことを言うんだろうか。

顔には出ていなかったと思う。

元々『この体』は実戦経験もあり、相応の訓練を行ってきた『橘優』のものだ。

『艦娘のいない世界の橘優』ではない。

響ちゃんは久々の実戦で感覚的に抜けきってないんだろう、という認識でいたんだと思う。

『これ』は僕の問題で、彼女たちにはわからないものなのだ。

いつまでかかるか分からない問題だし、いつまで続くか分からない。

・・・できるだけ気が付かれないように、は無理な話か。

 

 

「・・・久々の実戦だったでしょうし、覚えていただきたい事は最低限覚えていただきました・・・トラック泊地の司令艦と合流時間まで休息にしましょう。」

「そっか・・・実戦の疲労が抜けてなかったみたい。ごめんね、響ちゃん。夕立ちゃんもありがとう。」

「ぽいぽいぽい♪」

「休息した分はあとでしっかり働いてもらいますから。」

 

 

仕事は残ってるからね。

そりゃそうです。

 

響ちゃんは書類を整頓し立ち上がると「飲み物をとってきます。」と言って部屋から出ていった。

残された僕と夕立ちゃんだが、とりあえず、僕はやることがないのでそのまま待っていることにしよう。

・・・夕立ちゃん、首が悲鳴をあげてるので頭に乗るのやめて?

 

 

 

「・・・ちゃんと指揮していたので勘違いしていました・・・急いではダメでした・・・」




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