私は同系や同型、同名の仲間たちと少し違っていた。
私たちは基本的に同系の同型駆逐艦と共に誕生し、訓練を共に行ってから各司令官の元に初期艦として配属される。
『暁型駆逐艦2番艦、響』
それが私の名前。
私は生まれから他の『響』とは違っていた。
本来は同じR系、C系で固まって誕生する。
けれど私は違っていた。
私が誕生し、最初に会った駆逐艦は『C系の暁』だった。
そのあとに会ったのが『C系の雷』と『C系の電』。
私は『R系』であり、なぜ『同系の仲間たち』ではなく『C系の仲間たち』だったのか。
今までそのような事例はなく、同じ『R系響』の枠は空いているはずもなく、そのままのメンバーでしばらく生活することになった。
R系とC系の同名の違いは能力的な所もあるが、性格や服装などいろいろな所に違いがある。
そして一番の違いは『仲間意識の高さ』だろう。
R系も暁型の仲間たちとの『仲間意識』は高いのだが、C系の『仲間意識』よりは低いだろう。
と言うより、C系の暁型が『仲間意識』が高すぎるのだろう。
ご飯も一緒、お風呂も一緒、寝るのも一緒、勉強も訓練も一緒・・・
ほぼ、別々で行動することはない。
その時点で『私』は彼女らと隔たりがあり、ある程度は一緒に行動していたが、段々、一人で行動することが多くなった。
私のコミュニケーション能力の低さも悪いのだろうが、3人の感覚についていけなかったのもある。
姉妹たちは一緒に行動したがったが、私は別々の行動をしたかった。
同時期に誕生したR系暁型の様子も見ていたが、C系と似たような感じだった。
だいたい一緒に行動し、たまに一人で行動していることもあるが、すぐ姉妹の誰かと同流することが多かった。
『姉妹たち』の事は好きだ。
一緒にいることが嫌なわけではない。
ただ『R系』と『C系』、この生まれの違いは同じ暁型でも『天と地の差』があるのだろう。
『同名』の艦娘は、好き嫌いや趣味など、多少の違いはあるが、性格などはだいたい似通っている。
『R系響は引っ込み思案のちょっとおどおどした感じ』な性格で『C系響は感情があまり表に出ない暁型の中では冷静な立ち位置にいる性格』なことが多い。
自身で言うのも変だが『私はR系』だけど、C系の響の性格を継承していると思う。
この辺は『私の姉妹たち』と同じなのだろう。
だけど私は『R系』である。
『C系響には成りきれず』、かと言って『R系響との差異に違和感を感じ』、どちらの『響』にも成りきれない私がいた。
当時は思い悩んでいたんだと思う。
私たちを教育していた教官は、それを感じたんだろう、教練課程が済んでいなかったが『私たち』を各々司令官に配属させていった。
離れ離れになることは寂しかったが、これはこれでよかったんだと思う。
多分、教練課程終了を待たずして『私』は潰れていたかもしれない。
私が配属になったのは『横須賀鎮守府の斉藤中将』の下だった。
先に話した通り、私たち『暁型駆逐艦』は『初期艦』として配属されることがほとんどだ。
『姉妹たち』は『初期艦』ではなかったが『新米少佐』の下に配属になったのは確認している。
前線に出ることはあまりなく、所持戦力は充実した中将の下に配属になって私は混乱したが、斉藤中将から今でも覚えている印象的な言葉をもらった。
「君は他の暁型響とは違う力を持っている。その力は私ではなく『これから現れるだろう彼』にそれを使ってほしい。」
私にどんな力があるのかは知らないし、中将もわからない、らしい。
けれど、出生が他と違う私の存在は必ず意味があり、それは今後、必ず開花するだろうと中将は言った。
他と違う私を励ます方便だったのかもしれない。
思い悩んでいた私を助ける言葉だったのかもしれない。
だけど、私は少し救われた気がした。
『いずれ来るその人』のために頑張ろうと思った。
それからは斉藤中将の秘書艦である『霧島さん』の下で演習や鍛練、秘書艦や補佐官の実務をこなすようになった。
霧島さんの指導は厳しく、実務や鍛練に一切の手心を加えることはなかった。
他の駆逐艦が遠征や実戦に出ている中、ひたすら秘書艦・補佐官の実務を行い、演習は戦艦・空母が戦う中、一人だけ駆逐艦な私はそこで練度を上げていった。
そんな生活をしばらく続けたある日、一人の『大尉』が斉藤中将の下にやって来た。
初めて見たその人は『生きている人の眼をしておらず、何処かしら人形のような印象』を感じた男性だった。
呉鎮守府から来た彼は新たな司令官候補であり、私が初期艦として配属される可能性が高い人だった。
正直、大丈夫なのだろうかと思った。
2ヶ月の『司令官プログラム』を受けて、任地へ配属される。
私と霧島さんは彼の補佐官として一時的に配属となり、彼のバックアップすることとなった。
『最初から最後まで』彼は可もなく不可もない結果を残し、最終演習まで行った。
机を片付ける事はほとんどできなかったが・・・
最終演習は斉藤中将の艦隊を使って、相手に勝つことであって、はっきり言えば『負けることなど』あり得ない演習でほぼ問題なく終わっていった。
しかし、終わりの一斉射撃の時に『それは起こった』。
「・・・はっ?」
とても抜けた声が聞こえた。
声の方を見れば『人形のようだった』彼の瞳には光が宿り、キョロキョロしだしていた。
キョロキョロした後、物思いに耽出したので、指示の出し終わった霧島さんにその事を伝えると、その人に声をかけ、演習が終わった後、私に彼を執務室に連れていくよう指示を出したのだった。
唐突な変化に少し驚きもあったが、指示通り『彼』を執務室に送り、私は斉藤中将の下へ足を運んだ。
斉藤中将と霧島さんの話は終わっていたらしく、到着した私に対して辞令が下された。
『橘優新任少佐の補佐官として任務にあたれ』
それが私に下された辞令だった。
補佐官として任務に従事するにあたり、いくつかの留意点も伝えられた。
『新任少佐』としてではなく『ルーキー・・・新兵』と思って事にあたる事こと、『心理状態』には常に気を付け変化について常時報告すること、『彼』の側からできるだけ離れないこと等、『彼』を『守ること』を徹底した留意点が伝えられた。
『あの』変化はそれだけの意味があるのだろうか?
その事は私に伝えられず、本来の任地『呉鎮守府』から前線の『トラック泊地』が新たな任地であることを伝えられた。
『彼』に何があるのかはわからないが、やることは同じである。
ただ任務に従事すればいい、とそのときは思っていた。
霧島さんと共に『彼』の執務室へ赴き、窓の外を見ながら高笑いをあげている彼の姿を白い目で見ながら、霧島さんが指令書を彼に渡す。
彼と言葉を交わした霧島さんから、後ろに隠れていた私を彼の前に送りだす。
「少佐?あと1つお知らせがあります。」
机を片付けようとしたのだろう、後ろを向いていた彼が振り向き、私は自己紹介をする。
「霧島さんに替わり、これから補佐官になります。R系駆逐艦『響』です。よろしくお願いします。」
霧島さんの下でやってきたからしっかりできるはずだ。
先程の中将からの話を思い出しながら彼に挨拶をする。
彼は少し驚きながら、『光の灯った眼』で私を見ながら挨拶をしてくれた。
「うん。よろしくお願いします、響ちゃん。新米な少佐で不便をかけるけど助けてくれると嬉しいです。」
そう言って私の前に手を差しのべてきた。
てっきり敬礼で返してくると思って少し驚いたけど、出されたその手を恐る恐る握った。
繋いだ手は暖かかった。
表情を見るとぎこちないけど『暖かさ』を感じる笑顔を見せてくれた。
この人はちゃんと『私』を見てくれる。
他の『響』と違う『私』をちゃんと見てくれる。
この時に『私』は『彼』の下で頑張ろう。
この笑顔のために力を尽くそう。
そう思ったのだった。
Tips:初期艦な立ち位置ですが、練度的に響はLv60と他の初期艦より遥かに高く、スキル覚醒済み。基本は10~15。ちなみにアーガスはトラック泊地前で15、夕立は9くらい