駆逐艦や軽巡と戦闘を行って3日後、ウォルコットさんのアルテミシアとは既に別れ、進路を少し北に向けて現在は南下しながらトラック泊地の方へ帰っている。
ウォルコットさんと別れる前日の夕食は、簡単な食事会が開かれ、ウォルコットさんの所属艦娘とも会ったりした。
第1補佐官のネルソンさんもおり、とても真面目そうで苦労人な雰囲気を漂わせている印象の女性だった。
これからのことや、自身の戦果を話したり、賑わった食事会だったと思う。
工厰妖精にレーダーの改良をお願いすると次の日には今までの1.5倍の索敵能力のあるものに変わっていた。
次の日には改良した物出してくるなんて、こいつ本当になんなんだ?
あの戦闘の後、数回敵影を捕捉したけど、駆逐艦タイプが2隻とかの編成だったからすぐに戦闘は終わっていた。
アーガスの艦載機でほぼ終了ですよ。
明日の昼にはトラック泊地に帰れるし、7人目(厳密には6人目)の艦娘も待ってるし、早く帰れればなぁ、とか思っていた。
「橘司令官、今日までの戦闘報告と消費資材の詳細あがりました。現状の消費量であれば、あと、5回補給なしで哨戒に出れますね。」
「ありがとう、響ちゃん・・・夕立ちゃん?首痛いので降りてもらえない?」
「今、ちょうどいい位置だから無理っぽい?」
「僕の首が無理っぽいんだけど・・・?」
僕の執務室に艦娘たちが集まってる。
響ちゃんはいつも通り補佐官として僕の実務の手伝いしてるし、ティルピッツはソファーに座って本を読んでる。
木曾は窓の方に背を預け、腕組んで立ちながら瞑想してるし、夕立ちゃんは僕の頭に乗って(抱きついて?)ぽいぽいサウンドを流してる。
アーガスと吹雪は哨戒に出ているため、今はここにいない。
唯一、アーガスだけが用事がないとここには来ないなぁ・・・基本的に訓練や哨戒に出ているから当たり前なんだろうけど。
不意に木曾が目を開け、ボソッと声を出した。
「・・・嵐が来るな・・・」
「嵐?」
「外の空気が変わった気がする。少し見てくる。」
そう言ってさっさと部屋を出ていく。
海は気まぐれだもんね。
穏やかなときもあれば、人間一人では太刀打ちできない恐怖の対象に変わるときもある。
嵐で司令艦が航行不能になることはないけど、索敵とかに一部不具合が出るかもしれない。
「橘より作戦司令室へ。周辺の天候状況に変わりある?」
『指令室より橘司令官へ。左舷に嵐の予兆を発見。進路には問題ありませんが、あちらへの索敵が一部不能になる可能性があります。』
「左舷の警戒を強化して?こっちに来そう?」
『現状は不明です。状況代わり次第、即時通達します。』
「よろしくお願いします。」
・・・なにもなければいいけど。
・
・
・
フタイチマルマル、進路にはなかった雨雲は見事に横から流れてきた。
司令艦は大きいから揺れることはないけど、外は大粒の雨と台風ではないにしろ、それなりに強い風が吹いていた。
作戦指令室から見える外は完全なる暗闇で、正直、レーダーとかなかったら動くこともできなさそう。
「ここ数日見てきた海だけど、月明かりや星が見えないと本当に不安になるね。」
「そうですね。ここまで暗いとレーダーだけが頼りです。工厰妖精さんに改良してもらっててよかったです。」
響ちゃんからも同意をもらえた。
接敵している状態なら夜戦とかあるだろうけど、この海の状態で、深海棲艦は活動するのだろうか?
ぼんやりそんなことを考えていると、観測士が奇妙なことを口にした。
「レーダーに艦・・・あれ?消えた?」
「何かあった?」
「いえ、後方よりレーダーに機影を確認したのですが、すぐに消えました。現状も反応はありません。」
「1機?」
「はい。1機です。」
「ソナーの方には反応ありません。」
「エラーか?いや、この間改良してもらったのにそれは・・・一応、警戒して、第3種警報の発令を。」
「はい。『作戦指令室より全クルーへ通達。第3種警報が発令されました。クルーは警戒に当たってください。繰り返します・・・』」
何もなければそれでいいんだ、何もなければ。
・
・
・
日付が変わってしばらくは起きてたんだけど、気が付いたら寝てたみたい。
時計を見ると午前4時くらい。
嵐からはまだ抜けてないみたい。
執務机の後ろの窓から雨の音と風の音が聞こえる。
まだ覚醒していない頭を無理矢理覚まし、現状の報告を受けようと、指令室へ連絡をとろうと通信を入れようと思ったちょうどその時、けたたましい警報の音が全艦に鳴り響いた。
『作戦指令室より、第1種戦闘配置警報ッ!!第1種戦闘配備警報ッ!!本艦後方より敵影捕捉ッ!!乗組員は直ちに戦闘配置についてくださいッ!!繰り返しますッ!!』
くそッ!!??
やっぱりかッ!!
完全覚醒した体を動かして作戦指令室へと大急ぎで向かった。