僕の知らない『艦隊少女』のいる世界   作:酔いどれリンクズ

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閑話・銀の鶴は何を想う

『私』が目覚めたとき、目の前に2人の男女がいた。

 

 

「なるほど・・・『彼の力』は私とは違うようだね。」

「『同じ境遇』とは言え、違うのは当たり前だろう?『計画』には支障はないはずだ。」

「そうだね、あと少しだ・・・あ、目が覚めたようだ。おはよう『翔鶴』。気分は如何かな?」

 

 

そのときの2人の意味深な未だに頭から離れない。

 

 

私の名前は『翔鶴』。

かつては大日本帝国海軍、第5航空戦隊として第2次世界大戦を、瑞鶴と一緒に駆け抜けた航空母艦だ。

今は新たに艦娘として人類の共通の敵である『深海棲艦』と戦うために生を受けた。

どうやら妹の瑞鶴はいないみたい。

 

目の前にいた2人は、この泊地の総司令とその補佐官であり『私』の司令官は今は任務に出ていて、ここにはいないようだ。

建造に時間がかかり、私の誕生の前に任務へ従事していったそうだ。

 

 

「君を迎えるのが『彼』じゃなくて申し訳ないけど、数日もすれば帰ってくるから、その間はここ『トラック泊地』でのんびりしてていいよ?何かあれば、私の執務室に来るといい・・・お茶くらいは用意するよ。」

 

 

そう言って総司令は補佐官の黒い軍服の女性と共に何処かへ行ってしまった。

・・・のんびりと言ってもどうしましょうか?

 

 

近くにいた整備の方に艤装のチェックをお願いし、私はトラック泊地を歩き回っていた。

すれ違う人に施設の説明をお願いし、色々なところを見て回った。

かつての私はトラック泊地に来たことはある。

しかし『航空母艦』だった頃と『艦娘となった今』では見える景色は全然違った。

何もかもが新鮮で見る景色をどんどん吸収していったと思う。

歩き回っていると、ふと、ある執務室の前で足が止まった。

ノックをしたが人の気配はない。

鍵もかかっていなかったため、本来はいけないことなんだけど、そのドアを開いてみた。

 

その執務室はまだ全然使われていないらしく、机は数枚の書類が置いてあるだけで綺麗なまま、本棚も何も置かれていない状態で、隅の方に段ボールが並んでいるだけの部屋だった。

机の上に名札が置いてあり『橘優』と書かれていた。

どうやら『ここ』が私の司令官がいる予定の部屋みたいだ。

 

 

「どんな人なんだろう?」

 

 

気にはなっていた。

けれど、会えるのはしばらく先であること、見る景色の新鮮さに気を取られ、ちょっと頭から抜けていた。

 

 

「ん~そうだね。私もちょっと話しただけだから、詳しくは言えないけど『気弱だけど優しく艦娘を大事にしてくれる人』だと思うよ?」

「愚妹を甘やかしてしまいそうだが、やることはちゃんとやる男だと思う。」

「橘少佐ですか?そうですね・・・出航する前まで貴女のいたボックスをちょこちょこ見に来ていて申し訳なさそうな顔をしていましたね。」

「所属の子たちと一緒にいつも楽しそうにご飯を食べていました。私が知っているのは『ここ』とクェゼリン基地の司令官だけですが、その誰とも違うタイプの方でしたね。」

 

 

総司令やその補佐官、整備の方や食堂の鳳翔さんにどんな方か聞いてみると、こんな反応が返ってきた。

その日は『私の司令官』を想像して就寝した。

 

次の日は『彼』の執務室と『彼の司令艦』が帰ってくるだろう方向の海を見て回る1日を過ごした。

執務室と海を往復する1日だったが特に疲れた感覚はない。

早く『彼』に会ってみたかった。

 

次の日は艤装のチェックが終わったので、艤装を装着して海へ出てみた。

私より早く『艦娘』として目覚めた『翔鶴』たちのお陰で特に苦労することなく海を走ることができた。

艦載機の発着艦も問題なく行え、すぐに深海棲艦と戦える状態であることを確認できた。

日が落ち、艦載機の発着艦が出来なくなるまで、海の上で過ごした。

『彼』の司令艦が帰ってくるその方向の海を見ながら。

 

数日訓練を行い、とうとうトラック泊地で待てなくなった為、総司令に外海へ出ることをお願いしてみた。

 

 

「う~ん・・・まあ、この辺りなら奴らも出ないだろうから、ちょっと出るくらいならいいけど・・・流石に一人で行かせるのはなぁ・・・」

「駄目、でしょうか?」

「見る限り『他の翔鶴』より能力は高いみたいだし、西側で出る深海棲艦くらいなら何の問題もないと思うけど・・・」

「でしたら、ドイッチュやシュペーにつけては如何ですか?ケールスやケルンたちとでちょうど北側へ哨戒に出ますから、それに随行する形で・・・ここまでは彼女らと航路が同じです。一人で動く時間は短くなります。」

「そうだね・・・橘くんが予定航路から外れる可能性はあるけど、合流できなければドイッチュたちに連絡してくれればいいし・・・それでいいなら許可を出すよ。」

「ありがとうございますッ!!それではすぐ用意して出航しますッ!!」

「橘くんの所には面白い艦娘が来るねぇ。」

「まだ会ってもいないのにここまで彼女を動かすか・・・評価を上方修正した方がいいな。」

「かもしれないね・・・とりあえず、ドイッチュたちに連絡しよう・・・あ、ドイッチュ?急遽だけど随伴艦増えるから対応お願いね?ああ、詳しくはそっちにいく彼女に聞いてくれ。君たちはいつも通りで問題ないから。うん、お願いね?」

 

 

急遽の随行だったけど、ドイッチュラントさんたちは快く私を受け入れてくれた。

こういうことはたまにあるらしく、あまり気にならないらしい。

彼女たちの邪魔にならないように気を付けてついていこう。

 

しばらく彼女たちに随行し、彼の予定航路までやって来たので、そこで一旦離れた。

しばらくはこの辺りを回っているみたいで、連絡もらえれば迎えに行くし、そのまま哨戒へ出ると言ってくれた。

丁寧な艦娘である。

小さいながらもしっかりした対応をしてくれるのでとてもありがたい。

 

哨戒機を出しながら彼の予定航路を進むと、3つの渦潮が出来ていたのを確認した。

深海棲艦が現れる予兆である。

すぐさま艦載機の発艦準備を行い、奴らが出てくるのを待つ。

哨戒機からの情報だと、軽巡3隻と駆逐艦1隻のようだ。

初陣とはいえ、不安はない。

彼の予定航路の進路上だ。

ここで倒しておけば、彼の邪魔をする者はいない。

彼に会いたい気持ちと、彼を邪魔する奴らを倒したい気持ちでいっぱいになっていた。

奴らが海上に現れた瞬間、待機させていた艦載機を発艦させる。

奴らは私の方ではなく逆の方、彼がいるであろう方向へ移動していく。

 

 

「『あの人』の邪魔はさせないッ!!」

 

 

私が放った艦載機は奴らの頭上へ到着し、一気に爆撃していく。

奴らも爆撃機の存在に気が付いたようで、すぐに迎撃体制に移行するが、遅いッ!!

私の方が1手早かったので爆撃機の落とした爆弾で2隻の軽巡は撃沈していった。

残りの2隻は運よく回避し、即、海中へと逃げていった。

 

 

「逃がさないッ!!みんな奴らを見つけ出してッ!?」

 

 

哨戒機を出して、逃げたやつらを探し出す。

そんなに遠くへ逃げてはいかないはず、必ず見つけ出すッ!!

逃げた奴らを探しながら、哨戒機が別の情報を持ってきた。

 

どうやら、近くに司令艦がいるようで、ちょうど戦闘中らしい。

 

 

「この辺りを動いている司令艦は『彼』のだけのはずだから、間違いないわね。援護しましょう。」

 

 

哨戒機を戻し、艦載機を発艦させる。

逃げたやつらも気になるが、先ずは彼を手助けしないとッ!

彼に会える嬉しさと、私がいない中で戦闘が行われている焦りが合わさっていた。

そして、私が艦載機を発艦させるタイミングで新たな情報がもたらされた。

 

どうやら私が取り逃がした獲物は彼を邪魔するように出てきたらしい。

 

 

「隠れていればいいものを・・・『彼』の邪魔をするなんて・・・絶対に許さないわッ!!」

 

 

艦載機に指示を出し、『目の前に』現れた敵を倒すよう号令を出す。

司令艦の目の前には一人の艦娘だけしかおらず、その艦娘もダメージを受けており、厳しい状態のようだ。

 

 

「やっちゃってッ!!あの人の邪魔する奴らを薙ぎ払ってッ!!」

 

 

私の出した爆撃機はうまく駆逐艦を撃破できたみたい。

あ、彼に連絡入れなきゃ。

戦況がよくわからない。

彼の指示を受けて動いた方が間違いないだろう。

通信を入れて、指示を乞う。

前方、軽巡撃破の為の援護、と。

問題ない。

先程、2隻も撃墜している。

軽巡1隻など、今の私には何の障害にもならない。

前方の軽巡もすぐに撃破してみせるッ!!

新たな艦載機を発艦させ、前方の軽巡を撃破し、戦闘は終わった。

 

 

ドイッチュラントさんに連絡を入れ、彼と合流できたことを報告する。

彼女たちは連絡を受けて、そのまま哨戒に出ていったようだ。

合流できて良かった、今度は一緒に任務受けれるといいね、と言葉をもらいながら・・・

さて、連絡したし、あとは『彼』に会うだけだ・・・

逸る気持ちを抑えながら、『私の司令官』に会うために彼のいる艦に向かっていった。




Tips:こんなつもりはなかった。翔鶴はヤ◯デレ。
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