「クインシーは僕の指揮下に置いたままでいい、かぁ・・・てっきり大本営か大石総司令の下に置かれるかと思ったけど・・・」
「『原点の艦娘』は、それこそ、存在自体が稀で大本営にも3人しかいませんからね・・・響も状況説明や研究のため、大本営に送られるかと思っていました。」
「まあ、他の艦娘がどうかわかんないけど、クインシーの言葉わかんないもんね。木曾まで連れていかれたら、僕はとても困る。」
「俺は通訳ではないんだがな・・・」
七瀬少佐や天草副司令との打ち合わせが終わり、ヘンダーソン基地へ入るため準備をしていたところに大石総司令から連絡が来た。
大本営には連絡するけど、そのまま、僕の艦隊の指揮下に置いて問題ないらしい。
稀な事例だけど、僕の指揮下の艦娘も少ないし、そのままでいいんじゃね?って話になったらしい。
言葉が通じない、ってことも理由になっているとのこと。
「とりあえず、こっちの案件は問題ない、ってことで・・・あー式典かぁ・・・人前でスピーチ読むの嫌だなぁ・・・」
「艦に放送するのや俺らに指示するのと似たようなものだろ?できてんだから、問題ないだろ。」
「いや、違うと思うよ・・・それに僕のスピーチじゃなくて『ソロモン解放戦の英雄、大石司令官』のスピーチだし、代行とはいえ責任は重たいよ・・・」
「響も横にいますから、安心してください。橘司令官一人ではないですよ?」
「響ちゃんありがとうぅ・・・一人じゃ絶対無理だよぅ・・・」
情けないとか言うな?
大学の卒論の時だって少数の人の前での発表は緊張したし、仕事のプレゼンだって直前まで緊張してお腹痛すぎるくらいになったんだから。
「響に甘えられても困るのですが・・・まあ、これはこれで・・・」
「情けねぇ司令官だな。俺らだからいいものを・・・他のやつらにその姿見せんじゃねぇぞ?」
「はい。気を付けます・・・さて、ヘンダーソン基地へ入港したら、総司令に会って打合せして、あっちでご飯食べて、明日の式典の用意をする、っと。響ちゃんには来てもらうけど、他の子はどうだろ?」
「アーガスと翔鶴は司令艦で待機だな・・・夕立や吹雪も邪魔しかしないだろうから同じく待機。ティルピッツは来ねーだろ、どうせ。」
「飛鷹さんと木曾さんには護衛、と言うことで付いてきてもらいます。そのつもりで今ここに木曾さんを呼びました。必然的にクインシーさんにも来てもらうことになりますね。」
ヘンダーソン基地周辺は深海棲艦がほぼ出ないとはいえ、艦に艦娘が誰もいない状態はあまりよくない。
艦から即時戦闘機の発艦が可能な空母を待機させ、その随伴艦として駆逐艦の2人を待機させる・・・戦艦ティルピッツは艦から動きたくないだろうから、同じく待機、っと。
飛鷹は礼儀作法しっかりしてるし、響ちゃんはいつも通り僕の補佐、木曾はガラ悪いけど大丈夫かなぁ・・・
「俺も相応の服は持ってるぞ?お前よりは式典なんかの対応ちゃんとやれるぞ?」
「・・・声に出てた?いや、姉御肌というか、護衛としていてくれるなら木曾が一番助かるんだけど・・・」
「まあ、そういうことにしてやるよ。クインシーは俺のそばにいるように指示しておく。準備ができたら呼んでくれ。」
木曾はそういって執務室から退出していく。
パタン、とドアが閉まったあと、響ちゃんから「木曾さんも女性ですよ?その辺はちゃんと考えてください。」とお小言をもらいました。
いや、たまに見せる女性らしい仕草とか、私室に可愛らしい人形が何個か置いてあるとか、可愛いとこいっぱいあるけど、普段はヤンキーのまんまだもん・・・
女性の対応って難しい・・・
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式典の当日。
来賓、ということもあり、ソロモン海域周辺の基地司令官やオーストラリアの少将、周辺の島の責任者の方々と一緒の所に僕は座っている。
式典参加者は見た感じ1000名くらい。
・・・おい。小規模って聞いたぞ?
僕からすれば大規模だよッ!!
こんな人数の前でスピーチ原稿読むの?
胃が痛いよ・・・
ちなみに響ちゃんは僕の横、飛鷹や木曾、クインシーは来客用の席に座っている。
響ちゃんはいつものミニスカメイド服、飛鷹もいつもの軍服をきっちり着ている。
クインシーは初めて会ったときは水着だったけど、木曾に言われて上下水色で統一されたセーラー服着ている。
木曾は・・・いつものヘソ出しセーラーの上に黒いマントを羽織ってる。
・・・厨二病ですか・・・?
あ、天草副司令が挨拶してる。
結局、七瀬少佐は艦から動きたくないとのことで、天草副司令が式典に出てきた。
何時ものことらしいのでいいんだろう。
ってそうじゃないッ!!
天草副司令の挨拶終わったらすぐ僕の番が来るッ!?
心の準備できてないッ!!
やっべー、全然式典の内容覚えてないわー、報告書あとでどうしよー・・・
『天草中佐ありがとうございました。続いては10年前のこの日、ソロモン海域を解放へと導いた英雄、トラック泊地、大石大佐の挨拶です。本日は現在、遂行中の作戦のため、ご本人は残念ながらいらしていませんが、同泊地の橘少佐が大佐に代わりスピーチを読みます。橘少佐、どうぞ壇上へ。』
「は、はいッ!!」
うわー。
手と足が一緒に出るよ・・・
あ、響ちゃん、ありがとう。
壇上へあがると、出席者たちの目がこちらを向いてるのがわかる。
僕の前にあるのは畑、僕の前にあるのは畑・・・
あ、飛鷹や木曾が見える。
横には響ちゃんもいる。
そうだ、いつも通り、みんなに指示出すように話せばいい。
そう思うと、少し気が楽になった。
「皆様、初めまして。ご紹介いただきました、トラック泊地所属、橘優少佐です。本日はソロモン海域解放戦の英雄、大石大佐が遂行している作戦のため、こちらへ来ることができませんでした・・・役不足ではありますが、私がスピーチを読み上げさせていただきます。」
言葉をつむぎ、もらった原稿を取り出し、軽く深呼吸して言葉を発しようとした。
「それでは読み上げます。」と言葉を出したその時、基地全体に大音量の警報が鳴り響いた。
『第1種戦闘警報ッ!!第1種戦闘警報ッ!!敵、深海棲艦、第2防衛ラインを突破し最終防衛ラインへと進行中ッ!!深海棲艦、第2防衛ラインを突破し最終防衛ラインへと進行中ッ!!非戦闘員はシェルターへ、各司令官は直ちに艦娘の発艦を行ってくださいッ!!繰り返しますッ!!第1種戦闘警報・・・』
・・・マジかよッ!?
Tips:深海棲艦があまり現れないだけで、現れない海は何処にもない