ヘンダーソン基地の司令官たちの行動は迅速だった。
警報と放送を聞いた瞬間に、即時行動を開始して出席者たちを安全な場所へと誘導、何人かの司令官は無線で艦娘を出撃させるよう指示を飛ばしていた。
僕?
警報で一時的に呆けていたけど、響ちゃんに呼ばれ、即時行動を開始した。
響ちゃんと飛鷹に出席者たちをシェルターへ誘導するように指示して、木曾とクインシーを連れて、司令艦へと急ぐ。
アーガスと翔鶴には出撃の指示を出して、移動する。
「防衛艦隊は何してやがったッ!?ここの配置図見たが、最終防衛ラインなんてすぐ突破されるぞッ!!」
「むしろ、防衛ラインを突破できるほどの深海棲艦の部隊がここに来るなんてッ!!」
「ヘンダーソン基地の艦娘はそこまで練度が高くないッ!!来賓の大佐クラスも出さないとやべーぞッ!!」
「いずれにしろ、僕らも出ないとマズイッ!!急ごうッ!!」
飛んでくる情報を無線で聞いていると状況はよろしくない。
どうやら最終防衛ラインも突破されたらしい。
砲撃が飛んでくるッ!?
少し離れた場所に爆音が鳴り響く。
ヤバイッ!?
基地の湾内まで侵入されたッ!?
『翔鶴ですッ!!ごめんなさい、司令官。何体か防衛ライン突破されました・・・侵攻してきた深海棲艦の数が多いですッ!!』
「こっちは他の司令官たちと何とかするッ!!翔鶴はこれ以上防衛ラインを突破されないように動いてッ!!」
『了解ッ!!吹雪さんッ!!前へ出ますッ!!護衛、お願いしますッ!!』
「ティルピッツッ!司令艦の護衛は後回し!!湾内の敵の相手をッ!!」
『やってるよ!!ヲ級の相手で精一杯だよ!!え?何でこんなやつがッ、うわッ!?』
「ティルピッツ!?おいッ!大丈「橘ッ!?」え?ぐッ!!??」
無線に意識を持っていきすぎて状況がわからなかった。
どうやら近く砲撃が飛んできており、木曾に庇ってもらったみたいだ。
って、木曾ッ!?
「木曾ッ!?ごめん!!ごめん!!」
「・・・安心しろ・・・大した怪我じゃねぇよ・・・くそ・・・艤装ないとやっぱ痛ぇな・・・」
「◯v◯ッ!?」
砲撃の直撃は避けれたけど、余波でダメージを受けてしまった。
木曾の頭から血が出ている。
マントも破れ、意識はあるけど重傷だ・・・
ごめん、僕をかばったばかりに・・・
「気にするな・・・俺はお前の護衛だ・・・お前に怪我がなければそれでいい、さ・・・」
「木曾?木曾ッ!?おいッ!!」
木曾が意識を失ってしまった。
いけないッ!!急いで救護室へ連れていかないとッ!!
「作戦指令室ッ!!木曾が重傷だッ!!救護班をこっちへッ!!」
「◯v◯ッ!?」
「クインシーッ!!引っ張るなッ!!木曾を安全なところ、へ・・・?」
砲撃の煙が晴れ、目の前がクリアになった。
晴れたその前に敵である深海棲艦がいたのだ。
「深、海、棲艦・・・戦艦、水鬼だと・・・?」
目の前にいたのは、マーシャル諸島戦線でも猛威を奮っている戦艦水鬼。
1艦隊丸々使って相手しなければ勝てない『鬼クラス』。
「何でこのクラスの深海棲艦が・・・」
目の前の戦艦水鬼はじっとこちらの様子を伺っており、動くことはない。
木曾を抱えている現状では何もできない。
というより『ただの人間』である僕では一瞬で殺される相手だ。
けれど、目の前にいるなら戦わないとッ!!
艤装を持たないクインシーや気を失っている木曾を守るためにも僕が動かなければッ!!
木曾とクインシーを守るように立ち、腰に挿しているサーベルを抜き、目の前の戦艦水鬼と相対する。
くそッ!?足も手も震える。
下手をしなくてもここで僕は死ぬだろう。
深海棲艦が人間たちを見逃すはずはないから。
けれど、何時まで経っても目の前の戦艦水鬼は動かない。
多数搭載されている砲もこちらへ一切向いていない。
こころなしか震えている気がする。
「ヤット、ミツケタ。ワタシノシレイカン。」
「え?」
戦艦水鬼が動いた。
手だけをこちらへ伸ばして。
その手は震えている。
「ワタシヲマモッテクレ、アリガトウ・・・」
「どういう、ぐぅッ!?」
頭が痛いッ!?
なんだこれッ!?
頭に何かの記憶が流れ込んでくる。
・
・
・
これは何だ?
何処だ、ここは?
視界や音にノイズが走る。
見たことがない景色が見える。
どこかの基地か?
今の状況に似ている気がする。
爆音と航空機が空を飛んでいる。
目の前に深海棲艦。
後ろに全身傷だらけで血を流している艦娘がいる。
『僕』はサーベルを片手に『彼女』を守るように立っている。
目の前の深海棲艦の砲がこちらを向く。
砲撃を受ければ即死な状況だ。
砲身が動き、砲弾が出た瞬間、強い衝撃と共に、視界が暗転した・・・
・
・
・
何かに服を引っ張られ『現実』へと還ってきた。
記憶と酷似していたが、目の前にいるのは戦艦水鬼。
後ろには気絶した木曾と服を引っ張るクインシー。
状況は変わっていない。
さっきの記憶がなんなのか、今はどうでもいいッ!!
幸い、目の前の『あの女性』に敵意はなく、何とかなる状態だ。
「ワタシト、トモニ・・・」
伸ばされた手が僕へとだんだん近付く。
どうすればいいッ!?
下手に動けば、何があるかわからないッ!!
そんな風に考えていると、横で服を引っ張っていたクインシーの表情が不安な顔から決心した顔に変わった。
「◯v◯ッ!!」
「ナンダ、オマエハ?」
「◯v◯ッ!?(私が守るッ!!)」
「クイン、シー?」
横にいたクインシーは僕と戦艦水鬼の間に割って入って来た。
「( ̄^ ̄)(私は守られている立場じゃないッ!!)」
「クインシーの声が、え?」
割って入ったクインシーの声が聞こえたと同時に彼女から青い光が放たれた。
一瞬のことだったが、目を放してしまった。
その一瞬の間に爆音が鳴り響き、爆風にさらされてしまった。
「い、いったい何が・・・ッ!?」
クインシーの手の先から煙が出ていた。
と言うより『砲身』から煙が出ていたのだ。
「ジャマヲスルノカ、キサマ・・・」
「◯v◯ッ!!(私は貴方達と戦うためにもう一度生を受けたッ!なら、それに準ずるのみッ!!)」
『艤装』を装着したクインシーは目の前の戦艦水鬼と交戦を始めた。
ほぼゼロ距離からの砲撃を受けたはずの戦艦水鬼は距離を取り、クインシーと対峙ている。
ダメージはないみたいだ。
「ココデハムリカ・・・ワタシノシレイカン、マタアイニクル、マッテテ・・・」
そう言って、対峙した戦艦水鬼はあっという間に後方の海へと移動し、僕たちの前から姿を消した・・・
「◯v◯?(大丈夫ですか?)」
「え、ああ、うん、大丈夫・・・クインシー、艤装が・・・」
「◯v◯?(念じたら出てきました。私はどうしましょう?)」
「僕は木曾をこのままにはしておけない。さっきの深海棲艦は撤退したみたいだけど、他にもまだ湾内に敵はいる・・・戦ってくれる、かな?」
「◯v◯ッ!(やりますッ!任せてくださいッ!!木曾さんをよろしくッ!!)」
突然、クインシーの声が聞こえるようになったのかはわからないけど、とりあえず、彼女に指示を出して僕は救援を待つ。
戦艦水鬼が撤退したからだろうか、他の深海棲艦も撤退行動を始め、被害はそれなりにあったけど、死者が出ることなく、ヘンダーソン基地への急襲は終わりを迎えたのだった・・・
Tips:戦艦水鬼に単騎で挑むクインシー