僕の知らない『艦隊少女』のいる世界   作:酔いどれリンクズ

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第3章・8話

天草副司令官に呼ばれ『こたつ』やって来た。

今回は天草副司令官ではなくて、艦娘の『伊168』イムヤが案内してくれた。

七瀬少佐の艦娘は潜水艦型が多く、直接の戦闘より諜報や調査がメインの司令官だということだ。

今回はヘンダーソン基地湾内に司令艦が配置され、艦娘たちもそこで待機していたため、今回、防衛ラインを突破される事態にもなった。

仮に彼女の艦娘たちが防衛ラインに配置されれば多少は状況は変わっただろうか?

・・・今更言っても仕方ないことだけど。

 

イムヤに案内され、この間と同じように執務室へやって来た。

ドアをノックすると返事があり、どうやら天草副司令官は先に来ているようだった。

ドアを開けるとしっかり電気もついており、執務机にダレている七瀬少佐が目に入った。

 

 

「橘優、参りましたッ!!」

「こちらへ来ていただきありがとうございます・・・イムヤさんもありがとう・・・すみませんが、誰にも聞かれないようにするため、ドアの前で待機していただけますか?」

「分かったわ・・・七瀬、またダレてるの?天草に怒られるわよ?」

「怒られたからダレてるんです・・・イムちゃん、よろしく。」

 

 

イムヤは「はいはーい」と言う言葉を発しながら、ドアを閉めて部屋を立ち去る。

聞かれて困るような話をするのか・・・?

何だろう?想像できないけど。

 

 

「昨日はお疲れさまでした。施設に被害はありましたが、人的被害はなく済み、本当によかったです。」

「人的被害が少なかったのは幸いでした・・・うちの木曾も数日中には復帰できる怪我でしたし・・・」

「そっかぁ・・・まあ、不幸中の幸いだねぇ。じゃあ、天草、あとはお願い。」

「お願い、ではないのですが・・・橘少佐、今回の件、どう見ますか?」

 

 

どう見ますか?

手薄の基地が襲われた、ってくらいにしか思ってなかったけど・・・?

 

 

「普通そうだって?手薄の安全と思い込んでた基地に敵が侵攻した。それ以上の事はないよ?天草は隠謀論が好きだから」

「いえ、それにしては練度が低いとはいえ、第1防衛ラインを通過して第2、最終と突破され湾内に敵を侵入させた統率力は懸念すべき案件です。」

 

 

天草副指令の言うことも一理あると思うけど・・・

あれ?また声に出てたのかな?

 

 

「響ちゃん、僕、声出てた?」

「いえ?響は何も聞いてませんよ?」

「・・・我々が考えても仕方ない事ですね・・・では、あの『戦艦水鬼』についてはどうでしょう?我々以外に見た者がいないあの『鬼』を。」

「橘は運がいいね?深海棲艦と相対した者は『例外なく』発狂死かその砲撃で殺されてるのに。」

「・・・木曾とクインシーがいたから助かっただけですよ。僕自身は、あそこで死んだと思ってましたから。」

 

 

深海棲艦と相対した人間は『全て』その怨念に当てられ発狂するか、搭載している砲身の砲撃で殺されてる。

『彼女』に敵意は無かったとは言え、本当に助かってよかった。

 

 

「クインシーねぇ。あの子すごいね?原点の艦娘だっけ?例が少ないから知らなかったけど、火力も動きも普通の艦娘たちとは全然違うや。」

「確かに素晴らしい戦果を挙げていましたね。今回の件で橘少佐も英雄と言われるかもしれませんね。急襲されたこの基地を守った英雄として。」

「僕は何もしてませんよ。やったのはクインシーですし、他の艦娘たちが頑張ってくれたお陰で、守りきれたんですから。」

「強い艦娘を指揮下に置いてるんだから、十分すごいことだよ?で、あの鬼についてね・・・相対したとき激しい頭痛がしたんだっけ?『何か思い出した?』」

 

 

・・・相対したときに見えたビジョン・・・

あれは本当になんだったんだろう?

僕の知らない記憶?

いや『橘優』の記憶か。

僕が転移する前の記憶は日記に書いてあったものくらいしかわからない。

日記に書かれていない記憶・・・

それが分かれば『彼女』が何なのかわかりそうだけど・・・

 

 

「まあ、それが分かれば苦労はないよね?とりあえず、あの戦艦水鬼については僕たち以外知らないから口外しないこと・・・大石にも言っちゃダメだよ?」

「え?一応、戦鬼クラスの深海棲艦が現れた事は事実ですし、報告はするべきでは?」

「基地及び各司令艦のいずれの電子系にも『戦艦水鬼が現れた』事実はありません・・・偶々外の状況を見ていた艦長と実際に相対した橘少佐、クインシー以外にその存在は確認されていません。不確定過ぎますので、報告するのは止めておいた方がいいでしょう。」

「響もそう思います。下手をすると橘司令官が『内通者』ではないかと疑われます。ここだけの極秘事項にしておく方がいいと思います。」

「隠してる方がそう思われそうだけど・・・」

「本来であれば報告するべきでしょう。私も同意見なのですが、艦長が報告しない、と決定されましたから、私はそれに従うのみです。」

「誰にも聞かれないようにするためにイムちゃんに前で見張りさせてんだから・・・いやぁ、秘密の共有って楽しいね?まあ、僕の前では秘密にできることって『ない』んだけどね。」

「え?それはどういう・・・?」

 

 

ちょこちょこ気になってたけど、七瀬少佐に隠し事ができない、ってどういうことかな?

心の中でも読めるのかな?

 

 

「あれ?本当に知らないんだ?軍に所属してるから僕のこととか知らないわけないと思ってたけど・・・?」

「響ちゃん、どういうこと?」

「七瀬少佐の家系は、代々将校クラスの軍人を輩出している軍人家系なんです。確か、ご兄弟も陸空で将校だったはずです。それと七瀬少佐には少し特殊な能力があって・・・」

「『心の中が読める』んではなくて『心の中が見える』んだよ?まあ、表層の少しくらいだけど、相手の思ったことが僕にはわかる・・・どう?気持ち悪いでしょ?」

「え?あーそういうことだったんですね・・・」

 

 

最近、皆に思ったことが当てられてたから、僕はサトラレか何かと思ってたよ。

ん~気持ち悪い、かぁ?

まあ、表層とは言え、自身の心が見られるのは、人によっては確かに気持ち悪いって感情が生まれちゃうのかなぁ?

僕はすごい力だと思うけど?

 

 

「・・・君は変わってるね。軍で僕の力を知らないやつはいないから、ほとんどの人間が僕には近付かないよ。天草と心の読めない艦娘くらいだよ、近付くのは?」

「心を見られるのは誰でも恐怖を覚えるんですよ。私は艦長が幼少の頃から一緒にいますからもう慣れたんですよ。」

「そうなんですね・・・僕はあまり気にならないですけどね。」

 

 

いや、本当に。

ある意味、本音で話ができるから僕はいいと思う。

 

 

「君は本当に変わってる・・・まあ、いいや。僕を怖がらない、って珍しい人間だから、1つだけ忠告しておくよ。」

「え?何でしょう?」

「トラック泊地総司令官代理、大石暁彦大佐には気を付けて。」

「どういう、こと、ですか?」

「しっかり見えたわけではないから、確信があるわけではないけど・・・あいつの心の中は漆黒の闇だったよ。思わず目を背けてしまうくらいに。」

「あの大石総司令が、ですか?」

「あんだけ心が黒いのを見たのは過去に数回しかない・・・深海棲艦を近くで見たときくらいだ・・・僕がトラック泊地にあまり帰らないのはそれが理由。直接何かあるわけではないけど、信用しすぎるのはよくない。それだけ。」

「・・・心の隅に置いておきますね」

 

 

あんなに気を配ってくれる人がねぇ・・・

七瀬少佐の話が嘘とは思わないけど、どうなんだろ?

まあ、気を付けるに越したことはない、か・・・

 

一抹の不安を胸に抱き、ヘンダーソン基地から連絡もあったことから、僕たちはいったんトラック泊地に帰ることになった。




Tips:当初の彼女は腹黒でした
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