人間は欲に手足のついたものぞかし   作:もやしの化身

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見切り発車もいいところ。プロットすらない!(断定)
原作を知っている人じゃないとわかりづらいかも……


けした所が恋はじめ 腰元に心ある事

窓の外が暗くなり始めたころ、薄暗い部屋で二人は交わる。官能的な雰囲気の中、布のすれる音と所々上ずった声が響けば吐息が増える。激しい情事で安っぽい寝具は悲鳴を上げ、顔から滴る汗が飛び散り布にシミを作っていく。絶頂を迎えれば、影がしなり身体が小刻みに震える。互いに息も荒く、まだ微かに火照りが残っている体に一抹の愛おしさを感じて唇を落とす。身じろぐ身体もそのままに、ゆっくりと寝具に横になれば情を交わした後特有の雰囲気が流れ始める。おもわぬ室温の上昇にじっとりと背中に張り付いた不快感を拭い去りたくなるのを我慢し、先に湯あみを促す。ゆっくりとした足取りで脱衣所に入るのを見届ければ自分の仕事用の端末を開く。

 

「……。」

 

電源をつけた途端に表示される通知の数々……。つけて一分もたたずに鳴り出す携帯。表示される名前は「国木田」。自分の職場の同僚だ。いや、「同僚」と言うのはいい言い方であって、それすら拭い去れば自分と対極の男と言えるだろう。正直話すのも億劫だ。出ようか少しだけ迷ったが、出なかった時の小言の数々を想像して決心する。

 

「……」

『井原!!何をしている!』

「……」

『十五番街の西倉庫に集合だと何度言えばわかるんだ!!』

「……」

『予定の時間に一〇分も遅れている!俺の(ページ)にはk』プツッ

 

 

 

 

この男の名は

 

井原西鶴――

 

能力名『浮世草子:好色』

 

 

 

 

「シャワー、上がったわ。鶴君は入る?」

「いや、ちょっとうるせぇ同僚が呼んでるから行ってくる。」

 

気だるげにタオルで汗だけを拭い、その女性に近づき軽く口づけを交わす。

 

「また連絡する。」

「アタシに本命ができてなきゃ遊んであげるわ。」

「わかってる。それじゃ。」

 

掛けてある女性用の上着に紙札を数枚忍び込ませ、身支度を済ませてホテルを出る。

 

 

 

 

「虎、ね。」

 

止めてあった自前のバイクに跨りエンジンをかければ、一般的にも良心的なエンジン音が駐車場に響く。ここから西倉庫までは大した距離ではない。しかし、着いた後の奴の暴言を想像すりだけで億劫になる身体はどうしようもなく、正直行きたくない。俺、運動苦手なんだけど。と一人ごちながら走り出す。せいぜい一〇分もすればつくだろう。

 

 

 

――

 

 

 

倉庫までたどり着けばすぐ近くに仁王立ちしている姿が見える。待ってくれていたのが綺麗な人だったらどれだけ心の弾むことだったか……。現実は世辞にもうれしいとは思えない貴奴の歓迎。もちろん待っていたのは国木田で予想通りの形相で井原を睨みつけている。予想される小言を想像してか、無意識にため息が出るのは仕方ない。

 

「遅いぞ!!」

「俺、非番じゃなかったっけ。」

「巷で噂の人食い虎が出ると太宰から連絡があったから非番の奴らまで借り出したんだ。」

「へぇ。」

 

コツコツと足を鳴らしているのを見れば相当イラついているようだ。まあ、イラついているところ以外を久しく見ていないが。正直小言の一つでも言いたい気分だが、言ったところで別の小言を言われるのは目に見えている。喉元まで出かかったため息を飲み込み、倦怠感を抑え集まっている面々に目を向ける。集まっているのは量より質。人食い虎相手なら普通の人間なんざいても訳に立たないことはわかっている。いや、時間稼ぎの餌ぐらいにはなるか。しかし、その中にはいつも見かける自殺人間がいない。

 

「その肝心の太宰は何処だ?」

「中にいるはずだ。」

 

中、と指を刺されたのは国木田の後ろの大型倉庫だ。

 

「生憎、虎と遊んでられるような時間は無いんだが。」

「どうせ、お前は昼間から爛れているだけだろう。付き合え。」

「……はいはい。」

 

再度倦怠感がこみ上げるが間違っていない分、分が悪い。大人しく従っておいた方がお互いの精神安定上よさそうだ。

 

「虎か。」

「対処は虎も牛と一緒ですかね?」

「それができんのは宮沢だけだ。」

 

はっきり言って牛ですら可哀そうだ。一度だけ宮沢の仕事に付き合ったことがあるが、あれは彼にしかできないだろう。苦労した潜入も彼の一撃で終了だ。軽く世紀末かと思った。

 

「国木田。」

「なんだ!」

「あの倉庫、すごい物音立ててるけど太宰平気か?」

「なっ」

 

駆けて行った国木田を追うように他の面々も倉庫に進んで行く。嗚呼、面倒臭え。

 

 

 

――

 

 

 

「おかげで非番の奴らまで借り出す始末だ。皆に酒でも奢れ。」

 

最後尾を歩いて来たせいか、もう事は済んでいるようだ。中は多少なりとも荒れているが幸いにも大した怪我はなさそうだ。

 

「なンだ。怪我人はなしかい?つまんないねぇ。」

 

与謝野晶子。探偵事務所での医療従事者だ。もう少し(しおら)しければなかなかいい(ひと)だとは思う。

 

「はっはっは。なかなかできるようになったじゃないか太宰。まあ僕には及ばないけどね。」

 

江戸川乱歩。さしずめ推理担当。俺から見ればただの子供(ガキ)。本当に同い年なのか軽く疑問だ。

 

「でも、そのヒトどうするんです?自覚はなかったわけでしょ?」

 

宮沢賢治。見た目に似合わず実力派(字のままの意味)だ。世紀末製造機でもある。

 

「どうする太宰?一応、区の災害指定猛獣だぞ。」

 

国木田独歩。口うるさい眼鏡。手帳野郎。

 

「うふふ。実はもう決めてある。」

 

太宰治。自殺趣味。掴み処が無く、何を考えているのかが分からない変人だ。

 

「うちの社員にする。」

「はぁぁぁ!?」

 

国木田の悲鳴が響く。五月蠅え。

面々の苦労も知らずに呑気に寝ている少年。

 

中島敦。……人虎。

 

 

この少年をきっかけに物語は廻る。

 




不定期気まぐれ投稿デス。
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