国木田がわなわなと身体を震わせて舌打ちをする。怒っている理由は簡単。太宰との
「おい」
少年に声を掛ければ緊張に強張った顔をさらに強張らせてスイッチに手を伸ばす。
「来るなァ!!吹き飛ばすよ!!」
空気は最悪で説得できるような雰囲気ではない。
「知ってるぞ、あんたは国木田だ!あんたもあの嫌味な『能力』とやらを使うンだろ!?妙な素振りをしたら皆道連れだ!」
「まずいねこれは。社に怨恨を持つだけあって名前と顔を調べている。社員の私が行っても余計警戒させるだけか……却説、どうしたものか。」
ふと中島の方を見てニヤリと笑みを浮かべる。
「や、ややややややめなさーい!親御さんが泣いてるよ!!」
緊張感漂う空気の中、出ていたのは中島。
雑誌を拡声器代わりにしておずおずと出てきた姿は、国木田さえ呆れた顔をしている。
「な、何だアンタッ!!」
少年も再度手に力を籠め警戒を強める。
・・・
『社員が行けば犯人を刺激する。ともなれば無関係で面の割れていない君が行くしかない。』
『むむむ無理ですよ!第一どうやって!』
『犯人の気を逸らせてくれれば後は我々がやるよ。』
『そうだな。落伍者の演技でもして気を引いてみては如何かな?信用し給え。この程度の揉事、武装探偵社にとっては朝飯前だよ。』
にっこり笑った太宰の顔は大層に胡散臭かった――。
・・・
「ぼぼぼ僕は騒ぎを聞きつけた一般市民ですっ!いい生きてれば
「誰だか知らないが無責任なこと云うな!!皆死ねばいいンだ!!」
未だ少年は警戒を解いてはいないがそこで諦める中島ではなかった。
「ぼ、僕なんて孤児で家族も友達も居なくてこの前その院さえ追い出されて行く当ても伝手も無いんだ!!」
「え………いや、それは」
「害獣に変身しちゃうらしくて軍警にバレたらたぶん縛り首だし。取り立てて特技も長所もないし誰が見ても社会のゴミだけどヤケにならずに生きてるんだ!だだだだだから」
『敦君。駄目人間の演技上手いなぁ……』
一呼吸で言い切った中島に対して少年がたじろぐ。それもそのはずである。中島がやっているのは落伍者の
「ね?だから爆弾捨てて、一緒に仕事探そう?」
「え、いや、僕はそういうのではっ」
語り終わった中島の眼は瞳孔が開いていて少年を怯ませるには十分の不気味さを放っていた。当然その一瞬の隙を逃すことは無く、国木田が動き出す。
「手帳の頁を
『独歩吟各』
国木田がいつも使っている
「手帳の頁を――
一瞬の隙に少年の持っているスイッチを
「なっ……」
「確保!!」
少年が呆けている一瞬の隙に国木田と太宰が飛び出す。勢いよく蹴りを繰り出せば、呆けている少年に避けることが出来るはずもなく、頬に盛大な一撃を受ける。取り押さえている傍ら、太宰が中島に合図を送る。表情を見るに成功したようだ。
ドン
不意に突かれた衝撃で中島が倒れこむ。不運に倒れたのはスイッチの上。勿論例に漏れなく作動する爆弾装置の点滅点灯。
「「「あ」」」
「ああああああああああああああああああああああああ!!??」
爆弾!?あと5秒!?
中島が周囲を見渡せば多くの人が部屋に戻りつつあった。
――太宰によれば使われている爆薬は
――C4といった方が簡単にわかるだろう。
――爆薬の量によっては簡単に部屋が吹き飛ぶ。
爆発!?部屋が、ふ、吹き飛ぶ!?爆風を抑えっ
――「爆弾に何か被せて爆風を抑えるって手段もあるけど……この状況じゃなぁ」
何か爆弾に被せないとっ!
周囲に有効なものはないっ
「なっ」
「莫迦!!」
爆弾を抱えて……僕、何やってんだ?
刻一刻と時間は過ぎていく。
3
2
1
「……あれ?」
「やれやれ……。莫迦と思っていたがこれほどとは。」
「自殺愛好家の才能があるね、彼には。」
「へ?…………え?」
状況を読めない中島を置き去りに真横を人質であった少女が、犯人であった少年に突っ込む。
「ああーん、お兄様ぁ!大丈夫でしたかぁぁ!?」
突撃の衝撃で体のどこかから聞こえてはいけない音が聞こえるのは気のせいと思いたい。
「いい痛い痛いよナオミ、折れる折れるっって云うか折れたァ!!」
「………………へ?」
「小僧、恨むなら太宰を恨め。若しくは仕事斡旋人の選定を間違えた己を恨め。」
「そう云うことだよ。敦君。つまりこれは一種の―――入社試験だね。」
「入社……試験?」
「その通りだ。」
音の発信源を向けば入口の方に和装の男性が見える。
その男、武装探偵社 社長 福沢諭吉――
能力名
『
次回は別ミッションに参加した主人公が出ます(フラグ)