シンキング・クリエイター   作:light.SAO

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分岐点

……

何か声が聞こえる…

じ…、…ん、へん…して…

頭が痛い…、体が思うように動かない…

だけど、意識は鮮明になってきていた。

「迅!やっと目を覚ましてくれた…。返事もしてくれないし、死んじゃったかと思ったよ!」

僕が目を開けるとナツが涙を流しながらそう言ってきた。

「あぁ、大量に出血したせいで倒れてたのか…。」

そう言いながら、僕は敵に切られた傷跡に意識をむけ

「クリエイト、血を元ある皮膚へ変換。」と呟き、傷跡を修復する。

そして、「能力変換(アビリティチェンジ) オールクリエイト・シンキング・ブレイクをシンキング・クリエイトへ」

その瞬間、僕はまた僕の意識の一部となった。

 

 

気づいたら、俺は敵がいなくなった後の自分の家の中にいた。確か、覚えてる限りだと敵に蹴飛ばされた辺りまでは覚えていた。誰かが倒してくれたのだろうか…。だが、この場にはもういない…

「じ〜ん〜!!目を覚ましたかと思ったら、いきなり私に話しかけないで考え事なんてひどいよ〜!」

ナツは涙目のまま、少し笑いながらそう言った。

「いや〜、あの…あはは…。助かってよかったよな。誰がやってくれたのか分かるか?」

俺は誤魔化して、話を変えた。

「うん?そうだね…私を助けてくれたのって迅じゃないの?」

ナツは俺の下手くそな話の変え方にも気付かず、しっかりと答えてきた。

「いや、俺は敵に蹴飛ばされたところまでは覚えてるんだけど、そこから先が思い出せなくてさ…。だから、誰かがやったとしか考えられないだろ?」

俺は少し笑いそうになりながら答えた。

「うーん、迅って普段優しいから、怒ったら記憶飛ぶほど頭に血が上るんじゃない?」ナツは真面目な顔でそう言ってきた。

「ナツが切られた時には、もう怒ってました。というか、記憶飛ぶほどの怒りって現実じゃ有り得ないって…」

ナツの平常運転に付き合いながら、考えをまとめていく。俺という説はまず無いだろから、他の誰かというのが妥当だろう…

「まぁ、良いじゃん。私は迅に助けられた。それでいいんだよ!深く考えたって出ないものは出ない!」

ナツはそう言って笑いかけてきた。

ナツといると、本当にそう思えてきちゃうのが不思議なものだ…

 

少しするとパトカーの音が近づいてくる。

恐らく、近隣の人が俺と敵との乱闘で起きた音でどちらとも呼んだのだろう。

それとも、敵を倒してくれた人の計らいなのだろうか…

能力が生まれた現在、警察は能力者事件特務係、通称能特という新しい職務を作成し、能力者同士の争いによって起きた事件専門の係がある。能特のやることは主に二つ。<一つ、事件の起きた当事者間において、どのような事象だったのか?また、片方が死亡した場合は正当防衛であったのか、否かを調査する。>

<二つ、能力による犯罪を見かけた場合、即時に無力化する。>というものだ。よって、恐らく俺は無罪ということになる。仮に俺の能力が暴走したとしたら、俺も無力化させられるのだろうけど…

警察が到着した後、少しの事情聴取を受けた。

話をした後に警察の人から教えてもらったのだが、同じような事件が沢山のところで起きているらしい…

俺とナツのように助かった人は少ないと警察から教えられた。

「同じような事件が続発しているとなると、とても嫌な予感しかしないんだけど…」

ナツは不安そうにそう言いながら、俺に返答を求めた。

「俺達は運が良かったけど、高校の同級生たちの何人かはもう被害にあってるかもしれないな…」

同じような事件が起きているということは敵が多数であることは間違いない。これからどう対応していかないといけないのか、政府や警察は何か対策を練っているのだろうか…

 

俺こと足坂走馬や能特の刑事達は事件現場に着き次第、事件の被害者となった木暮ナツと神谷迅という人物に事情聴取をした。

「君の名前と能力、それに今日起きた事件について教えてもらえるか?」

「はい、俺の名前は神谷迅で、能力はシンキング・クリエイト。今日の深夜に謎の男に侵入され、襲われました。ですが、俺は敵の攻撃で気を失っていて、気づいたら敵はいなくなり、俺とナツは助かっていました。」

「神谷くん、その敵というのは腕が鋭利で見た目はバケモノのような容姿か?」

俺は今日のうちに物凄い数の同じような事件が起きていたから、恐らくこの子達も同じだろうと予想して聞いた。

「はい…なぜ、そのことを知っているのですか?もしかして、同じような事件がいくつも…?」

彼はそう言いながら、思考顔でそう言ってきた。

「その通りなんだ。同じような事件が各地で多数起きている。しかも、被害者は大体その場にはいなかった。だから、神谷くん達のように助かった人がいるのは本当に僅かな人達だけだった。」

「そうでしたか…。ちなみに襲ってくる目的とかはもう判明しているんですか?」

「いや、判明は出来ていない。ちなみに君が気絶した後はナツさんが倒したのかい?」

俺は判明していないという事を彼に意識させないために話を変えた。判明していないということは能特でも難関な事件ということが分かってしまうからだ。

「いえ、ナツも倒れてましたから…。誰か他の方がやってくれたのだとしか考えられないです。」

「そうか、教えてくれて有難う。もし他に何か分かったことなどあれば、教えてもらえると有難い。そうだ、明日は普通の場合、学校に行くのは控えていただくのだが、今回は被害も多いため、改めて国から指示が出るらしいから学校に来てもらいたいとの事だ。」

俺がそう言うと彼は軽く一礼してからその場から立ち去った。

神谷迅の話からすると、バケモノは他人に倒されたことになる。だとしたら、死体があってもおかしくないがなぜないのだろうか?なにか引っかかるものがある…。証拠はないが直感で何かまた近々起きるのが分かる。その時に証拠が掴めれば対策は取れるが、それまでは今回の事件でなんとか助かった人達を助けなければならない…そう考えていた。

 

学校がある日、つまり月曜は事件発生日のためその日は俺とナツは大事を取って休んだ。

「警察の人達も一旦切り上げるようだし、俺達は寝よう。」

俺は欠伸をしながらそう言った。

「そうだね、今日は色々と疲れちゃったよ。じゃあ、また何かあったら迅の家行くね。」

ナツはそう言って、伸びをしながら立ち上がった。

「そんじゃあな。てか、小さい事で俺の家来んなよ。今日は眠いんだから。」

俺は笑いながらそう言って、ナツを家の前まで見送った。

「さて、寝るとするか。今日は本当に危険な目にあった…。」

俺はそう呟いて、ベッドにダイブした…

……また、あの夢か…。人は夢と分かるとその夢の世界で覚醒するまでの間自由に動けるらしい。俺とて、その例外ではなかった。

暗闇の中に、俺が1人、ただずっと立っているだけの夢。

だが、今日は違った。俺がもう1人いたのだ。いや、正しくはもう1人の俺の容姿をした人だ。

「やぁ、初めてあったね。」

「お前は誰だ…?なんで、俺と同じ容姿なんだ?そして、なんで俺の夢の中に入ってこれる?」

俺はいつもの夢とは違った、このイレギュラーな状態に疑問を抱きそう言った。

「君は僕が何者かを知らない。だって、僕は君とは1度も現実ではあっていないから。あと、この夢の世界を作り出してるのは君と僕だ。お互いの意識が共鳴したからこそ、今日は出会うことが出来た。僕が君と同じ容姿なのは気にしない方がいい。どうせ、外見の形が同じだけで性格などは君とは全く違うだろ?」

僕はそう言って、彼にこの世界が僕ともう1人の僕自身の夢であることを教えた。

「俺がお前を知らなくて、なんで夢の意識の共鳴が起きるんだよ?あと、お前はなんでここに出てきたんだ?」

俺はもう1人の自分のような人物が言った複雑な事を全て理解するのは無理だった。

「僕らは元々特別な関係にある。それを理解して欲しい。今は分からなくてもいいからね。僕がここに来た理由はね、今回のあのバケモノとの戦闘でバケモノを倒したのは僕だって事を伝えたくてね。まあ、それもそのうち分かる。それじゃあ、今日はこの辺で僕は消えるよ。」

「ま、待て!どういう事なんだか分からない…。お前はあの敵をどうやって倒したんだ?」

俺は推測が当たってた事が分かっただけで、敵を倒したというコイツはどんな能力なのだろうか?

「あぁ、そうか。言ってなかったね。僕の能力は破壊的な能力だよ。君の作り出す平和の能力の逆さ。争う事を目的とした能力。また、近々会えるだろうね。」

僕は、彼にサヨナラを言ってまた意識の一部として戻った。

俺は、やつが去っていったあとの夢の中で、やつの言ったことをなるべく理解しようと励んだ。

夢から目覚めるその時まで…

 

なんだったんだ、あの夢は…。いつもとは違ってよく分からないやつが出てきたし、しかも昨日の事件を知ってるなんて…

夢操作の能力とかで俺に話しかけてきたのか…?

歯を磨き、朝食を食べながら、俺はさっき見た夢の事に思考を凝らしていた。

その後も考えながら、制服に着替え終わって、玄関をでて学校の方面に歩いて行く。

「あ〜…考えても分からない。なんなんだろ…。」

「なんか、お悩み事ですかぁ!!迅は色々と昨日から考えすぎだよ。あの後、疲れとる為に寝たのに難しい事考えてたら、疲れが取れないよ〜。」

「うわぁ!!びっくりした〜。話しかけるなら、もっと静かに話しかけてこいよ。心臓何個あっても足りないからさ。年中無休、ナツのせいで疲労困憊ですよ。」

俺は、驚かせてきたお返しに、ナツに少しキツめの冗談を浴びせた。

「あ〜!!ひどい。心配してあげたのに〜。でも、あんな事件があったのに1日も休まずに学校行けだなんて、なんかあるのかな?」

「はぁ…心配どうも有難う。てか、ナツは警察の人からなんで、今日行くのか聞かなかったのか?」

「えっ…と〜。教えてもらったかもしれないかもしれないけど、私は聞いてなかったかも…。少し眠かったし…」

「少し眠かったし…じゃないだろ…。はぁ、あのなぁ、少しは話を覚えとけよな。今日は国から、昨日の事件の対策とか指示とかが出るんだよ。」

俺はもうこんな感じの会話を小さい頃からしてるからか、なんとも思わないが、普通に初見の人から見たら、頭のネジがぶっ飛んでいったとしか思わないだろうな…と考えていた。

 

学校に着いた時、俺達は驚愕した。なぜなら、俺達の学年では俺達の他に数人の生徒のみしか助からなかったのが分かったからだ。教室は閑散としていて、俺のクラスメートが1人いるだけ…。俺の知っている日常とは違った。

「なんで、昨日だけでこんなに被害が出てるんだ。しかも、これだけのクラスメートが被害にあって助かっていないなんて…。」

俺は驚きのあまり、そう呟いていた。

「事実こうなってしまった以上受け入れるしかないよ。だけど、俺はお前達だけでも俺の他に助かった人がいるだけで、安心した。」

俺のクラスメートの鳴都(なるみや)誠は俺に気づいて、無気力にそう言った。

「誠!!良かった、お前なら無事に助かるとは思っていたけど、心配したぜ。」

小学の時からの知り合いの誠が助かっていたのは一種の運命なのかもしれない。

「私達以外に助かってる人なんていないもんだと思ってたから、誠くんが助かってるとは思わなかったよ。」

「なぁ、今さ地味にサラッと酷いこと言わなかった?助かってるとは思わなかったってさ…。俺はナツにどんだけ低く見られてんだよ…」

誠はナツは相変わらずだなと俺に目で伝えてきながら、そう言った。

 

俺達は一つの教室に集めさせられた。

人数は約10人いるかどうか程度。

この学校の人数は数百人もいたのだから、相当な被害となったのだろう。俺は日常を壊されたことに対して、早く取り戻したいという意志がこの時、強く働いた。

国からの指示、対策については前にあった事のある能特の足坂さんからだった。

挨拶は淡々と進み、本題の国からの対策について話された。

「助かった人たちへ国からの対策は二つある。一つは、助かった数人の保護を強化するため、君たちの生活の中に事件が解決するまでの間警護が付くことを承知してほしい。」

一つ目は大体事件が起きた時にされる処遇だった。だが二つ目は誰もが予想もしなかった国からの対策だった…。

「二つ目は、俺達、能力者事件特務係で任務に当たること。もしくは、能力者協議団体に所属し、自身の身の保護と、この事件解明に当たって貰いたい。ただ、この二つ目の対策についてはやらなくてもいい。ここに残っている人達の中には、あの敵を倒し、倒し方を知っている人たちがいる。つまり、それを早めにスカウトしたいということだ。これによって事件解決が早くできるようになる可能性も充分に高い。だから、是非考えて欲しい。期限は明後日、その時までに答えを出してくれ。では、またこの場で会おう。」

俺はこの時、驚きのあまり何も言えなくなっていた。なぜなら、能力者事件特務係はいくつものテストをこなし、その中から能力を優れて扱える人物のみが入れる。そこに一高校生である俺達を入れるということだ。しかも、テストは無しで…。

だが、俺にはここに入りたいと思う心とほかにもう一つの感情が入りたくないと拒んでいた。

俺は日常を治すために、学校の全員を助けることが前提だが、それを行う為には、今あるナツとの日常、誠との日常、この二つの日常という平和を離さなければ行けなくなるのだ。

さらにいえば、能力者との対決になった時、俺はあの2人が守れても他の数人を犠牲にするのは目に見えている。俺はこの二つの感情が対立するせいで、どうすればいいのか分からなくなっていた。

「……どうすれば、いいんだ…」

その場でずっと悩んでいた俺は自問自答を繰り返すも、答えが出てはいなかった。

「迅?もし、俺やナツを守りたいけど、他のみんなも助けたいと思ってるならいい方法があるぞ。」

誠は俺の内心を見抜いたのか、答えを導こうとしていた。

「どんな方法だ?」

「足坂さんは、能力者協議団体に所属するのもありだと言っているだろ。ってことは、どこか能特とは違った団体に入ってもいいわけだ。」

「あぁ、そうだな。それは分かるが、結局どこに入ろうが皆を助けるためには、俺の日常を壊さなきゃいけなくなるだろ…」

俺は誠の言いたいことがよく分からなくて、少し投げやりに返事をした。

「でもさ、能力者協議団体というのは、大人数じゃなくてもいいし、最悪2人以上いればいい。しかも能特から認められた組織であればいいだけだ。」

「まさか…。」

俺は誠の考えている事が理解出来た。

「そう、そのまさかだよ。俺と迅とナツで能力者協議団体を設立すれば、皆を救う協力もできるし、俺達はいつもの調子でやっていくことが出来るんだよ。」

誠はいつもとは少し違って、やや興奮気味にそうまくし立てた。

「でも、能特から認められるという条件はどうするんだ?そこさえなんとかなれば俺はそうしたいのは山々なんだが…」

誠の言った事が唯一、俺の悩みを解決する方法だと思って誠にそう聞いた。

「能特の人は、事件解明が一番の目的だとしたら、俺達が申請した場合認めるしかない。もしかしたら、追加の条件を要求してくる可能性はあるけど…。でも、可能性はあるし、やってみてもいいんじゃないかな?」

「そうだな、やってみるだけやってみるか。あっ、でもナツがなんていうかな…。後で聞いて…」

「いいよ!!迅も、誠くんが一緒なら!」

「うわっ!だから〜、居るなら居るなりに気配出せよ…。本当に神出鬼没なんだから。」

俺はこの時、上手く行けば、組織を設立して日常を守りながら、日常を治すという理想の形が作れると思っていた…。

 

次の日に俺は能特の足坂さんに、自身でグループを作ると申し出た。

「ふむ、グループを作りたいと…。それなら、能力者事件特務係に認められないといけないのは理解しているはずだな。」

「はい、認められるには具体的に何をすれば」

俺は、認められるには親の承諾が必要だとか、そういう類のものを想像していた。

「そうだな、俺は君達をテストしないといけない事になる。君をリーダーとして設立するのであれば、木暮さんと鳴都くんの能力の扱いを機械によって測定。そして、君は俺と模擬戦を行ってある程度の強さを見せてもらわなければいけない。そうなるんだが、大丈夫か?」

「大丈夫です。俺はあまり戦闘をしたくはないですけど、今回は仕方がありませんし。」

少し、驚いたがこれしか方法はないらしいとみて、俺はそう言うしかなかった。

「そうか、そしたら能力者事件特務係東京支部所に来てくれ。日時はまた連絡する。」

「分かりました。」

能特の支部所か…てか名前が長っ…と心の中で思いながら返事をした。

 

「まじか!やられた…。」

誠にその事を言った後の誠の第一声だった。

「どういう事だ?これで認められれば誠が昨日言った通りになるじゃないか。」

「成功すればな。失敗した時に、独立したグループでは無理だが能特でなら、安全かつ能力を鍛えられる。だから入れと言ってきた場合、俺達には断る理由がない。手段が違うだけで協力するという事には変わりがないからだ。」

「そんなところまで、能特は考えてたのか。ということは、他のグループに行くのは許すけど、独立したグループを作るなら、能特がそれを拒み、そして吸収することができるってことか…。」

俺はあの時、そこまで深く考えられていたことには気付かなかった。もし、気づいていたら変わったかもしれないが…。

「そういうことだ。ということは、俺とナツはどうかなるとして、迅が足坂さんにやられないようにしなければいけないってことさ。必ず、足坂さんは本気で潰しに来るぞ。」

「俺が足坂さんと…。能特の責任者になんか勝てるわけがないじゃないか。こんなの最初から無理な話だったのか…。」

俺はあまりにも大きな壁が立ちはだかっていたことに気づき、諦めそうになった。

「迅、勝てとは言われてない。ある程度、強さがあるかどうか見たいということなら、能力の扱いが上手いところを見せられれば認められる可能性はまだある。」

「能力を上手く扱えるかが鍵ってことか。上手く扱えてるかは分からないがまだ希望はあるってことか…。」

俺はそう言って、少しばかりの希望に全てをかけようと思った。

 

そして、足坂さんからの連絡が来た。

能特の東京支部所に行くこの日は、俺達の未来への最初の分岐点になった…

 

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