シンキング・クリエイター   作:light.SAO

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本文中に出てくる物理の専門的なものの説明をさせていただきます。
「ニュートンの揺りかご」同一の大きさのいくつかの金属球が、静止した状態では互いに接するように、枠に紐で吊るされている状態で、金属球は同じ長さの2本の紐でVの字を書くように吊られている。このため、この吊るされた金属球は同一平面上を動く。また、1番端の球を速度をつけて、静止しているいくつかの球にぶつける事で反対側の端の球が同じだけ動く。これは運動量保存、力学的エネルギーの保存の実演として作られたものであり、球が当たった時になる音などの省き、動いた運動だけがエネルギーとして使われるとすると永久的に両端の球が交互に動くことになる。

参考文献:wiki、株式会社JSOL CAEソリューション ニュートンのゆりかご


テスト開始!そして終結…

足坂さんから連絡が来た俺達は、東京にある能特の支部に来ていた。

「ここが支部所か…。物凄く大きい施設なんだな。」

誠はそう呟いた。

「まぁ、能特の人達は能力訓練とかの広大なトレーニング場を必要とするしこのくらいの大きさがないとダメなのかもな。」

俺は能特の強さの秘訣が、能力を使ってのトレーニングが思いっきり行えるところにあるとメディアによって取り上げられているのを覚えていたから、そう答えた。

入口に入ると、そこには受付で待つ足坂さんの姿が見えた。

「こんにちは、足坂さん。テスト受けに来ましたよ。」

「早速テスト会場に行こうか。といっても、テスト会場は俺達がよく使ってるトレーニング場なんだけどな。」

足坂さんはそう言いながら、トレーニング場へ俺達を案内した。

客観的に見て、トレーニング場はなんにもない広い部屋と、それを見ることが出来る部屋が設けられているだけだった。

「足坂さん、機械も何もないですけど俺とナツは機械による測定って聞いたのですが…。」

誠はトレーニング場を見て直ぐにそう言った。

「オペレーター、昨日俺が要請していた機械をトレーニング場の真ん中に設置頼む。」

足坂さんは誠の問いに笑みを浮かべながら、そう言った。

その瞬間、機械音と共に何も無かったトレーニング場の床が空き、機械が上がってきた。

機械は誠の能力から不利なものであるのは一目瞭然だった。

なぜなら、その機械は能力が生まれてからよく使われるようになったステルス付きの戦闘型ロボット[AAM-AI001]だ。今現在の世界では、誰もが知っている機械で、能力者を無力化するために作られたロボット。特に重要な都市でよく使われ、能力を人を対象として攻撃的な能力を使った場合のみロボットが動く仕組みになっている。

このロボットはステルス付きのため、能力者からするとそれを見るような能力がない限り、破壊する事は相当難しくなる。AIは自己学習型が搭載されているため、能力を発動すればするほど無力化するのに手間はかからなくなるという機械だ。

「鳴都くん、準備はいいかい?」

「準備は大丈夫なんですが、もし俺が負けた場合、あの機械は無力化つまり殺しに来るじゃないですか。死ぬことはないんですか?」

「君の体のコピーをトレーニング場に送るだけだから大丈夫だ。あとは、思考や能力は君のリアルタイムの脳から反映機械を使用するからテスト中は自分がトレーニング場の中にいるようになるだけだ。痛みとかはあるけど、死ぬ事は無いから大丈夫だ。テストは機械が完全に停止、破壊されたと判断され次第終了。また、コピーの体がもたなくなった時点でテストは失格とする。」

足坂さんはそう言って誠をもう一つの部屋に連れていき、装置を起動させた。

ただ、見ることしか出来ない俺達は誠を応援するしかない。

「誠、直ぐに終わらせろよ。」

「あぁ、ナツも迅も準備しとけよ。」

そう軽口を叩いて、誠はコピーの体へ意識を移した。

 

戦闘型ロボットは俺に標準を向けた。

おそらくスタートの合図がなった瞬間にステルスを使いながら、搭載されたマシンガンで俺を蜂の巣にするつもりなのだろう。

「あと、1分後に始まります。」オペレーターからの声が聞こえてくる。

さて、様々な音が出せるとはいえ、この広大な範囲全体に音を出して反響からロボットを見つけるのは難しい。

「足坂さん、俺達をテストで受からせる気ないだろ…」

そう呟いて、物質を音に変換する能力用にと渡された鉄の小さい玉が三つを眺める。

3回だけの能力で倒すとか無茶だ。しかも、さっき壁に触ったら能力に変換できない壁だった。

「あと、30秒」オペレーターから開始までの分数がもう1度告げられる。

さて、どうにかあの機械を攻略する方法はないのか。

鉄球が3個渡された事に何か意味があるのか?それも分からない。あの機械は攻撃されないことを前提に作られたロボットだから、外装は見た目から見ても弱そうだから、1発入れれば倒せるのは分かるが、見えないとなると攻撃が入るとは思えないし…

「あと10秒で開始、9、8、7、6、5…」

最初の初撃をまず避けることに専念するしかない。心を落ち着かせオペレーターの開始という音声に耳を傾けた。

「開始!」

オペレーターからの音声が聞こえた瞬間、左側へ思いっきり飛ぶ。

予想通り、ステルスを発動しスタートとともにマシンガンを撃ち込んできた。

「初撃を避けたのは良かったが、本当にどこにいるか分からない。」

俺はそう呟きながら、外した後にステルスでどこかに隠れている機械をどう見つけ出すかを考えていた。

マシンガンの発砲音が聞こえた瞬間に俺はしゃがみ込んだ。あれ、俺みたいに音の能力者くらいしか避けられないじゃ…。と思いながらも瞬時に、発砲音が聞こえたところに人間には聞こえないくらいの高音を撃ち込んだ。

機械はカメラによって動きを読み込むのと、同時に音の出ている場所を読み込み、その2つを瞬時に合わせて位置を特定している。そう考えるのであれば、人間に聞こえるはずのない高音が聞こえた時、処理に少しの遅れが出る。その想定外の動きには適応してないと予想していた。

だが、機械は俺の予想を見事に打ち砕き、俺が撃ち込んだ、音とは反対側から射撃をしてきた。

「なんなんだ、こいつ。処理落ちとか少しはしてくれてもいいじゃないか!」

そう言いながら、辛うじて相手の攻撃を避ける。

避けた弾みで、3個の鉄球がポケットの中でぶつかった時になる金属音が響く。

この3個の鉄球はどう使うんだろうか。分かった事は機械は明らかに俺の足音とカメラによる映像によって、俺を認知している。高音を出しても、俺を攻撃出来た理由はそこにあるだろう。

鉄球3個であの機械の人を認知するシステムの矛盾をつくことは出来ないだろうか。

 

マシンガンに撃たれる度に俺とナツは冷や冷やした。ギリギリ避けるので精一杯にしか見えないからだ。

「誠くん、勝てるのかな…。あんなに不利な状況で勝つなんて難しくない?」

「あぁ、あのままだと多分誠はやられるだろうな。だけど、俺はあいつにあのバケモノをどうやって倒したのか聞いてなかった。だから、もしかしたら倒す方法を掴み始めてるかもしれない。」

俺はそう言いながら、チラッと足坂さんの方を見た。

「あの不利な状況下に置いたのはテストに君たちを落としたいからじゃないからというのは神谷君はもう理解してるんだね。」

足坂さんは誠の戦っているところを見ながらそう言った。

「あぁ、能力にある苦手なところをどのように克服するか、つまり能力の穴を見つけられた時にどのように対処するかを見ているということですよね?」

「そういうことだ。君たちの能力は既に僕達能特は把握している。だからこそ、苦手な部分をどのように対処するかをテストしているんだ。」

「ということは、俺と足坂さんが戦うのにも理由が…。」

「そういうことになるね。さて、まだ鳴都くんは戦っている最中だし、最後まで見よう。」

そう言って、俺との会話を打ち切った。

俺の中には一つ疑問が浮いた。

そういえば、足坂さんの能力はなんなのだろうか…。

 

マシンガンの音に対する反応が段々鈍くなりつつあることに自分でも気づき始めていた。

「集中力がなくなってきてるし、解決策もなかなか出てこないし…」

そんな事を言ってる時にも、マシンガンは躊躇なく撃たれる。

散弾の一つが俺の肩を撃ち抜けたのが激痛となって、俺に伝わってきた。

「っ…!もう避けきれないか…。」

そう言いながら、肩から流れる血を見た。

勢いよく流れ出る血に俺は閃いた。鉄球を血の流れ出た床に起き

「音程コントロール、鉄球を発音リソースへ!」

3個のたまはそれぞれ血を音によって、弾き、徐々に人の形を形成し始めた。

機械はフルカラー映像によって、俺を割り当てそして射撃するのは理解できる。

だが、その前に俺が機械を破壊できれば関係の無い話だ!

「三つの鉄球の音程の一部を、これから出す俺の音程に変換。超音波発声!」

俺はそう言って、声から超音波を出した。俺の能力はある一つの特殊な音を拾い上げ、反響を調べられる。その特殊な音とは声から出す超音波で、人間の喉の形をした状態で出すことによってしか出せない。つまり、俺の作り出す音をものによって出そうとするなら、俺をもう1人作り出すしかないのだが、物質を人の形に形成したものであれば同じ音を出すことが出来る。

他の三つの血と音で構成された人の形をした物質は俺が超音波を出した方向とはそれぞれ違った方向へ発声し、東西南北全てのエリアの反響を、調べあげた。

「機械のある位置を把握!ターゲットの補足に成功、破壊共鳴」

俺は一直線に撃ち込む超音波を解き放った!

人には聞こえないが故に防ぎようのない超音波による振動は、物質に刺激を与え対象となる物質を粉々に破壊する。

俺が撃った方向に、機械に的確に当たったからか、機械から壊れたような音が鳴り響く。

ステルスが解除され、マシンのボディが段々と剥がれ落ちていく…。

「能力の穴を克服するっていうのはこんなにも大変なのか…」

戦っている最中に、足坂さんの考えが読めた時にはなんて鬼畜なんだと感じた。

おそらく戦っているところを見ていた迅も俺同様にそう思ったことだろう。

 

「誠、お疲れ様!やっぱり、お前の考え方にはいつも驚かされるわ。」

「今回は結構やばかったけどな。流石に肩撃たれて思いつくとは俺も思っていなかったし。」

誠はそう言いながら、笑っていた。

「次はナツの番だ。頑張れよ、ナツ。」

誠は続けざまにそう言った。

「うん、頑張る〜!どんな試験なのかな。」

相変わらず、ポジティブなナツは苦手なものが来ると知っても怖気付いたりはしていなかった。

「木暮さんは鳴都くん同様にコピー体を使ってテストを行う。後でやる俺と神谷君もコピー体での対戦になるからね。」

そう言って、足坂さんは俺に笑みを向けてきた。

「オペレーター、木暮さんのテスト用に準備したやつをトレーニング場に配置してくれ。」

誠が倒したロボットはトレーニング場から、既に撤去され、また床が空き、今回は戦闘用のロボットなどではなく、測定用の機械が準備された。

「風力測定用の機械だ。木暮さんには、あの機械を測定不能、もしくは破壊するレベルの風を巻き起こしてほしい。失格は俺が見込みなしと判断したらとする。」

先程同様の部屋に行き、ナツはコピー体へ意識を移した…。

 

「足坂さん、なんでナツは簡単ではないですけど少し緩めのテストなんですか?」

俺は純粋に思った疑問を足坂さんに聞いた。

「うーん、木暮さんの能力は破壊や戦闘を想定して構成された能力じゃないと思ったからって答えではダメかな?おそらく、あの機械で測定できるくらいの暴風が彼女の今の限界点だと俺は思っている。」

足坂さんは、ナツの能力を知っているとはいえそこまで理解してるとは思っていなかった俺は少し驚いた。

「それで今回のテストでその限界点を上げさせるのが目的ですか…。それで、無理だったら失格にするのが足坂さんの考えですか?」

「そうだな。木暮さんの限界を伸ばすにはこれが1番だろうし、それで無理なら能力的に戦闘には向いてないと考えてやめた方がいいのかもしれないしな…」

そう言いながら、足坂さんはトレーニング場へ視線を移した。

 

鉄の板のようなものがついているその測定器を破壊するのが私のやるべき事…。そう考えて暴風を巻き起こし、測定器に当てた。

測定器は大きく揺れたものの、破壊や測定不能の域までには入っていなく、何度やっても同じ結果が続いた。

「どうすればいいんだろ…。うーん、あれ以上の風を巻き起こすのは私じゃ出せないし…」

猛烈に来る無力感に押しつぶされないようにどうにか考えを巡らせる。

…こんな時に迅だったらどんな方法を見つけるのだろう…

きっと、想像を超えた事をしてくれるに違いない。しかも迅にしかできないことで…。だったら、私も私だけの方法を見つけなきゃ!

そう思って、無闇に風を測定器にぶつける事をやめた。

静寂の中で私は考えを巡らしていく。

風を強めるには風同士を同じ向きでぶつければいいんだけど、両手から出せる風の個数は二つだけだし…。

「こんな時に、迅がいたら明快なアイデアを出してくれるんだろうけど、私だけに出来るアイデアってなんなんだろ。」

そう呟いて、迅や誠くんのいる方向を見た。

昔から変わらないあの2人に私は憧れてついてきたけど、私は後ろからついていくだけの、2人からすれば足でまといの存在だったし、このままテストで失格になったとしても私を見捨てずに能特の方でやっていくだろう。でも…それじゃやっていけないのは分かってる…。なら今やるしかないんだ!

私は視線を測定器の方に戻し、両手をそちらに向けて、風を短く二つの風を同時に何回も送り込む。激しい風同時が合わさり、測定器に激しい衝撃を与える。しかし、測定器は何度やっても壊れたり、測定不能にはならない…

 

トレーニング場を眺めていた俺達は突然ナツが風を出すのをやめていたかと思えば俺たちに視線を向けてきて、その後また風を送り出し始めたのには何か考えがあったのだろうか…。

「足坂さん、正直ナツは測定器を壊すと思いますか?」

「俺は壊すと思うよ。はっきりいえば、もう彼女は破壊する方法を見つけ出して実行してるといった方がいいかもしれないけどね。」

足坂さんはそう言って、視線をトレーニング場へチラッと向けた。

「もう、実行している?どういうことですか?さっきと同様に風を測定器にぶつけてるんじゃないですか?」

「あぁ、最初は二つの風を合わせてぶつけて、壊れなかったのが分かったから、測定器に風を当てるのではなく、部屋全体を使って風を回転させてるんだ。今はまだ、ほとんど威力は変わらないものの、多分何回か回転させていれば威力は格段と上がると俺は思う。」

「ナツがそこまで頑張ってるなんて…」

俺は少し前から、ナツを自分の都合に合わせて無理させてる気がしていた。だから、ナツにコピー体に意識を移す前に頑張れとは言えなかった。だけどナツは今、自分の意思で俺達に並ぼうとしていた。ナツの事を知っているがあまりに気づかなかったナツの諦めない力に、俺は驚きを隠すことは出来なかった…。

 

私は風を部屋の中で巡回させて威力を増させていく方法を見つけ出し、既に巡回数は10回を超えていた。この大きなトレーニング場の中を巡回させて威力を増加させるには、神経を尖らせタイミング良く風を繰り返し送り出す必要があった。それを私の体力でやるのは多分ギリギリ持つかどうかだな〜と撃ち込みながら考えていた。風は巡回数を増やすに連れて段々と威力が増加していた。

風が激しさを増す一方で、体力は底につきそうになっていた。

「あと、も…う少し!」

そう言って自分を鼓舞して、風をタイミングに合わせて送り込む。

少し気が弱くなってきた時に、突然

「頑張れ!!諦めるな!!」

とトレーニング場に迅の声が響いた。暖かな風が私の体を包み込むようなそんな応援だった。

「なんで迅の声が…。」

思わずそう呟いた。好きな人からの応援ほど頑張れるものは無いよ〜!と心の中で答えながら、私はタイミングよく、トドメの激しい風を放ち、測定器に当てた。

測定器の上半分が折れて、トレーニング場の壁にぶち当たった。

「っ…!!やったぁ〜!」

これで私のテストも無事合格になった。

 

ナツの体力の消耗は見ていても分かるもので、何も助けようのない俺はもどかしさでいっぱいだった。

「足坂さん、トレーニング場にオペレーターが声を出すのを俺にもやってもらうことは出来ませんか?」

俺は無理を承知で頼んだ。

「うーん…、そうだな。オペレーター、こちらの閲覧ルームのマイクをトレーニング場のスピーカーに繋げてあげてくれ。」

そう言って、足坂さんはマイクを渡してくれた。

「頑張れ!!諦めるな!!」そう言って、俺は応援しそびれた分の2倍以上…いや、言葉で表せないくらいの気持ちを込めて、ナツを応援した。その甲斐があったからか、多分ないだろうけど、ナツは見事にテストに受かった。ナツは帰ってくるや否や、俺に飛びつきながら

「迅、応援ありがと!!あの応援が無かったら、測定器を壊せるか分からなかったよ〜…。」

「俺はナツの事を少し軽く見てた節があったし、今回のこのテストも俺の都合に勝手に付き合わせてた気がしてたんだ。だけど、ナツは本気でテストに挑んでくれた。それだけでも俺は嬉しかったよ。」

少し照れながらも、俺はナツに正直な気持ちを言った。

「うん、ありがと。迅もテスト頑張ってね!」

ナツは少し顔を赤くしながら、そう言った。多分、測定器を破壊できた興奮がまだ収まらないのだろう。最後のテストは俺と足坂さんの1対1の対決だ。

「足坂さん、スピーカーの接続ありがとうございます。」

「いや、気にすることは無いよ。ただ、テストでは俺も全力で行かせてもらう。君の実力と君の能力の穴の克服の仕方を見させてもらいたいからね。」

「俺も全力で勝ちに行きます!」

「合格のルールは一つ、俺を倒せ!チャンスは10回。君がやられたら、カウントダウンが一つ下がる。君のやつはあっちの部屋にあるから、オペレーターの指示に従ってやってくれ。あっちのフィールドで待っているよ。」

そう言って足坂さんはコピー体に意識を移すための部屋に足早に歩いていった。

 

トレーニング場にあるコピー体に意識を移した俺は目を開けた。

「足坂さん、オペレーターの方から3個の鉄球をポケットに入れてあると言われたのですがこの鉄球3個ってなんの意味が…?」

「そうだね…。その3個はとても重要な役割をすると思うよ。特に君にとって変換できるのはその球のみだからね。」

オペレーターからの開始のカウントダウンが始まる。

「ちなみにだが、鉄球は俺も持っている。俺の能力は一回体験してもらった方が早いから、11回のカウントダウンにしようか。」

そう言って、足坂さんは鉄球を親指と人差し指で摘んで俺の方に向けた。

「5秒前、4、3、2、1、開始!!」

オペレーターからの合図を聞き、1秒後鉄球同士が触れ合った音が鳴り響き、俺は一回目のコピー体を失った。

「なんだ…?あの能力。音が鳴った後すぐに俺はやられていた…」

そう言って二体目のコピー体に意識を移す。

「足坂さん、あなたの能力は…?」

「俺の能力は速度変化、2の10乗、つまり1024の倍率まで速度を引き上げられる、その逆もまたしかりだ。」

足坂さんはそう言って、さっきと同じように俺に鉄球を向けてきた。そして一回目同様に俺はまたやられた。カウントダウン開始後に鉄球を撃ち込んで、しかも鉄球の速度を上げてる事は二回目で理解出来た。だが、あの鉄球同士が触れ合うような音は何故生まれるのだろうか…。

そう考えながら、3回目の挑戦。

足坂さんは一回目、二回目同様の動きで鉄球を俺に向けている。鉄球を狙って俺が即死する位置は、心臓と脳の二つ…。そこを守れば初撃の球は防げる。

オペレーターから秒数カウントダウンが終わった瞬間、

「球を鉄板に変換!」

そう言って、心臓と脳をどうにか守ろうとした。初撃の球が鉄球にぶつかり、金属の音が鳴り響く。防げた…。そう思った瞬間、右太腿に鋭い痛みが走った。

「っ…!!なんで…、初撃は防いだ筈なのに…。」

「君は脳や心臓を狙った球を避けたところまでは良かったが、初撃というのは同時いくつもの攻撃があってもおかしくは無いだろ。」

足坂さんはそう言って、俺にトドメを刺した。

そうして、4回目、5回目を同じようにやられ、残る回数はあと6回…。

球は初撃の時点で2つ、撃ち込んだ時に心臓か脳のどちらかに一つの球、つまり上半身に飛んでくる。4、5回目の撃ち込んできた球も、心臓か脳に一つと、足の太腿辺りに1発撃ち込まれてくることがわかった。このヒントから、あと6回でやれるだろうか…。初撃を躱すことは次からは出来ると思う。そう考えて6回目のコピー体に意識を移す。

足坂さんは同様のモーションで撃ち込んでくる。

その時には、鉄球から変換した球で上半身の球を防ぐ。それと同時にポケットにある球を握りにながら小声で

「鉄球を鉄板に変換。」

その瞬間、太腿には大きな衝撃と金属音が鳴り響く。初撃をやっと防ぐことに成功した。

「仕組みが分かったかい?神谷くん。」

「はい、足坂さんは最初に撃つ球を2個目の撃つ球よりも少し遅くし、俺に届く前に球同士が当たるようにした。一つ目の球を上に弾くようにして、二つ目の球を撃ち込む。すると、二つの球は同時に上半身と下半身を撃ち込める。そういう事ですよね?」

俺は仕組みについて足坂さんに同意を求めた。

「正解だ。だが、俺が速度を変化させることが出来るのは俺自身もだ。君にとってこれ程不利な事は無いだろ?」

「そうですね…。俺の反射速度は足坂さんの出せる速度には絶対に負けます。でも、勝つ手段はあると思ってます。」

「そうか、なら行くぞ!」

足坂さんはそう言って、俺の視界から消えた。

と思った瞬間に、後ろから鉄球が飛んできて頭を貫かれた。

7、8、9回目の挑戦も同様の結果でやられた。

意識を移す部屋の中で、少しの間考えを巡らす。

防ぐんじゃなくて、足坂さんを倒さなきゃ意味がない。そういえば、足坂さんは俺を倒せと言っていただけで、俺がやられても合格になるんじゃないか。そうだとすれば、足坂さんが考えないような事をするしかない…。

そう思いながら、10体目のコピー体に意識を移す。

足坂さんは初撃を防がれても同じ動きをしてくる。だとすれば、初撃から俺がやるべき行動が違うのかもしれない。

今回も同様のモーションで俺に鉄球を向けてくる。どうにか、この1回で方法を見極めて、ラストでやるしかない…。初撃の球が飛んでくる位置は最初は真ん中、二つ目の球が当たった瞬間に上と下に球が飛んで来る。どうすれば…。そう思った時には、10回目のコピー体は破壊された。

「どうすればいいんだ…。」

あの速さの球を避けるのは、無理だし防ぐのが間違えだとするなら何か他に方法があるのだろうか…。そう考えた時、急に激しい頭痛に襲われ部屋の中で俺は気を失った。

 

「……。また、この夢か…。」

俺はそう呟いて、暗闇の中にいる夢をの中に自分がいることに疑問を持った。

「なんで、俺は夢の中にいるのか?ってそう思ってるんだろ?」

俺は少し前に同じ夢を見た時に、出てきた俺と同じ容姿をしたやつに今回も話しかけられた。

「頭痛で倒れたのは分かるが、またお前が能力でやったのか?今は邪魔しないでくれ…。俺は今、倒さなきゃいけない人に対して、考えを巡らしてるんだ。」

俺は苛立ちと焦燥感に駆られて、少し怒った口調でそう言った。

「まぁ、落ち着きなよ。君の相手は鉄球による攻撃をしてくるんだろ。なら、僕からヒントをあげよう。ヒントは3つ、君も初撃で相手を仕留めろ。

そしてニュートンの揺りかご、電磁波の2つが君の勝利への鍵となる。」

「ニュートンの揺りかご…?あれとなんの関係性があるんだ?」

「僕のヒントはさっきので終わりだ。後は君自身がそれを解明できるかどうか。期待しているよ。」

そう言ってやつは暗闇に消えていった…。

 

「神谷くん、大丈夫か!?」

足坂さんの声が聞こえた。

「大丈夫です。少し頭が痛くて…。」

「そうか。テストのラスト1回は3時間くらい休息をとってからにしてもいいけど、そうするか?」

「いえ、10分だけ休憩を頂ければ大丈夫です。」

俺は笑顔でそう答えた。大体の答えが見えてきたのが嬉しくて、顔に出ていたのは言うまでもない。

「そうか。じゃあトレーニング場でまた待ってるよ。君の攻略法を見せてくれ。」

足坂さんは俺の笑顔を見て、答えが出てきたのが分かったのかそう言って、俺のいる部屋から出ていった。

ニュートンの揺りかごというのは、簡単に言うと静止している球を列にして、一つの球をそこにぶつけると、反対側の球の一つが同じだけ飛び出る。つまり質量保存の法則を利用した装置なのだが、あれを両端から同じ速さでぶつけると物は静止する。一か八かではあるが、手で輪を作って、そこに電磁波を流すことでコイルガンを作り出す。球を3つそこに入れ、飛ばす。多分、足坂さんの出す鉄球2つにまず俺の撃ち込む2つの球がぶつかり合って静止状態になる。そこに3つ目の鉄球をぶつけて、足坂さんの方に飛ばす。足坂さん自身が加速出来るとはいえ、恐らく自分に打ち込まれる球は見ることが出来ても、そう簡単には避けられないだろう…。

約束の10分の休憩終了のアナウンスが流れ、俺は11体目のコピー体に意識を移す。最後の術を持って…。

 

「足坂さん、お待たせしました。10分間の休憩の中で、足坂さんが俺と戦う理由が分かった気もしましたよ…。俺は足坂さんが何故俺と戦う必要があるのか、それは俺自身の能力の穴が足坂さんの能力だった事もあるけど、それなら機械でも代用出来る。なら、なんなのか…。それは足坂さんの能力の穴が俺の能力だからじゃないですか?」

俺の推測に足坂さんは少し驚いた表情を見せた。

「そうだよ。俺が君と戦う理由は俺の能力の穴を克服するためでもある。だけど、君がそこに気づくとは俺も思ってはいなかったけどね。」

足坂さんはそう言って、一回目からやっている同じモーションで鉄球を向ける。

「5秒前、4、3、2、1…開始!」オペレーターから秒数カウントが聞こえた時に、鉄球3個を手の中に起き

「俺の体に存在する生命エネルギーの一部を電力に変換!手をコイルガンの仕組みに変換!」

足坂さんは変換が終わったと見るや否や、能力で鉄球を放つ。それと同時に俺の手から放たれた3つの鉄球も放たれる。

鉄球同士がぶつかり合い、金属音が響く。そこに俺が放った3つ目の鉄球がぶつかり、足坂さんの方に向かって一つの球が相当なスピードで迫っていく。

足坂さんは動きもせず、迫ってくる鉄球に向かって鉄球を撃ち込む。

だが、ぶつかり合った鉄球の俺が放った3つ目の鉄球が足坂さんの放った鉄球を弾き飛ばした。コイルガンで撃ち込んだ時の速さが足坂さんが撃った球よりも少し速かったからか、激突した時に俺の方の球が勝ったようだった。

鉄球はそのまま足坂さんの心臓を貫いた。

足坂さんの胸から激しく血が吹き出る。それを見た俺は一瞬焦りを覚えたが、足坂さんはそれを分かってのことか、笑顔で俺に安心する言葉をかけてくれた。

「おめでとう…。これはコピー体だから心配することはない。これはトレーニングであって本当の殺し合いではないのだから。また閲覧ルームの方で会おう。」

俺の顔が安堵になった瞬間、足坂さんのコピー体は粉々になり、そして消滅した。

ラスト1回にして俺は足坂さんを倒すことが出来た。だけど一つ疑問が残った。戦っている人にしか分からないかもしれないが、何故足坂さんは最大加速を鉄球に使わなかった…?




初めて後書き書かせていただきます。
今回3話のみで1万字を超えました。今回は3人のテストだったのでこんなに長くなったのですが、3人とも分割して書くか正直なところとても悩んでました(笑)
最後は自分との勝負でしたが、まぁなんとか書ききれて良かったです。これだけの長文を最後まで読んでくださった方々ありがとうございます!
ストーリーとしてはまだまだ序盤で長期に渡るストーリー展開となりますので、今後ともよろしくお願いします!
あと、脱字や誤字の報告はご連絡頂けると、とても助かります!
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