シンキング・クリエイター   作:light.SAO

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迅と捷の過去

コンツ、ソロが引き返していった後、足坂さん、坂城さんの話し合いにより一旦ここまでの事、そして話せる限りの俺と弟の事について能特東京支部所で話し合う事となった。

「最初に起きた事件から日もあまり経たないうちにコンツによる襲撃が起きた。そして、神谷君がコンツと戦い、ソロとの対面。これによって、得られた情報は少なかったものの主な目的は判明した。

その目的は【この世界の能力を全て消し去る】ということ…」

「問題は未だに鳴都誠君がどこにいるのか手がかりが一切ないこと、それに敵勢力の大きさ、ソロの能力についてじゃな…」

支部所につき会議室で話し始めたものの、一向に対策や解決の糸口が見つからないのは得られた情報が少ないからだろうと考えていた時、マフラブの声がどこからともなく聞こえてきた。

「迅、君は弟が生きていると思っているか?」

「なんで、そんな当たり前なことを…ああやって、現れた時点で生きてるだろ。」

そう答えるもマフラブは更に質問を重ねてくる。

「君は両親を失い、弟が失踪した事件を覚えているか?」

「は…、何をいって…」

そんな記憶は俺の中にはどこにもなかった。

「………そうか。やっぱりね。本当なら前に話したように、僕らの能力、それに君の記憶から消えた事件は君自身が思い出していくべきことだ。だけど、もう残された時間が少ない。」

「どういう事だ。」

「僕らは君の忘れた、いや消された記憶について話せる。更に言えば、今回の事件に関して最低でも君らの知っていること以上のことは話せる。しかし、それを教えるには僕らの正体を彼らに言い、こちらの世界に入ってきてもらう必要がある。」

「俺にどうしろと…?」

「君がどっちを選択しても僕らは何も言わない。別にどっちが間違っているとも僕らは思わない。ただ、君が真実を知りたいのかのか、僕は聞きたい。」

マフラブはそう言って、話さなくなった。

俺からの返答が来るのを黙って待っているように感じた。

 

ずっと思っていた。なぜ、俺が創造主と破壊主の能力を持っているのか。なぜ、俺の能力は人格を持ち合わせているのか。なぜ、なぜ、なぜ…!俺自身が知るべきだと思うことは今までたくさんあった。知る機会は今まであったかと問えばそれは否だ。しかし、信頼できる仲間がいる中で隠し事をするのはどうなのか?とナツや誠といるときにその後ろめたさは一緒にいればいるだけ強く感じた。隠し事が悪いことではない。ただ自分の事でさえ知ることのできない自分に能力を使う資格があるのか…

答えは…

「マフラブ、君が今伝えるべきだと思うなら俺は準備が出来た。俺は真実が知りたい!!」

「そうか、なら僕は君たち全員をこちらの空間に移動させよう。これからの話は常に残酷だ。覚悟しとけよ…」

そういうなり、マフラブは僕ら全員の意識を他軸空間に移した。

 

「ここは…」

俺以外の全員がまわりを見渡しながら、そうつぶやいた。

「ようこそ、他軸空間、通称independenceへ。本来この空間は迅の能力であるシンキング・クリエイターの根本であり、能力を変更するときに使われる空間です。しかし、今回は皆さんに今回の事件に関して、僕ら創造主、破壊主が知る限りの情報をお伝えしようと思った次第です。中々にショッキングな出来事についても扱います故、あらかじめ覚悟しておいてくださいね。」

「君は…神谷君の能力だということかね?」

「正確にはその四分の一ってところです。それについてもこれからお話しので、こちらに皆さんは座ってもらってもいいですか?」

一同は少し疑う様子を見せるも、俺が大丈夫と一言いうと席に座ってくれた。

「さて、ラルドもそろそろ顔を出せ。誠君もいる状態で本来なら話すべきだが、はっきり言ってタイムリミットが迫ってきてる。」

マフラブに言われてどこからともなく現れたラルドはだるそうに椅子に座った。

「タイムリミット?どういうことだ?」

足坂さんはまだ信じきれてないのか怪訝そうな顔をしながらそう言った。

「いいか、ソロの最終目的は能力をこの世界から消し去ること。しかし、これを僕たち敵側に話すという事はもう準備が終了している、あるいはもう少しで完成しそうなことを示す。」

「ふむ、仮に準備が完了しているとして彼らはなぜそれを行わないのか?」

「それは、まだこちら側にキーパーソンがいるということだ。」

それを俺は聞いたとき最初にあった化け物が言った言葉を思い出した。

【あの女の能力は高い】

マフラブは俺が思い出した瞬間、話の続きを始めた。

「分かっただろ、迅。」

「あぁ、どんな方法で能力を消すのかは分からないが、キーパーソンはナツ。お前だったんだ。」

「え、私!?」

ナツは自分を指さしながら、今世紀最大の驚きかの如く口を大きく開きびっくりした表情をしている。

「そういうこと。で、ソロの部下は予想だが十四人いると考えられる。」

ナツの驚き方にも動じないマフラブに一瞬驚きつつも、俺は答えを仰ぐように坂城さんに目を向ける。

「創造主の言う通り、わしが見た未来の中では十四人の部下が見えた。」

「そして、肝心のソロの能力だがあれは異世界、パラレルワールドから侵食してきた能力だ。ソロの能力を見たとき全員違和感を覚えなかったかい?」

全員が同時に首を縦に振る。

「確かにあの能力に違和感を覚えた。俺の速度変化とも違う。俺が今まで見てきた能力者にはいなかったような形でソロはぬるっと神谷君の背後に出てきた。」

足坂さんはソロが能力を発動したときの様子を思い出しながらマフラブに話した。

「そう、足坂さんの言う通りで、ソロの能力はこの世界のどんな能力でも再現できないような移動を見せた。しかも、彼の中の能力はこの空間に干渉しこちらに宣戦布告してきた。伝えてきたことをそのまま君たちにも伝える。

【私たちはアポス、テリオス。能力は先天的事象の操り、後天的事象の操り。君たちの能力のある世界を消しにきた。】

とね…つまりあの移動は元から迅の後ろにいたという先天性を後天性より優先にし、突然ソロが現れるといった結果になった。ここまでで聞きたいことはありますか?」

「それをなぜ、俺の弟が使っているんだ?弟がその能力の持ち主だとすれば、俺の弟はパラレルワールドから来たことになる。だが、捷と俺は血の繋がっている関係だと記憶している。だとしたら、弟がパラレルワールドから侵食してきた能力を持つことは不可能じゃないのか?」

そう言って周りをみると、その疑問をみんな持っていたようで神妙な面付きでマフラブの返答を待つように見えた。

「そう、その疑問の答えも踏まえて、迅と捷があった悲劇について話そう…」

そう言って、マフラブはこちらに目で問いかけた。

【真実を知る覚悟はいいか】と…

 

 

 

迅と捷との関係はごく一般的な兄弟の関係だった。しかし、兄弟といっても双子で生まれたのでほぼ同時といってもいい。さて、神谷の家系ではもう気づいたかもしれないが、創造主の能力を代々引き継ぐことで、僕は存在を確立していた。じゃあ、破壊主はどうやってこの世界に残り続けたのか。結論からいえば、僕のやりかた同様に神谷の人間の能力となった。しかし、ラルドの場合は引き継いだ人間の能力として表に出ることはないように見えていた。迅のように物を同じレベルの物質に変えるのは、創造の能力と並行して、破壊の能力も気づかないうちに使っていた。つまり、変換したい物質を跡形もなく粉砕し、それを創造したもう一つのものに作り替えることでシンキング・クリエイターは存在していた。他の能力も例外じゃない。例えば足坂さんの速度変化は遅くすることだってできる。何かの正の能力をもつということは、その逆である負の能力も同時にもつことなる。それは、正の能力を使った分だけ、負の能力によって均衡を保つことを意味する。一人の人間は能力を持つとき必然的に正負の二つの能力を持ち合わせる。

しかしだ。迅と捷はその必然性の枠から外れていた。迅が創造の能力、捷が破壊の能力を持ったのだ。これは、僕にもラルドにも予想のつかないこととなった。だが、均衡はうまい具合に保たれ、問題はなかった。

迅が中学の時、家族で旅行にいくことになった。これが悲劇に繋がることとなる。彼らの両親は能力機動隊に属していて、能特が処理しきれなかった難題を処理するといったエリートのみが就職できる隊だった。これが災いし、迅の両親は、アルグーンという能力犯罪組織に標的にされていた。そして、旅行の移動最中に迅、捷も含めた家族はアルグーン総勢で襲われることとなる。そして、君の両親は死ぬ直前に能力を全開放し、アルグーン全員を巻き添えに絶命した。その時の光景は悲惨だった…勿論、迅と捷も無事では済まず、迅は体の至る所が消し飛び意識は無い状態、捷は意識はあるものの敵の能力で心臓近くにあらゆる鋭利なものが突き刺さった。

捷は状況から察して「兄ちゃんも俺もこのままじゃ恐らく長くは持たない。」と考えた。その時、破壊主ラルドは彼に一つだけ方法があると提案した。

「お前はもうじき死ぬ。一つだけお前の兄ちゃんを救う方法がある。しかし、お前は存在自体が薄れる可能性がある。どうするか…?」

捷は迷わず、兄を助ける方を選んだ。ラルドの考えた方法は簡単なものだった。捷の体を破壊し、それを創造主の能力で、迅の体に再構築するという方法だった。

そして、捷は自らの死を受け入れて、迅の体の一部として創造された。問題は、破壊主がいなくなった瞬間に均衡が壊れ、僕だけでなく迅の精神の存在がどうなるかだ。破壊主は博打で創造主が世界に存在する限り、自分も均衡を保つために何かしらの形で存在すると考えた。結果、今の迅を見れば分かるように、破壊主は迅へ引き継がれ、他の能力と同様に一人に二つの能力という形になった。

ただ、破壊主の移動の際に迅の記憶の一部が壊れた。その記憶の一部というのが、今話している悲惨な事件の記憶だ。なぜよりにもよって、この記憶だったのか。それは今まで迅が記憶してきたどの体験よりも凄まじく、最も想起しやすいものであったから、破壊主の目に映るものを破壊する本能を刺激し、壊した可能性が大きい。

これが迅の記憶から消えた真実だ。

そして、君たちがこの話を聞いて更に疑問に思った【なぜ、捷が生きているのか、そしてなぜ、パラレルワールドから侵食してきた能力を持っているのか】について答えよう。

さっき話したように、捷は迅を救うために死んだ。正式に言えば体を消滅させたわけだ。しかし、精神が一定時間残留していてもおかしくない。それをパラレルワールドから侵食してきた能力、先天的事象によって捷の体を復元、後天的事象によって、精神の中の憎しみの部分を強くするように操ったとすれば、ソロの原型が完成する。しかも、破壊主が去った体は能力の入れる隙間がある。そこに、奴らが入ったと考えるのが一番妥当だ。

 

 

マフラブが話し終わった後、誰も声を出さなかった。いや、出せなかったのかもしれない。特に俺は…声を出すどころか、息をすることさえ忘れたのか、息苦しくなった。

マフラブの話はあまりにも俺にはショッキングな内容だった。覚悟は出来ていた。どんな出来事でも受け入れると…ただ…あまりにも、あまりにも、悲しい出来事だった。俺の記憶から消えてしまったことも、弟が死んでしまったことも…

俺は一体どうするべきなのか…!ソロを倒し日常を手に入れる?日常などこの事件の前から壊れていたというのにか…?今までの行動さえ正しかったのか理解できない。

俺は何がしたい?一体何をすればいいのか?結論はindependenceから現実に戻っても出ることはなかった……




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