パワーレンジャー基地 千冬の仕事部屋
千冬は真耶とアルファの手伝いで貯まっていた仕事をやっている最中だった。
「アイヤイヤイヤイ・・・・・・これでやっと、終わりましたね。よいしょっと。」
アルファは、山積みの書類を片付け始める。
「はあぁ・・・・・お腹が空きました。」
真耶はお腹に両手を当てながら言う。
「そう言えばもう昼の時間帯か・・・・・・山田先生、よかったら一緒に食事に行かないか?私が奢ろう。」
「えっ!?い、いいんですか!?」
「いつも仕事を手伝ってくれている感謝の気持ちだ。電送装置ならすぐに戻ってこれるから大丈夫だろう。」
「で、ではお言葉に甘えて。」
真耶は書類をまとめ終えると千冬と一緒に部屋を出て、司令室の方へと移動する。
「ゾードン、すまないがちょっと『五反田食堂』の前に電送してもらえないか?そろそろ昼だから食事をとりたい。」
『・・・・・分かった、いいだろう。だが、残念ながら食事はできない様だ。』
「えっ?どういうことですか?」
真耶は不思議そうに聞く。ゾードンは少し気まずそうな顔をするがすぐに答える。
『少し前にバンドーラのドーラモンスターが食堂を襲ったんだ。見る限りモンスターはどうやら異常な食欲で食べ物を食べ尽くしてしまうようだ。現在、他のレンジャーたちが応戦している。』
「一夏たちが!?っつ、私としたことが!!山田先生、すまないが奢るのはまた今度になりそうだ。」
「私は大丈夫です!それよりも早く織斑君たちと合流してください!!」
千冬は急いでバッグルを外し、構える。
「マンモス!!」
千冬の体を黒い光が覆い、一瞬にして千冬はマンモスレンジャーへと変身する。
「アルファ、早く電送を!」
「アイヤイヤイヤイヤイ!!了解!」
アルファは電送ボタンを押し、マンモスレンジャーを五反田食堂へと電送した。
五反田食堂前
「この野郎!!よくも家の店を荒らしやがったな!!」
タイガーレンジャーはパワーダガーを構えながらドーラキルケへと攻撃する。店の前では厳がまるで魂が抜けたように倒れてしまっており、蓮が必死に起こそうとしていた。
「ブウブウブウ!!まだ食べたりない!!もっと食べた~い!!」
しかし、ドーラキルケは異常な力でタイガーレンジャーを吹き飛ばしてしまう。
「痛・・・・・この豚野郎!!」
そこへティラノレンジャーたちが合流する。
「弾!!店は・・・・」
「一足遅かった!!コイツ、店の料理を全部食いやがった!もう豚よりも下品だぜ!!」
「ブウブウ、豚よりも下品だと!?許せん!!」
ドーラキルケは鼻から勢いよく息を吹き出し小規模の竜巻を発生させ、パワーレンジャーたちを吹き飛ばす。
「「「「うわあぁぁぁ!?」」」」
「弾!一夏君!鈴ちゃん!」
蓮は厳を抱えながら心配そうに声を上げる。パワーレンジャーたちは着地した後、それぞれの武器を構え攻撃しようとする。
「店とじいちゃんの仇だ!!行くぞ!!」
「ブブブブ~!!」
「うわあっ!?」
「きゃあ!?」
見かけによらずドーラキルケはパワフルな動きでパワーレンジャーを攻撃していく。
「くそ!!」
プテラレンジャーとタイガーレンジャーはダガーとアローを構える。
「そんな武器効くか!!」
ドーラキルケは口を大きく開け、勢いよく吸い込む。
「な、何!?」
プテラレンジャーとタイガーレンジャーはドーラキルケに吸い寄せられていく。ドーラキルケは二人を目の前に近づけるなり、武器を口に入れてしまう。
「あっ!よ、よせ!この豚!!」
「ごっそうさん!!」
武器を口に入れ終わるとドーラキルケは二人を蹴り飛ばす。
「これはこれは中々に歯ごたえ・・・・」
「あ~!!俺のダガーが!!」
「僕のアローも!!」
武器を食べてしまうドーラキルケを見て二人は唖然とする。しかし、油断していると見て後ろからトリケラレンジャーがパワーランスを構え、攻撃する。
「隙やり~!パワーランスで突き刺して、バラした後に酢豚の具にしてやるわよ!!」
「おっと、どっこい。」
しかし、ドーラキルケはすぐに後ろを向きランスを白刃捕りする。
「嘘!?」
「いただきま~す。」
ドーラキルケはランスを食べ始める。
「あっ!こら、やめなさいよ!」
トリケラレンジャーは無理やり引き抜こうとするがすぐに蹴り飛ばされてランスもまた食べられてしまった。
「はあっ!!」
ティラノレンジャーは、ジャンプしてパワーソードでドーラキルケを斬りつけようとする。ドーラキルケはその攻撃を避けるがティラノレンジャーは攻撃の手を緩めない。更に一撃もう一撃とドーラキルケを攻撃する。
「よっと!」
「うわあ!」
だがドーラキルケは振り下ろしたパワーソードを押し返してティラノレンジャーの手から離れさせ、逆に自分の口へと入れてしまった。
「よいしょ~!!」
「ぐわあ!!」
ドーラキルケのタックルにティラノレンジャーは吹き飛ばされ、五反田食堂の中へとぶつかってしまった。
「ブウブウブウブウ!!!力がみなぎってくる!!」
ドーラキルケはさらにレンジャーたちに追撃を加える。
「くそ!!コイツ、見かけによらず強い!」
「ブウブウブウ!!この際お前たちも倒して・・・・」
「やあ!!」
「ブヒッ!?」
止めを刺そうとするドーラキルケの頭に電送されてきたマンモスレンジャーのパワーアックスが炸裂した。
「ブブ・・・・・・・あっ、金平糖が周りを飛んでいる・・・・・・・・待て待て・・・・・」
「みんな大丈夫か!?」
「千冬さん!!」
「千冬姉・・・・・どうしてここに・・・」
店の中に衝突したとき強くぶつけたのかティラノレンジャーは左肩を押さえながら出てくる。マンモスレンジャーは四人の前に駆け寄る。
「ゾードンに言われてな、本当は山田先生に日頃のお礼として厳さんの料理を食べさせたかったのだが・・・・・」
マンモスレンジャーは、途中まで言いかけたが魂が抜けてしまったような状態になっている厳を見て言うのをやめた。
「ブブ・・・・・おのれ・・・・・よくも俺様の頭を!!」
ドーラキルケは頭を押さえながら立ち上がる。
「マジ!?千冬さんの一撃をくらって生きているなんて!ドンだけタフなのよ!この豚!!」
「お前も一緒に・・・・・・・ブウ?」
怒りの形相で襲い掛かろうとしたドーラキルケの動きが突然止まった。パワーレンジャーたちは何事かと上を見るとなんと途轍もなく巨大な餃子をぶら下げたドローンがドーラキルケの真上を通り過ぎて行ったのだ。
「うまそうな餃子・・・・・・おぉ!!」
さらに続いて、巨大な肉まん、春巻き、ミートボールをつりさげたドローンが通って行く。
「ブウブウ・・・・この匂いたまらない!!待て待て!!!」
ドーラキルケはドローンを追いかけて行ってしまった。
「な、なんなんだ?あのドローンは?」
「ふう、どうにか行ったようだね。」
電柱の影から束が現れた。
「束!」
「あのモンスターは当分、あのドローンを追いかけているからしばらく問題ないよ。」
「じゃあ、あのドローンは束さんが飛ばした物なのか!」
「まあね、取りあえずみんな一旦基地に戻らないと。あのまま戦っていたら本当に危なかったからね。それにかなりの重症患者もいるようだしね。」
束は厳を見ながら言う。
「しかし、厳さんがこんなになるなんて・・・・・一体何があったんだ?」
「それが・・・・・」
月 バンドーラパレス
「あはははは!!いい気味だね!!あの食欲の前にはパワーレンジャーも手も足も出ない!」
ドーラキルケの予想以上の力にバンドーラは空腹も忘れ、トットパットとブックバックと大笑いしていた。
「はあ・・・・・・・芸術とはなんとやら・・・・・・プリプリ・・・・」
その様子を仕事部屋から見ていたプリプリカンは、何とも言えない顔で頭を抱えるのであった。
パワーレンジャー基地
『君たちが戦ったモンスターのデータを解析してみたがこのままあのモンスターを放置しておけば、約三日間で地球上のあらゆる食料を食べ尽くしてしまうという計算が出た。』
ゾードンはドーラキルケの戦闘映像を見ながらレンジャーたちに説明する。
「そんな!それじゃあ、あのモンスターをその前に何とかして倒さないと・・・・・」
「シャルが言うのもわかるけど・・・アイツ、私たちのパワーウェポンまで食べちゃったのよ?」
「それに奴は強い。倒すにしても奴の弱点が見つからない以上こちらも迂闊に手を出せない。」
一夏たち三人は何とかできないかと考える。
「・・・・・それはそうとなんで私たち三人で考えているのよ?千冬さんと弾は?」
「二人とも寝込んじまった厳さんを見に行ったよ。話によればあのモンスターが食堂を襲ったとき厳さんがおたま投げたりとかで防戦していたけど結局、アイツに全部食べられちゃったんだとさ。」
「・・・・・まあ、厳さんのことだからしょうがないわね。店をあんなに荒らされたんだから。」
「二人とも納得しているようだけど一体どういうことなの?」
「あ・・・・・・・シャルにはまだ教えていなかったわね。実は・・・・・・」
パワーレンジャー基地 医療室
「はあぁ・・・・・・・・・」
医療室では厳が呆然とした状態でベッドで寝かされていた。
「お義父さん、しっかりしてください。」
「蓮・・・・・・すまねえが儂はぁ・・・もう、駄目かもしれん・・・・・・儂は倅の・・・・・・」
「一度のことで落ち込んじゃいけませんよ!それに店の被害だって弾のおかげで最小限で済んでいるんですから!」
蓮は必死に呼びかけるが厳はずっとこのままだった。千冬と弾はその様子を少し離れた場所で見ていた。
「あんな厳さんを見るのは初めてだ・・・・」
「くそ・・・・・あのクソ豚・・・・・・」
弾は悔しそうに壁に拳をぶつける。そこへ一夏たちが来た。
「・・・・・・・千冬姉、厳さんの様子は?」
「一向に治る様子はない。」
「・・・・そうか。」
「・・・・・店が荒らされたの余程響いたんだね。」
シャルロットは何とも言えない顔で厳の方を見る。
「・・・・・昔、死んだ父さんから聞いたんだけどさ。母さんが結婚して間もない頃、じいちゃんに一回、独立したらどうだって言われたんだってさ。じいちゃんも父さんを一人前として見たうえでの言ったことなんだけど父さん、こう言ったんだってさ。『俺は親父と一緒にこの店でやっていきたい。』って。そのとき、じいちゃん思わず感動したって言ってた。自分の店の看板継いでくれるというのがよっぽど嬉しかったんだよ。でも、父さんは・・・・・」
「弾が小学生の時に事故で亡くなった。」
「俺も母さんも蘭も悲しんでいてじいちゃんは、一番ショック受けていたんだ。孫もできてこれから親子三人でやっていけると思っていた矢先にあんなことになってさ。」
弾は後ろを向いたまま話を続ける。
「でも、それでも俺たちの前で泣こうとはしなかった。確かに父さんはいなくなっちまったけど俺と蘭が残っている。同じ道に入らないかもしれないけどそれまでは自分で店を守っていく。そういう意思で今日の今日まで店を守ってきたんだ。それなのにあんなモンスターに・・・・・」
「弾・・・・・・俺たちだって悔しいさ。」
「そうよ、私たちだってアンタほどじゃないけど厳さんのことはよく見ているんだから。少なくともアンタの悔しさは理解しているわ。」
「一夏・・・・鈴・・・・」
「僕は、二人ほどよく知らないけど厳さんがいつも真剣に店を守っているというのはよくわかるよ。」
「シャル・・・・」
「ここにいる全員がお前と同じ気持ちだ、五反田。だから、そう自分を責めようとするな。」
「千冬さん・・・・・・みんな、ありがとう。」
弾はようやく一夏たちの方に顔を向ける。
「とは言え、アイツの弱点を見つけない以上には対策が立てようがないな。」
「そうだね、武器まで食べちゃうモンスターなら尚更だよ。」
五人は頭を抱えながら考える。
五反田食堂から大分離れた街
「はあ・・・・・ここはまだ無事みたい。」
蘭は検索した店の名前を確認しながら言う。
後ろでは、空腹のあまりに半泣き状態の本音、それを落ち着かせようとする虚と簪、オドオドしているラウラがいる。
「みなさん、ここの店はまだ大丈夫ですよ。この店はケーキでも部門で受賞された経歴のある店なんですよ。」
蘭たちは、店の中に入って行く。
「ご注文は?」
「う~ん、私はおすすめのデザートセットで。みなさんは?」
「では、私はプリンアラモードで頼む。」
「私はえっと・・・・・・抹茶シフォン。」
「えっと~~~~迷うな~~~。」
「ほら、本音。みなさんがもう決めているんだから早くしなさい。」
「う~~~ん~~~じゃあ、イチゴロールケーキで!」
「私は、ミルフィーユでお願いします。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
ウエイトレスは注文を確認すると厨房の方へと向かった。
「あの・・・・蘭さん。」
「えっ?何?ラウラちゃん?」
「その・・・・・この店ってお持ち帰りはできるんですか?」
「できるけど・・・・それが?」
「きょ、教官のお土産に・・・・・」
ラウラは少し赤い顔をして答える。
「そう言えば蘭さん、ちょっとお聞きしてよろしいですか?」
「なんです?虚さん。」
「五反田君って、どういうケーキがお好きですか?」
「え・・・・・・・・・・・・えっ?」
虚の質問に蘭は思わず声が出た。
パワーレンジャー基地
「要はあのモンスターは口から物を食うから・・・・・・・なんかでっかい岩か何かで塞ぐというのはどうだ?」
「馬鹿、ただでさえ力が強い奴よ。顎の力も強いはずだし、それ以前に吐き出して攻撃されるのがオチじゃない。」
「だよな・・・・・・一夏は何かアイディアはあるか?」
「あるかって言われても・・・・・・こっちのパワーウェポンは千冬姉のパワーアックス以外みんな喰われちまったんだ。パワーブラスターにして攻撃することができない。」
「僕としては何だけどなんでも食べるってわけじゃないなら嫌いなものを食べさせて弱らせることができると思うけど・・・・・・・」
「では、食べ物に毒を盛るというのはどうだ?毒ではなく麻酔でも十分な効果があるかもしれん。」
「でも、あの感じだと毒キノコいくつ食べても平気そう・・・・・・・」
一夏たちはどうすればドーラキルケを倒すことができるか考えていた。
そこへ医務室から蓮が出て来た。
「あっ、母さん。じいちゃんの具合は?」
「今落ち着いて眠ったところ。あそこまで元気をなくしたお義父さんを見たのはお父さんが亡くなった時以来だわ。」
「なあ、母さん。一つ聞きたいんだけど、あのモンスターがうちを襲ったとき何か嫌がるようなものはなかったか?」
「えっ?どうしたの急に?」
「じいちゃんの仇を取ってやりたいんだ。それにはどうしても何か情報が欲しい。何かないかな?」
「そうね・・・・・・・」
蓮は頭を抱えながら思い出そうとする。
「そう言えば・・・・・家の激辛麻婆豆腐には一切手を付けなかったわ。」
「激辛?確か父さんが最後に考えた余程の辛い物好きしか頼まないアレ?」
「ええ、あのモンスター麻婆の匂いをかいだ瞬間、それだけには手を付けなかったわ。」
蓮の言葉を聞いた弾たちは全員顔を合わせる。
「みんな、どうやら奴は辛い物には弱いらしい。」
「でも、問題はどのくらいの辛さで奴が弱るかだな。中途半端な辛さだと次にやった時、警戒して通じなくなるぞ。」
「一発勝負ってわけね。」
「う~~~ん・・・・・わさびと七味を大量に混ぜてマスタードのように塗るのはどうかな?」
「しかし、それでは効果があまり期待できなさそうだな・・・」
「ひょれなら、いいひょうひょうがあゆよ・・・・・(それならいい方法があるよ。)」
「ん?」
何かもごもごした声を聞き、一夏たちは後ろを向く。そこには束が立っていた。
但し、ひどいたらこ唇の状態で。
次回はかなり短い内容の予定。
次回「喰らえ!一撃激辛ドッグ!!」
お楽しみに!