半人前とおませなアイドル   作:エクレアP

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始まりの嘘

-----アイドル-----

 

私のとってそれは別世界の住人であった。

 

学生時代にアイドルを好きになったことは誰にだってあると思う。

お茶の間に流れる映像でキラキラ輝いているアイドルを見て

 

「このアイドルと親しくなりたい!」

「私だって輝きたい!」

「付き合いたい!」

 

などと思った事は誰だってあると思う。

 

当然私もアイドルと生活する妄想をしていたし、

もしお近づきになれるならマスコミには隠しておかないと...

などとありもしないことを心配したものだ。

 

しかし、私のような平凡な人間には当然縁がなかった。

何事もないまま学校を卒業し就職。

しがないサラリーマンとして細々とした生活を送っている。

 

そんなとき知人から誘いを受けたのだ。

 

「アイドルをプロデュースしてみないか?」

 

最初聞いたとき「こいつ頭おかしくなったんじゃないか?」と思ってしまった。

芸能界の仕事なんかいきなりポンと出来るわけではないし、

アイドルと一緒に仕事?ってかプロデュースしろとか何言ってんだという感じである。

 

どうやら彼は今、アイドルをプロデュースしているらしい。

私が今の仕事にやりがいを感じていない事を杞憂して今回の話を持ってきたとのことである。

 

楽な仕事ではないが、やりがいがある事。

アイドルと共に悩み、成長する過程が素晴らしい事。

自分がプロデュースしたアイドルがファンの前で声援を受けた時の感動。

 

などを説明されたが、正直それはやっぱり別世界の出来事であった。

自分がそんな煌びやかな世界に携わることされ想像できない。

第一、アイドルプロデュースとかド素人の私には不可能である。

自分自身の夢を持つことすらままならない私が誰の夢を叶えるいうのだ。

 

しかし当の知人は私の困惑など気にせず、熱くプロデューサーとしての仕事のやり甲斐を語る。

これはらちが明かないと思った私は「まぁ考えてみるよ。」と曖昧に返事をしてその場をやり過ごすことのした。

 

一週間後、相も変わらずデイリー業務を終え、真っ直ぐアパートに帰った私は何を食べようか考えながらテレビを見ていた。

たまたま見ていた番組が歌番組らしく、いま人気のアイドルが派手なステージで歌って踊っていた。

思えば、知人の話を内心気にしていたのかもしれない。

 

試しに自分がアイドルをプロデュースしている想像でもしてみようか?

いやいや、そんなイメージ出来ないわ、などと一人でツッコみを入れながらと暇を持て余していた時、携帯が鳴り響いた。

 

「お疲れ!どう?考えてくれた?」

 

電話の相手は先日私にプロデュース業を勧めてきた知人であった。

当然、自分には向いてない、誰か他の相手を探せと伝えたのだが、相手はそんな私の言葉を聞かず

 

「一回でもいいから見に来こいよ!絶対面白そうだから!」

「実際にアイドルみたら考え変わるって!」

「ってか見学の許可もらってあるから!」

 

と人の気持ちを無視して話を進めてくる。

半ば無理やり見学することになってしまった...

ま、どうせ休日はアパートでテレビ見るかネットサーフィンするかだし良いか。

 

どうや知人も仕事がら勧誘しないといけないとかだろう。

適当に行って、適当に断ってこよう。

 

次の日の休み、私は知人に連れれアイドル事務所に向かった。

 

「すっごい可愛い子たちがいるから色目使うなよ(笑)」

 

などと知人はかなりの上機嫌である。

どうやら私に自分がそんな可愛いアイドルと仕事をしているのを見せつけて優越感に浸りたいとか思っているのだろう。

確かにアイドルと一緒に仕事をしてる時点で若干は羨ましい。

一日PCと睨めっこして黙々と仕事をしている私よりかは遥かに楽しそうではある。

うん、私も同じ立場だったら自慢しただろう。と考えているうちに車は高速道路に乗った。

 

ん?高速?そんなに遠いのか?

 

私は彼に聞いてみた。

 

「あ、言ってなかったっけ?俺の所属している事務所って何と346プロダクションなんだぜ!」

 

346プロダクション!?

346プロダクションって言ったらアイドル業界の大手で競争率もすごく高い事務所じゃないか!

 

「あー、確かに一般で入るなら難しいな。でも、ほれ、今回は俺の紹介だしね。」

 

いや、待ってください知人様。

流石に予想外です。

そんな一流企業に誘われたら気持ちが揺らぎます。

ってか気持ちが昂ってきてます、既に。

どうしましょう。私普段着です。

というか貴方は何でスーツなの?

何で私に指摘してくれなかったの?

 

「目の色が変わったな(笑)。実は今人手が足りなくてさ。一般で募集はしてるんだけど、ある程度社会経験が豊富な人間が欲しいって上司に言われて、お前を誘ったってわけ。」

 

346プロダクションって言ったら東京だよな。

もし転職するとしたら引っ越すのか?

いやいや、まだ転職すると決まったわけじゃないし...

 

この数分間で自分の意識が明らかに変わったのを感じた。

そう、私は冷やかしに行くのではなく面接を受けに行く気持ちに変わっていたのであった。

大企業だし仕方ない...仕方ないよね?

 

「大丈夫だって。驚かすために連れ出すまで教えませんって言っといたから私服で問題なし!」

 

それで良いのか大企業....

しかし、いくら考えても今の状況が変わるわけではないので私は諦めて腹を括るとこにした。

こうなったらなるようになれだ!

 

そして遂にたどり着いてしまった。

私が普段務めている会社とは圧倒的にスケールが違う場所に。

 

駐車場に車を停めると"関係者以外立ち入り禁止"と貼られたドアから事務所に入る。

警備員から怪しい目で見られたが、知人が見学者と説明し、問題なく事務所の中には入れた。

従業員通路は意外と狭く、心なしか正面から事務所を見たときよりいくらか心が落ち着いた。

 

そ、そうである。

私はただの見学者なのだ。

何をビビっているのでしょう?

堂々と見学していけば良いのです。

 

「何硬くなってんだよ。ほらもうすぐ俺の使ってる部屋に付くからそこで担当のアイドルを紹介してやるよ」

 

そういえば、彼は誰をプロデュースしているんだろう?

アイドルとしてはまだ蕾であり、一般的に人気はないがコアなファンがいる子とは聞かされていたが、

肝心に名前を聞いていなかったのに今更気付く。

我ながらプロダクション名を聞くまで彼の話にどれほど興味がなかったのか...

 

「あー、ちょっと変わってるってか、うん、すごく変わってるけど愛らしい子だよ」

 

彼はそれしか説明してくれなかった。

会えば分かるということだろうか。

相変わらず肝心なことは無駄に口が堅い。

 

「おはようございます!今日も一日よろしくお願いします!!」

 

彼の部屋に入ると元気な声が聞こえてきた。

 

「おはよう!今日も張り切っていくか!」

 

見たことない子だった。

そりゃそうですよね、まだお茶の間に出てないアイドルですもんね。

 

「あれ?そちらの方は?はっ!もしかして営業の方ですか!?xxです!よろしくお願いします!」

 

彼は私を友人だと紹介して、お互いに軽く自己紹介をした。

 

彼は私を友人と言うが、私はそこまで親しとは思っていない。

たまたま彼が前に私の会社に勤めていたというだけである。

 

「じゃ、そろそろ見学に行こうか。xxはちょっと待っててくれ。すぐ戻るから」

 

はーい♪と愛想よく手を振るxxちゃんに見送られて部屋を後にする。

 

その後、レッスン場や事務所内をしばらく歩いき社長室と書かれた部屋の前に行き着く。

 

あー、やっぱり社長とご対面ですか。

流石にこの格好じゃ失礼だから別に日にしませんか?

そう目で知人に訴えたのであるが、「大丈夫大丈夫」とどこが大丈夫か分からないが彼は平気でドアをノックする。

 

「入りたまえ」

 

あーこの貫禄がある声、絶対偉い人だよ。

おや、社長室だから偉い人がいるのは当たり前だけど。

心の準備が出来ないまま「失礼します!」と不必要に大声で部屋に入る。

 

「初めまして、私が346プロダクション社長の美城だ」

 

まぁ345(ミシロ)ってことだから美城さんですよね。わかります。

私はカチコチに緊張した体とは裏腹にそんな事を心で思っていた。

割りと余裕あるのでは?

 

「早速だが、君の履歴書を見させてもらったよ。うん、なかなか優秀な人材のようだね」

 

履歴書!?

いや書いた覚えはないんですが!?

何それ怖い。誰だよ書いたの!?

というかこの状況でそんなことするのって...

思わず隣りで直立不動の知人の方を見る。

部屋に入る前と違いそこには見たこともないような真面目な青年がいた。

 

こいつ...適当に書きやがった!

 

「今も某外資系一流企業のxxxxで働いているとか?なるほど、私服なのも外資系なら納得がいくね!」

 

待ってください。

私が働いているのは中小企業というか小企業です。

xxxxとか書類審査で落ちてます。

私服なのはこの隣りにいる人間に騙されたからです。

 

「趣味は見聞を広めるために海外旅行かね。なるほど」

 

パスポート持ってません...

というか休みの日はアパートから出ません。

 

「うん、彼から事情が彼から聞いている。ウチでより刺激のある仕事をしたいとか。」

 

...これはやるしかない!

バレても知人が悪いのであって、私が悪いのではない!

そもそも私は騙されたのです!

どうせならここでバレてすみませんで済ませたほうが良い。

 

そう思うと自分では不思議なぐらいスラスラと言葉が出てきたもんだ。

 

最悪の事態も考えて嘘はつかないようにして抽象的な言葉で表現し、

社長の問いには曖昧に答えた。

直ぐにバレて叩き出されて、帰りにこの責任を知人に取らせてご飯でも奢ってもらう予定であった。

あったのだが...

 

「よし、では来月から来てくれないか?部屋はこちらで用意するから事務員から後日連絡させるよ」

 

上手く騙せてしまったのである。

いや、いくら先入観でそう思っていても少しは疑わない?

ってか事前に裏取りしとけよ!

あぁもう、こっちからネタバレしなきゃいけないんですか!?

そう思った矢先、

 

「ありがとうございます!私も友人が部長に認められ、自分の事のように嬉しい所存でございます!」

 

と私より先に知人がとんでもないことを言い放った。

ってか部長?社長の間違いだろ!こいつ本当にアホか!?

 

私は訳が分からなくなり、知人に促されるまま部屋を後にしたのであった。

 

何を考えているんだ!

そう彼に怒鳴ったのは至極当然のことであった。

 

「すまん!!」

 

彼の性格からして開き直るのかと思ったらこれまた意外。

素直に謝られて逆に勢いを削がれてしまった。

 

彼の話はこうである。

 

自分の担当するアイドルに希望する仕事が下りてこない。

良い仕事をもらうには成果を上げるしかない。

丁度良い事に会社が人手不足で困ってる

 

そこで、一流企業出の人間を紹介すれば彼の点数が上がるというわけだ。

 

要は利用されたわけですか私は。

でも、そんな嘘をついてバレたら担当アイドルにも迷惑がかかるのではないのか。

 

「あーそれは大丈夫。」

 

と彼は意外にも平気な顔でそう言った。

 

「あれ実は本当の社長じゃないから。」

 

え?でもさっき社長って言ったよね?

 

「あの人は人事部の部長。社長は今海外に言ってて、代行でやってるのさ。更に、その部長も来月退職だから会社にはほとんど来ないんだよね。今回は声かけてわざわざ来てもらったのさ」

 

なるほど、来月退職だからあんなに適当だったですね。

後は私の履歴書が紛失すれば周りにはバレないって事かな?

大企業だと人の一人や二人増えたってそこまで印象に残らないのしょうか?。

全く、私が勤めていたところとは違いすぎる世界ですね!

 

そんなこんなで私のプロディーサーとしての生活が始まったのです。

 




この拙い文章を最後まで読んでいただきありがとうございました。
今回は導入部分ということで少し長くなったかなと思います。
次からはいよいよプロデューサーとしての生活が始まります。
行き当たりばったりですので、上手く収まるか分かりませんがお付き合い下されば幸いです。
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