私が356プロダクションに所属して一ヵ月が過ぎようとしてます。
一応知人の思惑通りに何とかバレずに入社できたみたいですが、
本当にこれで良いのでしょうか?
バレなきゃいい?
いやいや、そんなわけにもいかないでしょう。
いつか話さないといけません。
いつ話す?
今...ではないですね。
話すのであれば最初に面接を受けた日に打ち明けるべきでした。
あの時私は大手企業に就職できることと嘘を天秤にかけて嘘を選んでしまったのです。
知人と同罪です。
そして言い出せないまま一ヵ月の時が過ぎてしまいました。
一ヵ月何をしてたって?
それはですね。
意外にもプロデューサー業とは違うことでした。
中途採用の新人研修ということで最初は事務所の警備員を。
その後は各プロデューサーさん達の雑務処理。
はい、実はこのプロダクション、私たちがついた嘘みたいな経歴の人がゴロゴロいます。
嘘がバレる所か、そもそも相手にされてません。
人手不足と言っても、即戦力が欲しいのではなく雑務担当が欲しいみたいでした。
いや、私みたいな凡人がいきなり大きな仕事を任されてもすぐにボロを出してしまうので、この状況はよく考えれば良かったのかもしれません。
一応、将来的にはプロデューサーとして活動をするらしいですが、どこも忙しいみたいで私なんかに仕事を教えてくれる人もなく、今夜も雑務で残業です。
残業代?何か知りませんが、怪しいドリンクをいただけます。
とりあえず名刺を作ってもらいました。
346の豪華なロゴにプロデューサー見習いと書かれた名刺。
いや、そんなことわざわざ書かなくても。
これ受け取った人が反応に困ると思うんですが...
「見習い君。ちょっといいかな?」
...私の通称は見習い君となってるみたいです。
流石にここまで露骨にされると私だっていじけてしまいそうです。
いやね、おそらくこの人たち分かってるんですよ。
私が何の取り柄もない人間だってこと。
だって、一流企業だって言った嘘も周りには誰もいませんもん。
となると「あれ?あの人誰?仮のスタッフカード持ってるけど、雑用係り?」ってなっちゃいますよね。
あー、ほんと転職に失敗した気分です。
やっぱり人間それ相応の仕事をしたほうが良いです。
「えっと、見習い君?」
田舎で毎日だらだら仕事するのだって良いじゃないですか。
何でこんなとこ来ちゃったかな。
「ちょっと見習い君!!」
あ、そういえば呼ばれていたんでした。
最近黙々と雑用処理をするだけだったので、気が抜けてました。
「千川さんが君を呼んでたよ。直ぐに行ってきなさい」
千川さん?誰ですかそれ?
毎日違う人の雑用を受け持っているのでいちいち名前とか覚えれないんですが...
何人プロデューサーがいると思ってるんですか?
「プロデューサーじゃないよ!アシスタントの千川さん!」
アシスタント?
アシスタントってことはプロデューサーの手伝いをするとこですよね?
なら私の同僚ってことでしょうか?
「何言ってんだ!千川さんは敏腕プロデューサーのアシスタント!俺らみたいな下っ端プロデューサーの手伝いなんかしてくれるわけないだろ!」
って言われても会った事もないし、そもそもどこにいるんですか?
「あーもう!本当に面倒くさいやつだな!そこに地図あんだろ!アシスタント室に行けばいいから!」
私はあー言えばこー言うタイプのようで、気の短い人とは合わないようです。
久々に会話のドッヂボールを楽しもうと思ったのに...
兎に角、仕事ができる人限定のアシスタントさんに会いに行きましょう。
要は私のランク上の方ですよね。
何だろう?今更自己紹介ってのも変ですし、まさかまた転属なんでしょうか?
折角慣れてきたのに気が重いです。
「あ、はじめましてですね!見習いさん♪」
アシスタント室に入ると緑服の女性が笑顔で迎えてくれました。
一瞬どこのアイドルかな?と見間違うほど美人な人で、とっても優しそうでした。
しかし、彼女の口から意外な一言が発せられたのです。
「貴方、嘘の履歴書で346プロダクションへ入ったんですってね」
何この人怖い。
いや、何で知ってるんでしょうか?
だって私の履歴書って知人が処分したはずじゃ...
「何で知ってるのかって顔ね」
彼女は相変わらず笑顔である。
「346プロダクションの事で私が知らない事はないんですよ?」
口調はすごく優しい。
でも、有無を言わせない強さが頑じられます。
正直、今すぐに土下座して謝って、逃げ出したい。
「困るんですよね。毎年そういう人って必ずいるんですけど、その度にお帰りいただいているんですが、何で貴方のは気付くまで時間がかかったんでしょう?」
そんなこと言われても知りません。
346プロダクションで知らないことがないという自信がどこから出てくるか分かりませんが、そりゃこれだけ人がいれば気付くのに時間がかかっても仕方ないのではないでしょうか?
「あら?意外と冷静なんですね?もっと慌てふためくんじゃないかと思いましたけど?」
いや、諦めが良いだけです。
わざわざ呼び出して、伝えてきたってことは私は解雇なんでしょう?
大人しく荷物まとめて実家に帰ります。
可能であれば損害賠償は止めてください。残業代ももらってないので払えません。
「んー、やっぱり気になりますね。よし、しばらく様子を見ましょう!」
え?解雇じゃないんですか?
「本来であれば判明した時点で即解雇なんですけど、私のセンサーに今まで引っかからなかったってことは346にとって無害なんでしょう。それなら頭数として働いてもらった方が良いじゃないですか♪」
えーっと、言ってる意味が分かりません。
そんな感じのノリで良いんですか?
というか貴女が決めて良いんでしょうか?アシスタントの方ですよね?
「大丈夫です!プロデューサーさんたちのことは私に一任されてますので!それに...」
それに?
「プロダクションに嘘をつくなんて後ろめたい事をしたんですから、当分"無償"で頑張ってくれるんですもんね!」
!?
「損害賠償を請求しても良いですけど?そうなると一生ただ働きでしょうか?」
あぁ...これはアレですね。
俗に言う恐喝ってやつですか。
いや、悪いことしてるのは私の方なので訴えることもできません。
ってことはこの緑のお姉さんに私は一生こき使われるんですね。
一部の人からすればご褒美っていうのをネットの知識で知ってますが、生憎私にはそんな趣味はありません。
「汗をかいて働くって素晴らしいですよね♪地下で延々と穴でも掘りますぅ?」
私はしぶしぶ彼女の提案を呑むしかありませんでした。
あぁ...やっぱり何でこんなとこ入ったんでしょう...
ここに来るまでは少なからず蓄えもあったんですが、営業に付いて回るたびに自分の財布からお金を出してたのでほとんど手元に残ってません。
幸い住宅だけはプロダクションが用意してくれたので無料で住ませてもらってますが、それでも毎月赤字です。
「あ、そうそう。明日からは私の下でプロデューサーとして働いてもらいますので、ちゃんとスーツで通勤してくださいね。」
コレは意外です。
ただ働きとはいえ遂にプロデューサーとしての活動が始まるのです。
しかも敏腕プロデューサーしか手伝わないと言われる千川さんの下で。
下?あれ?アシスタントプロデューサーの下のプロデューサー?
「それはもちろん♪私がしっかりとプロデューサーとして成長させてあげます♪」
一度教育係してみたかったんだ~♪と鼻歌交じりで浮かれている女性が私の前にいました。
ご拝読ありがとうございました。
文章を書くっていうのは慣れてないので読みにくいと思いますが、最後まで見て下さった方、ありがとうございました。
まだアイドル出ません。
早く出したいです。