店を出た光秀はややおぼつかない足で歩き出す。だがすぐに夜の暗い空から冷たい雨が降りだした。
荷物から折り畳みの傘を出して広げた魚住は濡れる光秀に傘を差し向ける。すると光秀は笑みを浮かべて魚住の手を押し返した。
「濡れるぞ」
「酔い醒ましにはちょうどいいだろ」
あえて濡れようとする光秀は雨の中を歩いていく。その後ろを歩きながら魚住は嘆息を漏らした。周囲を濡らす雨は強さを増して光秀を濡らしていく。
魚住は荷物を持つ手に傘を持ち替えるとあいた手で光秀の腕をつかみ歩き進む。
「なんだよ。人がせっかくいい気持ちで歩いてたっつーのに」
腕を引かれた光秀はたまに足をふらつかせながらも抵抗することなく歩いていく。
大通りでタクシーを捕まえると魚住は光秀をマンションまで送り届けた。車内で半分寝ていた光秀はあくびを噛み殺しながら玄関の鍵を開ける。
そうして玄関に入りながら魚住に雨宿りを勧めた。
「明日休みっつってたろ。コーヒーくらいなら出るぞ?」
眠気は強いようだがその目にはまだ力が残っていた。そんな光秀に勧められるまま魚住は玄関に入り荷物を置く。
そんな魚住のそばで光秀は滴のしたたる前髪をかきあげた。
「あんたも濡れたよな。いまタオル持ってきてやるから…」
洗面所にあったはずとつぶやき歩き出そうとする光秀の腕をつかみ引き寄せる。あごをつかみキスをすると光秀はぽかんと間の抜けた顔を見せていた。
最初は玄関そばの洗面所で立ったまま身体を繋げた。
洗面台に手をつかせた状態で、逃がさないように光秀の腰に腕をまわす。そうして腰を密着させるとうなじに強く吸い付いた。
下をすべて脱がされワイシャツ一枚だけになった光秀は刺激に顔をしかめる。
「見える…とこに、つけんなっ」
吐息を漏らしながら悪態ついた光秀は下肢に力を込める。光秀の中に入り込んでいたものが締め付けられたことで魚住は鏡越しに光秀の赤い顔を見やった。
「酔いは醒めたか?」
「…っ、んなの、とっくに……」
魚住の質問に光秀の顔が赤みを増していく。そんな光秀の返事を聞いた魚住はそれは良かったなと笑った。
すると光秀はますますその顔を赤らめる。
「良くねぇ…だろ…バカかおまえ」
洗面所で何度も達して立っていられなくなった光秀は寝室へ運ばれる。だがそれで終わらず、今度は寝室で蹂躙されていた。
うつ伏せの光秀をベッドに押し付け背後から一気に中へ押し込む。それだけで背中をのけぞらせ声をあげた光秀は酸素を求めるように口を動かしていた。
だが魚住はそこで止まることなく強く腰を打ち付ける。
さらに強めに扱いて光秀を追い立ててやると切羽詰まったような声があふれた。
「……っあ! もう、ムリだっ…てっ」
やがて光秀は首を横に振りながらシーツを握りしめる。その頃には魚住も何度目かの限界が近づいていた。さらに光秀の奥へ押し込み自分を追い詰めていく。
「あっ…ああああーっ」
全身に力を入れて一際大きな声を発した光秀はそのまま脱力したように崩れた。
睡魔と快楽に溺れかけている光秀は荒い息を吐きながらぐったりと動けない。
魚住はその様子を眺めながら光秀の太ももから尻にかけて手を滑らせる。すると身体が反応して光秀の中が萎縮した。さらに光秀の涙のにじんだ目が魚住に向けられる。
「…こわす、気か」
「すまない。配慮が足りなかった」
配慮の問題ではないだろうが。そう思いながら謝罪の言葉を口にした魚住は自身を光秀の中から引き抜く。たったそれだけの刺激で光秀の口からかすれた声がこぼれた。
ベッドに沈んだまま動けない光秀を見下ろしながらゆっくりと顔を近づける。
「大丈夫か?」
「…んで、こんなの」
「先生の色気にやられたんだよ」
耳元でささやくように告げた魚住の目の前で光秀が整った眉を歪ませた。照明をつけずに行為を行っていたため今も光源は廊下からこぼれる明かりだけだ。
そんな遠い光だが光秀の赤い顔をきちんととらえてくれる。
「やっ…ぱ、バカだろ……おまえ」
そうつぶやいた光秀は眠そうな目を細めて笑った。