中国の山中深くにある臨獣拳アクガタの総本山『臨獣殿』の本堂ではライオンの鬣で作られた黒いマントを羽織った黒髪の少年が瞑想していた。
「・・・・・・。」
「理央様ぁ!!!!」
黒髪の少年―――理央は大声に驚き目を開け、振り向くとそこには鰐のような姿をした異形がドシドシと歩きながら理央に近づいていた。
「ニワ殿!無礼ですよっ!」
女性の声が本堂の中を轟くと、鰐のような異形―――ニワの行く手を遮るように緑のチャイナ服を着た少女が突如として現れた。
「構わんメレ。・・・ハァ、ニワか。どうした、そんなに血相を変えて。」
理央はチャイナ服の少女―――メレを下がらせるとため息をつき、立ち上がるとそう言った。
「『どうした』、ではございませんっ!我が配下のリンシーから聞きましたぞ!また高校の入学を拒否されたらしいですな!?」
「興味無い。それに小学と中学には通っただろう。」
「理央様っ!力だけ求めても最強にはなれませんぞっ!!!」
「・・・。」
「文武両道というお言葉をご存知ですかな?真の最強とは、武事だけでなく文事にも優れた者
の事を云うのですぞ、理央様。」
「むぅ。」
「それに理央様。私めは誓ったのです。
先代臨獣殿当主たる貴方の祖先たる三拳魔のマク様とラゲク様に!!!
あなた様を立派な獣拳使いに育て上げるとっ!!!!」
ニワは拳を固く握りしめ、理央に向かって自らの思いは語った。
ニワ―――臨獣クロコダイル拳使いのニワは、大地の三拳魔マクの片腕と謳われた程の実力者で、かつて悪魔という種族を滅ぼそうとする臨獣拳とそれを阻止しようとする激獣拳との間で起きた戦い『激臨の大乱』の数少ない臨獣拳側の生き残りであり、かつて生肝を抜き取られたマクの骸を奪い逃走した張本人でもある。
「フッ、暑苦しい男だな、全く。」
そんなニワの姿を鼻で哂い、悪態をつくと薄く笑みを浮かべた。
「そもそもニワ。お前が入学手続したのは日本。そして此処は中国だろう。」
「そうですよニワ殿。いくらあの女の術があるからって、中国と日本の往復には...。」
メレも理央の言葉に同調した。
「ふっふっふ、問題ありませんぞ、理央様。」
ニワは不敵な笑みを浮かべると、紙の束を取り出した。
「臨獣殿の日本での拠点として土地を買取り、武家屋敷を建設させました。地下には防音性と
耐震性に優れ、さらに激気や臨気を遮断することができる修練施設をあります。」
「・・・ニワ殿、その事を最初におっしゃるべきだったのでは?そうすれば此処まで話しが
拗れることもなかったと思いますが。」
「・・・ハッ!?し、しまった。私としたことが、私としたことが、私としたことが、」
ニワはメレにそう指摘され、フリーズした後、崩れ落ちると、床に頭を打ち付け始めた。
「わたs「うざい」ぃグハッ!」
理央は足に臨気を込めると、頭を打ち付け続けるニワの頭に向かってリンギ・烈蹴拳を放ち、ニワを蹴り上げるとニワは頭から天井に突き刺さったのだった。
「メレ、行くぞ。」
理央はメレに声をかけると本堂の外―――中庭に向かって歩き出した。
「へ?理央様、何処に行かれるのですか?」
「決まっている、日本だ。」
「日本、ということは、ご入学されると?」
「あぁ、此処から通うのは煩わしかったが、向こうに拠点があるなら別だ。」
「そうですか、理央様が通われるのは確か、く・・・く?」
「駒王学園だ。ニワの言う話なら、魔王2人の妹達が通う悪魔の巣窟という話だ。」
「なるほど、でしたら、理央様の目的も達せられるということですね。」
「あぁ、俺は最強を目指す。だが、その力で何を成すのかはまだ決められてはいない。
我が祖先たる臨獣拳アクガタの創始者、三拳魔はその力を持って三大勢力の一つ、悪魔を
滅ぼそうとした。だが、俺は見極めたいと思っている。悪魔を、ひいては三大勢力に対し
てこの拳を振るい、種を根絶させるべきなのか、な。」
「はい、そうですね。」
「それと、メレ。お前も俺と同じく駒王学園に通ってもらうぞ。」
「え?理央様、それはいったい。」
「お前は俺の護衛役だろう。・・・・・・・それに、お前との学生生活も面白そうだしな。」
理央はメレから顔を背けながらそう言った。
「理央様ぁ~。」
メレは理央に抱き着くが、理央はそれを引き剥がし、足早に中庭に出るのだった。
ニワはシンケンジャーの彦馬さんと丹波さんみたいな立ち位置です。