多分いまは少々ナチュラルハイで書き込んでいます。
皆様のお陰で4話にこぎつけることが出来ました。
引き続き見ていただけると幸いです。
(2016.4.24記入内容)
「八神だから・・・。」
「何よ今更・・・。」
讃州中学とはまた別の教室で、統夜は椅子に座って机に頬杖をしながら外を見ていた。
そして彼には周囲から聞こえてくる話の内容は最後まで聞き取れないし、聞き取る気もなかった。
ここ1月ほど見なくなっていたが、久々に見たかと統夜は思った。
『あぁ、これはあの時の夢だ。』
夢の中に出る顔も覚えてないクラスメイト。
中学1年の時に自分が置かれていた状況。
自身が初等部行って来た結果。
叔母に認められたくて誰とも話も遊びもしないで、ただひたすらに勉強と剣術で費やした日々。
それがいつの間にかクラスメイトに距離を置かれて、その後は家の名や成績に対して嫉まれ(ねたまれ)悪意になるとは知らずにいた。
叔母も自分が学校の成績も相応に良くて、乾いたスポンジのように剣術の技術などを習得していた。
叔母は家の頭首として忙しい為気がついていなかったが、中学に上がる時に友達を誰一人作らない事に疑問を思い、叔母の話として作る用に話を持ちかけられた。
その時には遅く、結果として自分には誰にも近ず距離をとり、小さい声で自分の悪口などを言う所謂(いわゆる)虐めのような状態になっていた。
自分も当時は後悔してなかった。
それを後悔してしまったら、自身の努力や行動を否定するからだと考えていたからである。
でも、今は・・・。
☆
[4話 予期せぬ出会い]
4月29日の朝の通学路。
明日からゴールデンウィークを前日に控えて、周りを歩く生徒達は今後の予定で浮ついてた。
「はぁ。」
結局朝からこのもやもやとした気分を抱えた状態で登校時間となって出てきた。
「おい、明日から連休なのにさっきからどうしたんだよ統夜。
朝からため息なんて辛気臭いな。」
「珍しいね。
とーやくんがずっとため息なんて。」
学校に転校してそろそろ1ヶ月が経とうとしており、統夜はクラスメイトともそれなりに会話をする仲になっていた。
特役部と永治に関しては良く関る為、1人を除いて下の名前で呼ぶほどになり、今日も2人と途中で合って一緒に通学していた。
「悪い永治、優香。
まぁ、ちょっと寝起きに嫌な事思い出してな。」
「なんだ?女子にでもふられたか?」
「とーやくんもお年頃だからねぇ。」
「何でその話題なんだよ・・・。」
2人のいつも通りのノリに対して呆れる統夜だが、内心はこう言った明るく接しってくれている事にありがたく思っていた。
ただ口で言うとこの2人は間違いなく調子に乗るから、統夜は死んでも言わないようにしようと思っている。
校門をくぐり、3人で他愛の無い会話をしていると、八神の視界にある者が映った。
それを見ただけで何かが自分の経験と直感で何かを理解した。
『こんな気分の時に胸くそ悪いことしやがって。』
「悪い2人共ちょっと行ってくる。」
「とーやくんアレに行くの?
もしもの時の為に付き合うよ。」
横からひょっこりと笑顔で出てくる優香を見て、観念した顔をして思った。
『お見通しと言う訳か。』
「んじゃ時間も無いし行くか。
じゃあ永治、荷物と先生に頼む。」
「了解。
まぁ、やりすぎるなよ統夜。」
2人分の荷物を預かった永治に背を向けて、人影が見え無くなった方へ歩き出す。
☆
放課後の特役部室内。
部員が全員集まった為、花奈は部の今後の予定について話し出した。
「それでは明日から我々特役部の合宿となるけど、統夜と優香は今日随分(ずいぶん)と暴れたみたいね。」
「「すいませんでした。」」
統夜と優香は息を合わせるかのように謝り頭を下げ、綾目は謎の頭痛を押さえる為に頭に手を当てていたそうな顔をする。
因み(ちなみ)に状況が状況であった為、怒られる以外はお咎め(とがめ)は無かった。
「行いは善かもしれませんが、2人とも無茶しすぎです!
相手の3年生は刃物を所持していたらしいじゃないですか!」
綾目の荒立った声に対して、統夜と優香は緩やかなノリで対応する。
「あれは驚いたけど、素手での対刃物訓練してたからどうにかなったよ。」
「とーやくん勢い余って肩の骨はずしてたよね。」
ニヤつきながら統夜を見る優香に対して、肩を外した件に焦るように統夜は言った。
「仕方ないだろ!
あの3年刃物もって俺や優香を狙うならまだしも、勝てないからって虐められてた子を人質にしようとしてただろ!」
「まぁ、そうなんだけどね。」
「経緯はさて置き、部長としての立場上は怒らないといけないけど、私一個人としては良くやったと思うわ。
うちの学年でそういった行為に及んでる人が判って、関わってた人を割り出してるらしいわ。
後あなた達が暴れて今回で浮き彫りになった点は、教師側も無視は出来ないでしょうしね。
それに2人が助けた子、うちの新入部員よ。」
『はい?』
「この反応からして、やっぱりみたいですね斎木先輩。」
怒られてた2人の間抜け面を傍目に、花奈は話を続ける。
「優香はともかく、統夜まで見てなかったの?
昨日の晩にメールで名前と顔写真は送っておいたのだけど。」
「すいません。
朝ちょっとあって見てませんでした。
それにしても、なんで今更なんですか?
新入生ならすぐにでも部に加えてると思うんですけど?」
統夜の質問はもっともだとうんうんと納得する花奈は答えた。
「私も話事態は先週聞いた件だけど、統夜の件とは別で彼女の武器は結構癖が強いやつだから、調整に時間がかかっていたのよ。
情報が来るのも遅かったし、お役目の端末を持たない人間は無闇に部へは入れられなから、どうしても遅れてしまったのよね。」
「理由はわかりましたが、それで彼女は?」
「この話が終わったら呼びに行くことになっていますので、彼女の教室で待って頂いてます。」
「これで戦力は5人。
これで私達もやれることも増えるし、フォーメーションを組んで戦えるから今よりも楽にバーテックス相手も出来るわね。」
花奈の意気込む声で話している中、統夜は内心の不安感が抜けなかった。
『戦力増強ね。
これがなにを示してるかと言えば、相手側の攻勢は今後強くなっていくんだろうな。
多分花奈先輩は判ってるけど、あえて気楽に言ってるな。』
「では、彼女を迎えに行って来ますね斎木先輩。」
「よろしく綾目。」
綾目は特役部の部室から外に出ようとした瞬間、部屋にいた全員の端末から樹海化警報のアラームがなり、みんなの空気が変わるのを統夜は感じ取る。
「相変わらずこっちの都合はお構いなしね。」
「さて、復帰戦といきますか!」
意気込む優香に対して綾目は釘を刺すようにいった。
「優香ちゃんはすぐ無茶するから気をつけてくださいね。」
「りょーかい!」
綾目の注意に対して、優香の愉快な声を聞きながら4人は樹海化する結界の中に入っていく。
☆
「ぷっ!」
結界の中に入ってすぐ、優香は目の前にいた統夜の顔を見た時に噴き出した。
なにを見て笑うのを耐え切れなかったのを、理解した統夜の顔が不機嫌になった。
「笑うなよ。
その反応見ただけで大体見当は付いてる。」
「ご、ごめん。
一応報告書は読んでたんだけど、実際見るとくくく。」
誤りながらも笑う優香を傍目に、統夜は自分の状態を確認する。
感覚的にいつもより服が大きく感じたり、自身の視界が少し下がり、皆と大体同じ高さになっている地点で統夜は自分の体が女性になっているのを再度認識した。
花奈と綾目に関しては1度見ている為に、多少苦い顔をするだけではあった。
『前回入った時は男の筈だったのに、今回は変身もしてないのになんで最初からこの体なんだ?
でも桃華は言っていたな「繋がった」て、そう言う意味だったのか?』
不機嫌な統夜を見ながら、同情するかのような声で綾目は言ってきた。
「樹海化に関して言えば神樹様の作る結界ですし納得できますけど、八神さんに関しては2度目ですけど本当に異常事態ですよね。」
「まぁそうだろうな。
どちらにしてもやる事は変わらないんだ。
それにしても、この体の感覚はまだなれないな。」
思いの他落ち着いてる統夜は、そんな事を言いながら苦笑する。
先ほど慣れないとは言ったものの、寧ろ(むしろ)感じ的には借り物の体とは思えないようなほど、体としては好調であった。
もし、自分の体が最初から女だったらこのような感じであったのだろうと考えたたりして、なにを考えてるんだとげんなりした。
「統夜の件は色々あるけど、今はお役目に集中してね。
それじゃあ特役部全員変身!」
「「「了解(です)!」」」
4人は同時に端末の勇者システムのアプリをタップする。
4人は光に包まれ、光が花びらとなって舞い散ってそれぞれの色の戦闘服に身を包んで出てくる。
「じゃあ前衛は2人に任せたわよ!」
「「了解!」」
花奈の支持通り行く為、統夜と優香は跳躍して有明浜に向かう。
統夜は左手に握り締めた納刀された確認して、他の感覚に違和感が無いか体を軽く動かしていると、優香の方に目がいく。
彼女の色は黄色をベースとした服装で、優香の戦闘服は他3人のと比べたら厚めイメージがあった。
腕には篭手らしいものが装備してあり、服が厚いのはクロスレンジでの徒手格闘戦が前提であるためだと思う。
特徴的なのは左腕は自身の背ほどありそうな銀色に光る杭が付いている。
「なぁ優香。
その左手についてるごついのなんだ?」
「ん?パイルバンカーだよ。
どうしてもパンチやキックだけだと火力不足だから、追加装備で付いてるんだよ。
バランス感覚慣れないうちはあれだったけどね~。
それよりとーや、いやとーかちゃんの方がいいかな?
機動性を重視してるみたいだけど、肩や太もも辺り露出してるんだね。」
「あのな・・・。」
有明浜に着き、そうやってニヤつきながら優香は統夜の事をじろじろ見てくる。
呆れてはいるものの、確かに言われて見ればそうだなと思った。
あの時は無我夢中で戦って、挙句肉体的に女性となってそれ所ではなかった為、服装なんかは色程度しか確認していなかった。
改めてみると優香に言われた通り肩周りと、スパッツを穿いているものの太ももより下が露出しており、他の皆より軽いと言うイメージを持たせられる。
その癖戦闘服の下は長めのコートの様に足元まで長さがある。
両腕の肘まで覆う手袋の左腕には花のマークがあって、後に知ったがカランコエの花が描かれている。
私的な意見を言えば、軽い方が立ち回りとしては楽だからいいが、どうも今まで男として生きて来た感覚上、ちゃんと服を着てるのに太もも周りがスースーする感覚がどうにも嫌であった。
そんな事を考えていると変に気恥ずかしくなってきて、統夜は優香の頭に右手でチョップを入れた。
「なにすんだよ!も~。」
「どれだけ見れば気が済むんだよ。
それより来たぞ!」
「りょーかい!」
その言葉の後に海の方に振り向いた優香は目つきを鋭くなり、一気に気持ちが戦闘態勢に変わって綺麗に半身になって構える。
『切り替えが早い奴だな。
まぁ、いいけどね。』
統夜は刀を抜いて構える。
跳躍移動中に確認した時は蠍型と表示されていたが、統夜達の世界は四国以外が死のウィルスで囲われており図鑑上でしか見たことが無い。
大まかな形状で黒くて両手に鋏があり、尻尾に猛毒をもっていると言う情報である。
バーテックスが異型の存在なのは宣告承知(せんこくしょうち)で、実際自分達の目の前にいる奴は、黄色い円形の金属部品を湾曲に曲げたような所に顔のような模様が浮かんでおり、湾曲した下側の部品から細い腕が3本生えていて、その3本の腕で大きな球体部品を支えていた。
肝心の尻尾と言えば、湾曲部品の上側に生えており、黄緑色の液体を含んだような丸い物体を何個もつないだ先に針が付いているデザインであった。
相変わらず芸術的なデザインしてると統夜は思いながら、統夜と優香は海岸では迎撃せず、海の上で足場のある所を跳躍しながらバーテックスに接近する。
「それじゃあお先にっ!
はぁぁぁぁぁぁ!!」
優香はそう言い、十数メートル上に跳んでバーテックスの顔らしい部分に思い切り右手でパンチを入れる。
金属部品を重いハンマーで叩くような鈍い音とともにバーテックスの顔らしい部分はへこむものの、バーテックスはひるむ様子を見せずに優香の左側から尻尾の針で攻撃をしようとする。
「ふっ!!」
呼吸に合わせて優香は、すぐにパンチを入れた箇所に蹴りを入れて距離を開けて針攻撃をかわす。
そのまま体をひねって着地出来るほどの場所を見つけて着地する。
「やっぱりパイルバンカー入れないといまいち効き目なさそうだね。」
「みたいだな!」
統夜は優香と入れ替わる形で飛び込み、先ほどから気になっていたぶら下がった球体のほうに突っ込む。
細い腕とは言ったものの、バーテックスそのものが巨体なもので、腕自体は人間の胴回りと対して変わりない太さを持っている。
『これぐらいならいけるか。』
尻尾をなぎ払うように統夜に向けるが、統夜は回避しそのまま腕の1本を切断して球体の上に着地する。
「まず1本!」
そのまま駆け出して2本目を切断すると、バーテックスの動きが変わり、3本目の切断されるのを嫌がるかの様な動きを示した。
自身の腕と球体の間に尾の針を突っ込み暴れだして統夜を外に飛び出す。
「ちっ!」
「八神さん!優香ちゃん!離れて!!」
統夜と優香がその声に反応して離れると、複数の矢が降り注ぎ、一部の矢が3本目の腕にめがけて飛ぶが尾ではじかれる。
「2人とも下がってください!
先輩が『1度足場のいい所で立て直そう』だそうです!」
このような戦闘中端末を開いてる余裕がない為、綾目が口答で伝えに来ていた。
僅か数秒であったが、綾目は統夜達の方を見ていてバーテックスの方を見ていなかった。
「余所見すんな馬鹿!!
避けろ!!」
「くっ!」
すばやい尾のなぎ払いが来て、綾目はとっさの判断で上に思い切り高く跳躍する。
「あいつ!あんな高く飛んだら狙われるだろが。
くそ!!」
統夜は綾目の方に向かうために飛び出す。
「統夜!」
「優香!お前は予定通り下がれ!
あっちは俺がどうにかする!」
自分のとっさの回避で高く飛びすぎと後悔し、バーテックスがこちらを狙っていると感じとった。
世界がスローモーションになる感覚。
尾が自分の方に向き、針の先が狙いを定めていた。
空中に飛んでいる以上後は自由落下しか出来ない現状自分に回避できる手段は無くあの針を食らえば即死は免れられないと思った。
「死ぬのかな。」
そんな事を小声でつぶやくと、尾と自身の前に割りこむ形で誰かが入ってくる。
赤と白を基本とした戦闘服。
「捕まれ!」
綾目は統夜だと気がつき、バーテックスを睨む様に前に割って入ってきていた。
綾目は何でどうして彼がここに来たのか理解できず、統夜がなんで捕まれといったのか理解できていなかった。
「え?」
「時間が無いんだ!
いいから捕まれ!」
「う・・・うん。」
普段の統夜とは違う強い口調に戸惑いながらも、綾目は統夜の背中にしがみつく形になる。
『もってくれよ。』
綾目が自分にしがみ付いたのを確認しながら、統夜は納刀を見ながら両手で鞘の端と端をもって構える。
バーテックスは狙う獲物が2人になった事を気にせず尾で串刺しにする為に突きを放ち、統夜はそれに合わせて針の先端部を刀の鞘に当てて、防御しながら2人は後方へ飛ばされる。
「くぅ・・・。」
針と鞘の接触部分で火花が散りながら、後ろに飛ばされる感覚はジェットコースター以上の速度をバックするような気分で、腕には勇者になったことにより身体機能は強化されているものの、腕に痛みが走る続けていて今にでも折れてしまいそうな感覚であった。
『この程度なら耐えきれ・・・不味いな。』
統夜は針と鞘の接触している所を見た。
鞘は折れる気配は無かったが、統夜が予想していた通り蠍型のバーテックスは先端に毒があり、鞘を侵食し始めていた。
『間違いなくこのまま鞘を腐らせて折る気だ。
だったら!』
ひびが入りだした瞬間統夜は逆上がりの動きをして、バーテックスの針を足場に蹴飛ばして地面に落ちていく。
落ちる速度は大したことはないが、後ろに飛ばされている速度を考えるとタダでは済まないのは理解していた為、駄目になった刀を消して新しい納刀された刀を出して、地面に接触する直前に地面に納刀を刺して減速を試みた。
納刀された刀が地面に接触した瞬間、すさまじい量の土煙を立てながら滑っていく。
滑った距離と時間の感覚はわからないものの、止まったことを確認した統夜は尻餅をついて一息ついた。
「し・・・死ぬかと思った。」
「八神さんは馬鹿なんですか!?」
「はい?」
統夜は綾目の態度に対して少し苛立ち、立ち上がっていた綾目の方に振り返ったが、彼女の今にも泣き出しそうな顔を見た瞬間前のほうに向き直る。
「下手したらあなただってあの時死んだかもしれないんですよ!」
「そうかもな。
鞘がもつ保障なんて正直どこにもなかったしな。」
統夜もあの時鞘自体がどれほど持つかは解らなかったが、神樹様の力を宿しているこの武器が早々壊れるわけが無いという他人から見たら楽観的な考えもあった。
「だったら!」
「だったら、お前はあそこで死ねばよかったのか?
少なくても俺は嫌だったぞ。」
「でも!」
「あぁ、もう!とりあえず何とかなったんだ!言いたいことは後で聞いてやるから、あいつをどうにかするぞ!」
統夜はこの話は早々に終わらないと思って話を無理やり切り、その場で立ち上がって離れた海上にいる蠍型バーテックスを睨みつける。
☆
統夜まだ海上にいるバーテックスと距離を置いた位置で全員で集合していた。
バーテックスは先ほどの傷を癒し終えて徐々にこちらに迫っていた。
「とにかくあいつは3つの腕でもってる玉みたいな奴。
奴はアレをやたら狙われるのを嫌がっていました。」
「弱点ってこと?」
「解りません。
ひとまずすごく嫌がるだけの理由はあると思います。」
「じゃあそこ狙うとして、一番被害を出せるのは優香のパイルバンカーね。
打ち込む時と打ち込んだ後の時間稼ぎはどうにかするとして、一番厄介な尾はどうするつもりなの?」
「それに関しては1度受けて動きは大体わかりましたので、俺が軌道をそらして針をどうにかします。」
「それで私がこれで叩いて地面に落とす訳ね。」
「私はどうなるんですか?」
統夜と花奈は淡々と作戦を組み立てる中、自分に出来る事が何も無いかと不安になった綾目は疑問を投げる。
「森峰さんは少し前にやってくれたあの弓の雨で、俺の方にに視界向ける兼最初の足止め。
そして俺達も援護には回るけど、優香のパイルバンカー使用後の離脱の援護に徹してくれ。」
「頼んだよ綾目ちゃん」
そういって笑顔で右手握り拳を綾目に向ける優香に、コツンとぶつかるように右手の拳をあてて綾
目は微笑むように言った。
「解ったわ。
まかせて優香ちゃん。」
☆
全員が配置につき迎撃態勢に着くと完全に回復した蠍型のバーテックスが入ってくる。
「状況開始。」
統夜が端末越しで言うと後方から多数の矢が飛んで来て、統夜は端末を消して矢が当たる前に刀を構えて飛び込む。
矢は致命傷は与えることは出来なくても、足止めや複数個所に大量の矢によるダメージを残す。
「さて、俺も囮の役目を果たすか。」
続いて統夜が一気に飛び込んで再度腕を切断。
それに気がついたバーテックスは内部に向かって針を向けるが、統夜はすぐさま離脱をして尾の一部を切りつけて地面に着地する。
『ほら、来いよ。』
統夜にはバーテックスに感情があるかは解らないが、予定通り統夜に向かって針の先端が向いて突き刺しに来た。
「ふぅ・・・。」
軽く息を吐き、針の先端に集中する。
過信はしていないものの、失敗などと言うことは考えは持たずにただその一瞬を待った。
『今だ!』
統夜は刀で針の先端が接触する瞬間、火花を散らしながら針の軌道をそらす。
自身の外側に移動する尾の重さは想像していた以上の重さが身に降りかかるのを無視して、そのまま先端部と尻尾の接続している箇所まで刀を滑らせると同時に接続箇所を切断した。
『やっぱり痛覚はないみたいだな。』
「今度は私の番ね!」
花奈は統夜が待機していた所とは別の位置から飛び出して、バーテックスの頭上から方天戟を思い切り振りかぶるり、頭部らしい箇所を叩き落すかのように思い切り殴る。
花奈の方天戟の一撃によって、金属パーツがゆがみ、へこんで割れるような重い音が聞こえる中、統夜も跳躍して、邪魔されないように針を切断した尾に向かって思い切り踵落としを入れる。
2人の同時攻撃によりバランスを失ったバーテックスは地面に墜落して、有明浜の砂を撒き散らしながら地震のような振動を起こす。
「「優香!!」」
「まかせて!」
2人の呼び声とともに、近くで待機していた優香が急速に接近して、バーテックスの球体パーツの上に載って左腕を構える。
「パイル!!バンカー!!!」
そう彼女は大声で叫びながら、ゼロ距離ではなったパイルバンカーが炸裂してバーテックスの内部をえぐり、杭を中心に衝撃が起きて周りの部品を吹き飛ばす。
統夜と花奈はバーテックスが動かない状態か確認しながら彼女の攻撃を見守り、衝撃波の風で髪をなびかせながら統夜はふとした疑問を花奈に投げかける。
「技名・・・叫ぶ必要はあったのですか?」
「そこは気合とかロマンじゃない?
それより、優香の攻撃が終わり次第一度距離をとりましょう。」
「了解です。」
☆
優香のパイルバンカーが射出前の位置に戻るのを確認して、統夜達はバーテックスから一定距離を置いた位置で警戒していた。
バーテックスは凄まじい回復速度で次々と体を修復していき、統夜たちから見て先ほどの攻撃の8割ほど回復していた。
「それで優香、撃ち込んでみた感触は?」
「う~ん。
特に何もなかったね。」
「あからさまな嫌がりようはしてたけど、アレは見当違いだったのか?」
バーテックスから目を離さない位置で、統夜は納得できていない顔をしながら考え込んでいると、優香が提案を出してきた。
「なら今度は違う角度でやってみる?」
「それもそうだな。
それに、相手も万全になったようだな。」
統夜達が見ている先では、地面に寝そべる形でいたバーテックスが巨体を持ち上げて浮上し、彼らの与えたダメージは傷1つ残っていない状態であった。
『相変わらずの再生能力みたいだな。』
統夜達はそれぞれの武器を身構えて、先ほどと同様の手で行こうとしていたら、意外なことにバーテックスは反転して緩やかに結界の外に向かって行く。
「意外だね。」
優香のその一言に、全員が何も口にはしないが納得する。
今までの戦闘データを見た感じでは、バーテックスと勇者が最低でも1時間近く戦闘を行った後に撤退していく。
それが今回に限っては最初に統夜と優香の攻撃が始まって30分ほどしか経過していなかった。
「どう思いますか?斎木先輩。」
「わからないわ。
今までどんなに攻撃をしても引かない筈なのに、敵がこんなにもあっさり引いたわ。」
「敵に何か考えがあるということですか?」
「私にも解らないわ。
でも今後気をつけたほうがいいわね。
何か仕掛けて来るかもしれないわ。」
その言葉を最後に皆が無言なり、バーテックスが結界の外に出ると同時に風が吹き、樹海化の結界が解除されていった。
☆
心地よい風に乗って海の臭いがした。
統夜達は学校の屋上にいた。
そこには石段の上に詰まれた祠があり、石段を入れた祠の全長は2mほどで、人の視点で丁度いい位置にある。
夕日に屋上に設置された室外機のファンがまわる音や、まだ残っている運動部の学生の声を聞いて統夜達は現実世界に戻ってきたことを実感する。
統夜達が樹海化した結界の中で戦闘している間、関係者以外世界そのままが時間が止まっている為、もし授業中に呼び出しされた場合、行き成り授業を放棄したようになるらしい。
ただそこら辺は、大赦側のお勤めと言うことでフォローは入るという訳だった。
「皆戦闘直後だけど体調の方は大丈夫?」
それぞれ異常が無いことを確認すると、一息置いて花奈は話し出した。
「さて、早く終わって運よく怪我人0だし、そのまま皆で彼女を迎えに行きましょうか。」
花奈のその言葉に皆賛成して、大赦側に電話で報告を済ませた後に統夜達は1年生の教室に向かった。
☆
「失礼します。」
1年の彼女のいる教室に付き、綾目が扉を開けるのに続いて全員が教室の中に入っていく。
放課後に入って大分時間が経っている為、生徒のほとんどは帰路に入ったり、部活動で力を注いでいた。
それでも数名の生徒が教室に雑談をしながら残っていて、行き成り入ってきた数名の上級生に1年生が焦って挨拶してくるのを返す。
「すいません。
高橋 栞(たかはし しおり)さんの席はどこですか?」
「高橋さんですか?
あちらの席になりますけど。」
「けど?」
綾目が丁寧な話し方で彼女の場所を聞き出し、言葉を濁すように言う1年生の目線の先を4人は見る。
窓際の席で彼女はいた。
金髪の長いふわふわとした癖っ毛の強い髪をなびかせながら椅子の上に体育すわりしながらゲームしていた。
現状人類の生存圏はこの四国だけとなっており、それ以外の人類は死滅していて外国人の生存者と言うのは非常に少なかった。
その為基本ここに住んでる人類の大半が東洋人であり、金髪や目の色、顔つきなどの判り易い外人の特徴を引いた子孫は非常に珍しかった。
実際それだけなら良かったが、彼女は周りを全く気にする素振りを見せず、携帯ゲーム画面を真剣に見つめてながら操作していた。
彼女の使用している机の上には散乱した食べ終わったシュークリームと書かれた菓子袋があり、開封済みで10ではきかない量が置いてあり、その他に未開封の物も多数置いてあった。
4人とも自身が見ている状況を面をくらっている中、優香が最初に口を開く。
「とーやくん、私胸焼けしそう。」
「優香、お前でもそう思うのか。」
「とーやくん、私をなんだと思ってるの。」
「すまない・・・。」
統夜は隣にいる優香から目線をそらし謝罪だけ入れると、このままだと誰も動かないと思って話しかける為に彼女の背後のほうに回りこむ。
大分近い距離まで来たが、ゲームに熱中している為彼女は全く気が付く素振りをせずゲームを操作していく。
彼女がやっているのはFPS(ファーストパーソン・シューティングゲームの略)ゲームで、第1者視点でゲーム中の世界・空間を任意で移動でき、武器もしくは素手などを用いて戦うアクションゲームである。
彼女のプレイを後ろから見ていて、反応速度もいいが射撃に対して正確に弾を敵に撃ち込んでいる。
一区切り付いたところで彼女は携帯ゲーム機を机の上に置いて、机の上に置いてあった未開封のシュークリームを開けて口に運ぶ。
『アレだけ食べてるのに幸せそうに食べだした。
確かにこれはみんな目線をそらす訳だ。』
統夜はとりあえず彼女の肩を叩くことにした。
「すいません。」
「!!!?!!?。」
当人は行き成り話しかけられて驚いてるが、多分口にシュークリームを食べてる途中だったから声が出ていなかったらしい。
シュークリームを必死に口の中に運んで飲み込むと、ゆっくりとこちらの方に振り向く。
「あ、あの、私に何か御用でしょうか?」
ひどく震えてる声でこちらに話しかけてきた。
まだ成長期が来ていないのだろうか明らかに彼女の背は低い為、小動物のようなイメージで、何も悪い事をしていないのに罪悪感に駆られた。
『多分人見知りが激しい子なのかな?』
「あぁ、特役部の者なんだけどさ、高橋さんを迎えに来たんだよ。」
「わ、私をですか?」
特役部の名前を聞いて怯えてる感じの声では無くなったが、逆に少し緊張しているような声色になったような気がした。
「うん。ちょっとお役目帰りだけど部員全員でね。」
「全員でですか!?」
彼女は周りを見渡して綾目や花奈達の方に目が行く。
気が付くと他の生徒は気を使ってくれたか、はたまた先輩が教室にいるから居心地が悪くなったのか、教室には特役部の人間以外誰もいなくなっていた。
彼女はその場で立ち上がり、自己紹介を始めた。
「は、はじめまして先輩方!高橋 栞(たかはし しおり)と言います!
趣味はゲームで、好きな食べ物はうどんとシュークリームです。
どうかよろしくお願いします!」
『知ってた。』
自己紹介を終えると同時に栞は頭を深々と下げた。
シュークリームが好きなのは、あの胸焼けしそうな袋の山を見た特役部全員が内心で苦笑しながら同時に思った事だった。
「とりあえず私達も名前だけでも自己紹介しとかないとね。
私は3年の斎木 花奈よ。
それと、これがあなたが今後使う端末ね。」
栞は勇者システムの入った端末を受け取ると、続いて優香が自己紹介を始める。
「次は私、2年土居 優香です!よろしくね栞ちゃん!」
「同じく2年森峰 綾目です。
よろしくお願いします。」
「同じく2年八神 統夜です。
よろしく高橋さん。」
次々と挨拶していく彼らに対し、栞は丁寧にお辞儀で返していく。
一通りの挨拶を終えたのを確認した花奈は明日の予定の話題を始めた。
「それで高橋さんにも一応連絡はしていたけど、明日から我等の特役部の今年初の合宿を始めるわ。
現地集合と言いたい所だけど、優香の家の道場とその周りを使用させてもらう事になってて、私と綾目は場所は何度も行ってて解るけど、統夜と高橋さんは解らないから私が明日の朝引率して行くわ。
なので2人は少し1度遠回りになるかもしれないけど、学校前に1度集合してもらうけどかまわないかしら?」
「問題ないです。」
「私も、問題ないです。」
「そう言う事になるから、現地の準備の方はよろしくねお二人さん。」
「りゅーかいしました。」
「はい。」
元々大まかに決めていた内容を話すだけ話して特に無い為話をしめに入った。
「それじゃあ今日はもう明日に備えて帰りましょう。
よくよく考えたらバーテックスと戦ってくたくたよ。」
「それもそうですね。」
そういって笑いながら彼らは教師を後にした。
[5話へつづく]