シキ、雪、花の登場が多いですが、まだまだ妖怪は現れますよ~。
それではご覧ください。
朝、目が覚めると、俺はベッドで横になっていた。いつの間にか寝ていたのだろうか。雪たちが抱き着いてきてそこから記憶がないという事は、あれから寝てしまったという事か。
それにしても、妖怪のくせに柔らかかったなぁ。あー、いかんいかん。相手は妖怪相手は妖怪。
布団を剥ぎ、半身だけ起こすと、横に雪、花。俺の膝の上にはシキが眠っていた。
「おーい、お前ら起きろ」
「んぅ?あ、はちまん。おはよう!」
「おはようございます。八幡さん」
「おはよう八幡」
寝起きのタレ目が可愛い妖怪たちとの挨拶を済ませ、学校に行く。基本雪たちは風呂とトイレ以外俺の傍にいてくれている。
しかし、校門に入ったところまではいいが、何か違和感を感じた。昨日にはあって今日にはないもの。
俺への陰口が一切なくなったことだ。
いや、別にそれでいいんだけどね。だけど、こうもピタリと止まると、被害者が逆に気になっちゃうから。
「別にいいじゃない。日常に戻ったという事で」
「さらっと心の中を読まないでくれ」
「顔に出てたわよ」
「俺ってそんな単純なのか・・・」
そうだな。気にしたってしょうがない。日常に戻ったという事でいいだろう。ていうか、お前らがいる時点で日常かどうか定かじゃないがな。
今日も今日とて教室に向かうべく廊下を進む。そしてすぐに異変に気付いた。
俺を避けてる。
何故か俺が行く先、周りの奴らは俺を避けるように道を開けている。まるで学校のドンにでもなったように。
教室に入っても、ヒソヒソとされているが、陰口には見えない。俺を、恐怖の対象とでも見ているかのようだ。
「どうなってるんだ?」
「確かに、気にはなりますね。皆さん携帯を見ているようですが・・・」
「もしかして、そこに何か秘密が?」
「ちょっと見てきますね」
おっと、堂々と他人の携帯を見る雪。俺も気を付けなければ。別にみられて困るものなんてないけどね。本当だよ?
「あの、凄いことが書かれてました」
「え?何?」
「それが、『比企谷の陰口は絶対にするな。したら恐怖の怪奇現象に見舞われる』と」
チェーンメールか。しかし、昨日と今日でよく学校中にばら撒けたな。教師利用したのかって思っちまうわ。
けど、これでようやく心地よく中学校生活が送れそうだ。さすがの俺も毎日こんな目に合ってたら壊れちまう。こればっかりはシキたちに感謝だ。
だが、当の妖怪たちは浮かない顔をしている。
「どうした?そんな顔して」
「これで、八幡が人と関われなくなるって思うと・・・」
「八幡、寂しい思いしちゃう・・・」
・・・・え?そんなこと?そんなことで深刻そうな顔をしてたの?なんだよ心配して損したぞ。孤独、とっくの昔に受け入れている。そのことを認識させるべく、全員の額にペシッとデコピンした。いたっ、と小さく声を上げた。
「なーにが、寂しい思いだ。人と関われなくなるだ。そんなもん昔からそうで、これからもそうだ。気に病む必要ねぇよ」
「だ、だって!」
「なんだ?じゃあお前らも俺の前からいなくなるのか?」
「そ、そんな事ありません!私たちは八幡さんが大好きです!どこにもいきません!」
「やだ!はちまんと離れたくない!」
うぇえ!ちょっと悪戯が過ぎたかな?と思った質問なのに、過剰反応しすぎだ。そしてさらりと大好きと言われてしまった。いや、嬉しいよ、素直に。少し顔に熱が帯びた。
「あー、なんだ。俺にはお前らがいるから寂しくもなんともないし、一緒にいて楽しいというか・・・。あー、なんて言えばいいんだ・・・?」
初めてといってもいい感情に、はっきりとした言葉が出てこない。文系学年2位失格だなこれは。
目の前の妖怪たちは俺のはっきりしない態度を気にも留めず、静かに微笑んだ。
「ありがとう。八幡」
花が代表して、優しい笑顔で手を握った。
一時、こいつらの人間味あふれる雰囲気に、何故妖怪なのだ?と疑問に思ったことがある。
だけど、こいつらが妖怪で良かった。もし、妖怪じゃなかったら、俺はこいつらと絶対に関わらなかったし、俺の事も知ろうともしなかっただろう。
だから、この特別で、奇跡的な出会いを巡り合わせてくれた、妖怪の神に感謝だ。ありがとう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
11月中には進行してるシリーズを投稿します。今しばらくお待ちをぉ。
また次回。