道が長かったぜ…
side第三者
異世界からの訓練生、秋良と雅人は今憂鬱な気分で風呂に向かっていた。
「地獄の禁欲コース、まさかこういう意味だったとは…」
「だね…まさか完全に食堂以外は男子女子に分かれて生活、そして男子寮には男子、女子寮には女子しか入れてない徹底ぶり」
秋良たちがいる男子寮には男しかいなく女性のじょの字もない。
そういったものは全てなくなっており訓練生が休むためのレクレーションルームには女性が載っている雑誌は全てなく、ゲーム等もオセロやクレー射撃など女性の影すらも見えないようになっていて、精神的にくるものがあった。
「唯一の癒しは食堂だけは男女共同だったことだけど…」
「長く居過ぎたらあのマッチョコンビに拉致られる」
簪たちにあえてようやく一息つけたと思ったら30分以上食堂に居たらいけなく、食堂にはいる時にもらった入場券はデジタル式で入ったら時間を測っている。
正しくゆっくりする暇はない。
そして常に訓練生は職員に監視されている。
女性の名前を言ったとき、バイタルが急激に上昇したとき、欲情したときなど全て欲に当てはまりそうな場合連行される。
IS学園にいて女子に囲まれて生活していた彼らにはとてもキツイ状態となっていた。
「あーくそー簪たちを愛でたい!みたい!話したい!もういやだあああああああ!!」
秋良は遂に我慢が限界になったのか風呂の入口前でそう叫ぶ。
「お前は会えるだけマシじゃねえか!! 俺は話すことも出来なければ顔を見ることも出来ないんだぞ!! 楯無に会いてええええええええええ!!!!」
雅人も叫びにタカが外れたのか自分の思いを叫ぶ。
それが、悪夢の始まりであるというのに。
打って変わって監視ルーム。
「訓練生織斑秋良、訓練生加賀美雅人の情欲を確認。直ちに連行チームを派遣し懲罰室へ連行。ダニエル懲罰員、ハワード懲罰員のMAJを執行せよ」
MJA。それは悶絶油地獄という相原技研において拷問にも等しい、否、それよりも最もひどい懲罰である。
行われたが最後、生き地獄を見るという最も危険な懲罰である。
そして黒服たちが一瞬にして秋良と雅人を確保し、懲罰室へ連行を始める。
「ちょ、ちょっとなに!? なんなの?!」
「ま、まさか俺たちよく出したと思われた!?」
そして懲罰室にいれられた二人。
そこに待っていたのは
「「HAHAHA!! welcome!!」」
いつものブーメランパンツ一丁でオイルを全身に浴び、その肉体をテカテカと光らせていたハワードとダニエルだった。
「「嫌だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」」
そして徐に秋良を抱きしめ交互に抱きしめる。
「やめてくれええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
そしてそれをいつの間にかイスに縛り付けられて見せられている雅人。
「やめろ! やめてくれええ!! 秋良の気が狂っちまうよおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! おええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
何故か助けを求めながら吐いていた。
side第三者end
side雅人
き、昨日は酷い目にあったぜ…。
悪夢だった…あれは前世も含めてあれ以上の恐怖はなかったと思いたい…。
そう思うほど、雅人は昨日のMAJで精神的に疲れきっていた。
「ほら〜狙いが甘いぞ〜。あと換装が遅い〜」
そう言いながら二丁のライフルをバンバン撃ってくるアリスさん。ドSモードにならないことを祈りたい。
「こなくそ!」
俺は必死に避けてイータユニットで射撃する。
「だから狙いが甘いしそんな大砲は足を止めないと当たらないよ〜。もっと考えなくちゃ〜」
ひょいひょいと避けるアリスさん。
もうなんというか、呆れてものが言えない。
状況に応じて一瞬にして装備を選択する判断力、それを使いこなす技量。
俺が目指す最終到着点みたいな人なのだ、このアリスさんは。
そんな人から教えてもらえる。俺にとっては幸運なのだが、なんというか、モチベーションが上がらない。
「うーん? なにか悩み事〜?」
アリスさんが何を思ったのか質問してくる。
「いえ、なんというかモチベーションが上がらなくて…」
「モチベーションか〜…あのさ、雅人君はどうして強くなりたいの?」
「へ? どうして強くなりたいのか?」
そういえば、なんで俺は強くなりたいんだっけ? 一夏に言われたからか?
「わからないの? なら、一番大事な人っている?」
「一番、大事な人…?」
「そう、大事な人」
俺の大事な人…………一夏たち論外…秋良は仲間だが一番というほどでもない……………俺の一番大事な人…楯無だ……。
「思い浮かんだ? ならその人を守るために強くなればいいんだよ」
「守るために…」
「取り敢えずはそれでモチベーションをあげようよ」
「はい!てか、口調変わってません?」
「真面目モードだったから〜」
どうやら、あれは真面目なときだったらしい。
そうして俺の訓練は進んでいった。
side雅人end
side第三者
それから秋良たちはそれぞれの教官のもとで特訓を受けた。
秋良は銃が使えるようになり、剣も上達した。
雅人は自分の機体を十全に使えるようになった。
鈴・ラウラ・簪は技術を学び、そして機体を使いこなせるようになった。
そして最終日。彼らは今、終了式を迎えた。
「皆、よく今日まで頑張った。ここまでよく耐えて、皆強くなったと思う」
クリスは褒めた。
「正しくその通りだな。来た時はまだ生まれたばかりの子馬のようだったというのに、いつの間にか立派な駿馬となった」
風は何故か馬にたとえて成長を褒める。
「そうね。皆よく頑張ったわ」
エルも褒める。
「ほんとだね〜。何処へ行っても恥じないくらいには強くなったよね〜」
アリスも褒める。
「しかし、戻っていったからといって決して慢心するな。これから先もお前たちの道は続いていく。お前たちはまだ始まったばかりなのだ。これからも努力を忘れず精進し続けろ」
『はい!』
将輝が努力を忘れるなといい、それに返事を返す。
「それと秋良、選別だ、受け取れ」
そういうと将輝は秋良にIS用のひと振りの刀を投げる。
「おっとっと…これは…」
秋良はそれを受け取り聞いた。
「シシオウブレード。お前のために作ってもらったお前だけの刀だ。俺からの卒業祝いだ」
「あ、ありがとうございます!!」
「簪さんには私からプレゼントがあります」
「あ、はい」
今度は雪菜から簪に声がかかる。
「あなたの御蔭でライオットストライカーのデータがとれたからあなたにライオットストライカーをあげるね。そして、もう二つ、オマケをつけておいたよ」
「オマケ、ですか?」
雪菜は笑顔で言った。
「今まで使ってくれてたのは量産前提のCタイプ。オマケで渡したのはその近接特化タイプと遠距離特化タイプのライオットストライカー、バトラーとアーチャー。略してAとB。うまく使ってね」
「ありがとうございます」
簪は礼を言った。
「私からも〜雅人くんにプレゼントがあるんだ〜」
「あ、俺にもあるんですか」
雅人は自分は何がもらえるのか楽しみにしていた。
「あと〜鈴ちゃんとラウラちゃんもだよ〜」
「む。私もか」
「あ、ありがとうございます…」
「は〜い、どうぞ〜」
そう言ってコップを三つ差し出した。
グツグツと煮詰まって不気味な緑色をした、ドリンクを。
『いっ!?』
流石に怯える三人。
「えい〜」
三人に強引に飲まれされるドリンク。
早業であった。
「あ、ありえねえ…」
「ば、馬鹿な……」
「きゅ〜」
三人は見事に倒れてしまった。
「さて、そろそろ時間だ」
秋良たちの後ろにゲートが開く。
「皆さん、本当にありがとうございました!!」
そう言って秋良は雅人を引きずり、簪はラウラと鈴を引きずってゲートの向こうに消えていった。
ラウラと鈴が空気に…