ドイツ、シュバルツェアハーゼが所属している基地にひとりの男が歩いていた。
その男は軍事基地には場違いのサラリーマンが着るような黒いスーツをピシッと着こなし頭には黒いシルクハットを被っていた。
だというのに基地にいる人間は誰ひとりとして彼を見ない。
まるでそんな人間などいない《・・・・・・・・・・》かのように誰も咎めず、誰も疑問を持たない。
そして男はこの基地の格納庫に辿り着く。IS、シュヴァルツェアレーゲンが整備されているその場所に。
「やれやれ、仕事とはいえなんでこんな場所に私が来ないといけないんですかねえほんと」
男は誰もいないその場所でシュヴァルツェア・レーゲンに近づき手を触れようとする。
するとシュヴァルツェア・レーゲンは触れるなとばかりにシールドを展開する。
まるで動物が本能《・・》でこいつには関わってはいけないと言わんばかりに、逃げるようにシールドを張る。
「やれやれ、そんなに怖がらなくていいじゃないですか。私はただあなたについているあれを書き換えようとしてるだけですよ」
男はシールドなんてないように装甲に手を触れ、あるシステムに介入する。
そう、シュヴァルツェア・レーゲンを蝕んでいる、VTシステムに。
「なるほど、これはこれで確かに面白そうですねえ…ですが、こんなのじゃ白歴史《・・・》と同じになる。ですから」
もっと悪化させてしまおう
途端に軋みをあげるシュヴァルツェア・レーゲン。
まるでその音は己が何かに塗りつぶされるのを恐怖する悲鳴のようで、まるで生まれを喜んで産声をあげる鳴き声のような、そんなものが入り混じった軋み。
軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み軋み
次第に音はやみ、男は手を離して携帯電話を取り出す。
いくらかのコールのあと、誰かがその電話を取る。
『もしもし、私だ』
「夜分遅くにご連絡をして申し訳ありません。以前私がお願いをしたことはどうなりました?」
『ああ、あれかね。君の提案通りにしたよ。あれで本当によかったのかね?』
男はその答えを聞き、人知れず、口を歓喜に歪ませる。
「ええ。あれでいいんですよお互いに。無理な提案に乗ってくれてありがとうございますね」
『いやいや、あなた方との関係は長いものにしたいもの。このくらいのことで各国のISの機密情報を教えてくれるなら安いものですよ。では私はこれから会議なのでね、お暇するよ』
「ええありがとうございます。これからもご贔屓にお願いしますね、デュノア社長《・・・・・・》」
そして電話を切るり、男は俯く。
「くっくっく、ヒャーッハッハッハッハッハッハッハ!! いいねいいねえ! 順調に俺様の計画は進んでるじゃねえか! 最高だぜ! アーッハッハッハ、ひゃひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!」
男は笑いを堪えきれず、狂ったように笑い出す。
抑えられない。楽しい。気持ちいい。
そんな思いが溢れ出すような笑い声。
聞いたものも狂気に誘うような笑い声で男は人知れず笑う。
笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う笑う
「さあ! これより演目のプロローグは終わる! さあこれから開演だ!そう!」
僕の演目がね
「あっひゃっひゃ、ヒャーッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!!」