アメリカ軍極秘軍事基地にてその日、起きた。
誰もが思っていた。
有り得ないと。
こいつはなんなのかと。
戦闘機、戦車、ミサイル、グレネード、拳銃、そしてIS。
その基地の持てる全ての軍事力を使ってもその悪夢は倒れず、傷一つつかない。
その場の誰もが思った。
あれはなんなのだと。
何故自分たちはこんな怪物に襲われているのかと。
「くふ、くふふふふふふふふ」
その怪物から笑い声が聞こえた。
年若い、それこそ十代という位の少女の笑い声が、楽しくて仕方がないと言わないばかりに笑っている。
狂っている。この存在は何もかもが全て狂っている。
格納庫の中から一機、新型のISが飛び出した。
機体の名はファング・クエイク。
誇り高きアメリカ合衆国の第三世代機の一機。
本来ならば逃げても構わないはずの実験機なのにその怪物に向かって行く。
この基地にはそれだけの価値があるのだ。
最新型ISなどよりももっと価値のあるものが。
ファング・クエイクはそのマニピュレーター自体が武器であるがゆえに、殴りかかった。
ISの常識では有り得ないもの、それこそ相原技研のヒュッケバインMK‐Ⅱでしかできないような攻撃である。ファング・クエイクのパイロットは相手はこれに驚いて一瞬の好きが出来るはずだと思った。だが
現実はそうではなかった。
その怪物はその手に持った銃で無造作に払った。
ただ、それだけで、パイロットの生身の腕ごとファング・クエイクの拳を叩き切った。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
あまりの痛みにパイロットは声ならぬ声を上げて見た。
己の腕を叩き切った銃を見た。
それは斧だった。
銃と斧が一体化していたのだ。
有り得ない武器、有り得ない技術。
そして全身装甲によって生身の顔は見えないがその顔についたツインアイがその斧銃を振り上げたまま自分を見下ろしていた。
そして、振り下ろした。
絶対防御がなんだといわないばかりに絶対防御ごと叩き切り、肉を内蔵を、骨を、血を、体液を全てをえぐるまでやめないとばかりに何度も何度も振り下ろす。
そう、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。
『エビル、そこまでよ。必要なデータと試作型の劣化品は奪って脱出したからもうその基地で囮をする必要はないわ』
「分かったよスコール。それでこの後どうしたらいい?」
エビルと呼ばれた少女は自らの上司に問うた。
『その機体を今知られるわけには行かないわ。篠乃之束にも、世界にも、赤ん坊でも、なんであっても今見られるわけにはいかないのよ。だから』
基地事抹消しなさい。
「りょーかい。じゃあやろっか」
怪物は空へと上がる。
そして己の獲物の銃を掲げると一人でに銃は浮かび上がった。
「トロニウム・レヴ、フルドライブ」
怪物の表面に描かれた赤い線が次々と光をおび、そしてその翼から飛び出し、悪魔のような翼を一瞬だけ描き、怪物の目の前に魔法陣としか言い様のないものを描き出す。
「テヒル・デレット」
両手にどす黒い光を生み出す。
「ゲマトリア修正」
そしてその光を魔法陣の中に放つ。すると魔法陣は更に赤く、血のように赤く光、斧銃がセットされる。
そのグリップを怪物が握ると銃にも描かれた赤い線にも光が宿る。
そして
「アキシオン・アッシャー!」
引き金が引き絞られ、そして魔法陣から幾重もの黒い光線が飛び出し、基地に直撃し、巨大な球体を精製する。
そして怪物は魔法陣から銃を引き抜きそのまま魔法陣に向かって
「デット・エンド・スラッシュ!!」
切り払う。
魔法陣が切られると黒き球体も全て真っ二つになり、そして大爆発をおこした。
爆発が収まったあとに残るのはだたただ巨大なクレーターのみだった。
「スコール、基地の消滅終わったよ」
『お疲れ様エビル。それと今日本で面白いことが起きたわよ』
「面白いこと? まさかブリュンヒルデが現役復帰宣言をしたとか?」
『確かにそれはそれでおおごとになるとは思うけど、それとは別よ』
「それじゃあなあに?」
「日本で二人男性操縦者が出たそうよ」
「へえ」
怪物を駆る少女にとって、それはどうでもいいことだった。
彼女が心を動かす異性はあとにも先にもただひとりのみ。
『その操縦者の名前が織斑一夏と相原悠斗という男よ』
悠斗?
「ねえスコール」
『何かしら?』
「その操縦者の顔写真ってある?」
『もちろんよ。丁度あなたのISに送ったわ』
「ありがとスコール。今から帰還するね」
『ええ。あまり遅くならないようにね』
「はーい」
そして送られてきた写真を見る。
まずは織斑一夏。
これはどうでもいい。
重要なのは二枚目だ。
そして見た。
あの少年の顔を。
自分が愛して愛して愛して愛して愛して愛して殺したいほど愛おしい存在の顔が。
「ふ、ふっふうふふふふふふふ。あははははははははあっははははははははははははははははは! ゆーちゃんだ! ゆーちゃんだ! ゆーちゃんもこの世界に来てたんだね! 前世から私を追いかけてきてくれたんだね! 嬉しいよゆーちゃん! 今度こそ、今度こそ」
アノオンナジャナクテワタシヲアイスルヒトニシテモラウンダカラ。
「あははははははあははははははははは! あははははははははははははは!」
少女は気づけはその場から消えていた。
巨大なクレーターと歓喜の笑いを残して。
こいつが物語に関わってくるのは原作三巻からですが、今だしておきました。
そうでないと忘れてしまいそうなので