相原技研のある一室で多種多様な設計図が散乱している部屋がある。
その部屋の主の名前は相原雪菜。相原技研技術開発第一班、通称“ヒュッケバインチーム”のチーフメカニックであり、ヒュッケバインに採用されている通称Hフレームの開発者である。
「MK‐Ⅲはゆー君と相性がいいみたいだね。私の予想以上に動けてる」
彼女は現在、妹の紗月から送られてきた試合データを閲覧し、悠斗とMK‐Ⅲの試合を見ていた。
「懸念していたトロニウム・エンジンを調整してるT-LINKシステムからの念の逆流現象もなかったし本当によかった」
MK‐Ⅲに搭載されているトロニウム・エンジンは非常に不安定で常に調整が欠かせないのだがこれを安定させるのにT-LINKシステムを使用し、安定させるという案を取り入れたはいいが、機体が完成していざ調整にと自分が乗り込んだとき強烈な念の逆流現象が起こり、とてもじゃないが操縦することなど出来なかった。だから出力が安定しているプラズマ・ジェネレータをを装備していたヒュッケバイン参号機をベースに新たにエクスバインを作り上げた。もっとも、ヒュッケバイン弐号機とヒュッケバインMK‐Ⅱ壱号機のオーバーホール時に起きた襲撃事件の余波によってエクスバインも中破してしまったが。
そんな時に義弟の悠斗がISを動かせたと聞き、もしやと思いMK‐Ⅲを託してみればまるでMK‐Ⅲは待っていたと言わないばかりに悠斗を受け入れ念の逆流現象を起こさず通常起動させたのだ。
両親は頓挫しかけていた計画を再び動かし、中破していたエクスバインをツギハギだらけのアッシュへと改修し、その強化パーツ及び元から存在していたMK‐Ⅲ用の強化パーツ、AMパーツの開発も再開させた。
しかし、通常起動で念の逆流現象は起きなかったが戦闘起動で念の逆流現象が起きるかもしれないと危惧した私は必死になって調整し、そして祈るような気持ちで送り出した。だが蓋を開けてみればMK‐Ⅲは戦闘もしっかりこなし、イギリスの第三世代を打ち倒すという戦果を上げた。
これによりようやく懸念事項がなくなったため、AMパーツを組立始めることができるようになった。
最初のプランで計画されているのは二つ。
一つは一撃一撃が高く、それでいて手数で攻めるタイプの近接戦用AMパーツ、AMボクサー。
一つは高い火力と圧倒的なミサイルで広域攻撃を行うAMガンナー。
この二つが計画されているがガンナーの方は明らかに軍用目的に流用されかねないためにもう一つの高速機動戦用のAMパーツを作らなければいけないがそのアイデアが湧いてこない。
仕方ないため雪菜はAMボクサーの設計図を最終確認し始めた。
「これでようやく凶鳥は新たな段階に勧める…私達の夢、守るための力になるための一歩をMK‐Ⅲは踏み出したんだ…。頑張って早めに作ってあげないとね」
「嬉しそうにしてるな、雪菜」
「暁さん…ノックしてから入ってくださいよ」
暁直人。技術開発第二班、通称“ゲシュペンストチーム”のチーフメカニックをしている28歳の男性である。
「悪い悪い、ちょっとこっちの新型ISがようやく纏まったから雪菜から見て、意見を聞きたいんだ」
「わかった。ちょっと見せてね」
「はいよ、これが設計図だ」
暁から受け取った設計図を見てみると二機存在していた。一機は高速機動戦用、もう一機は高機動突撃戦用のISだった。
「うーん、突撃戦用のはいいけど、高速機動戦用のはゲシュペンストのGフレームじゃあちょっと危ないんじゃない?」
「やっぱりか…。どうもそっちの機体の方が何度シュミレートしても機動にフレームがついてこれないんだよな…」
「それと、この二機、どうしてこうも運用法が違うの? 正直特化させすぎて“アルト”と“ヴァイス”みたいなんだけど」
「ああ、そりゃそうだ。こいつらはあの二機の運用データを元にチームを組んで動かすつもりだからな」
「つまり、最初から互いを補うように作ってるってこと?」
「ああ。まあ武装によっては武装だけで補なえるようにしてるけどな」
「なるほどね…。ねえ、この高速機動戦用で一つ提案があるんだけど」
「なんだ?」
「どうせならこの機体、Hフレームを採用してみない?」
「はいいい!?」
暁はあらん限り目を見開いて驚いている。
「そ、そりゃどういうことだよ!」
「技術者として、このままこれを放置するのは嫌なんだよ。Hフレームなら想定している速度を出しても耐えられると思うんだ」
「た、確かにそうだが…本当にいいのか?」
「もっちろん。ただし、こっちが開発してるAMパーツの組立を手伝うことが条件だけどね」
最上級の笑顔で私は言った。
「その位でいいなら喜んでやらせてもらうさ!」
「交渉成立ね。ところでこの機体の名前、なんていうの?」
「ああ、それはな」
百舌と隼だよ。
この名前で大体わかったと思いますww