横浜鎮守府の【提督】宝珠の戦士と【副提督】   作:シャイニングピッグEX

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最終回、始まります。


サヨナラチキュウ。ヨウコソエデン。

零が倒れてから数日。

 

百合は部屋を出て零のベッドの隣で座っていた。

 

零の肌には肌色は残っておらず、顔も半分マガタノオロチに侵食されている。

 

残った片目にも光は無く、口も半分しか見えずその中にマガタノオロチの器官が見え隠れする。

 

あれほど長かった髪もどこへ行ったのやら、頭はもう完全にマガタノオロチだった。

 

もう話すこともままならないのだろう。

 

そして、百合の姿も認識出来ていないに違いない。

 

「……私ね、ずっと人生って不幸しかないんだなって思ってたの。生まれてからすぐお父さんもお母さんもいなくなっちゃったし、大切なものを手に入れては無くして来た」

 

百合は零の手をゆっくりと握る。

 

「……でも、そんなこと無かった。貴方が来て、私の人生は変わったの。そうじゃなきゃ色んな人にも会えなかったし、色んなところにも行けなかった。こんな風に、好きな人に想いを伝えられる事も無かった」

 

零の手の甲に三つの水滴が落ちた。

 

「私が好きって言って。貴方もすぐに好きって返してくれたんだよね。あの時、何を言われたか分かんなくて、後になって分かって大泣きしたところを貴方が一生懸命慰めてくれたんだっけ。何回か怪獣が出た時、貴方が居なくて何度も絶望しかけたけど、手を振って戻ってきてさ。そりゃそうだよ。私達をずっと護って来たんだもの。正義のヒーロー、ウルトラマンとして」

 

百合はもう一度強く零の手を握った。

 

「だから、今度は私が護りたい。貴方の、たった一人のヒーローとして」

 

零に届いているかは分からない。

 

けれど、百合は零の目が見えている内に伝えたかった。

 

自分の正直な想いを。

 

そして、百合が大きく息を吸い込んだ時だった。

 

マガタノオロチの目が光り、鎮守府全体が揺れ始めた。

 

「キャッ!」

 

「───オオオオオオオ!」

 

「…さあ、始まりだ。楽園の地球を!」

 

ゼルガノスの言葉を合図に、深海棲艦は動き始めた。

 

地底のギガバーサークも起動を始め、地上に上昇し始めた。

マガタノオロチは零を取り込み、鎮守府を破壊しながら巨大化を始めた。

 

百合はその衝撃で地面に倒れ込んだ。

 

床がめくれ上がり、ベッドや椅子が百合の元へ雪崩込んで来る。

 

「!!」

 

百合はとっさに頭を防いでうずくまった。

 

そして、百合に当たる直前にジャグラーが百合に当たりそうなベッドや椅子を切り裂いた。

 

「ジャグラー…」

 

「今はここを出るぞ。艦娘や怪獣達はもう避難している。後は俺達だけだ」

「う、うん!」

 

ジャグラーに引っ張られながら百合は部屋を飛び出した。

 

後ろを振り向くと廊下はどんどん崩れて行っていた。

 

「後ろを気にする前にまずは走れ!落ちたら命の保証は無いぞ!」

 

ジャグラーに言われ、百合は全速力で走った。

 

すると、廊下に大きな穴が空いている場所に当たってしまった。

 

その穴からはマガタノオロチの触手が見え隠れしていた。

 

「一気に飛べ!そうすればもう出口だ!」

 

「でも…」

「オオオオオオッ!」

 

後ろからマガタノオロチの雄叫びが聞こえ、ジャグラーは咄嗟に百合を掴んで向こう岸に投げた。

 

その直後にジャグラーは瓦礫に飲み込まれ、姿を消してしまった。

 

「ジャグラー!……」

 

百合はゆっくりと立ち上がり、走り出した。

 

階段を駆け下り、扉から出ると同時に鎮守府は瓦礫の山へと変わった。

 

辺りに轟音が響き渡り、百合は息を切らしながらその光景を間近で目にし、その中からマガタノオロチが姿を現した。

 

「オオオオオオオオオ!」

 

「あ、あああ…………」

百合は後ろに手を付きながら後ずさった。

 

「オゥルスァッ!」

百合の後ろからオーブオリジンが飛び出し、マガタノオロチを押さえつけた。

 

「オーブ…」

オーブは強く頷き、百合もそれに頷き返して立ち上がり、慌ててその場を逃げ出した。

 

「だ、大丈夫!?」

 

「肩に掴まって下さい!」

 

大和とミクラスが百合の元へ駆けつけた。

 

「ありがとう、二人共…だけど…」

 

百合はマガタノオロチの方と瓦礫の山の方を見た。

 

「……とにかく今は逃げましょう!」

 

ミクラスと大和に担がれ、百合はその場を後にした。

 

 

 

「シュゥアッ!」

 

オーブはマガタノオロチにオーブカリバーで斬りかかり、下からマガタノオロチの顎を砕くようにしてオーブカリバーで斬り上げた。

 

「デェヤッ!」

 

オーブはマガタノオロチの顔に回し蹴りを放ち、大きく飛び上がってマガタノオロチの背を台にしながら飛び越して後ろに回り、マガタノオロチの後ろ足を掴んだ。

 

マガタノオロチは投げられまいと触手を伸ばしてオーブにムチのように叩きつけて手を離させ、大きく飛び上がってオーブの上にのしかかった。

 

「グアアッ!」

 

マガタノオロチはオーブにのしかかった後すぐ様立ち上がり、オーブに向けてマガ迅雷を何度も放った。

 

「ヌゥゥッ!」

 

オーブは迅雷を避けつつ後転して間合いを取った。

 

そして、光の光輪、オリジウム光輪をマガタノオロチに放った。

 

マガタノオロチはそれを食してエネルギーに変え、オーブに赤い光線を放った。

 

オーブは咄嗟にバリアを張り、徐々に角度を変えて空に打ち上げた。

 

「……!?」

 

オーブはマガタノオロチの体の上にジャグラーが乗っていることに気付き、オーブはマガタノオロチの触手をオリジウム光輪で切りながらジャグラーに近付き、ジャグラーを救出するとその場で飛び立って安全な場所へ下ろした。

 

「シュアッ!」

オーブはマガタノオロチの元まで飛び上がり、ジャック譲りのキックを放ってマガタノオロチに攻撃をしかけた。

 

マガタノオロチの頭に命中し、マガタノオロチはすかさずオーブに触手を伸ばした。

 

オーブはそれを見てもう一度飛び上がり、マガタノオロチの周りを飛びながらオリジウム光輪を何度も放って触手を斬り裂いた。

 

そして、マガタノオロチの前に着地し、ガイがオーブカリバーを構えた時だった。

 

先ほどよりも大きな地響きが起こり、オーブは周りを見渡した。

 

「なんだ…!?」

 

人々は悲鳴を挙げながら外に走り出した。

 

 

 

「早田提督、緊急入電です!」

 

 

「はい、こちら横浜市役所です……なんだって!?皆、早く逃げるんだ!深海棲艦達が襲ってくる!」

 

『海には数百、いえ、数千体以上の深海棲艦が襲ってきています!』

 

『危ないから早く下がって!早く!!』

 

人々は避難所に隠れ、ラジオや避難所に設置されたテレビで現在の状況を確認していた。

 

すると、テレビを見ていた人達の方からどよめきが起こった。

 

「なんだ!?」

 

「どうした!」

 

一人の男がテレビのモニターを観た。

 

「観てくれよこれ…!」

 

「……なんだよこれ…!」

 

そこに映っていたのは、オーブやマガタノオロチを遥かに超える大きさの巨大な要塞であった。

 

 

 

 

「………!」

 

オーブは思わずオーブカリバーを構えた。

 

その足はどことなく震えていた。

 

『ウルトラマンオーブ、抵抗を止めろ。繰り返す、ウルトラマンオーブ、抵抗を止めろ』

 

「………!」

 

『止める意志が無いのならば私はオーブを消す』

 

要塞の音声が切れると同時に要塞の中心に光が集まり始めた。

 

 

「あ、アイツ、ウルトラマンを消す気だ…!」

 

「な、なんだと…!」

 

 

 

ガイはオーブカリバーをオーブリングに通した。

 

『解き放て!オーブの力!』

 

ガイはオーブカリバーのホイールを回し、力を解放した。

 

「オーブスプリームカリバァァァァァ!」

 

オーブはオーブスプリームカリバーを要塞に向けて放った。

 

要塞も巨大な光線を放ち、オーブの光線と衝突した。

 

しかし、力は要塞の方が圧倒的に強く、やがてオーブは強い光に包まれ、その光が消えた時にはオーブの姿が消えていた。

 

 

「そんな…嘘でしょ…ウルトラマン…」

 

「嘘だ…そんなの嘘だ!」

 

「立って!ウルトラマンオーブ!」

 

しかし、子供達の声も虚しく、ウルトラマンオーブにその声が届くことは無かった。

 

大人達の顔は皆暗く、悲しみに包まれていた。

 

光が消えた地上は暗闇に閉ざされ、願いも、希望も無くなってしまった。

 

残されたのは、果てしない程の絶望だった。

 

 

 

「ぐっ……うぐぅっ……!」

 

ガイは瓦礫の中で倒れ込んでいた。

「……!」

 

目の前の光景にガイは言葉を失った。

 

街のビルはほぼ全て倒壊しており、見るも無残な状態だった。

 

それだけではない。

 

オーブリングが真っ二つに別れ、光を失って石になっていた。

 

オーブカリバーも光が消え去り、瞬く間に風化して消え去った。

 

「俺には……もう闘う力も……光も無いのか……!」

 

 

 

 

ユリは大和とミクラスに連れられ、避難所に入った。

 

「あっ副提督!」

 

「良かった…無事だったんですね!」

 

大淀と夕張が百合の元へ駆け寄って来た。

 

「ところで、柊提督とクレナイ提督はどこへ?」

 

「クレナイ提督は先ほど負けました…柊提督は…」

 

大和はそれ以上何も口にせず首を振った。

 

「……そう、ですか……」

 

 

 

 

海では、無数の深海棲艦と、横浜鎮守府の艦隊が戦闘を行っていた。

 

「なんで急にこんなに来るのよ!」

 

弾数が多く、文字通り海には砲弾の雨が降り注いでいた。

 

無数に水柱が立ち、狙いを定めるどころか敵の姿を見る事もままならない。

 

 

 

『地球人よ。私はこの地球を楽園へと変えるために来た。何一つ不自由無く、争いも飢餓も何も無い楽園へ変えに来た』

 

要塞から音声が発せられ、人々はそれに聞き入っていた。

 

『誰もが平等に生きられ、皆平和の光の下自由に暮らせるのだ』

 

「な、何も無い楽園だってよ…」

 

「どうする…?」

 

『答えは明日聞こう。良い答えを待っている…』

 

そう言って要塞からの音声は途絶え、光を失った。

 

 

その夜、救助隊や自衛隊員などによる救助作業が行われていた。

 

その時にガイ、ジャグラーの二人が発見され、二人も避難所の中へ入った。

 

ジャグラーは重傷を負い、意識を失っている状態で運ばれた。

 

零の姿が見つかることはなかったものの、幸いにも死者は出ていなかったようだ。

 

「ごめんなさいガイさん…私がもっとしっかりしていれば…」

 

「何も百合が謝ることは無い。ジャグラーは自分の意思で自分と引換にお前を守ったんだ。目を覚ましたらちゃんと礼を言っておけ」

 

「ええ…」

 

百合は頷いた。

 

暫くして、深海棲艦達と戦っていた艦娘達が避難所に来た。

 

「おっ。無事戻ってきたみたいだな」

「提督も無事で良かったよ。急に怪獣は現れるし深海棲艦達もうじゃうじゃ来るしで本当辛かったよ」

 

「しかし、あんだけ大勢いたのによく怪我一つ無く戻ってこれたな」

「そこなんだよ。あれだけ沢山いたのが急に思い出した様に空に飛んでいって…」

 

「そこから先は深追いしませんでしたが、無事に戻るべきだろうと」

 

「そうか…よし!皆よく戻ってきてくれた!深海棲艦達を倒したい気持ちもあるかもしれない。でも、聞いてほしい。今はここにいる人達を明るくしてやって欲しい。今はそれが最優先事項だ。それでは各自当たってくれ!散開!」

 

ガイのミーティングが終わり、艦娘達は人々を元気づけようと始めた。

 

「貴方達も行ってあげて。少なくとも貴方達の方が向いてるわ」

 

「はいっ!」

 

怪獣達の声が重なり、怪獣達も艦娘に協力して人々を元気づけようと頑張った。

 

「人の心から光を消すわけには行かない。小さな光でも、灯してやって明るくしてやらなきゃな」

 

「ええ。まずは何よりみんなを明るくしてあげないとね」

 

すると、以前スペシウムシュトロームに助けられた男の子が二人の前に駆け寄ってきた。

 

その子だけじゃない。

 

以前オーブに助けられた子供達皆が駆け寄ってきた。

 

「おっ、皆どうしたんだ?」

 

ガイは少ししゃがんで子供達と同じ高さの目線に合わせた。

 

「僕達、前にウルトラマンオーブに助けられたんだ。だから、今度は僕達がウルトラマンオーブを助けてあげたいなって皆で話し合っててさ、そこで鎮守府のお兄ちゃん達ならきっとオーブに届けてくれると思ったんだ」

 

「オーブに想いを届けたい、か。皆はどんな風に想いを伝えたい?」

 

「手紙を書く!」

 

「オーブの絵を書く!」

 

「オーブが出たら精一杯応援する!」

 

「どれも良いじゃん!じゃあ早速用意しようか」

 

ガイはニッコリと笑って子供達に言った。

 

「うん!」

 

子供達は元気よく頷いた。

 

子供達は早速ウルトラマンに想いを込めて手紙や絵を描き始めた。

 

「皆ウルトラマンが大好きなんだね…」

 

「そうだよ!強くてカッコイイし!」

 

「それに凄く優しいんだよ!」

 

「僕も前にウルトラマンオーブに助けて貰った!」

 

「僕も!」

 

「俺も!」

 

「私も!」

 

百合が呟くと子供達は一斉に話し、ウルトラマンと会った話やウルトラマンとの思い出を話した。

 

すると、それを見つけた他の子供も寄ってきて絵や手紙を同じように書き始めた。

 

子供だけじゃない。

 

大人や学生も参加し、気がつけば大半の人々が参加していた。

 

「…笑顔に会いたい時は〜」

 

「この場所のことを思い出して〜」

 

「一人で寂しい時も」

 

「またここに来れば皆がいる」

 

一人が口ずさんだ歌に皆が乗っかり、いつしか皆が心を一つにして大合唱になっていた。

 

「みんな大好きなウルトラマン」

 

「ぼくの大好きなウルトラマン」

 

「皆大好きなウルトラマン!」

 

皆、ウルトラマンに対する想いは同じだった。

 

「なあ、那珂」

 

「なーに?提督?」

 

「今ここでライブをしてくれないか。皆と一緒にさ」

 

「…うん!那珂ちゃん、一生懸命頑張ります!」

 

「皆元気が出るような歌を沢山歌ってくれよ」

那珂はガイに頼まれ、皆と作り上げるライブを始めた。

 

「世界中が〜君を待っている〜!」

 

「闇夜を照らせ〜光の戦士よ〜!」

 

那珂と共にたくさんの人が歌に参加し、気がつけば皆が笑顔を取り戻していた。

 

すると、その人々の光の力なのか、ガイの手の中に光輝く聖剣、オーブカリバーが戻ってきていた。

 

「…皆さんの光の力、お借りします」

 

いつの間にかオーブリングも元に戻っている。

 

「もう絶対に負けられない戦いになってきたわね」

 

「ああ。俺は絶対に勝つ。俺はもう一人なんかじゃないんだ!」

 

「それじゃあ、皆!明日はこれ以上の声でオーブを応援しよう!」

 

「はーい!」

 

那珂ちゃんの締めの声と共にライブは終わり、皆はオーブへの想いを沢山の形にして込めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回はここまでです。

次回、「フュージョンファイト!」

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