感じられた方はごめんなさい。今回はホントにゆったりしすぎました。
西暦、XX16年。地球は宇宙からの使者によって攻撃を受けていた。
何故地球を襲うのか。
資源が豊富だからか?
住みやすい環境だからか?
破滅主義者に狙われたのか?
その理由は今だ解明されていない。
だが、地球滅亡の危機であることに変わりは無い。
この状況下で人類が取った選択肢とは――――。
平和な日常は1秒ももたない
朝の道路。
日光に加え、日差しを浴びて熱を帯びたコンクリートから発せられる熱を受け、歩いているだけで汗をかく、そんな日。
「あっちぃ~。どうにかなんねえかな、この暑さ」
特に暑さに強いわけでもない俺は、汗をだらだら流しながらだらだらと学校への道を歩いていた。
ふと、空を見上げる。
「……ホント、日本は平和だよなぁ」
ニュースを見れば、世界中が宇宙人から攻撃を受けてるってのに。
この日本は一度だって襲撃を受けたことは無い。
「興味が無いのかな?この国の二次文化とか国土とかに」
もっとも、それを宇宙人が知ってるかどうかは別問題だけどさ。
「ってこんなことしてる場合じゃなかったな……急がないと」
俺は滴る汗をコンクリに垂らしながら学校へ向かって走った。
昔みたいに学業を学ぶのではなく、戦い方を学ぶのが今の学校だ。
何故戦いを学ぶのか。
理由は勿論、現在の地球に襲い掛かる脅威を払う為だ。
そして生徒らは、魔法や銃、剣などの兵器など、自分に合った戦い方を学ぶのだ。
大体の人間は兵器か魔法のどちらかに偏るものだが、中には極めて稀に、両方の素質を兼ね揃えた人間がいる。
彼らが所属するクラスこそ、『SSクラス』。
厳しい授業に定評のあるクラスだ。
また、その才をよく思っていない生徒から妬まれるなど、才能を持って生まれてしまったが為に酷い扱いを受けてしまうこともある。
しかし当人達には、それが定めだと受け入れるしかなかった。
今更、変えることはできないのだから。
ウィーン。
『SSクラス』のドアが開くと同時に、俺は教室にダイブする。
「ッッセエエエエエエエエエエエエエエエエッッッフ!!!!」
しかし、勢いがつきすぎた。
俺はその勢いを殺しきれず、机に激突する。
「ぐふぉっ!?」
俺は頭を抱えて転げまわる。
が、腹の辺りに違和感を感じると同時に動きが止まる。
「心配しなくてもまだ二十分以上時間はあるわよ。ったく……」
見上げると、その足を先には同じ『SSクラス』の生徒の顔があった。
「なあ、十姫(とき)……」
俺はその生徒、風音(かざね)十姫の名を呼んだ。
「何よ?」
十姫の特徴的な長い髪が揺れる。
俺はその先の言葉を繋ぐ。
「パンツ、結構カワイイ奴穿いてるんだなお前」
「!!」
十姫はその言葉を聞くと同時に俺から離れる。
顔を真っ赤に染め、むちゃくちゃに怒鳴り散らす。
「どどどどどどどこ見てんのよ!ここここここ、この変態はッッッ!!」
俺はゆっくり身体を起こしながら、反論する。
「そりゃあお前、あの位置からじゃ意識しなくても見えるって」
「断罪ね。断罪だわ。断罪するしかない」
そう言いきると、十姫は魔方陣を展開した。
俺は両手を前に突き出し、ブンブンと振る。
「いやいや!それはやりすぎだぜ!?おい!?」
しかし、十姫は問答無用で魔法を繰り出す。
「変態は、死n――――」
「止めろよ、風音」
魔法が放たれる直前、男子生徒が止めに入った。
「邪魔しないでよ!槙(まき)!」
筋肉質なこの男こそ、我らがクラス会長である槙誠一郎(せいいちろう)だ。
その強い…強すぎる眼力はほぼ全ての人類を畏怖させるのではないかと思わせる。
ぶっちゃけクラス会長に選ばれたのもその眼力があってこそだ。
そして今も、その眼力で十姫を圧倒していた。
「うっ………し、仕方ないわね!処刑はまた今度ね!」
いつの間に断罪から処刑になったんですか十姫さん。
そのうち死刑になりそうだな……。
「助かったぜ、せっさん」
俺は誠一郎のことを誠意をこめて「せっさん」と呼んでいる。
周りからは「馬鹿にしている」と評されているが、本人はまんざらでもないらしい。
「ああ。それにしても今日は集まりが悪いな。もうあと十分しかないぞ」
このクラスでは原則として遅刻や欠席は認められない。
軍からすれば貴重な戦力だからな……。
「って言ってもあと二人でしょ。そもそもそんなに人多くないんだし」
そう。
『SSクラス』には生徒が5人しかいない。
この人数こそ、俺達の特別さを物語っていた。
正直、そんなに特別な感じは無いんだけど。
そうこうしているうちに、最後の二人が教室に入ってくる。
「おくれましたーすんませーん」
「遅れちゃいました……ごめんなさいです」
吉良(きら)麻衣子(まいこ)と由芽乃(ゆめの)奈々(なな)。
二人は対照的な空気を見事な割合で調和させた謎の空間と共に俺達のほうに寄ってくる。
「吉良、由芽乃。お前達遅すぎだ。今度から気をつけろよ」
せっさんはその眼力で二人を威圧する。
「ひぅ……ごめんなさい」
奈々はおびえて固まってしまったが、麻衣子はその態度を崩さない。
「はいはい、次から気をつけますよっと」
そう言いながら、十姫の隣に座った。
「おはよう、麻衣子。朝から元気いいわね」
「お前は朝からローテンションすぎると思うけどなぁ。あたしみたいに朝から腹いっぱい食ってこりゃいいのに」
「でも、太らないんだよね……麻衣子ちゃん」
女子三人で会話を始めてしまった。
仕方が無いので俺はせっさんとお話を……。
「全員揃ったから、訓練所に行くぞ。ちゃんと着替えてくるように」
それだけ言い残して、せっさんは更衣室へと去ってしまった。
ちなみに、更衣室は全員に個室が渡されており、しかも狭くて二人も入らない。
つまり、ぼっち。
「……そうですか」
俺は一人惨めに、更衣室で着替えを始めた。
……ちょっと制服が濡れちまったぜ。
数分後。
俺達は『SSクラス』専用の訓練所に集合していた。
それぞれが専用の戦闘服に着替えていた。
「今日はまず最初に小テストを行う!出席番号順に並べ!」
教官はキビキビとした態度でそう告げた。
「朝から小テストなんて……今日は悪日ね」
朝に弱い十姫はそう言いながら肩を落とす。
しかし、逆に朝に強い麻衣子は張り切っていた。
「っしゃあ!ハイスコア更新のチャンス!」
いつもの小テストの内容は簡単だ。
教官と生徒にライフポイントが設定され、そのライフがなくなる前に削った教官のライフによって評価が決まる。
ちなみに『SSクラス』の目標ポイントは教官のライフの60%だ。
「よし、最初は風音!早く準備しろ!」
こうして、風音から始まった小テストだが。
結果だけ報告するとこうなる。
あ、評価は良い順にSS、S、A、B、Cだ。
十姫C
麻衣子A
せっさんS
奈々A
俺B
ちなみに、B以下は目標に届かなかったって意味。
「休憩を挟んだら、今日は自分の欠点を克服できるように各自練習しろ!以上!」
そういい残して、教官はどこかへ去ってしまった。
俺はその場に座り込む。
「はぁ。疲れた……」
カバンからスポーツドリンクを取り出し、喉に流し込む。
すると、横に麻衣子が座る。
「へへっ、それ少し貰うぜ」
俺からドリンクを強奪した麻衣子は、残りを全て自らの体内に吸収してしまった。
「おい!俺の命の水をどうしてくれるんだ!!」
「まぁまぁ。また買えば良いじゃんか」
ニカッと笑う麻衣子だったが、今の俺にはその笑顔が憎らしい。
「授業中だ。買いに行くなよ」
買いに行く前に、せっさんから釘を刺される。
仕方が無いから、少しでも体力を回復しようと横になる。
「ああ……床冷たい……」
俺が床の冷たさに心を奪われていると、頭にコツン、と何かが当たる感覚がした。
「あ、ごめんね……」
どうやら奈々の足のつま先に当たったらしい。
俺は寝たまま、首だけ奈々のほうに向く。
「いいっていいって。つか俺のせいだし」
ふと思った。
奈々の戦闘服がスパッツじゃなかったら俺、また死ぬ目にあってたかもな。
「そういや、奈々の武装って結構珍しいよな」
「え?そ、そうかな……」
少し照れたように頬を赤く染める奈々。
その光景を見て、十姫はぼそっと呟いた。
「授業中にナンパ?」
「するかっ!!」
「だが、確かに由芽乃の武装は色々と特殊だな」
せっさんは俺と十姫の言いあいを無視して奈々に話しかけていた。
「そ、そう……?」
「いいよなぁ。あたしは単純なのしか扱えなくて困ってるってのに」
「吉良。お前は単純なものさえ扱えて無いだろうに」
雑談で盛り上がる三人に対し、俺と十姫は不毛な争いを続けていた。
「お前なんか、Cランクだったくせに!」
「私のCランクはSSランクと同義なのよ!敗因は朝ごはんを食べなかったことだし!」
言ってる意味が分からん!
俺と十姫の言い合いは更に加速していく。
「小さい女だな!そのひらべったい胸に比例してるのか!?」
「あんたこそむきになって情けない男ね!彼女の一人だっていたことないんでしょ!?」
『なぁんだとぉ(ですってぇ!?』
口げんかは泥沼だった。
さすがに見かねたようにせっさんが声をかけようとしたその直前。
ビー!ビー!ビー!
聞きなれない警告音が校内全体に響き渡った。
次いで、状況を説明するアナウンスが放送される。
『敵性勢力確認!生徒は至急シェルターへ避難してください!生徒はシェルターへ避難してください!』
敵性勢力。
生徒達にとってもその言葉だけで説明は十分すぎた。
勿論、俺達にもだ。
せっさんは即座に指示を出す。
「言い争いはやめろ!落ち着いて、シェルターに逃げるんだ!」
その一言と眼力は嫌でも人を動かす。
俺と十姫は気がついたらせっさんらと一緒に避難していた。
落ち着いていられるのは、せっさんがいるからだ。
「くそっ!何だって今更日本に来たんだよあいつらは!」
麻衣子は舌打ちする。
麻衣子の後ろから奈々が声をかける。
「分からないよ……テレビじゃ、無差別に攻撃してるらしいし……」
元から消極的で声が小さい上に、走りながらで息も乱れていて奈々の言葉はすごく聞き取りづらかった。
しかし、せっさんは話をしている二人を叱りつける。
「無駄な体力を使うな!逃げることに専念しろ!」
せっさんの意識が僅かに麻衣子たちのほうに向く。
その時だった。
どぉぉ―――――――――――――――――――――――――――ん!!
爆音と強い衝撃が俺達を襲ったのは。
俺達が移動していたのは緊急避難用通路で、他所より頑丈に作られている通路だった。
しかし、宇宙人にはそれすら通用せず、問答無用で大穴をあけて姿をあらわにする。
「う……わ…!」
宇宙人はおよそ侵略者とは予想がつかないほど、身近に感じられるような気がした。
まるで、きぐるみを来た人間のようだったからだ。
しかし、目の前の奴は間違いなく世界中に攻撃を仕掛けている侵略者で。
奴から発せられる殺気と異臭は普段の生活で感じられるものとはまるで別次元のもので。
今奴が構えているブツはやばいものだと肌で感じていた。
まるで身動きができない。
恐怖が体を蝕んでいるからだと思った。
「動けっ!動かせっ!」
せっさんの声が、僅かに俺の耳に届く。
とっさに身体を右へ動かす。
動くと同時に左肩に痛みを感じたが、俺は慣性の赴くままにばたりと転がった。
「ち、ちょっと!大丈夫!?」
十姫がかけよろうとする。
しかし、せっさんがそれを目で止める。
「そいつはもうダメだ」
そう言い聞かせているようだった。
……おい、ちょっと待てよ。
少し左肩かすっただけで見殺しかよ?せっさん。
赤い液体が少し流れてるだけだぜ?
ちょっと手を貸してくれるだけでいいんだ。ちょっとだけ。
しかし、せっさんは無慈悲にも手負いの俺に背を向けて走り去ろうとする。
麻衣子と、奈々と、十姫を連れて。
そして、振り返ると目の前にはあの侵略者が立っていた。
謎の液体を、口らしき箇所から垂らしながら、徐々に近づいてくる。
「………冗談じゃ、ねぇよ」
ぼそっと呟く。
「ふざけんじゃ、ねぇよ……」
力の入らない左腕に代わり、右腕に力がこもる。
「んなところで、死んでるわけにはいかねぇんだよぉぉぉ!!!」
懇親の力で、化け物を殴りつける。
しかし、構えもなく、痛みで憔悴して、重心もまったく動いていない一撃が通じるわけがなかった。
粘液のようなものに触れたその拳は、激しい痛みに襲われ、すぐに出した手を引っ込める。
「ちく……しょう…!」
焼けたように痛い腕をかばいながら、涙目で侵略者をにらみつける。
「ちく…………しょう…………!!」
声も震える。
察していた。もう間もなく、俺は殺されると。
それでも、覚悟は決められなかった。
「ちく………………しょう……!」
侵略者が腕を振りかぶったその時。
「ぅおおおおおおっっっっらっっっっっっっっっっしゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
聞き覚えのある甲高い掛け声と共に、一人の少女が現れた。
その少女は相当の助走をしたであろう勢いと共に繰り出した蹴りを、侵略者にめがけてぶつけていた。
おそらく少女の出せる最高の威力の蹴りを受けた侵略者はその場に倒れこむ。
「麻衣………子?」
俺はかすかな声で、その少女の名を呼んだ。
「男が泣くもんじゃないぞ!ほら、立てるか!?」
麻衣子は俺に手を差し伸べていた。
俺はその差し伸べられた手を掴んだ。
立ち上がるとき、ふと侵略者を蹴った足を見る。
靴は溶け、露出している指からは赤い液体がにじみ、爪までも溶けている。
「な、何見てるんだよ!ほら、走るぞ!」
誤魔化そうとするその瞳には涙が浮かんでいる。
そうとう痛かったはずなのに。
どうして麻衣子はこんなにも平然としていられるんだ…?
まだ立てない侵略者を前に、俺と麻衣子は全速力でその場から逃げ出した。
緊急避難用シェルター内で。
俺と麻衣子は奈々から手当てを受けていた。
回復魔法が一番得意なのは奈々だからだ。
「まったく、無茶をしおって……」
せっさん…いや誠一郎は麻衣子を睨みつける。
「いいじゃんか、結局無事だったんだからさ」
そう言う麻衣子の足には包帯。
回復魔法だけでは間に合わず、応急手当として処置を施されたのだ。
俺はというと、左腕に支えをつけられ、右腕には包帯。
ダメージとしては俺のほうがよっぽど大きかったらしい。
「ほ、ホントだよ……それに、ほら。結構逃げれた人たちもいるみたいだよ」
周囲を見渡すと、俺みたいに怪我をしている人から無傷で逃げられた人もいた。
「ホント、私達って運がいいみたいね。こうして全員生き残れたんだから」
言っていることは良いことだが、十姫は誠一郎を睨みつけていた。
誠一郎はこの空気で、とんでもないことを言ってのけた。
「教本にもあっただろう。『たとえ友でも、生き残る為なら切り捨てろ。自己防衛が最優先だ』と」
どんっ!
上体だけ起こしていた誠一郎を、十姫は押し倒す。
「ふざけないでよッッ!!」
十姫は目を見開き、誠一郎の胸ぐらを掴む。
「あんた……あんたっ!仲間を何だと思ってっ……!」
これほどまでに怒りをあらわにした十姫を、俺は見たことがなかった。
周りの人々も、注目を十姫に移す。
が、誠一郎は冷静だ。
掴まれている腕の手首を返し、そのまま背負い投げで十姫を叩きつける。
「がふっ……!」
受け身をとれなかった十姫は胸を掴んでもがく。
「はっ……はっ……はっ……はっ……」
大きく息をする十姫を前に、誠一郎は立っていた。
そして、口を開く。
「十姫は錯乱したか……仕方ない。吉良、由芽乃。ついて来い。お前達しかいないんだ」
そう言い、治癒が完了した麻衣子と奈々を連れてどこかへ去ろうとする誠一郎。
俺はそいつに向かって、一つ質問を投げかけた。
「どこに行くんだ?」
誠一郎はまるで汚物を見るかのような目で俺を見下し、吐き出すように行き場所を告げた。
「馬鹿のいない、安全地帯だよ」
誠一郎は麻衣子と奈々も一緒に消えた。
誠一郎の姿が見えなくなったのを確認すると、俺は十姫に駆け寄る。
「大丈夫か?」
そう聞くと、十姫は顔を歪めて答えた。
「あんた……よりは、ね」
大きく息をしながらでも、その表情には少しの安堵が見て取れた。
十姫が横たわるその隣に座り込み、膝を差し出す。
「床じゃ痛いだろ。これ、使えよ」
十姫は横目で俺を見ると、頭を俺のほうに向ける。
「ん」
持ち上げろ、と言う意味だと察し、頭を持ち上げると、それを膝の上に落とす。
落とすと言っても、ゆっくりだけど。
「もうちょっと丁寧に扱いなさい。状況が状況でも、女の子の頭よ?」
「不器用な俺にはこれが限界だ」
十姫は体勢を変え、俺を正面に捉えるように横になった。
「ねぇ、これから私達どうなるのかしら」
「そうだな……いきなり実戦に放り出されるかもな」
いつでも戦う覚悟はできている。
そう思っていたころの自分は遠い彼方へと行ってしまった。
今の俺を支配しているのは、侵略者に怯える自分という恐怖する感情だ。
その怖ろしい姿。
異臭。
溶解性の粘液。
かすっただけでその機能を停止させてしまう武器。
畏怖の感情を抱かせるには十分な素材が揃っていた。
「駄目だな、俺」
そんな自分が情けなかった。
できることなら、今すぐ逃げたい。
けど、恐怖と同時に持ち合わせている正義感がそれを阻害している。
だから、動けない。
何もできない。
先に進まない。
「そんなこと、無いわよ」
いつの間にか身体を起こしていた十姫が俺を見据えてそう言った。
「え?」
俺は予想外の言葉に、思わず声が漏れた。
「あんたが駄目なんて……そんなこと、あるわけない」
十姫は穏やかな表情で、その先の言葉を繋ぐ。
「最初はこれでいいと思うわ。誰だって怖い。私だって」
俺は十姫を見た。
十姫を見て、その次の言葉を待った。
「でも、それを最後まで引きずったら駄目。どこかで、変わらなきゃいけないのよ。でも、今はその時じゃない」
最後に、十姫はニコリと笑った。
「らしくなかったわね。でも、これで少しは気が晴れた?」
「………ああ」
まだ、侵略者への恐怖は消えたわけじゃない。
でも、さっきより気分は確かに晴れた。
十姫のおかげで。
「助けられちゃったな、お前に」
「膝枕の謝礼と思いなさい。借りっぱなしは嫌なのよ」
シェルターの中で、危機的状況だというのに。
俺と十姫は互いに笑みをその顔に浮かべていた。
その間に割り込んでくる、聞き覚えのある声。
「お前ら!無事だったか!」
教官だった。
俺は立ち上がり、習ったとおり報告をする。
「二人無事で、あと三人はどっかいきました」
「そんな報告の仕方を教えた覚えは無いぞ!!」
怒鳴りつけるものの、殴りはしなかった。
「槙、吉良、由芽乃は行方不明か。仕方ない、一応お前達二人には渡しておこう」
そう言って教官は担いでいる荷を降ろした。
中には多数の武器。
多分、俺達を探してた理由はこれだろうな……。
教官はその中から狙撃銃を取り出すと十姫に手渡す。
「ご所望の狙撃銃だ。反動が大きいから取り扱いは気をつけるように」
長身の銃。
十姫の戦い方に合った武器だった。
「これって、私達にも戦えって事かしら?」
武器を受け取った十姫は怪訝そうに尋ねる。
教官は厳しいまなざしと共に、こう告げた。
「このために、貴様らに戦い方を教えていたんだ」
直接的には答えになっていないが、間接的に戦え、と言っているのが俺にも分かる。
教官は狙撃銃のほかに拳銃、サバイバルナイフを渡した。
そして、俺の前にも武器が差し出される。
「可変式で近、遠距離対応の銃剣だ。重いから武器に振り回されんようにな」
俺が貰った武器はこれだけだった。
大型マシンガンと大剣を兼ね揃えた武器。
確かに言うだけあってかなり重い。
「お……重いですね」
「俺からできる餞別はそれだけだ!後は己の鍛え上げた精神と肉体で生き延びろ!」
俺の言葉無視ですか。そうですか。
「教官はどこへ行くのよ?」
十姫は狙撃銃のスコープを覗きながら問う。
教官は荷物を担ぎなおし、俺たちに背を向けて告げた。
「どこかに行ってしまった馬鹿な生徒共の説教だ」
教官は歩き出した。
誠一郎に武器を渡し、激励する為に。
「教官!」
俺はある一言を教官に告げるために、その歩みを止めさせる。
「今まで――――――――――――――――――――――――――――――――!」
その先の言葉は繋げることができなかった。
俺と教官の間に瓦礫が降ってきたからだ。
「ちょっ!?」
十姫は反応できず、その場に立ち尽くす。
俺はとっさに、教官へと手を伸ばした。
まだだ。まだ待ってくれ。
俺はまだ、教官に何もしてやれてない!
せめて、言葉だけでも繋げたい。
しかし、俺が口を動かす前に教官は俺の前から消えた。
瓦礫の向こう側へと、去ってしまった。
「教官!」
叫んだが、声が返ってこない。
代わりにとんできたのは十姫の声だった。
「上!あいつがいるわ!」
その声に従って上を見ると、そこにはあいつがいた。
異臭と共に、侵略者が上からふってくる。
どうやって嗅ぎつけたのかは分からないが、そいつは今間違いなく俺の視線の先にいた。
怖い。
化け物じみたその姿が、とてつもなく怖い。
「逃げるわよ!どうしようもないわ!」
そう言って十姫は非常用扉を開けようとした。
が、それはもう一匹の侵略者によって阻まれる。
「きゃっ!?」
その扉が壊され、もう一匹の侵略者が姿を現す。
武器も、臭いも、姿も、全て同じの侵略者が。
俺と十姫を挟むようにしてそいつらは立っていた。
退路は断たれた。
この窮地を脱する方法は一つしか思い浮かばなかった。
「十姫……怖いか?」
俺はその手の武器を構える。
すると十姫もその手の武器を構えた。
「やるしかない……わね」
そして、互いの魔方陣を展開する。
戦闘態勢、だった。
「一匹ずつやるわよ。私達じゃそれでも勝てるか分からないけど」
俺は必死に恐怖を抑えつける。
それでも、心音はすさまじい速度でドクンドクンと耳に響く。
死ぬかもしれない。
でも、それでもやるしかない。
「ああ、分かった」
俺は振り返って十姫と正対している侵略者に飛び込んだ。
SF要素・・・どこだ?
ああ、可変式の武器か。あれはSF臭がするね、うん。
ホント、ごめんなさい。
普通な流れにしようと思ったらバトル前で九千文字越えてたので、いい引きで終わられてしまいました【笑】
次回のバトルからはSF要素をふんだんに盛り込んでいく予定ですのでご安心を!
いや、SFよりも魔法要素のほうが多くなるかもしれない…
欲張って二つも取り入れるんじゃなかったね!反省してるよ!
うん、二話目から本気出す。
でわ読者の皆様!
次回の武装魔術戦記でまた会いましょう!