成瀬海斗は勇者である   作:ひろすけ

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毎度読んでいただきありがとうございます!
今回はあと少し戦闘が続いて、現実にもどります!
さあ海斗達はどのようにしてバーテックスに立ち向かうのか?お楽しみあれ!


第3話:戦うための意思

自分を責めながらもずっと逃げてきた。

4年前、両親の死を前にしてなにか出来たのではとずっと考えてきた。

でもそう考えながらも目をそらしてきた。結局自分にはどうしようもなかったのだと。そして忘れようとしたこともあった。

 

だが、目の前で4人の勇者たちがバーテックスに立ち向かい、そしてやられているにも関わらず見ているだけの自分に怒りを覚えた。

また自分は何もできずに逃げるのかと。また目の前で大切な人たちを失うのかと。

 

そして立ち上がった。もう何もできない自分は嫌だと。

目の前で大切な人を失うのはもう嫌なのだと。

 

そうして海斗は決意した。勇者となって、戦うことを.....

 

[第3話:戦うための意思]

一度体勢を立て直すために彩花は少し離れたところに集合するよう指示を出した。

海斗もそこへ向かった。そしてバーテックスの方を見る。

「再生してる....」

その言葉のとおり、バーテックスは先ほど海斗が与えた損傷部分をものすごい勢いで再生させていた。

 

「普通に攻撃しただけじゃ奴らは倒せないの!封印の儀っていう特別な手順を踏まないとああやって再生し続けるわ!」

 

彩花が説明した。確かに彩花たちが攻撃した時も再生していた。

「その手順って?!」

海斗がそう聞いた時だった。バーテックスが再生を済ませたのか攻撃を再開してきた。5人はそれを間一髪で避ける。

「説明するから、避けながら聞いて!!」

「っていきなりハードル高いなぁ!!」

そう言いながら鎖の攻撃を避け続けた。

 

彩花が説明した手順は次のものだった。

 手順その1.まず敵を囲む。

 手順その2.敵を押さえ込むための祝詞(のりと)を唱える。

 手順その3.出てきた御霊(みたま)を破壊する。

 

まず第1の手順を満たすために海斗は指定された配置へ向かった。

海斗はバーテックスの右側面、彩花は正面、梨花は左側面、香織は左後ろ、灯里は右後ろという配置だった。

張り巡らされた根を縦横無尽に駆け回り、なんとか配置についた。

「準備オッケーです!」

海斗は位置に着くと彩花に伝える。

 

「よし、みんなも配置についたわね?それじゃ、封印行くわよ!」

 

それぞれが封印の儀の準備に入る。

「えーとそれと...祝詞を唱える...って....」

アプリの祝詞が書かれたページを開いて海斗は絶句した。なんとも読みにくい言葉ばかりだった。

「こ、これ読むのか?え、えーっとか、かくりよのおおかみ、あ、あわれみ、たまい...?」

と、海斗が唱え始めた時だった。

「はぁ!」

「えい!」

「どりゃー!」

「ふっ!」

....誰も祝詞を唱えていなかった。

 

「あの、彩花さん....もしかしてこれ唱えなくていいんですか?」

 

少し恥ずかしい思いをしながら彩花に聞いた。

「あーうんごめん....形式上唱えることになってるだけど結局魂込めてれば言葉を問わないから....」

「先に言ってくださいよ....」

 

そう言ってるうちに封印が開始された。5人それぞれの場所から花びらがらせん状に舞い上がり、バーテックスを包んだ。

すると頭部が蓋のように開き、四角すいの物体が出てきた。それがなんなのか海斗はすぐにわかった。

「あれが....」

「そう、あれが御霊。いわば奴の心臓。あれを破壊すれば奴を倒せる!」

 

彩花がすぐさま御霊のもとへ向かい、攻撃する。

槍で何度か突くが、傷一つつかなかった。

「っ!硬い...!」

「このおおお!!」

香織も斧で攻撃するが、一向に傷一つつかない。

 

海斗がふと下を見るとそこでは数字がカウントダウンされていた。

「梨花さん、この数字は?」

「ああ、これは拘束時間のリミット!これがゼロになったら私たちは封印できなくなる!」

その意味を瞬時に悟った。それはつまりバーテックスが神樹様のもとへたどり着き、世界が終わる。

 

そして次の瞬間だった。周囲からミシミシという音がしてきた。

「なっ...これ...枯れてる...?!」

周囲の根が枯れ始めたのだ。

「始まった....!長い間封印し続けると樹海がかれはじめる!侵食が広がりすぎると現実世界に悪い影響が出るの!」

[newpage]

何もかも八方塞がりだった。硬い御霊、リミットも残り少なく、樹海の侵食が始まった。

このままでは世界がバーテックスによって壊されてしまう。

それを思うと海斗は自然と力が入り、二本の刀を構え、御霊のもとへ跳躍した。

 

「二人共!そこどいて!!」

 

海斗は彩花と香織に向かって叫ぶ。それを聞いて彩花と香織は御霊から離れた。

「はああああああああ!!」

二本の刀が再び光を纏う。海斗はただただ御霊の方へ突っ込んでいく。

もしこれでも壊せなかったら、という思いが頭をよぎり恐怖に支配されかける。でもだからといって、もう逃げるわけには行かない。

戦うと決意したのだ。ここで怯んでる場合ではない。

 

海斗は二本の刀を振るい、御霊を切り裂く。

そして御霊は真っ二つに割れ、光を放って霧散した。それと同時にバーテックスの体も砂のように崩れてゆく。

「倒した....のか?」

着地した先でその崩れゆく巨体を見上げながら海斗はつぶやいた。

 

「海斗くん!やったあああ!!」

彩花が海斗のもとへ来ると思いっきり抱きつく。

「やったよ!すごいよ!初めてなのに大活躍だよ!!」

自分のことのように喜び、飛び跳ねる。抱きしめられてることには少し恥じらいを感じていたが、その様子を見て海斗も嬉しくなった。

 

「あー、えっと彩花さん。そろそろ離れてもらえます?」

さすがに気恥ずかしくなった海斗は彩花に言う。従姉弟同士とは言え海斗ももう年頃の男子だ。女子に抱きつかれて恥ずかしくないはずがない。

「あ、ああごめんごめん」

彩花も我に帰ったのか少し焦りながら離れる。

 

そこに香織、梨花、灯里もやってくる。

「すごいよ海斗くん!あんな硬かった御霊一撃で壊しちゃうなんて!」

「ほんと、すごかったわ!」

そんな風に香織と梨花も絶賛してくる。灯里は「フンッ」と言ってそっぽを向いて何も言わなかったが。

 

そうこうしているうちに樹海化したとき同様、地震のような揺れが起こる。

それと同時に大量な花びらが舞い、光に包まれた。

 

光と揺れも収まり気づくと海斗たちは変身も解け、祠の前に立っていた。

「ここって...学校の裏の?」

「そう。神樹様が帰してくださったの。戦い終わって樹海化が解けると自動的にここに転送されるわ。」

彩花がそう説明する。

[newpage]

既に日は沈みかけており、海の方を見ると夕日が見えた。街の方を見ると、そこにはいつもどおりの日常があった。

「バーテックスが攻めてきたのって、街の人たちは何も知らないんですよね.....?」

「そ、ほかの人からすれば今日は何事もない、普通の日。でもその日常を私たちが守ったんだよ。」

そんな言葉を聞いて海斗は嬉しくなり、街の方を見ながら微笑んだ。

 

と、その時。海斗の視界が少し歪んだ。その影響で体がふらつく。

「...?海斗くん大丈夫?ってなんか顔赤くない?」

そう言うと彩花は海斗の方へ近づいた。

「...大丈夫です。ちょっとふらついただけなんで。少し疲れたのかも。」

そう言って体勢を立て直そうとする。

 

だがその瞬間、海斗の視界がさっき以上に歪み、彩花の方へ倒れ込んだ。

「えっ、ちょっと海斗くん?!」

彩花は慌ててその体を支えた。梨花、香織、灯里も彩花のもとへ寄ってくる。

4人は海斗の様子を見る。海斗は顔が赤くなり、大量の汗をかき、息が荒く、苦しそうにしていた。

「すごい熱.....早く保健室へ連れてこう!」

彩花と梨花で海斗を抱え上げ、4人は保健室へ向かった。

 

その後、海斗はその熱で2日間寝込んだ。

あの後、大赦直属の病院で霊的医療班による検査を受けたが、おそらく突発的に勇者に変身して戦ったことによる体への負荷と疲労によるものだろうと診断された。

初日は彩花が看病してくれたが、二日目はもうほとんど熱も下がっていたので一人で何とかなった。

 

三日後にはすっかり熱も下がったため、海斗は学校へ行った。

そして教室に到着すると同時に優が話しかけてくる。

「海斗!やっと来たかわが友よ!」

なんとも元気な奴だった。

 

「その物言いはなんだよ...。たった二日熱で休んでただけだろ?」

 

海斗はそう言いながら席に座る。

「いやーそうなんだけどよー、なんかお前がいないと張り合いがなくてよー。」

「お前は一体何と戦ってるんだよ....。」

海斗はため息をつきながら頬杖をついた。

 

と、その時、聞き覚えのある優以上に元気な声が海斗を読んだ。

「やあやあ海斗くん、おはよーおはよー!熱もすっかり下がったみたいでなによりだよ!」

香織だった。彼女と会うのも実に2日ぶりだった。

「お前も朝から元気だな相沢....俺一応病み上がりなんだぞ?」

海斗がそう言うと香織はなぜか不満そうな顔をした。

 

「やだなーそんな他人行儀な呼び方!せっかく同じお役目のチームなんだから、香織って呼んでよ香織って!」

 

どうやら苗字で呼んだことが気に入らなかったらしい。下の名前で呼ぶように求めてきた。

「わかったよ、んじゃ香織。」

「おおう、以外に順応早いね君。結構結構。改めて宜しくね、海斗くん!」

香織それじゃまたあとでーと言いながら自分の席へ戻っていく。

 

「お前、相沢香織と知り合いだったの?てかお役目って何?」

優が聞いてきた。お役目のことに関しては内容は知らないにしても大体わかってるはずなのだが。

「お役目ってのは大赦から頼まれてる仕事だよ仕事。んで香織とはそのチームが一緒なんだ。」

神樹館中等部に通う生徒は皆、大赦に関わりのある家の子供だ。

だから遅かれ早かれ大赦からのお役目を受ける事になる。

 

「え、お前お役目もう受けたのか....ってことは放課後もう遊べないんじゃ....」

 

優は絶望したような面持ちで海斗に言う。

この学校の方針としてお役目を受けた生徒は放課後は基本自分の家にいるとき以外は同じお役目を請け負ってる生徒と行動することになっている。

「遅かれ早かれそうなることはわかってたろ。そういうことで放課後は今日から遊べない。」

海斗がきっぱりとそう言うと優はさらに絶望した面持ちになって叫んだ。

「うあーー!!海斗と放課後遊べないなんてーー!!ほんとに張り合いなくなるじゃないかーーー!!」

その声は教室中に響くほど大きかった。一体どこからその声は出ているのか。

 

「声でけーよ...っていうかほんとお前は何と戦ってんだ.....もういいからさっさと自分の席に戻れよ。先生そろそろくるぞ。」

そう言って優に席に戻るよう促す。優は『うう...』と言いながら席へ戻っていった。

 

午前の授業はいつもどおり何事もなく過ぎた。

海斗は2日間休んだ影響で少し授業に追いつくのが大変だったが、隣の人にノートを見せてもらいつつ何とかなった。

そう、午前は本当に何事もなくいつもどおりだったのだ。

 

昼休みのことだった。海斗が優と昼ご飯を食べているとクラスの女子に入り口付近から呼ばれた。

「成瀬くーん、お客さんだよー」

そう言われて入口の方を見るとそこに立っていたのは彩花だった。海斗に向かってひらひらと手を振っている。

その瞬間、クラスの男子全員がどよめいた。あの成瀬先輩が海斗になんの用なのかと。

 

そう、彩花は神樹館中等部の男子生徒の憧れの的なのだ。

成績優秀、運動もそこそこできる、見た目がいい。男子のあこがれになるのも当然だった。

ちなみに親友である梨花も同じだ。

 

海斗はそんな男子たちのどよめきを少し気にしながらも彩花のもとへ向かった。

「ごめんね、お昼食べてる時に。」

廊下に出ると彩花が海斗にそう言う。気にしないでください、と海斗は返した。

「で、どうしたんです急に?」

「あ、うん。放課後のことなんだけどね、私たちいつも多目的室に集まって活動してるの。そこでボランティア活動したり今後の戦闘の方針を話し合ったりしてるわ。だから今日から放課後海斗くんも来て欲しいんだけど。」

彩花がそう言う。

 

「同じお役目を請け負う者同士で放課後は行動する」という決まりに関して最適な方法と言えた。

勇者としてのお役目はバーテックスが襲来してきた時にしか果たすことはできない。

 

「わかりました、それじゃ放課後に向かいます。」

海斗はそう返答した。

「ん、ありがと。実は香織にこのこと海斗くんに伝えるよう言っといたんだけど多分忘れてるだろうなーと思って....案の定だったみたいね」

彩花はそう言って苦笑いした。そしてそれじゃ、また放課後ねと言って去っていった。

 

海斗が教室の方を振り返るとそこには香織がいた。あからさまに顔を逸らして冷や汗をかいてる。

「.....言うの忘れてたな?」

海斗はジト目で香織を見ながらそう言った。

「そんな目でわかりきったこと言わないで....んまぁ、そゆことだから放課後一緒に行こ!」

香織とそう約束し、海斗は席に戻った。

 

「「「どーゆーことだよ海斗?!?!」」」

 

席に戻った瞬間、優を含める複数の男子が海斗に問い詰めてきた。

「な、何がだよ....?」

少し驚いた顔をして海斗は言った。何故かその男子たちは少し殺気立っている。

 

「お前、あの成瀬先輩どとういう関係なんだよ?!?!」

 

そう優が聞いてきた。それを聞いて何故殺気立っていたのか海斗は合点がいった。

そこにいる男子たちを少し落ち着かせてから海斗は言った。

「あー、じゃあまず聞くが彩花さんの苗字は?」

「え?な、成瀬だよな?」

優がそう答え、周りの男子も『うん、成瀬』とか『成瀬だよな』など言っていた。

 

「んじゃ、もう一個聞くぞ。俺の苗字は?」

海斗がそう言うと一瞬の沈黙が訪れた。そして再びどよめいた。

「ええ?!姉弟?!姉弟なのか?!?!?!」

驚きを隠せないという顔をして優が聞いてきた。まあ確かに姉弟みたいなものだが...

 

「違う違う。従姉弟だよ。父方の。」

 

海斗はそう言いながら手を横に振った。

するとみんなああーなるほどーとかなーんだただの従姉弟かーとか言いながら去っていった。一部『え、じゃあ海斗とめっちゃ仲良くなれば成瀬先輩にお近づきになれる...?』とか不順極まりないことを言っている奴もいたが。

「ついでに聞くけど、なんの用だったんだ?」

 

優が再び聞いてきた。彩花の用事はお役目のことだったが勇者のことは隠しとかなければならない。

勇者に関しての情報は大赦内でも最重要機密であるため、大赦に関わっている人間にもそう簡単に話すことはできない。

「お役目のことだよ。放課後どこで集まるーとか。」

海斗はそう簡単に言った。

 

「え?いやいや待て待て。お前相沢とお役目が同じで成瀬先輩とも同じなのか....?ハーレム?ハーレムなのか?」

 

なんとも不名誉な言葉だった。海斗はすぐさま言う。

「アホか、お役目だぞお役目。ちなみにもう二人いるけど。」

「お前黒一点の女子4人?!羨ましすぎだろ!!」

お役目だと言っているのにそんなふざけたことを言ってきたので海斗は優にチョップをした。

 

放課後、海斗は約束通り香織と教室を出て談笑をしながら多目的室へ向かった。

と言っても香織がほとんど一方的に話しているのに相槌を打っているだけだったが。

と、途中で香織が質問した。

「あ、ところでこの間の戦闘の時思ったんだけど、海斗くんなんか剣術習ってるの?なんかやたら型が綺麗な気がしたから...」

なかなかに鋭い観察眼を持っているようだ。確かに海斗は剣術を習得している。

「ああ、家の流派だよ。成瀬流二刀剣術ってやつ。」

 

成瀬流二刀剣術は2本の刀を使って戦う剣術だ。

非常に速い攻撃、隙がなく硬い防御、両方兼ね備えているため、変幻自在、臨機応変に戦術を組むことが出来る。

「あれ?そういえば彩花さんの槍術も成瀬流だったような...」

「ああ、成瀬家には二刀剣術と槍術があるんだよ。」

 

成瀬流槍術は突きだけでなく、横薙ぎなど多彩な攻撃を展開することができる槍術だ。

それゆえ牽制しつつ攻撃を仕掛けるというのが定石の型となっている。

海斗は彩花と何度も手合わせをしているので彩花がどれだけ槍術の名人か知っている。

そして成瀬家では剣術は男性、槍術は女性が習得することが多い。

 

そうこう言っているうちに多目的室に到着した。

香織が前に立ち、扉を開ける。

「こんにちはー!香織、海斗はいりまーす!」

 

海斗もこんにちはーと言い、香織のあとに続いて中に入った。

「おつかれさまー」

「あら、海斗くんも来たのね」

そこには既に彩花と梨花が来ていた。彩花は書類の整理、梨花はパソコンをいじっていた。

 

「あれ?灯里ちゃんは?」

香織の言うとおり灯里がまだいないようだった。

「多分そのうちくるでしょ。待ってましょ。」

彩花がそう言うので香織は荷物をおいて彩花が作業しているテーブルのところの椅子に座る。

海斗も座ろうとと入り口付近から動こうとした時だった。

 

「私なら既にここにいますが」

「どわぁ!!!」

突然海斗の背後から灯里が現れた。それもまた気配を消して。

海斗はそれに驚き、横に飛ぶ。

「...お前...気配消して背後に迫るのやめてくれないか?」

海斗がそう言うと灯里はキッと睨んだ。そして何も言わずに椅子の方へ向かう。

 

(無視かよ...随分と嫌われたもんだ)

そう思いつつ海斗も椅子に座った。

「さて!これで揃ったわね。それじゃ、今日の活動始めるわよー」

彩花が立ち上がって言った。話を続けようとするが、灯里が遮った。

「その前にひとついいですか。何故この男がここにいるんですか。」

海斗を指さしていう。どうやら海斗がここにいることがよっぽど気に入らないらしい。

 

「なんでって、海斗くんももうこのチームの一員に決まってるからでしょ。」

何をいまさら、という顔で彩花が言う。

だが灯里は海斗を睨んだまま言う。

「この間も言いましたが私は受け入れたつもりはありません。」

海斗はムッとした。なぜそこまで言われなければならないのか。

 

「前にも言ったが、あんたに受け入れてもらおうなんて思ってねえよ。」

 

つい、そう言い返してしまった。すると灯里がさらに鋭く睨み、何かを言おうとした。

「あーはいはい、だからそこ喧嘩しないの。海斗くん気持ちはわかるけど受け流して。灯里も。これは大赦側の決定だし、嫌でも受け入れて。」

しかしそう言って、彩花がその場を収めた。さすがチームのリーダーといったところだろうか。

「...それは隊長命令ですか」

いかにも嫌そうな顔をして灯里は聞いた。彩花はその言葉に無言で頷く。

それで諦めたのか、分かりましたと言って渋々椅子にすわった。どうやら『隊長命令』という言葉に弱いらしい。

 

「さて、活動って言ったけど今日は何もボランティアの依頼は来てないの。だから....。」

 

彩花がチョークを持って黒板をコンコンとつついた。

「今日は海斗くんに勇者についてもうちょっと細かい話をしようと思うの。みんな、それでいいかな?」

梨花と香織はいいでーすという。灯里はだんまりだった。

海斗としてもそれはありがたいことだったのでそのことに賛成した。

 

「戦い方はアプリに書いてあるからそっちを読んでもらうとして、なぜ戦うのかってことと勇者システムの細かいことを説明するね。」

そう言って彩花は黒板に書いていった。

そこにはバーテックス、神樹様、樹海、大赦、勇者システム、満開と書かれていた。

 

「まず何故戦うか。これはもう知ってると思うけど敵はバーテックス。こいつらの目的は神樹様の破壊。それに対抗するために大赦が作ったのが勇者システム。神樹様の力を借りて戦うことができるようにしたの。人知を超えた相手には人知を超えた力で対抗しようとしたってわけ。」

彩花が黒板に書いた単語を指しながら説明した。

確かにバーテックス相手には通常兵器は通用しない。だからこそ神樹様から力を借りなければ対抗できないのだろう。

 

「そして戦ってる間に注意しなきゃいけないことは樹海の損傷。何かしらの原因で樹海がダメージを受ければ現実世界に戻った時に何かの禍(わざわい)となって現れると言われてるわ。例えば交通事故とかひどいものだと地震とかね。だから派手に損傷を受けないように私たちが頑張らなきゃいけないの。」

 

そういえばあの戦いの次の日、ニュースで山間部で中規模の土砂崩れがあったと報じられていた。

おそらくそれもその樹海の損傷が原因だろう。今回は死者負傷者が0名ではあったが下手をすれば多くの死者が出てしまう。

それだけは防がねばならない。

 

「ところでその満開っていうのは?」

ひとつだけ説明されていないことに気づき、海斗は聞いた。

「満開っていうのは勇者システムのひとつの機能のこと。勇者は神樹様の力を振るうことによって力を溜めるの。それが戦闘服についてる花の紋様、満開ゲージに蓄積される。それが満タンになったら開放できる強大な力よ。いわば勇者の切り札ね。」

 

つまりは超必殺技のようなものなのだろう。そのようなものが備わっているということは通常時の勇者では敵わない敵が出てくることも想定されているということだ。

それを考えるだけで海斗はゾッとした。もしこの機能がなく、そう言う敵が攻めてきたとき、倒せず神樹様が破壊されれば人類は滅びる。

そんな状況になったときのための機能と言えるだろう。

 

「さて、説明は以上だけど何か質問ある?」

彩花は海斗に聞いた。

海斗はこれといって質問がなかったのでいいえと言って首を横に振った。

「じゃあ最後に。私から海斗くんにひとつだけ問いたいことがあるの。」

そう言って真面目な顔になり、真っ直ぐ海斗のほうを向いた。

 

「この間の戦いでもわかったと思うけど、このお役目はかなりの危険を生じる。それを知った上でも、君は戦う意思はある?」

 

彩花の言うとおり勇者はかなり危険が生じるお役目だ。下手をすれば自分が命を落とすかも知れない。

だからこそ海斗の覚悟を聞きたいのだろう。危険の中に身を投じること、命を賭して戦うこと、その覚悟を。

海斗は少し俯き、手のひらを見ながら言った。

 

「俺は、4年前のあの日からずっと自分もを責めつつも逃げてきた.....本当はなにか出来たんじゃないかと思いながらも、仕方なかったんだって。でももう目の前で大切な人を失うのも、何もできない自分も嫌だ。だから....」

そして海斗は拳を握り、顔をあげて力強く言う。

「戦います。それが俺の、俺自身の戦うための意思と覚悟だから。」

 

そんな海斗を見て彩花は微笑んだ。そして海斗に近づき、手を差し出した。

「ようこそ、私の勇者チームへ。改めてよろしく、海斗くん!」

海斗はそんな彩花を見て微笑んで手を取り握手をした。

 

この時、海斗たちはまだ気づいていなかった。

この先待ち受ける運命がどれだけ残酷なものなのかを。

そして、隆成の本当の目的はなんなのかを....。

 

[第4話:拒絶、そして信頼に続く]

 

 

 

 

 

 

 




ようやっと一区切りまで行きました!
戦闘描写が上手く書けてない気がしますね。もっと迫力、臨場感、鬼気迫る感じがある描写を書きたいです。

それでは引き続き感想等お待ちしています。
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