肇と明日   作:肇の尾骶骨

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明日と先輩

 

 

 

どうも皆さん、美城専用の寮に越してきた明日です。

思いの外東京は大きく、自分の過ごしてきた岡山と比べると本当に雲泥の差がありました。

岡山では真っ直ぐ見たら見える空もここではビルしか見えません。

ですが、住み心地が悪いわけでは無いのでそれなりに馴染みつつあります。私は。

肇はいまだ慣れずと言ったところで、やはりキョロキョロしてしまうようです。

 

そしてどうやら、今日は宣材写真の撮影があるそうなのです。

なので、今朝方プロデューサーの方から自然ないつも通りの服装で来るように言われました。

私にとって自然とは何か...と聞かれれば制服になってしまうのですが、それは余りにも安直すぎるので却下しました。

初仕事ですし、それなりに今後残るものだと考えましょう。はい。

 

さぁ、それを踏まえたうえで私なりにコーディネートをしてみましょうか。

 

 

 

私がいつも通りな服を思案していると、不意に電話が鳴ります。

どこにしまったのか一瞬忘れてましたが、普通にポケットに入っていました。あるあるですね。

 

「はい。もしもし綱嶌です。」

 

「突然すいません。武内です。」

 

「あっ、プロデューサーさん?どうかしましたか?」

 

「はい、今日の宣材写真の撮影に少し変更が有りまして......予定が変わり撮影が午前中になったのですが大丈夫でしょうか?」

 

ふむ。元の予定ですと15時からだったんですけど、何かあったんですかね。

まぁ、とくに用事はないですし、今日は休日なので行けますね。

 

「はい。大丈夫ですよ。」

 

「有難う御座います。では11時ごろに撮影を開始しますので30分前までには現場まで来てください。」

 

「分かりました。肇には私から伝えておきますね。」

 

「有難う御座います。そうしてくださると助かります。」

 

「はい。では、切りますね」

 

そういい私は電話を切り、さっきまで悩んでいた私服コーデに蹴りを付けます。

いつもの私といえば本当に簡単にパーカーで済ませたりしますが、そんな破天荒なことは今回許されません。

ここは王道であるブラウスにスカートですかね。アンサンブルな感じで。

よし、これで行きましょう。

 

 

そう決めた私は少し装飾のかかった白色が基調のブラウスと青が基調のスカートを取り出し鞄に詰めた。

初見で私を見た人はこれが第一印象になるわけです。そう考えると何だかドキドキしてきましたね。

一体これからのアイドル活動...どんなことが始まるのでしょう。

 

 

そんな溢れ出る想いを胸に部屋を出て肇を呼びに行きました。

 

 

 

 

 

「肇?少しいいですか?」

 

「ちょっと待ってくださいねー」

 

そう声が聞こえると30秒くらい経ってから扉が開きました。

てっきり服装はあっちで着替えると思っていましたが肇はもう着替えているようですね。

いつも通りの可愛い服に身を包んでいます。

 

「おまたせしました。どうしました?」

 

「それがですね。少し予定が変更になり宣材写真の撮影が午前中になったんですよ。肇さえよければ今から寮を出ますが大丈夫ですか?」

 

「え!?…い、今からですか!?」

 

「は、はい。」

 

「3分待ってください!すぐ支度しますので!」

 

「...分かりました。」

 

何をそんなに焦ってるのかわかりませんが、別にそんなに急ぐ必要はありません。

今はまだ10時前なので、今から出ても時間は余るほどにあるでしょう。

 

 

 

 

「準備できました!」

 

そう言ってバタバタと出てきた肇は先ほどにはなかった鞄を背負っています。

余りたくさんのモノは入れてないようですが...

はて。何を入れてるんでしょうか。

 

まぁ、時間ありますし何か時間を潰すものですかね。

 

「では、いきますか。」

 

私と肇はそのまま談笑しながら撮影現場へ向かった。

 

 

 

 

 

 

ですがこの時の私は知らなかったのです。

肇の私服がこれではなくアレだということを...

 

 

 

 

 

 

_________________

 

 

 

 

 

 

「突然の変更に合わせていただいてありがとうございます。」

 

「いえ、元より休日だったので大丈夫でしたよ。」

 

「撮影は30分後になります。今の時間の間に撮影用の服に着替えて頂けると助かります。」

 

「了解です。では行きましょうか肇。」

 

「はい。」

 

そう言いその場を後にし、私達は更衣室へ移動しました。

更衣室自体はそこまで狭くなく、私達二人には広すぎるくらいでした。

そこで私は持ってきた服に着替えます。

 

その時、不思議なことに横で肇も服を脱ぎ始めたのです。

 

「あれ?肇はどうして服を...?」

 

「え?着替えるためですよ?」

 

「...それで撮影するのではないんですか...?」

 

「いえ、私はこれで...」

 

不思議そうな表情をしながら肇がバッグから取り出したのは他の何でもない作務衣でした。

 

 

...そうでした。彼女にとってのいつも通りとは休日の陶器制作時の服装でした...!

すっかり忘れていました...最近は外出続きであまりそちらの服装を見ていませんでしたし...あまり私服!とは言いづらいものですし...

でも、これは似合ってるので全然ありですね。

肇らしさが出ていると思います。多分ですけど芸能界初の陶器系アイドルなのでは?

...いいですね!

 

「成程。そう言えば肇は陶芸好きでしたね。」

 

「はい。家でもこの服装だったりするのでこれでいいかなぁと」

 

「いいですね!とても肇らしさが出ていると思いますよ。」

 

「ちょ、そ、そんなに褒められたら照れますよ!」

 

「いいじゃないですか、可愛いんですから」

 

「もー!」

 

そろそろ揶揄うのはやめて着替えていきましょう。

余りにここで時間を潰していたら早めに来た意味もなくなってしまいますしね。

 

そんな感じに私達が着替えていたところに新たな刺客が現れました。

 

「フフーン!皆さん!かわいいボクが来ましたよ!」

 

そういい意気揚々とドアを誰かが開けたのです。

それは銀髪で背が低く幼さの残る可愛い少女でした。アイドルでしょうか?

...何故この更衣室に?

 

 

「...すいません、どなたでしょうか...」

 

 

 

 

 

 

「...あれ?」

 

私がそう尋ねると急にシュン...となり、どや顔していたがウソだったかのように周りをきょろきょろし始めました。

その姿は小動物を連想させましたが一応初対面ですしこのことは伏せておきましょう。

 

「も、もしかして、ボク...部屋間違えてますかね...」

 

「...ここは多分私達だけだと思いますよ。」

 

「...失礼しました。」

 

謝りながら落ち込んだ銀髪の女の子は更衣室を後にしました。

 

いやー、嵐みたいな子でしたね。急に来て、すぐに去っていく。

始めに来た時は何事かと思いましたが、どうやら只の間違いだったようです。

 

 

 

 

それにしてもどうして肇は固まっているのでしょうか。

 

 

 

「...あ、明日...今の誰だか知ってた...?」

 

「へ?さっきの子ですか?」

 

「...うん」

 

「知りませんけど...え?もしかして」

 

「うん。そう。あれは輿水幸子さんっていう私達の先輩ですよ...」

 

はい。やらかしましたー。

いつかやると思ってましたが初日でしでかすとは思いませんでしたよ。

これだから前知識がないのは危ないんですよね。

 

「...結構大物だったり?」

 

「今人気急上昇中でバラエティでもよく見かけますよ...」

 

「...」

 

皆さん、どうやら私は先輩にしでかしてしまった罪でアイドル引退しなければならないかしれません。

短い間でしたが本当にお世話になりました。

 

 

 

まだなってもいませんでした。

 

「まぁ、大丈夫ですよ明日。こちらとしても正しい対応しただけで別に悪いことは言ってませんし...ね?」

 

「いえ、普通に先輩に向かって何の躊躇いもなくバリバリつっこんでいった自分に罪悪感があるだけです。別にアイドル引退だなんて考えてません。」

 

「ちょ、何訳の分から無いこと口走ってるんですか!?」

 

「まぁ、冗談はここまでにして宣材写真撮りに行きましょうか。」

 

「じょ、冗談!?もう!また揶揄ってたんですね!怒りますよ!」

 

そう言い私の背中をポカポカ殴る肇は天使でしょう。

 

冗談といいましたが、さっき肇が言った通り私達はそこまでの無礼を働いたわけでもありませんし気にしなくて大丈夫でしょう。きっと向こうも気にしてないでしょう。あの様子だと。

なので、楽観的に考えてこの話は終わりにし次の宣材写真に向けて気合を入れましょう。

 

 

 

______________________

 

 

 

 

「はい!では肇さん自然なポーズをとって下さい!」

 

「は、はい!」

 

カメラマンに言われた通り肇はいつもとってるような腕まくりのポーズを取りました。

いいですね。可愛いです。

顔もいつものように柔らかい笑みを浮かべています。この包容力凄いですよね。

ファンの心を幅広く捉えそうです。

 

「いいですよー!後一枚とりますね!」

 

「はい!」

 

思いの外撮影はあっさり終わる感じですね。

肇の撮影も言ってしまえば簡単なポーズを5枚程度。

笑顔で顔だけ写すのを3枚程度で。

計8枚を10分程度で済ませるだけですね。

まぁ、デビューしてないアイドルの写真なんてそんなものでしょう。

 

「はい!終わりです!次、明日さん、入って来てくださーい!」

 

そう言いカメラマンさんが私に向かい手招きします。

 

今回の宣材写真の舞台は真っ白で背景が一切ない感じです。

シンプルで逆に言えば、より被写体が目立つ仕様になっているわけですね。

 

「では、初めに顔のアップを撮りますので笑顔でお願いします。」

 

「はい。」

 

 

 

                         

 

 

 

そんなこんなで私達の初仕事は簡単に終わりました。

 

「有難う御座いました!これにて撮影は終わりです!」

 

「「有難う御座いました!」」

 

私達二人でお礼を言ってその場を後に、着替えに行きます。

 

 

さぁ、行こうとしたその途中でさっきの銀髪少女と他の二人と出会います。

 

「あっ、さっきの...」

 

「あっ」

 

「「...」」

 

何とも言えない先程の空気のまま場が静まります。

そこに救世主かは分かりませんが、隣にいた二人が声を掛けます。

 

「...幸子はんどうしたんどすえ~?」

 

「あっ、もしかしてさっき楽屋に顔真っ赤にしてきたのと何か関係ある?」

 

「...!?!?!?ちょっと友紀さん!!!何でそれを今言う必要があるんですか!!」

 

「あっあれ?図星だった?ご、ごめんねー、私あんまそういうのわかんなくて」

 

「何言ってるんですか!今のは絶対確信犯ですよね!?どもってますし!」

 

「幸子はん、落ち着きーな。」

 

「...はい...すいません。ボクとしたことが少し取り乱してしまいました。」

 

何でしょうかね。すっごい目の前に濃い空気が漂っています。

これがアイドルですか...勝てそうにもありませんね...

 

この三人の舞子さんみたいな人は宥め役でしょうかね。

そしてもう一人の友紀さん?は聞いてただけだと結構刺さるボケを繰り出す方です。

 

まぁ、言わずもがな私たちの楽屋に現れた小柄な女の子がツッコミですね。

 

何と綺麗に整頓されたコンビなんでしょうか。これってもしかしてグループだったりするんでしょうか。

 

「あっ、自己紹介が遅れました。私、綱嶌明日と申します。」

 

「わ、私は藤原肇です!」

 

静かになったそのスキを突き挨拶をしておきます。

こういうのは先にいったほうが勝ちでしょう。

なので、先手はいただきます。

そうすればいやでも向こうは名前を教えてくれるはずです。

まぁ、実質知らないのは一人だけなんですけどね。

 

「あっ、丁寧にどうも...ボクは輿水幸子といいます。」

 

「私は姫川友紀って言うよ!宜しくねー!」

 

「小早川紗枝どす~。よろしゅうおたのもうします~。」

 

「いやー後輩かー!何か初々しくていいね!わからないことがあったらなんでも私に聞いてね!」

 

そういい胸を張る姫川さん。何だか残念臭がしないこともないですがきっと大丈夫でしょう。

この中じゃ一番年上っぽいですしね。17くらいでしょうか?

 

「はい、もしもの時はお世話になります!それではこの辺で!」

 

「さようなら!」

 

肇と一緒に軽く別れの挨拶を継げると各々別のあいさつで返してくれました。

 

 

何とも味の濃い人たちでしたね。三人とも全然キャラが違い、それが逆にまとまりを産んでいました。

私達もいつかああいう人たちと組む機会が来るんでしょうか...少し楽しみになってきました...!

楽しませることが出来る人や、空気を自分のモノにする人...そんな人がこの美城にはたくさんいそうな気がします。

胸がどきどきしてきました...!

 

そんなこんなで、これからの活動に胸を躍らせながら私達は二人更衣室に入っていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後肇から友紀さんが二十歳だと教えられ衝撃のあまり固まったのは本人には内緒です。

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